プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第二話:伝説の戦士再び!

 九条ひかりは、弟のひかるを左手で庇いながら、近づいてくるデザートデビルに恐怖していた。逃げ出すのは簡単だが、ここにはひかりにとって大切な恩人、アカネが結晶化しているのだ。アカネを置いて逃げる訳にはいかないと、ひかりは考えていた。

 

「ひかる、あなただけでも此処から逃げて!」

 

 ひかりは、弟ひかるに逃げるように言うが、ひかるはひかりの側から離れようとはしなかった。ひかりは、ひかるの手を握り優しく微笑む。

 

 光の園のクイーンと分離し、一人の女の子、九条ひかりとして生活してきて約二年、ひかりは様々な事を学び、成長してきた。なぎさとほのかと出会い、自分の居場所を見付けたように、弟ひかるも、ひかりという居場所を見付けたのであろう。

 

(この子を、そして、アカネさんを守らなきゃ・・・クイーン、私に、私に力をお貸し下さい!!)

 

 ひかりは、無駄かも知れないが、心の中でクイーンに祈った。その時、天空に虹色の光が舞い降りる。

 

「ひかり~・・・会いたかったポポ~~!!」

 

 ひかりは上空を見上げ、懐かしく、愛しい大切な仲間、ポルンを見付ける。ひかりの口元に自然と笑みが浮かんだ。

 

「ポルン!来てくれたのね・・・それにメップル、ミップル、ルルンも!」

 

 ポルンと一緒に、メップル、ミップル、ルルンもやって来た。四人の妖精達は、ひかりとの再会を喜んで居るかのように笑顔を浮かべ、

 

「ひかり、待たせたメポ~!クイーンから、虹の園に危機が迫ってると聞き、駆けつけてきたメポ~・・・あれぇ!?なぎさとほのかはどこメポ?」

 

 ひかりは首を横に振り、メップルとミップルに、なぎさとほのかにはまだ会っていないと答える。

 

「なぎささんやほのかさんの事だから、無事だと思うけど・・・今はその前にやるべき事があるの!お願いポルン、あの邪悪な者を止める力を、私に貸してぇ!!」

 

 メップル、ミップル、ポルン、ルルンの四人は、ひかりの視線の先をゆっくり見上げて驚嘆する。

 

「じゃ、邪悪な気配はあれだったミポ!?お、恐ろしいミポ・・・」

 

「あれは、ドツクゾーンの奴らとも違う感じがするメポ!ひかり一人じゃ・・・なぎさ達は何やってるメポ!」

 

 メップル、ミップルが、不安そうにひかりを見る。ルルンは恐怖のあまりポルンに縋り付き泣き出す。ポルンも泣きそうな表情になるが、

 

「ひかり・・・変身するポポ!!」

 

 そう言うと、ポルンはタッチコミューンに変化する。ひかりはポルンを手に持ち頷くと、

 

「ルミナス!シャイニングストリーム!!」

 

 ひかりの掛け声と共に、ひかりの身体を光が包み込んでいく。神々しい光と共に、シャイニールミナスがその姿を現わす。

 

「光の心と光の意志、全てをひとつにするために!」

 

 約二年ぶりにシャイニールミナスに変身したひかりだが、二年振りに変身した姿には、少女の姿から少し大人びた雰囲気を醸しだし、更なる気品と美しさを漂わせていた。

 

 ルミナスは、後ろをチラっと見ると、

 

「メップル、ミップル、ひかるとルルンをお願い!何とか私一人で防いでみます!」

 

 メップルとミップルは、ルミナスに言われた通り、ルルンとひかるをルミナスから遠ざけると、

 

「ルミナス、無理はするなメポ!なぎさ達は必ず来てくれるメポ!!!」

 

「それまで、何とか持たせて欲しいミポ!」

 

 ルミナスは頷き微笑むと、キッとデザートデビルを見つめる。ルミナスの光の力を嫌がったのか、デザートデビルは凄まじい雄叫びを上げると、ルミナス目掛け攻撃を開始する。巨体から繰り出されるパンチを、懸命にかわすルミナスだが、衝撃波だけで身体が飛ばされそうになる。バリアを張り、衝撃波に懸命に堪えるルミナス、デザートデビルは、ルミナスの張ったバリアを、お構い無しで攻撃し続ける。ルミナスは必死の形相で何とか攻撃を受け続けた。

 

(な、何て力なの?このままじゃ何時か・・・)

 

 ルミナスは一旦大きく仰け反り、間合いを取った。砂漠化した地上は、足を滑らせやすく、無闇に動き回るのは、かえって危険かも知れないと悟る。

 

 デザートデビルは、両肩の蛇を操り、更なる攻撃を繰り出そうとしていた。咄嗟にルミナスは、ハーティエル・バトンを構え叫ぶ。

 

「光の意思よ、私に勇気を!希望と力を!!」

 

 ルミナスがバトンをクルクル回転すると、バトンが弓状に変形する。

 

「ルミナス!ハーティエル・アンクション!!」

 

 ルミナスは、掛け声と共に、弓状に変形したハーティエル・アンクションを、デザートデビルに向けて飛ばした。ルミナスの技を受けたデザートデビルの動きが止まる。何事が起こったのかと戸惑うデザートデビルは、更に怒りの雄叫びを上げた。

 

 その時、ルミナスの後ろから頼もしい声が届いてきた。

 

「ひかりぃ~~、無事なの!?」

 

 息を切らせながら、なぎさとほのかが到着した。ひかりがルミナスの姿なのに驚いた二人だったが、メップル、ミップル、ルルンの姿を見付け、更に驚き、

 

「メップル!?」

 

「ミップル!それにルルンも!?」

 

 なぎさとほのかは、メップル達の側に駆け寄ると、メップルは、宙に飛び上がりながら、

 

「なぎさ、遅いメポォォ!話は後メポ・・・変身メポ!!」

 

「ほのか!ルミナスを助けて欲しいミポ!!」

 

 メップルとミップルが、ハートフルコミューンに変身し、なぎさはメップルを、ほのかはミップルを受け取る。

 

「分かってる!いくよ、ほのか!!」

 

「うん!!」

 

 なぎさとほのかは、互いを見つめ頷きあうと、ハートフルコミューンに手をかざし、互いの手を取り合って同時に叫ぶ。

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

 二人の身体をオーロラが包み込み、なぎさとほのかを、プリキュアへと変えていく・・・

 

「光の使者・キュアブラック!!」

 

「光の使者・キュアホワイト!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

 なぎさとほのかは、約二年ぶりにキュアブラック、キュアホワイトに変身した。その姿からは、ジャアクキング率いるドツクゾーンとの戦いを潜り抜けてきた、歴戦の勇士の風格すら醸し出していた。

 

「ルミナス、お待たせ!」

 

「ルミナス、無事で良かったわ!あれがブラックの言ってた敵なの!?」

 

 ルミナスの前に二人が降り立ち、声を掛ける。ルミナスは、二人を見てホッとした表情になるも、直ぐに険しい表情になる。

 

「はい、あの者から感じるのは、破壊と殺戮・・・このまま放置する訳にはいきません!」

 

「そうだね、この街を、人々を滅茶苦茶にした事を、あいつに後悔させてやらなきゃね!ルミナスは、ルルンやひかるを守って!あいつは私達で止めてみる!いくよ、ホワイト!!」

 

 ブラックが、デザートデビルの顔面目掛け一気にダッシュする。成長した二人の力は、以前とは比べものにならない程強くなっていた。だが、巨大なデザートデビル相手に、ブランク空けの二人が戦えるかは未知数であった。ホワイトは、デザートデビルの足に目掛け、強烈な飛び蹴りを当てるも、さしたる手応えは感じなかった。

 

(これだけの大きな相手に、個々での攻撃じゃ効果は期待出来ないかも知れない・・・)

 

「ブラック、そっちはどう?・・・って何してるの!?」

 

 デザートデビルの両肩に居る蛇から、必死に逃げ惑っているブラックを見て、ホワイトは呆れたように突っ込む・・・

 

「だってぇ、蛇が居るなんて聞いてないよぉぉ!無理、ニョロニョロ系は、ありえな~~い!!」

 

 逃げ回るブラックを、執拗に追いかけ回す蛇の群れに、ブラックは悲鳴を上げて逃げ惑う。

 

「ブラック、何やってるメポ~!」

 

「私だって、好きで逃げてるんじゃないわよぉぉ!」

 

 ホワイトはやれやれといった表情で、ブラックを救助に向かう。突進する蛇を捌き、同士討ちにさせたり、絡ませたりしてブラックを援護する。

 

「ホ、ホワイト、ありがとう・・・よぉぉし、蛇さえ居なきゃ・・・ダァァァァ!!」

 

 蛇の群れから解放されたブラックが、再び雄叫びを上げ、デザートデビルの顔面に突進する。

 

「ダダダダダダァァァ!!!」

 

 ブラックの怒濤のパンチが、連打でデザートデビルの顔面にヒットするも、デザートデビルは五月蠅いとばかりに手で追い払い、ブラックが吹き飛ばされる。

 

「ブラック!大丈夫!?」

 

 一瞬隙の出来たホワイトに、デザートデビルの蹴りが当たる。

 

「キャァァ!」

 

 二人は砂漠に叩き付けられるが、幸いにも砂漠がクッションになり、ダメージを軽減する。

 

「やれやれ、やっぱりブランク明けで、私達身体が鈍っちゃったかな?」

 

「フフフ、そうね・・・でも!」

 

 更に蹴りを繰り出すデザートデビルの攻撃を、回転しながら躱したブラックは、ホワイトの側に降り立った。

 

「ホワイト、こうなったら一気にいこう!」

 

「そうね、持久戦じゃこっちが不利ね・・・」

 

 ブラックの言葉にホワイトも同意し、二人は手を繋ぎ合い目を瞑った・・・

 

「私達の目の前に、希望を!」

 

「私達の手の中に、希望の力を!」

 

 ホワイト、ブラックの言葉を聞き入れたように、金色の光が、ブラックとホワイトの下に集まってくる。ブラックの右手に、ホワイトの左手に、スパークルブレスが装着された。アイコンタクトした二人は、手を握りあい叫ぶ!

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア!マーブルスクリュー・・・」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出すと、

 

「「マックス~~!!」」

 

 二人の掛け声と共に、必殺技プリキュア・マーブルスクリューマックスが、デザートデビルに向けて放たれた。凄まじい稲妻のようなエネルギーが、デザートデビルに直撃するも、デザートデビルは、両腕をクロスさせ攻撃を受け止め、ちょっとずつ前に押し戻してくる。

 

「クッ、こいつ本当に強い!でも、でも、私達は・・・負けられないのよぉぉ!!」

 

「ええ、負けない!私達は、絶対に負けない!!」

 

 ブラックとホワイトの繋いだ手に、更に力が込められる。それに呼応するように、二人のスパークルブレスが発動すると、それに合わせるように、二人が再び声を揃えて叫ぶ!

 

「「スパ~~~クゥゥ!!!」」

 

 二人の掛け声と共に、稲妻は虹のエネルギーに代り、強烈な虹は、あっという間にデザートデビルを飲み込んだ。その凄まじき力を受け、デザートデビルは完全に消滅した・・・

 

「ハァ、ハァ・・・か、勝った!これで街も元に・・・!?」

 

 ブラックは肩で荒い呼吸をし、ホッとしたのも束の間、辺りを見渡し険しい表情を浮かべると、

 

「そ、そんなぁ!?敵は倒したのに・・・何で、何で砂漠のままなの?」

 

 ブラックは膝から崩れ落ち、拳を砂に叩き付け悔しがる。ホワイトも呆然とし、パートナーのメップル、ミップルも、二人に掛ける声が見当たらなかった。

 

(そんな、敵を倒しても元に戻らないなんて・・・一体どうしたら?)

 

 ルミナスも、どうしたら良いのか為す術も無く立ち尽くす。その時、ルミナスは懐かしい声を聞いた。

 

「ルミナス、虹の園が元に戻らないのは、まだ憎しみの連鎖から抜け出せて居ないからです。憎しみの連鎖を断ち切らない限り、あの敵は何度でも現れる事でしょう!今、この憎しみの連鎖を断ち切る為、あなた方と同じ戦士が立ち向かっています。今あなた方に出来る事を考えて下さい!あなた方プリキュアを、光の戦士の力を必要としている人々が、たくさん居る事を・・・」

 

 光の園の女王、クイーンの言葉を聞き、ルミナスにも大まかに今この世界が置かれている状況が分ってくる。ルミナスは、皆にクイーンの言葉を伝えた。

 

「クイーンがそんな事を・・・私達と同じ戦士が居た何て!?」

 

「そうね、でも、その人達と力を合わせれば、この世界を救える・・・そう思いたい!!」

 

 ブラックが、ホワイトが、まだ見ぬ同士に思いをよせる。

 

「不思議な事では無いメポ!メップル達は光の園で暮らしているけど、妖精の世界は沢山あるメポ!伝説の戦士プリキュア達の力を結集させれば、この状況を覆す事もきっと出来るメポ!」

 

 メップルの言葉にミップルも同意する。

 

 この状況はきっと何とか出来る・・・

 

 なら、今自分達が出来る事は・・・

 

「行こう、ホワイト!ルミナス!私達の救いを待っている人達が居るなら、その人達を助けに!!」

 

「ええ、ここで落ち込んでいても何も解決しない・・・行きましょう、ブラック!!」

 

「私も力になりたい!でも・・・」

 

 ホワイトは、ブラックの言葉に同意するも、ルミナスはひかるを見て戸惑った。

 

「そうだね、危険な所にひかるを連れて行く訳にはいかないよねぇ」

 

 ブラックは残念そうだが、ルミナスのいう事も理解出来た。まだ幼い弟一人を、こんな所に置いていく訳には行かない。ましてや、何があるかも分らない危険な場所には尚更である。

 

「ルミナス、良かったら私の家でひかるちゃんを預かるわ!幸い、家のお婆ちゃまは無事で居るし、話せば預かってくれるわ!」

 

「良いんですか?ひかる、どうする!?」

 

 ルミナスの問いかけに、ひかるは戸惑いながらも大きく頷き同意する。

 

「ひかるは良い子メポ!ポルンやルルンにも見習って欲しいくらいメポ~」

 

 メップルの言葉に、ポルンもルルンも不服そうにする。

 

 束の間の再会を喜び合う仲間達・・・

 

 そして、三人と妖精達は、慣れ親しんだ街を後にする。必ずみんなを、街を元に戻してみせると胸に秘め・・・

 

                第二話:伝説の戦士再び!

                      完

 


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