プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

23 / 136
第二十三話:光と闇のハーモニー

             第二十三話:光と闇のハーモニー

 

1、歌姫達の奇跡

 

 光の園・・・

 

 クイーンが治める光溢れるこの世界も、闇に蝕まれようとしていた。女王の間にて、巨大なクイーンの前で、長老と石の番人ウィズダムは、世界の終わりとも思える光景に絶望の声を上げていた。

 

「何たる事じゃ・・・この光の園を、嘗てのように闇が覆う事になるとは・・・けい子さんとよし子さん達は、カオスを止める事が出来んかったか・・・」

 

「長老・・・なぎさとほのかですってば!ああ、プリキュアの力を持ってしても、カオスを止める事は出来ないなんて・・・クイーン、これから世界はどうなってしまうのでしょう?」

 

 二人の嘆きに対し、クイーンは掛ける言葉を失っていた。

 

(もう、この事態になっては、私の力だけではどうする事も出来ない・・・せめて、一分でも、一秒でもこの世界を存続させる為に・・・)

 

 憂いの表情を浮かべながらも、クイーンは自身の全てを掛けて、カオスに飲み込まれる時間を遅らせようと決意する・・・

 

 

 泉の郷・・・

 

 世界樹の側で、フィーリア王女も憂いの表情を浮かべていた。精霊達も闇の力に怯え、震えていた。

 

(世界が・・・終わる!私は、何と無力なのでしょう・・・)

 

 闇が覆う空を見上げ、フィーリア王女は涙を流していた・・・

 

 

 パルミエ王国・・・

 

 闇の襲撃を聞いた四大国王、ドーナツ国王、ババロア女王、クレープ王女、モンブラン国王が駆けつけ、パルミエ王国のパパイヤと共に、不安がる国民を沈静化させたが、今、この空を闇が覆った事に焦りを覚えていた。

 

「いったい、何が起こっているドナ?」

 

「強大な闇の力が世界を覆っているロロ・・・」

 

 ドーナツ国王、ババロア女王の言葉を受け、クレープもモンブランも、世界の終焉のようなこの景色を見て不安がっていた・・・

 

 

 スウィーツ王国・・・

 

 タルトの両親でもあるワッフル国王、マドレーヌ女王も、上空を覆う深い闇に畏怖していた。

 

「何ちゅうこっちゃ・・・一体何が起きとるんや?タルトやシフォンは無事何やろうな!?」

 

 長老ティラミスは、この絶望的状況に戸惑っていた・・・

 

 

 メイジャーランド・・・

 

 ハミィ、セイレーンの生まれ育ったこの国でも、闇の侵攻は始まっていた。女王アフロディテも、この絶望的な状況を嘆き、敵対しているマイナーランドの王、メフィストに親書を送り、今は敵対している場合ではない事を訴えるも、メフィストからの返書は来なかった。

 

(ハミィ・・・地上では今、一体何が起きているのですか?)

 

 地上に居る歌姫、ハミィの身を案じるアフロディテであった・・・

 

 

 

 おとぎ話の世界に出てくる妖精達が暮らす国・・・

 

 突然闇に覆われたこの国では、妖精達が右往左往していた・・・

 

 この国の女王は、光の園のクイーン程では無いが、巨大な姿をしていて、慈愛に満ちた女神のようなその姿は、国民達からは母のように慕われていた。女王は、国民達を励ましつつも、闇に覆われた現状を、心の中で嘆いていた・・・

 

(世界に何かが起きている!?でも、わたくしはこの国を動く事は出来ない・・・古き友、プリキュア達よ!あなた達が無事に元の時代に帰れて居たならば・・・)

 

 女王は、闇に包まれた空を見上げ、嘗てこの国の危機を救ってくれた、二人のプリキュアの事を思い出していた・・・

 

 

 

 とある王国・・・

 

 闇に覆われた空を訝しみ、この国の姫は、三種の神器の一つと呼ばれる、光の槍が祭られている場所へとやって来た。ピンクのウエーブがかった長い髪、薄いブルーの衣装に身を包んだ姫は、槍が何かに共鳴しているかのように、音を発している事に驚きを隠せなかった。

 

「ミラクルドラゴングレイブが、何かに共鳴している!?この闇は一体?」

 

「姫様、こちらに居られましたか・・・王がお呼びでございますぞ!」

 

「お父様が!?分かりました!今行きます!!」

 

 姫は、後ろ髪惹かれる思いを残しながら、この場を後にした・・・

 

 

 とある島・・・

 

 静まりかえる島内、その洞穴の中で、亀の甲羅のようなものを背負った一人の老妖精が、祭られていた鏡に話し掛けていた・・・

 

「エンプレス、この水晶の鏡を託す事が出来る、プリキュア達が現われる前に、この世界は終焉を迎えるようだ・・・これも運命なら、受け入れるしかないだろうねぇ?」

 

 妖精に話し掛けられた鏡の中に、黄緑髪の少女の姿が浮かび上がると、少女は口元に笑みを浮かべながら、ゆっくり首を横に振った。妖精はハッとすると、

 

「エンプレス・・・お前まさか、この闇に覆われた世界を救う為、戦って居る者が居ると言うのかい?」

 

 その問いに答えるように、鏡は何かに共鳴し、音を発しだした。妖精は洞穴から外に出ると、闇に覆われた空を見上げた。

 

 

 とある鏡に覆われた部屋・・・

 

 その中に、薄いブルーの髪をした一人の青年が、闇に覆われた無数の鏡の前で、憂いの表情を浮かべていた・・・

 

「一万年前、この世界は三人のプリキュアに救われた。そして、千年前・・・僕では、あの時のように、闇に覆われたこの世界を救う事が出来ない!僕は・・・無力だ!!」

 

 青年は、その場に膝から崩れ落ちると、自分の無力さを嘆いていた・・・

 

 

 

「そんな、私達が、私達がプリキュアとして戦ってきた事が、無駄になったって言うの!?そんなの、そんなのありえないよ!!」

 

 なぎさは、闇に飲み込まれた地球を、バロムに見せつけられた現実を受け入れられずに居た。他のプリキュア達も同様であった・・・

 

 今までの戦いが無駄になる・・・

 

 そんな事考えたくも無かった!

 

 だが・・・

 

「どうだ、プリキュア共よ!カオス様に飲み込まれたこの世界は、闇に喫す・・・直ぐにこの世界に生きる者共は、闇に身体を蝕まれ、やがて闇に溶け込む!」

 

 プリキュア達は、身を持って、闇に蝕まれた肉体がどうなっていくかを実感していた。世界の生命が、闇に熔け無に返る・・・

 

「そんな事・・・絶対にさせない!!」

 

 歯を食いしばり立ち上がるのぞみ、それに刺激されたように立ち上がるなぎさ達、咲達、りん達、ラブ達、つぼみ達、そして、響と奏も立ち上がる。

 

「ほう、そのような姿のお前達に、一体何が出来ると言うのだ?」

 

 変身を解除され、光るレオタードのような姿の少女達一同をあざ笑うバロムは、手を前に出し、なぎさ達に衝撃波を放つ、だが、その衝撃波はダークプリキュアが両手を広げ、身を持って阻止する。

 

「プリキュア達に・・・手出しはさせない!!」

 

「ダークプリキュア!無茶しないで!!」

 

 自らの肉体で、なぎさ達を庇い続けるダークプリキュアに、姉であるゆりが悲痛の声を掛ける。

 

「ダークプリキュア・・・闇の力で甦った貴様には、少しは耐性があるという事か・・・闇が光と共にあるなど認めん!貴様には、その身を持って思い知らせてやる!!」

 

 粛正するようにダークプリキュアを嬲り続けるバロム、ダークの呻き声が辺りに響き渡る。咄嗟にゆりが助けに向かおうとするのを、ダークが止める。

 

「来るな!お前達が無事な限り・・・私は、私は、まだこの世界を救えると信じて・・・いる」

 

「でも・・・」

 

 今の自分達にはどうすることも出来ない現実に、ゆりは拳を震わせる。

 

 その時、弱っている鳳凰が、再びプリキュア達に力を分け合おうとするのを、側に居た妖精達が必死に止める。

 

「だ、駄目ココ!!」

 

「そうナツ・・・これ以上続けたら、本当に死んでしまうナツ!」

 

 だが、鳳凰が訴える・・・

 

 闇に世界が覆われた以上、自分の存在意義は無いに等しい、プリキュアが、クイーンが居れば、光は再び訪れると・・・

 

 ポルン、ルルンが妖精姿になり鳳凰に縋り付き泣きじゃくり始める。

 

「ひなた!駄目ポポ・・・死んじゃ駄目ポポ!!また、一緒に遊ぶポポ」

 

「ルルンも一緒に遊ぶルル・・・」

 

 鳳凰は哀しげに首をもたげ、愛しそうにポルン、ルルンに顔を擦りつける。なぎさ達の目にも涙が浮かび、その光景を見ていたセイレーンは、何かを思案しているような表情を浮かべるのだった。

 

「ひなた・・・私達が不甲斐ないばっかりに・・・ゴメン・・・本当ゴメン!!でもね、あなたを犠牲にしてまで、私達・・・プリキュアになりたいとは思わない!!きっと、きっと、何か方法が有るはず・・・お願い、ひなた・・・私達を信じて!!」

 

 なぎさにも根拠は無い、だが、鳳凰を犠牲にしてまで、プリキュアになろうとはとても思えなかった。

 

 最早プリキュア達に為す術は無いと判断したバロムは、

 

「フハハハ!どうした!?もう抵抗は止めか?」

 

「やっかましいわぁぁ!!!!」

 

 なぎさ達を嘲笑するバロムに対し、やかましいと怒鳴りつけた者が居た。それは、意外にもセイレーンであった・・・

 

 23人のプリキュア達、妖精達もその光景を見て驚く、ただ一人、ハミィは嬉しそうに目を輝かせながら、セイレーンを見つめていた。険しい顔を浮かべたバロムを、キッと睨み付けたセイレーンは、

 

「あんた、いい加減鬱陶しいのよ!抵抗は止めかですって?抵抗してやろうじゃないのよ!!ハミィ、あんたも歌姫なら、癒しのメロディ・・・覚えてるでしょうね?」

 

 突然セイレーンに名前を呼ばれ、驚いたハミィだったが、嬉しそうに頷くと、

 

「ならいい・・・いい事、前みたいにあたしの足引っ張らないでよ?行くよ、ハミィ!!」

 

「分かったニャ!!」

 

「「ラァラァララ・・・・」」

 

 突然歌い出すハミィとセイレーンに、その場に居た一同は呆然としたものの、二人の歌が闇の中に響き出す。

 

 一同は気付かなかった・・・

 

 ハミィとセイレーンの歌声に、カオスの侵攻が止まった事を・・・

 

 皮肉にも、カオスを通じて闇の中から、ハミィとセイレーンの癒しのメロディが、異世界に、世界中に響いて行った・・・

 

 

 

 光の園でも・・・

 

 ・・・これは、何という安らぎを与える歌声でしょう・・・

 

 クイーンは、闇の中から響き渡る歌声に驚嘆しつつ、今の現実を忘れさせてくれるような癒しのメロディを聴き、絶望的な気持ちになっていた自分を恥じた。側では、長老とウィズダムが、歌声に引きずられるようにメロディを口ずさむのだった・・・

 

 

 泉の郷でも・・・

 

(精霊達がこの歌声を聴いて喜んでいる!?これは、もしかしたら、メイジャーランドに伝わるという・・・)

 

 フィーリア王女もまた、闇の中から響き渡る歌声に勇気づけられていた。その側では、精霊達の歌声が響き渡るのだった・・・

 

 

 パルミエ王国でも・・・

 

「な、何で、闇の中から歌声が聞こえてくるドナ?」

 

「不思議クク!?」

 

「何と清々しい歌声ロワ!!」

 

 四大国王達も、耳に心地よく響いてくる歌声に、知らず知らずの内にメロディを口ずさむのだった・・・

 

 

 スウィーツ王国でも・・・

 

「はて?何や知らんが、えらい癒されるメロディやなぁ・・・」

 

 長老ティラミスも、この不可思議な現象に首を捻りながらも、スウィーツ王国中から歌声が響き渡るのだった・・・

 

 

 メイジャーランドでは・・・

 

「この癒しのメロディは、ハミィ!そして・・・ああ、セイレーン!あなたなのですね」

 

 ハミィとセイレーン、新旧の歌姫が発するメイジャーランドに伝わる癒しのメロディの美しき歌声に、アフロディテは嬉し涙を流す。

 

「セイレーン!あなたは、本当は心優しい娘!この世界の今の姿を嘆き、どうにかしたいと思ったのですね」

 

「お父様・・・そして、私の愛しき娘・・・あなた達にも届くと信じて、私も歌いましょう!!」

 

 闇の中に響き渡る歌声に合わせるように、女王アフロディテも口ずさむ・・・

 

 

 マイナーランドでは・・・

 

「ウギャァ~~!!な、何だぁ!?このメロディはぁぁ?ええい、いくら闇に世界が飲み込まれそうだとはいえ、何と不快な・・・まさかとは思うが、セイレーンの奴・・・」

 

 耳を押さえながら転げ回るメフィストは、セイレーンが裏切ったのではと危惧する。その様子を背後から眺めていたトリオ・ザ・マイナーのバスドラ、ファルセット、バリトンは、ガッツポーズを取るのだった。

 

「良いぞ!このままセイレーンが失脚すれば・・・」

 

「再び我らがメフィスト様の側近・・・」

 

「あんな猫に媚びへつらう事も無くなるというもの・・・」

 

 思わず嬉しそうにハモリ出すトリオ・ザ・マイナーに、メフィストは、

 

「貴様ら、我が輩が苦しんでいるのに喜ぶとはどういう了見だぁ!!」

 

 メフィストに怒鳴られ、しょげる声もハモらせるトリオ・ザ・マイナーであった。

 

 だが、メフィストの心の奥底では、この歌声に癒されて居た事を、本人は気付いては居なかった・・・

 

 

 とあるおとぎ話の国でも・・・

 

「この歌声は!?何て心が休まるのでしょう・・・」

 

 闇に覆われた現実を忘れさせてくれるような歌声に、女王もまた自然と歌を口ずさんでいた。古き友、プリキュア達に届くように、この国に覆われた闇が晴れるように・・・

 

 

 とある王国でも・・・

 

「お父様、この歌声はもしかして、メイジャーランドの?」

 

「ウム!確かにメイジャーランドに招かれた時、聞いた歌に似て居る・・・しかし、何という心地良い歌声か・・・」

 

「同感ですわ!ラァラララ・・・」

 

 歌声に釣られたように、王女も自然と歌を口ずさんでいた・・・

 

 

 とある島では・・・

 

 闇の中から聞こえてくる歌声に、老妖精は驚きを隠せなかった。まだ希望は失われては居ないのかと・・・

 

「まさか、エンプレスはこの事を言いたかったのか?という事は・・・この時代のプリキュアが、闇と戦っている!?」

 

 老妖精はハッとしながら、再び歌声が聞こえてくる闇の空を見上げた・・・

 

 

 とある鏡に覆われた部屋・・・

 

 青年はハッとすると、とある鏡の中に吸い込まれるように消えて行った。鏡から現われた青年は、闇に覆われたどこかの国にある城の前にやって来ると、

 

「やはり、黄金の冠が共鳴している!この世界の為に戦ってくれているプリキュア達が、今再び立ち上がってくれたのか?」

 

 青年はキッと闇の空を見上げると、

 

「すまない!1000年前に、彼女にプリキュアの力を与えて以来、僕は力を失ってしまった・・・せめて、僕も歌おう!この世界が救われると信じて!!」

 

 青年も闇の空に向かって歌い出していた・・・

 

 

 

 地上に居る薫子、コッペ、サラマンダー、オリヴィエ、ウエスター、サウラー、そして、ブンビーにもこの美しい声は響いていた。

 

「何と癒される歌声でしょう!まるで、闇の中に居る事を忘れさせられる程だわ」

 

 薫子は思わず声に出して、素晴らしい歌声に賞賛を送る。サラマンダーも同意し、

 

「同感ですね・・・しかし、一体誰が!?」

 

「プリキュア達かも知れんな?」

 

「いやぁ、彼女達は戦いで歌どころでは無いだろう!?だが、本当に素晴らしい歌声だ!」

 

 ウエスター、サウラーも、この歌声に聴き入り、感嘆の声を上げる。少し考えていたオリヴィエが、

 

「もしかしたら、ハミィ達かも知れない・・・メイジャーランドの歌姫だってつぼみ達に言ってたから!」 

 

 オリヴィエの言葉を聞き、妖精界の歌姫と呼ばれる者達なら頷けると納得する一同だった。ブンビーも歌声に誘われるように歌い出すも、それはお世辞にも上手いとはとても言えなかった。思わず耳を塞ぎながら、サラマンダーがブンビーに忠告する。

 

「君、君は歌わない方が良いんじゃないかね?」

 

「エェェ!?どうして?意味わかんないんだけど!?」

 

 自分が音痴だとは気付いていないブンビーに、呆れるサラマンダーだったが、

 

「ウフフ、良いじゃない?歌は気持ちが籠もっている事が一番だもの!!私達も歌いましょうか!この歌が、プリキュア達の力になると信じて!!」

 

 薫子の言葉に同意し、一同も歌い出す・・・

 

 歌姫達から始まった歌声が、人々の、妖精達の思いを乗せて、闇の中から響き渡るのだった・・・

 

 

 ・・・何だろう、不思議だなぁ?この歌声を聴いているだけで、疲労が消えて行くみたい!?・・・

 

 なぎさが、みんなが、闇の中に響き渡る歌声を聴き、元気を取り戻しつつあるのに気付き驚く、妖精達も美しい歌声に誘われるように、何時しか歌い出していた。

 

「妖精風情が・・・いいだろう!貴様らから葬ってやる!!」

 

 バロムの攻撃目標が、ハミィとセイレーンに変わる。再びダークがバロムの攻撃からハミィとセイレーンを守り続ける。それに続けとばかり、ポプリが、ココとナッツが、賢明にバリアーを張り、ハミィとセイレーンを守り続ける。バロムは、強力な力を両手に込めると、凄まじいエネルギー波を発し、ダーク、妖精達を吹き飛ばした。

 

「ダークプリキュア!」

 

「ポプリ、大丈夫?」

 

「ココ、ナッツ!!」

 

 ゆりが、いつきが、のぞみが心配して声を掛けるも、ヨロヨロ立ち上がる妖精達、皆に守られながら歌い続けるハミィとセイレーン、彼女達の額のハートのような模様が輝きを発した時、なぎさ達23人の少女達の身体を、光の輝きが覆う。

 

(何だ?何が起こったというのだ・・・これ以上・・・)

 

「好きにはさせんぞぉぉ!!!」

 

 不愉快そうにしていたバロムは、闇の凄まじい力を両手に込め、ハミィとセイレーンに狙いを付けると、再びヨロヨロと立ち上がったダークプリキュアが、彼女達を守るように両手を広げた。

 

「死に損ない諸共・・・消えて無くなれ!!」

 

 バロムの強烈なエネルギー波が放出されたその時・・・

 

 

 ダークプリキュアも、次の攻撃を防ぎきる事は出来ないだろうと思っていた。朦朧とする意識の中に、何者かが訴え掛けてきた。

 

「あなたもダークプリキュアと言うのね?私達と同じ・・・」

 

(何!?)

 

 戸惑うダークの前に、闇が流れてきた・・・

 

 闇は、バロムからの攻撃を無効化すると、意識があるように蠢き、まるで人のような形を露わにする。

 

 一人、二人・・・闇のシルエットは、徐々に数を増やしていく・・・

 

 闇のシルエットの判別が出来る程になった時、響、奏を除いた21人の少女達から、驚嘆の声が響き渡る。

 

 

「あんた達は・・・ポイズニーにイルクーボ!?」

 

「何故、あなた達が!?」

 

「あなたは、あの時の・・・」

 

 なぎさとほのか、ひかりが、二人の姿を見て驚く・・・

 

「あ~らら、落ち落ち寝てられないわね・・・あんた達、しっかりしてくれるぅ?」

 

「同感だな!我らも協力してやる・・・決着をつけて来い!!」

 

 ポイズニーとイルクーボが、なぎさ達三人を見つめ口元に笑みを浮かべる・・・

 

 

「キントレスキー!?」

 

「カレハーンも居るわ!?」

 

「これは一体?」

 

「どういう事なの!?」

 

 咲、舞、満、薫が、敵である筈の二人が、まるで自分達を庇うような行動を取るのに驚く・・・

 

「どうした、お前達の力・・・まだまだこんなものでは無い筈だ!!気合いが足りんぞ、プリキュア共よ!!」

 

「俺達に知らしめたプリキュアの力を、バロムの奴に知らしめてやれ!!」

 

 肉体を失った事で、バロムの呪縛から解放されたキントレスキー、カレハーンが、腕組みしたままバロムを睨み付ける。

 

 

「あなた達は・・・ダークプリキュア5!?」

 

 驚くのぞみ達5人に、微笑み掛ける闇の5人・・・

 

「また、あなた達に会えるなんて思わなかった・・・」

 

「その妖精達の歌声が、我々を導いてくれた!」

 

「あなた達にはまだやるべき事が有るはず!」

 

 ダークプリキュア5は、それぞれ自身の分身と言えるのぞみ、りん、うらら、こまち、かれんを見つめ微笑みを向けた。

 

 

「あなたは、エターナルの?」

 

「アナコンディ!?どうして此処に居るロプ?」

 

 くるみ、シロップも驚愕の声を上げる・・・

 

「あなた方には、館長を救って貰った・・・その恩は返させて貰うわ!」

 

 嘗てのような厳しい眼光は消え、穏やかな目をくるみやシロップ、そして、のぞみ達に向けるアナコンディ・・・

 

 

「エッ、これって?」

 

「みんなの敵だった人って事?」

 

「でも、凄い・・・敵対してた人達と分かり合えるなんて・・・」

 

「そうね・・・私やウエスター、サウラーと同じように・・・」

 

 ラブ、美希、祈里、せつなも、皆の敵だった人物が、肉体を失ってまで、この危機的状況に加勢に来てくれた事に心強さを覚える・・・

 

 

「何だと!?何故貴様ら闇が、光の者に手助けをする?我は闇の救世主なるぞ!!」

 

「黙れ、貴様などが闇の救世主を名乗るなどおこがましい・・・プリキュア達よ、我が配下達が、バロムとやらの誘いに乗り、そなた達に迷惑を掛けたな・・・」

 

 一同の心に語り掛けてきた者が居た・・・

 

「この声は・・・あなたは、デスパライア!あなたがみんなを!?」

 

 デスパライア・・・

 

 嘗て、のぞみ達プリキュア5と戦ったナイトメアの長である。ドリームコレットの力で、永遠の命と若さを手に入れたものの、プリキュア5の、妖精達の、希望の思いに感化され、自らの非を詫び、自ら望んで封印の眠りに付いた筈であった・・・

 

「私は未だ封印の眠りに付いている身、彼の手助けをしたまでに過ぎぬ・・・」

 

 デスパライアの言葉を表すように、闇の助っ人達の最前列のシルエットを見た時、つぼみ達に動揺が走る。

 

「あなたは・・・」

 

「砂漠の王・・・」

 

「デューン!?」

 

「何であんたが此処に居るのぉ?」

 

 つぼみ、いつき、ゆり、えりかがデューンの姿を見て思わず呟く、

 

「久しぶりだね、プリキュアの諸君!地上で僕の邪魔をしたプリキュア達とは、お初にお目に掛かるね!」

 

 響、奏を除く、21人の少女達の顔色が変わるも、デューンはニッコリ微笑むと、

 

「安心したまえ、君達と敵対する気は無いよ・・・さて、バロムよ!貴様の勝手な振る舞い、これ以上許すわけにはいかんな・・・カオスは今の目覚めを望んでは居ない!全て今回の出来事は、貴様の身勝手な思い上がりから起こった事だ!!」

 

 デューンの鋭い視線が、バロムに突き刺さるも、バロムは鼻で笑い、

 

「フッ、何を言い出すかと思えば・・・肉体を持たない精神体の貴様らに、一体何が出来ると言うのだ?」

 

「愚かだな・・・確かに我らは肉体を持たぬ!だが、此処に闇の力を受け入れる者の存在を忘れているようだな?」

 

(ダークプリキュアか)

 

 デューンの言葉を聞き、バロムの表情が醜く歪む、

 

「ダークプリキュアよ、貴様にも分かっているだろうが、バロムを倒せばお前も・・・」

 

 デューンがダークを見つめ、穏やかに話し掛けると、ダークは頷き、

 

「ああ、分かっている!お前達の思い、私が受け取る!!集まれ!闇の力よ!!」

 

 ダークの掛け声と共に、闇の戦士達はダークと融合を果すのだった・・・

 

 

 癒しのメロディを歌い終え、ゼェゼェ呼吸するハミィとセイレーンは、

 

「此処までしてやったんだ!絶対勝ちなよ!!」

 

「セイレーン、大丈夫ニャ!プリキュア達なら、きっと何とかしてくれるニャ!!」

 

 何時以来だろうか・・・

 

 ハミィとセイレーンが、互いを見つめニッコリ微笑み合った。二人の歌姫の頭を撫でた響と奏は、二人に感謝する。

 

「ありがとう、ハミィ、セイレーン!あなた達の、みんなの歌声が、私達に再び力を与えてくれた!私達は諦めない!!いくよ、奏!!」

 

「OK、響!!」

 

「「レッツプレイ!プリキュア・モジュレーション!!」」

 

 再びプリキュアへと変身を遂げるメロディとリズム・・・

 

 そして、なぎさ達21人の少女達も・・・

 

「「デュアル・オーロラウェイブ!!」」

 

「ルミナス!シャイニングストリーム!!」

 

「「「「デュアル・スピリチュアルパワー!!」」」」

 

「「「「「プリキュア!メタモルフォーゼ!!」」」」」

 

「スカイローズ・トランスレイト!!」

 

「「「「チェインジ・プリキュア!ビートアップ!!」」」」

 

「「「「プリキュア!オープン・マイ・ハート!!」」」」

 

 光の園のプリズムストーンが、目映い光を放ち、虹の園へと照射される。凄まじい光がプリキュア達と融合を果すと、裸体にそれぞれのシンボルカラーを模した、光の羽衣を纏ったかのような、23人のプリキュア達が姿を現わす。ダークプリキュアも再び加わると、

 

「光と闇の絆の下に・・・我ら、プリキュアオールスターズ!!」

 

 24人のプリキュア達と、バロムとの最終決戦が始まった・・・

 

 

2、プリキュア!無限シルエットレクイエム!!

 

 光の天女と化した23人のプリキュア達、そして、闇の力を集い、覚醒したダークプリキュアを見てバロムが逆上する。

 

「光と闇の共存など・・・認めん・・・断じて認めん!!ウゥゥゥオォォォ!!!!」

 

 凄まじい咆哮を上げたバロムの姿が醜く変化していく。長い漆黒の黒髪は、まるで生きているかのように蠢くと、左右に分かれバロムの頭部を覆うと、まるでコウモリが羽ばたいているかのような姿へと変貌する。目は更につり上がり、口は醜く耳元まで裂け、上下から牙を生やす。黒の法衣はバロムの肉体と融合し、蠢きながらバロムの身体を覆い尽くす。魔神と化したバロムが姿を現わし、

 

「闇の力!!思い知れ!!!」

 

 バロムとプリキュア達の死闘が開始される。

 

 バロムに真っ先に突撃し、肉弾戦を仕掛けるのは、ブラック、ホワイト、ムーン、ダークの四人、

 

(身体が・・・軽い!?)

 

 身体に羽衣を纏っているだけなのに、何時も以上の力を感じ、ブラックは戸惑うものの、バロムの繰り出す攻撃を、嘲笑うかのように優雅に躱し続けていった。黒き天女は、雄叫びを上げると、

 

「ダダダダダダダ!!」

 

 パンチの雨霰が、容赦無くバロムに炸裂する。小賢しいとばかりに、バロムが手で払い除けようとするのを、白き天女がその手を掴み、頭上高く投げ飛ばすと、銀の天女が優雅に舞いながら、強烈な蹴りで地上に蹴り落とした。

 

「フッ、流石だな・・・ハァァァ!!」

 

 ブラック、ホワイト、ムーンライト、三人の天女の戦い振りを見たダークプリキュアは、口元に笑みを浮かべると、雄叫びを上げながらバロムに怒濤の連続蹴りを浴びせた。

 

 バロムと激しい肉弾戦を続ける四人を援護するように、上空に舞うブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディは力を溜め始める。それに気付いたバロムが、上空の四人に対し凄まじい攻撃を放とうとするも、レモネードがプリズムチェーンでバロムの足を捕らえ、それを合図にしたかのように、ジャンプしたドリーム達四人とローズ、ピーチ達四人、メロディとリズムが強烈な跳び蹴りを食らわせ吹き飛ばし、バロムの攻撃を外させる。

 

「グゥゥオオ!!」

 

 プリキュア達に阻まれ、思うような攻撃が出来ず苛立つバロム、上空からブルーム達が、スパイラルハートスプラッシュとスパイラルスタースプラッシュの強力な合体技が放たれる。

 

「こ、こんなもので・・・我を倒せると思うなぁぁ!!」

 

 力を込めたバロムが攻撃を耐え凌ぐが、直ぐにブラック達四人に、ブロッサッム、マリン、サンシャインも加わり強烈なパンチを浴びせバロムが吹き飛ばされ、膝を付く・・・

 

「おのれぇぇ・・・プリキュアァァァァ!!」

 

 怒りの咆哮を上げるバロムの気が一気に膨れ上がると、表情を変えたルミナスが一同に話し掛けると、

 

「皆さん・・・今こそ光と闇の心を一つに・・・」

 

 ルミナスの合図に頷き、ルミナスの前方でハート形に陣形を組むプリキュア達、中心の後方に居るルミナスから凄まじい虹の光が一同に照射されると、

 

「漲る勇気!!!」

 

 ブラック、ブルーム、ブライト、ドリーム、ルージュ、ピーチ、ブロッサム、サンシャイン、メロディが叫べば、

 

「溢れる希望!!!」

 

 ホワイト、イーグレット、ウィンディ、アクア、ミント、レモネード、ベリー、パイン、マリン、リズムが返し、

 

「光と闇の絆と共に!!!」

 

 ルミナス、ローズ、パッション、ムーン、ダークが応える・・・

 

「エキストリーム!!!」

 

「ルミナリオ!!!」

 

 巨大なハートの陣形から、強大なハート形の虹色のエネルギー波が照射される。バロムからも、強大な負のエネルギーが照射され、激しく空間でぶつかり合う技と技・・・

 

「みんなの思い・・・無駄にはしない!!」

 

「あんたに何か、絶対に負けない!!」

 

「光と闇の絆・・・受けてみなさい!!」

 

「私達は・・・負けないんだからぁぁぁ!!!」

 

 ブラックが、ブルームが、ドリームが、そしてピーチが魂の叫び声を上げ、虹の輝きが一層激しさを増すと、

 

「シャイニング・・・ハァ~~ト!!!!」

 

 24人の思いが一つになり、バロムからの強大なエネルギー波を無にしながら、虹のハートがバロムを飲み込んだ。

 

「グゥゥオオ!!こ、これで、勝ったと思うなよ・・・最早、カオス様の目覚めによって、全宇宙は無に帰すのだ・・・フフフ、ハハハハハハ!!!」

 

 バロムは、嘲笑しながらその身体を闇の中で無に喫した・・・

 

 だが、それは哀しい別れの始まりでもあった・・・

 

 

 バロムに打ち勝ち喜び合うプリキュアと妖精達、ムーンの口元にも笑みが浮かび、妹、ダークの方を見た瞬間、ムーンの表情が哀しげに変わる。

 

「ダークプリキュア!?そんな、どうして?」

 

 ゆっくり、ゆっくり消えかけていくダークの姿に、プリキュア達は呆然とする。

 

「そんな哀しげな目をするな!お前達はバロムを倒したんだ!!私は、バロムの力で偽りの肉体を与えられたに過ぎん・・・バロムが無に喫したお陰で、ようやく私も・・・お父さんの所に戻れる・・・」

 

 ダークプリキュアの視線がゆっくり、ゆっくり、プリキュア一人一人に向けられると、それぞれのプリキュア達の目からは涙が零れる。

 

「でも、でも・・・」

 

 姉であるムーンは、特に沈痛な表情を浮かべていた。

 

「さあ、お前達にはまだしなければならない事があるだろう?私達に見せたお前達の光の思い、カオスにも知らしめてやれ!!」

 

 ダークの周りを一つの小さな光が飛び回っていた。ダークは光を見て穏やかな表情を見せると、

 

(お父さん・・・)

 

「迎えが来たようだ・・・プリキュア達よ、お前達と一緒に戦えた事・・・私は誇りに思う!そして・・・ありがとう、姉さん!!」

 

 ゆっくり、ゆっくり、そして、ダークプリキュアの肉体は消滅した。消滅する瞬間、力を貸した闇の戦士達も、プリキュアに微笑みながら消えていった・・・

 

 

 

「行きましょう!カオスを止める為に!!」

 

 涙を拭い、強い意思で立ち上がるムーン、その言葉に力強く頷くプリキュア達だったが、

 

「でもさ、カオスって何処に居るの?」

 

 首を捻りながら一同に質問するマリン、

 

「そういえば・・・ど、どうしよう!?」

 

 確かにマリンの言う通りだと思い、激しく動揺するメロディに対し、セイレーンは溜息を付くと、

 

「何、狼狽えてるのよ?バロムの奴が言ってたでしょう・・・カオスは闇の根源だって!この闇だって、カオスそのものって事でしょうが!」

 

 セイレーンの言葉に、一瞬目を点にして見つめ合ったマリンとメロディは、思わず手をポンと叩いて納得するのだった。

 

「あの二人、意外に良いコンビですね」

 

「そう見たい・・・ですね!」

 

 ブロッサムとリズムは、苦笑しながらお互いのパートナーを見つめた。ブロッサムは真顔になると、一同にある提案をする。

 

「みなさん、デューンが言ってたように、カオスの本心はまだ闇が世界を覆う事を望んでいないのなら・・・私達の思いを伝えれば、分かってくれるかも知れません!皆さんの力、私達に貸して下さい!!」

 

 ブロッサムの言葉に一同が頷くと、ブロッサム達を中心に二列になり、闇を見る23人のプリキュア達、その側に集まる妖精達、メップル達、フラッピ達も妖精の姿になりそれぞれのパートナーの近くに並び立つ・・・プリキュアの、妖精達の思いが一つになり、ハートキャッチミラージュが凄まじい輝きを発し上昇していく。

 

「闇に咲く大輪の花!」

 

 強烈な光が辺りを覆った時、嘗てデューンを包み込んだ巨大なつぼみに似たシルエットが浮かび上がる。

 

「無限の力と無限の希望!そして、無限の愛を持つ星の瞳のプリキュア!プリキュア!!無限シルエット!!!!」

 

 聖なる光のワンピースを着た、つぼみに似た巨大な女神がカオスに訴え掛ける。

 

「カオス・・・この宇宙の生命の源よ!あなたを利用しようとしたバロムは滅びました。もう、あなたの眠りを妨げる者は居ません・・・私達の愛が、思いが、あなたの思いを包みます・・・」

 

 巨大な女神が両手を広げ、闇を包み込んだその時、23人のプリキュア達の思いと、カオスの長きに渡る思いが共鳴する。

 

 それは、暗い、暗い、孤独の中・・・

 

 光も無い、音も無い、孤独の世界・・・

 

 その孤独な世界の中に一人の少女が佇んで居た・・・

 

 年格好を見れば、その少女はプリキュア達と同じくらいに思われた・・・

 

 だが、その少女からは妖艶さも醸し出していた・・・

 

 足まで伸びた長い黒髪、それを際立たせる白い裸身の少女が・・・

 

 少女の瞳に映る虚無が、プリキュア達一人一人の心を覆い尽くして行った・・・

 

 カオスの無限の闇の前では、無限の愛も、カオスの心を完全に包み込む事は出来なかった・・・

 

 

「歌・・・歌だよ!そうだ、歌だよ!!」

 

 突然叫び出すメロディに、リズムが驚く、

 

「どうしたの、メロディ?」

 

「歌、歌何だよ!さっきのハミィとセイレーンの歌声を聴いてて分かった・・・愛だけじゃ駄目何だよ・・・」

 

 メロディの言葉を聞き、考え込む一同・・・

 

 確かにメロディの言うように、歌は心に響く力を持っている。高揚させたり、悲しませたり、目覚めさせたり、眠くさせたり・・・

 

「やってみる価値はありそうね・・・ハミィ、セイレーン、もう一度私達に力を貸してくれる?」

 

 ホワイトの言葉に、照れながらも同意するセイレーン、またセイレーンと歌えると大喜びのハミィ、無限シルエットの姿がなぎさに似た少女に変わると、

 

「カオス、あんたは一人じゃないよ・・・タァァァ!!」

 

 無限シルエットの拳が、闇に自分達を知らしめる。無限シルエットが響に似た姿に変わる。

 

「私達の力、思い、希望、夢、そして、愛・・・全てをこの歌に込めるわ・・・プリキュア!無限シルエットレクイエム!!!!」

 

 ハミィ、セイレーンを中心に、23人のプリキュア、妖精達の歌声が闇の中に響き渡る。再び聴こえる歌声に、世界中から加わった歌声が闇の中に響き渡った。

 

 闇の中の少女は、その歌声を喜んでいるかのように口元に笑みを浮かべると、周りの闇が蠢き、まるで少女の体内に吸い込まれて行くように、闇は徐々に徐々に縮小していった・・・

 

 カオスは再び体内に闇を吸収し、この宇宙を再び解放した・・・

 

 地球を飲み込んだ闇も消え失せ、地球は再び青く輝く姿を現わした・・・

 

 

「闇が消えようとして居る・・・此処に止(とど)まるのは危険だわ!」

 

 ムーンライトの言葉通り、闇に蝕まれて居た地表が脆くも崩れ始める。

 

 歌姫達の歌声で元気を取り戻した鳳凰、そして、シロップの背に乗り、プリキュア達と妖精達が、闇の門を潜り地上へと飛び立つ、その姿を見送るかのように、闇の門は静かに次元の狭間へと消えていった・・・

 

 消えゆく闇の中に、少女の笑う姿が見えた気がしたブラックとホワイトは、一瞬呆然とするも、仲間達の声で我に返った・・・

 

 地上へと戻ったプリキュアと妖精達、ブラックは空を見上げ落胆の声を上げた。

 

「そ、そんな、全てが終わった筈なのに・・・何で、何で、闇がまだ覆っているの?」

 

 ブラックの言葉通りの景色を見て、ブルームも、ドリームも、ピーチも動揺を隠しきれなかった・・・

 

 ホワイトは目を点にしながら、

 

「ブ、ブラック・・・今、0時近く何だから、空が暗いのは当然よ!」

 

「エッ?そ、そうだっけ!?イヤァ、戦い続きで、時間の事すっかり忘れてた・・・アハハ!!」

 

 ホワイトの言葉を聞き、照れながら頭を掻くブラックを見て、一同から笑い声が漏れるのだった。

 

 

 闇から解放された地上で、一同の帰りを待ち侘びていた薫子達は、プリキュア達、妖精達の気配を感じて出迎えに向かう。

 

「みんな・・・まぁ!?ウフフ、余程疲れてたのね・・・みんな、ご苦労様!!」

 

 薫子達の視線の先には、鳳凰に寄りかかるように、みんなで横たわって眠りにつく23人の少女達と妖精達の姿があった。

 

 その寝顔は、正に天使のようだった・・・

 

 5月1日、プリキュア達にとって、長い、長い1日が終わりを告げた・・・

 

               第二十三話:光と闇のハーモニー

                     完

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。