プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

136 / 136
第百三十六話:シャイニールミナスとミルキィローズ

1、希望は捨てない

 

 悪魔王ゼガンとその配下を追い、四つ葉町へと戻って来たプリキュア達だったが、四つ葉町の人々は、無残にも魔に憑依され魔物化し、その中には、ピーチ、ベリー、パインの家族も居た。魔物と化した大切な家族を、目の前で救う事が出来ず、泣き叫ぶピーチ、ベリー、パイン、パッションの精神は、崩壊寸前だった・・・

 

「「「「イヤァァァ!イヤァァァ・・・」」」」

 

 四人が力なく崩れ落ちそうになるのを、ブルームとドリームがピーチを、アクアとマリンがベリーを、ミントとレモネードがパインを、ルージュとビートがパッションを、両脇からギュッと力強く抱きしめた。自分達が側に居る事を、彼女達四人に知らしめるかのように・・・

 

 ピーチは泣きじゃくり、縋るような視線をドリームに向けながら、

 

「お、お母さんが、お父さんが・・・私、私・・・」

 

「ウン・・・」

 

 ドリームは小さく頷くと、ピーチの顔を優しく引き寄せた。今の自分達に、ピーチ達に掛ける言葉は見付からない。それでも、抱きしめずには居られなかった。

 

『ゴァァァァァラァ!』

 

 魔物と化した四つ葉町の人々が、獣のような咆哮を上げ続け、ブルーは膝から崩れ落ちると、

 

「な、何という事だ・・・僕の目の前で・・・僕はこの町の人々を救う事も出来ず・・・」

 

 ブルーは拳を強く握りしめ、不甲斐無い自分を嘆き、拳を地面に叩き続けた。

 

「「「「「神様・・・」」」」」

 

「アァァ、もう!まだ私達出ちゃ駄目なの?」

 

 ダークプリキュア5は、そんなブルーを見て困惑し、バッドエンドハッピーは、魔に憑依され兼ねない、自分達十人の闇のプリキュア達が、この場から出られず、只この状況を見るだけの状況に痺れを切らした。

 

『ゴァァァァァラァ!』

 

 そんな中、ベレルの命を受け、プリキュア達と共に四つ葉町に来ていたキャミーは、魔物と化した四つ葉町の人々が、ある言葉をさっきから発しているのに気づき、よく言葉を聞いてみると、見る見るキャミーは驚愕の表情を浮かべ、思わずピーチ達を見た。それに気付いたビートは、キャミーに話し掛けると、

 

「キャミー、どうしたの?」

 

「魔物にされたこの町の人達は、さっきから同じ言葉を喋ってるニャ・・・」

 

「「「「エッ!?」」」」

 

 キャミーの言葉に、ピーチ、ベリー、パイン、パッションは、ハッと我に返ると、一斉にキャミーを見つめ、キャミーの言葉の続きを待った。キャミーは、そんなピーチ達の視線を直視出来ず、思わず俯くと、

 

「この町の人達は・・・こう言ってるニャ・・・・・殺してって・・・」

 

 キャミーは言葉を選ぶかのように、途切れ途切れ言いにくそうにしながらも、一同に四つ葉町の人々の発して居る言葉の意味を伝えた。

 

『そんなぁぁぁぁ!?』

 

 キャミーの言葉に、傍に居たプリキュア達も呆然と呟いた。ピーチは思わずよろめき、

 

「アッ・・・アァァァァ」

 

「「ピーチ!」」

 

 ドリームとブルームが、慌てて両脇から再びピーチを必死に支えた。魔物となった自分達の現状を嘆き、必死に殺してくれと叫ぶ、魔物と化した四つ葉町の人々の切実なる声に、プリキュア達の心は悲しみに満ち溢れて居た。

 

(キャミーの言う通りだとすれば・・・)

 

 だが、只一人ブルーは、キャミーの話を聞くと、ハッとして立ち上がった。ブルーは確認するかのように、魔物と化した四つ葉町の人々を見つめ終えると、今にも精神が崩壊しかねない、ピーチ、ベリー、パイン、パッションを見つめながら叫んだ。

 

「ピーチ!ベリー!パイン!パッション!諦めるなぁぁ!!まだこの町の人々は救える!!」

 

「「「「!?」」」」

 

 ブルーの叫びに、ピーチ達四人は、一斉に縋るような視線をブルーに向けた。他のプリキュア達の視線も、一斉にブルーに注がれた。

 

「か、神様、本当ですか?」

 

 ダークドリームは、思わず側に居るブルーを仰ぎ見ると、ブルーは大きく頷き、

 

「ウン・・・僕は、魔に憑依され魔物と化したこの町の人々に、もう自我は無いと思い込んで居た。だが、キャミーの言う通りだとすれば・・・まだ、この町の人々には自我が微かに残って居る。完全に自我を失っていない今なら・・・君達プリキュアなら、この町の人々を・・・必ず救える!」

 

 ブルーはそう断言した!

 

 ブルーの言葉に、心が折れそうなプリキュア達に、再び希望の灯を灯した。ブルーは、そんなプリキュア達に念を押すように、

 

「だが、時間はない・・・何とかこの町の人々の動きを止め、少しでも魔との完全なる融合を遅らせる時間を稼がねば・・・」

 

「それは、私に任せて下さい!」

 

 ブルーにそう言って進言したのは、シャイニールミナスだった。

 

「「「「ルミナス!」」」」

 

 ピーチ達四人は、思わず縋るような視線をルミナスに向け、ルミナスも力強く頷き返し、他のプリキュアの仲間達を見渡すと、

 

「私が四つ葉町の人達の動きを止めます。皆さんは、その間にこの町の人々を浄化し、憑依した魔を祓って下さい」

 

「無茶よ・・・ルミナス、あなたもうフラフラじゃない」

 

 ローズは、そう言いながら心配そうにルミナスを見た。魔界において、カインとの戦いで受けたルミナスのダメージは大きかった。それでもルミナスは気丈に振舞い、

 

「大丈夫です。ブラックやホワイト、ムーンライトだって魔界に残って頑張ってる。私も、

三人の分まで頑張ります」

 

 ルミナスはそう言うと、自分の身を案じてくれたローズに笑みを浮かべた。

 

「そう・・・無理はしないでね?」

 

「ハイ」

 

 ルミナスは大きく頷き、ローズも小さく頷き返した。

 

 ルミナスとローズ、この二人は、他のプリキュア達とは違う共通点があった。本来ルミナスとローズは、プリキュアとはまた違う、別なる光の力を授けられた者だった。ルミナスは光の園のクイーンの命の化身で戦闘は苦手、それでもブラックとホワイトのサポートをして二人を支え、ローズは奇跡の青いバラの力で、プリキュア5の五人と同等の力を持った戦士として、闇の戦士達と戦って来た。だが、ブラックとホワイトも、プリキュア5の五人も、ルミナスとローズを、自分達と同じプリキュアの仲間だという、共通した意識を持って居た。

 

(私の中に残っている全ての力を使ってでも・・・クイーン!この町の人達を救う力を・・私に貸してぇ!!)

 

 ルミナスは、ハーティエルバトンを手に持ち身構えると、目を閉じて光の園のクイーンに祈りを捧げた。ルミナスは直ぐに目を見開き、キッと凛々しい表情を浮かべると、身体に再び力が湧き上がって来るように感じた。

 

「感じるポポ・・・暖かい光の力を感じるポポ」

 

「ルルンも感じるルル」

 

「ポルン、ルルン、あなた達の力を・・・私に貸して!」

 

 光の園の妖精であるポルンとルルンは、ルミナスから発せられる強大な光の力を感じて居た。そのルミナスの異変は、他のプリキュア達にも分かった。

 

「み、見て!ルミナスの身体が・・・」

 

 ルミナスの異変に気付いたローズが一同に知らせ、ルミナスを見たエコーは、その姿に見覚えがあった。

 

「あれは、妖精学校でソドムと戦った時の、ブラックとホワイトと同じ姿なの?」

 

 ルミナスの身体は一層光り輝き、ハーティエルバトンもまた聖なる光を放ち続けた。ルミナスの背中には、大きな光の翼が生えたかのように一同には感じられた。

 

「光の意思よ、私に勇気を!希望と力を!!」

 

 ルミナスは、バトンをクルクル回転させると、

 

「ルミナス!シャイニングゥゥ・・・アンクション!!」

 

 ルミナスが上空高くハーティエルバトンを飛ばし、両腕を上げたままハーティエルバトンを操り、ルミナスの意思を表すかのように、クルクル回転しながら四つ葉町の空を何度も周り、ハーティエルバトンから四つ葉町目掛け、光の輝きが舞い降りた。

 

「グゥゥゥ・・・な、何だ!?か、身体の動きが鈍く・・・」

 

「あ、あいつの仕業か!?お、思うように動けん?」

 

 バルログが、ザンコックが、ルミナスのシャイニングアンクションを浴びて動きが鈍った。だが、悪魔王ゼガンは一瞬不快そうな表情を見せるも、今尚瞑想を続けて居た。魔と化した四つ葉町の人々も、その光の輝きを身に受けて動きが止まるも、何処か喜びを表して居るかのようにも感じられた。

 

「調子にぃぃ・・・乗るなぁぁぁ!ウォォォォォォ!!」

 

 バルログが吠え、ルミナスが放ったシャイニングアンクションの影響下を、強引に振り解いた。

 

「ハァハァハァ・・・こ、この俺が、ここまでの力を使う羽目になるとは・・・」

 

 バルログは荒い呼吸をしながら、忌々し気にルミナスを凝視した。バルログは、小賢しいとばかりルミナスに火炎を放つも、光のオーラがバリアのようにバルログの攻撃を掻き消した。

 

「何だと!?・・・さっきから小賢しい真似をしやがってぇぇぇぇ!」

 

 バルログは、攻撃を掻き消された事で更に怒り、大きく息を吸い込むと、ルミナス目掛け、口から紅蓮の炎を吐いた。

 

(ダメ!今シャイニングアンクションを止めたら、四つ葉町の人達が・・・)

 

 だがルミナスは、険しい表情のまま、その場でバルログからの攻撃に微動だせず、両腕を上げたままシャイニングアンクションを放ち続けた。

 

「「ルミナス!」」

 

 慌ててブライトとウィンディが、ルミナスを庇うように前に出て、両手を握り合ってバリアを張り、紅蓮の炎を防ぎに掛かるも、その威力に後方に押され出した。ブルームは、ピーチの事をドリームに託すと、イーグレットにアイコンタクトを送り、両手を握り合って駆け出し、ブライトとウィンディと共に、より強固なバリアを張ってバルログの攻撃を防いだ。ローズはそれを見届けると、他の仲間達に指示を出し、

 

「ドリーム達は、ピーチ達の側に居て上げて!ブルーム達は、そのままルミナスを守ってあげて!ブロッサム達、メロディ達、ハッピー達やソードは、四つ葉町の人達を浄化して救ってあげて!魔さへ払えれば、ダークプリキュア5やバッドエンドプリキュア達も戦える。私は・・・」

 

 ローズの視線の先は、バルログを捉えて居た。ローズは駆け出すと、バルログが忌々しそうにローズを睨み付けた。ローズは戸惑う事無く、そのままバルログ目掛け加速すると、

 

「あなたの相手は・・・私よ!ハァァァ!!」

 

「小娘ぇぇぇ!」

 

 ローズの強烈な肘撃ちを、バルログが両手で防いだ。両者はパンチや蹴りなど、激しい攻防を仕掛け、ローズはバルログに押されながらも、巧みに誘導してルミナスからバルログを引き離した。

 

「みんな、今だぁぁ!」

 

 ブルーは、ゼガンは瞑想を続け、バルログをローズが抑え、ザンコックの動きが鈍い今を好機とみると、プリキュア達に合図を送った。マリンは、チラリとベリーを見ると、マリンの心に激しい闘志が湧き上がる。

 

「アクア、美希姉ぇをお願い・・・」

 

「エエ、四つ葉町の人達をお願い」

 

 アクアは頷き、まだ精神的ダメージが残るベリーを労わりながらも、マリンや他のプリキュアの仲間達に、四つ葉町の人々の事を託した。

 

「よくも美希姉ぇ達のお母さん達を・・・海より広いあたしの心も、ここらが我慢の限界だよ!ブロッサム、サンシャイン、行くよ!!」

 

「ハイ!必ず皆さんを助けましょう」

 

「ウン!魔界に残ったムーンライトの分まで、私達で四つ葉町の人達を救おう」

 

 マリン、ブロッサム、サンシャインは、素早くタクトとタンバリンを取り出すと、

 

「花よ、煌け!プリキュア!ブルーフォルテウェ~イブ!!」

 

「花よ、輝け!プリキュア!ピンクフォルテウェ~イブ!!」

 

「花よ、舞い踊れ!プリキュア!ゴールドフォルテバースト!!」

 

 マリンとブロッサムはフォルテウェーブを、サンシャインはフォルテバーストを放ち、四つ葉町の人々を浄化した。

 

「リズム、ビート、ミューズ、私達も続くよ」

 

「「「OK!メロディ」」」

 

 メロディの合図に、直ぐにリズム、ビート、ミューズが同意する。四人は素早く散ると、メロディはミラクルベルティエを、リズムはファンタスティックベルティエを、ビートはラブギターロッドを、ソウルロッドへと変化させ、ミューズはモジューレにシリーを装着した。

 

「「翔けめぐれ、トーンのリング!プリキュア!ミュージックロンド!!」」

 

 メロディとリズム、二人は呼吸を計ったかのように、互いにミュージックロンドを放ち、

 

「翔けめぐれ、トーンのリング!プリキュア!ハートフルビート・ロック!!」

 

「シ、の音符のシャイニングメロディ!プリキュア!スパークリング・・・シャワー!!」

 

 ビートはハートフルビートロックを、ミューズはスパークリングシャワーを放って、四つ葉町の人々を浄化した。

 

 ハッピーは、動きの止まった魔物の群れを悲しそうに見つめ、

 

「ゴメンね・・・今の私達には、レインボーデコルも無いから、レインボーヒーリングを使えない・・・でも、みんなの笑顔、私達が取り戻して見せるよ。みんなぁ!」

 

 ハッピーの合図に、サニー、ピース、マーチ、ビューティ、エコーが頷き、四方に散った。

 

「今、元の姿に戻して上げるからね?プリキュア!ハッピ~~・・・シャワ~~!!」

 

「プリキュア!サニーファイヤー!!」

 

「プリキュア!ピース・・・サンダー!!」

 

「プリキュア!マーチ・・シュートォォ!!」

 

「プリキュア!ビューティブリザード!!」

 

 ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティがそれぞれの技を放ち、

 

「世界に響け!みんなの想い!!プリキュア!ハートフル・エコ~~!!」

 

 エコーの叫びと共に、光輝く胸のブローチから発射された光が、四つ葉町の人々目掛け放った。

 

「この町のみんなを・・・今度こそ救ってみせる!閃け!ホーリーソ~ド!!」

 

 ソードが険しい表情を浮かべながらも、魔物と化した四つ葉町の人を救うべく、ホーリーソードを放った。

 

 プリキュア達の技を受け、四つ葉町の人々に憑依し、その肉体を奪おうとした魔の精神体の群れが、聖なる光に包まれ浄化され、次々に四つ葉町の人々が、元の姿へと戻って行った。その姿は、ピーチ、ベリー、パイン、パッションに、再び立ち上がる気力を湧き起こした。

 

「ドリーム、ルージュ、レモネード、ミント、アクア、ありがとう・・・私達は、もう大丈夫。ベリー、パイン、パッション、私達もみんなを・・・救うよ!」

 

「「「エエ!」」」

 

 ピーチの言葉に、ベリー、パイン、パッションも大きく頷いた。四人の視線に、魔物化した家族を映すと、ピーチ達は一斉に駆け出した。その力強い走りを見たプリキュア5の五人は、心の底からホッと安堵を浮かべた。

 

「もう、ピーチ達は大丈夫だね」

 

 ドリームは、仲間達に話し掛けると、

 

「エエ、なら今私達がするべき事は一つね」

 

「ハイ、ローズがあの炎の魔物を押さえてくれるなら・・・」

 

「私達は、あの大きな一つ目の巨人を止めましょう」

 

「あいつまで動き出したら・・・不味いからね」

 

 アクア、レモネード、ミント、ルージュが、今自分達がするべき事を確認するように話し、五人の視線がザンコックへと向けられた。

 

 

「お父さん、お母さん・・・今、元に戻して上げるからね・・・パッション!」

 

「エエ、救いましょう・・・私達の大切なお父さんとお母さんを」

 

 ピーチの言葉に、パッションも同意して頷いた。ピーチは、凛々しい表情を浮かべながらピーチロッドを手に取ると、

 

「悪いの、悪いの、飛んでいけ!プリキュア!ラブサンシャイン・・・フレ~~ッシュ!!」

 

「歌え!幸せのラプソディ!パッションハープ!!」

 

 パッションもまたハープを取り出し、

 

「吹き荒れよ!幸せの嵐!プリキュア!ハピネス・ハリケーン!!」

 

 ピーチとパッション、二人の技が合わさり、魔物と化した圭太郎とあゆみを包み込んだ。

 

「ママ、和希、待ってて・・・今あたしが助けるから!」

 

 ベリーの視線の先に、母レミ、弟和希が魔物と化した姿が映り、ベリーは、ベリーソードを取り出した。

 

「悪いの、悪いの、飛んでいけ!プリキュア!エスポワールシャワー・・・フレ~~ッシュ!!」

 

 ベリーが放ったエスポワールシャワー、青いスペード型の光弾が、魔物と化したレミと和希を包み込んだ。

 

「お父さん、お母さん、必ず、必ず元の姿に戻してあげるからね」

 

 パインの瞳にジワリと涙が滲むも、パインは指で涙を拭いさると、パインフルートを手に持った。

 

「悪いの、悪いの、飛んでいけ!プリキュア!ヒーリングプレアー・・・フレ~~ッシュ!!」

 

 パインが放った黄色いダイヤ型の光弾が、魔物と化した正と尚子を包み込んだ。ピーチ、ベリー、パイン、パッションの技を受け、四人の大切な家族も元の姿を取り戻した。その姿を、涙交じりに見ていたピーチ達四人は、堪えきれないように大粒の涙を流しながら、大切な家族に抱き付いた。

 

「「お父さん!お母さん!!」」

 

「「ラブ!せっちゃん!」」

 

「ママァァ!和希ぃぃ!良かった・・・本当に・・・」

 

「姉さん!?」

 

「まぁ、美希!?泣いたりしてどうしたの?」

 

「もう、ママ・・・覚えて無いの?」

 

「エッ!?そう言われると、怪物が現われて・・・」

 

「お父さん!お母さん!」

 

「「祈里!」」

 

 泣きじゃくるピーチ達四人を、四人の家族は慈愛の表情で受け止め、その頭を撫でながら優しく労わった。ルミナスは、四つ葉町の人々が、魔の憑依から解放されたのを見届けると、張り詰めていた糸が切れたかのように、

 

「ま、間に合って、良かった・・・」

 

 ルミナスはホッと安堵してその場にしゃがみ込み、ルミナスが発して居た光の翼は消え失せた。

 

(クイーン・・・ありがとう)

 

 ルミナスは、今無意識の内に開放した光の力を、クイーンが授けてくれたと思い、心の中でクイーンに感謝の言葉を述べた。ブルームとイーグレットは、そんなルミナスの前に移動すると、

 

「ルミナス、お疲れ様」

 

「少し休んでて」

 

「ハイ」

 

 ブルームとイーグレットに称えられ、ルミナスは二人にニッコリ笑んだ。バルログは、魑魅魍魎達を浄化されるという大失態を犯した事で、怯えるようにゼガンの様子を横目で確認するも、ゼガンはまだ瞑想を終えては居なかった。

 

「お、おのれぇぇ!亡者共をよくもぉぉぉぉ!!」

 

「それはこっちのセリフよ!よくもこの町の人達を!!」

 

 バルログの身体から、怒りを表すかのように炎が噴き出し、ローズも険しい表情を浮かべると、両者が激しく交差した。

 

「キャァァァ!」

 

 ローズは吹き飛ばされるも、空中で態勢を整えると地上に着地し、ミルキィパレットを手に持った。

 

「これでも受けてみなさい!邪悪な力を包み込む、バラの吹雪を咲かせましょう!ミルキィローズ・ブリザード!!」

 

 ローズの攻撃は、青い薔薇の花吹雪となってバルログ目掛け飛んで行くも、

 

「フン!小賢しい!!」

 

 バルログは、大きく息を吸い込むと口から紅蓮の炎を吐いて、ミルキィローズブリザードを掻き消した。更にその勢いのままローズ目掛け紅蓮の炎が迫り、ローズは、バルログの攻撃をジャンプして躱すも、その動きをバルログは予見し、更に紅蓮の炎をローズ目掛け放った。

 

「しまった!?」

 

 ローズは、無駄だとは思いながらも、ミルキィパレットを盾代わりにするかのように前に出すも、バルログの攻撃はローズ目掛け届く事は無かった。何故なら、ローズの危機を見たルミナスは、疲労が残る身体で駆け、バリアを張ってローズの身を守って居た。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ルミナス!ありがとう」

 

 着地したローズは、ルミナスと並び立ち互いに笑みを浮かべると、二人はキッとバルログを睨み付け、バルログも二人を睨み返した。そんなルミナスとローズを心配したのか、黒と紫の大蛇が、建物を器用に避け、地を這いながらルミナスとローズに近付いて、二人を心配そうに見つめて居た。

 

 ローズは、視線の先にナッツを見付けると、

 

「ナッツ様!力をお貸しください!!」

 

「ナツ!ミルキィローズに力を!!」

 

 ナッツは、ローズの合図を受けると頷き、ミルキィノートの力を授けた。ミルキィパレットは、ミルキィノートの力の加護を受けミルキィミラーへと変化すると、ローズは目を瞑り、バルログ達が四つ葉町の人々を苦しめた行為を思い浮かべ、激しい闘志を一層燃やしたその時、ローズの身体から先程のルミナスと同じように、強大な光が沸き起こった。ルミナスは、ハッとしてローズを見つめる中、

 

「これならどう!?邪悪な力を包み込む、煌くバラを咲かせましょう!ミルキィローズ・メタル・ブリザ~~ド!!」

 

「今度こそ黒焦げにしてやるぅぅぅ!二人纏めて死ねぇぇぇ!!」

 

 バルログは再び大きく息を吸い込み、先程以上の紅蓮の炎を吐き出した。紺色のバラの花吹雪がバルログ目掛け飛び、紅蓮の炎がそれを再び燃やし尽くすかに見えた。

 

「クッ・・・バラの吹雪は・・・こんなものでは燃え尽きないわ!ピーチ達の町を滅茶苦茶にしたあなた達に何か・・・絶対負けない!!ハァァァァァ!!!」

 

 ローズは、雄叫びと共に心の中に溢れる力を出し尽くすかのように解放した。ローズの背に巨大な光の翼のオーラが出現し、ミルキィミラーは黄金に輝きを発した。

 

「邪悪な力を包み込む、輝くバラを咲かせましょう!ミルキィローズ・シャイニング・ブリザ~~ドォォ!!」

 

「小賢しい!」

 

 バルログは再び紅蓮の炎を放つも、光り輝くバラの吹雪は、紅蓮の炎を物ともせず、バルログ目掛け飛び続けた。

 

「バ、バカな!?こ、この俺が?この俺がぁぁぁ」

 

 ローズが放ったシャイニングブリザードは、バルログを巨大な光輝く黄金のバラの形に包み込み消滅させた。

 

「やりましたね」

 

「エエ、何とかね」

 

 ルミナスに話し掛けられたローズは、ルミナスに笑み返すと、光のオーラが消え去った。

 

(今のルミナスとローズから発せられた光は一体!?)

 

 ブルーは、今ルミナスとローズが発した光の力に戸惑って居た。当のローズとルミナスは、バルログを倒した事でホッと安堵し、互いに笑みを浮かべ合ったその時、

 

「調子に・・・乗るなよ!」

 

「「シャァァァァ!」」

 

「「エッ!?」」

 

 突如野太い声が上空から聞こえ、それに気づいたのか、黒と紫の大蛇が叫んだ。ルミナスとローズが動揺した時、一つ目の巨人ザンコックは、手に持った巨大な金棒を大きく振りかぶって居た。

 

「「「「「ローズ!ルミナス!逃げてぇぇぇぇ!!」」」」」

 

 ザンコックと交戦して居たプリキュア5の五人が絶叫し、ルミナスとローズの頭上に金棒が振り下ろされた。

 

「「キャァァァァァァァ!!」」

 

 ルミナスとローズの悲鳴と、巨大な地響きと共に、ザンコックが振り下ろした金棒を上げた。その下には無残なクレーターが起き、ルミナスとローズの姿は跡形も無く消えて居た。ザンコックは金棒を肩に担ぐと、

 

「先ず・・・二匹!」

 

『ローズゥゥゥ!ルミナスゥゥゥ!!』

 

 プリキュア達が、必死に二人の名を叫ぶ絶叫が、空しく四つ葉町に響いた・・・

 

 

2、地獄門を閉じろ

 

 魔界に残ったブラック、ホワイト、ムーンライトは、シーレイン、アモン、ベレル、ニクス、リリス、ミノタウロス、オロン、アロン、バルバスと共に、地獄門を閉じるべく行動を起こそうとしていた・・・

 

「じゃあ、私達は反対側の扉を閉めればいいんだよねぇ?」

 

 ブラックの視線が、反対側の開かれた扉を見つめた。禍々しさ漂う黒き不気味な門が、時折ブラックに圧迫感を与えてくる。ホワイトとムーンライトは小さく頷き、

 

「そのようね。でも、谷を回って行っては遠回りになるし・・・」

 

「そうね・・・私が二人を順番に、向こう側に運んだ方が良さそうね」

 

 ムーンライトは、そう言うとマントを取り出した。シーレインはゆっくり首を振ると、

 

「残念だけど、それは無理よ・・・」

 

「「「エッ!?」」」

 

 シーレインからの忠告に、ブラック、ホワイト、ムーンライトが困惑の表情を浮かべると、アモンとベレルも会話に加わり、

 

「シーレインの言う通りだ。この谷は、普段から暴風が吹き荒れていたが、今は地獄門が開かれて居る」

 

「さよう・・・地獄の暴風を直に浴びれば、貴公らの身体は、ズタズタに切り裂かれるであろう」

 

 アモンとベレルの忠告に、ブラック達三人は返す言葉無く、無言のまま地獄門が開かれた谷を見つめた。三人の言う通り、谷からは暴風が吹き荒れ、三人の助言が的を射るのを痛感した。ニクスとリリスも申し訳なさそうに、

 

「ルーシェス様の結界が施された時なら兎も角、私達でも、この谷を飛んで抜けるのは無理なの」

 

「遠回りでも谷を回るしか・・・」

 

 リリスがそう言葉を発した時、上空より凄まじい咆哮が発せられ、一同は思わず上空を見上げた。ブラックは、その声に聞き覚えがあった。ブラックは、ホワイトとムーンライトに確認するように、

 

「ねぇ、今の声って・・・バハムートだよね?」

 

「エエ・・・見て!」

 

 ホワイトが上空を指差し、その場に居た一同がその指差した位置を見上げると、一同の下に、上空から白い物体が猛スピードで近付いて来た。魔神達は、上空から急接近してきたのが竜王バハムートだと知ると戦慄した。

 

「りゅ、竜王バハムート・・・」

 

「ま、まさか、十二の魔宮が崩壊した事で結界が無くなったから、この機に乗じて私達と戦いに?」

 

 アロンとニクスが、思わぬ竜王バハムートの出現に戸惑い、自分達に戦いを仕掛けに来たのではないかと警戒した。

 

「エェェェ!?イヤだぁ、あたし怖い」

 

「お前は少し黙ってろ」

 

 バルバスが身体をくねらせながらアモンの背に隠れると、困惑気味にアモンがバルバスを黙らせた。ベレルは、心眼でバハムートを見つめるも、バハムートからは一切自分達への敵意を感じられなかった。

 

「どうやら、拙者達に敵対する意思は無いようだが・・・」

 

 それでも、ベレルにもバハムートの真意が読めず困惑して居た。上空より急降下して近付いて来たバハムートは、大きく息を吸い込むと、

 

「貴様らぁぁ!地獄門が抉じ開けられたというのに、雁首揃えて何をしているぅぅ!!」

 

『エッ!?』

 

 バハムートの予想しなかった一言に、ブラック、ホワイト、ムーンライトと、シーレイン達魔神は思わず虚を突かれた。バハムートもまた、先程からの十二の魔宮の異変を感じ、更には悪しきゼガンの気配を感じて居た。バハムートは、魔王ルーシェスが施した結界が破られ、地獄門が開かれた事を悟ると、様子を見る為にやって来た。バハムートは、そんな一同をジロリと見つめ、

 

「フン・・・さっさと地獄門を閉じるぞ」

 

「そ、それは分かってるんだけど、どうやら向こう側にある扉が光の結界だったらしくて、私達は向こう側に行きたいんだけど・・・」

 

「この谷を飛び越えるのは無理なようなの」

 

 ブラックとホワイトが、困惑気味にバハムートに現状を知らせた。バハムートはギロリと谷を睨み付け、

 

「何だ!?貴様達そんな事で戸惑って居たのか?・・・ならばそんな戸惑いは不要。プリキュア、我の背に乗れ!」

 

「「「エッ!?」」」

 

「我ならば、このような暴風を飛び越えるなど容易いわ」

 

『エッ!?』

 

 バハムートはそう言うと身体を横たわらせて、ブラック、ホワイト、ムーンライトの三人に背中に乗れと告げた。バハムートの行動に、魔神達は一斉に驚きの声を上げた。何故ならば、誇り高き竜族が同族ならば兎も角、他者に背中を預ける事など皆無だった。

 

(竜王が背を貸す何て・・・)

 

 シーレインは、呆然とバハムートが取った意外な行動を見つめた。戸惑いながらも、ブラック、ホワイト、ムーンライトの三人は、バハムートの背に乗ると、バハムートは思わず一万年前の事を思い出して居た。自ら認めた存在であるキュアマジシャンの事を・・・

 

「ククク、あの時を思い出す・・・我は少々荒っぽいぞ。プリキュア達よ、振り落とされないように、しっかり我が背に捕まって居れ」

 

「「「エエ」」」

 

 三人は体勢を低くしてバハムートの背にしがみ付いた。バハムートの背中は大きく、その肌触りは毛布のようだった。バハムートは上体を起こすと、魔神達をギロリと見つめ、

 

「こっちの半分の扉は、お前達で閉じろ」

 

「言われるまでもない・・・我らに任せて貰おう」

 

 バハムートの言葉に、腕組みしたアモンが力強く返答し、バハムートは背中の翼をゆっくり羽ばたかせると、ブラックは安堵の表情でホワイトとムーンライトに話し掛けた。

 

「バハムートが来てくれて助かったねぇ?」

 

「エエ、でも四つ葉町の方が気掛かりだわ」

 

「地獄門を早く閉じて、私達も直ぐに戻りましょう」

 

「フン・・・行くぞ!」

 

 バハムートは背中の翼を更に速く羽ばたかせると、その巨体が宙に浮かび上がり、一気に反対側の扉を目指して飛び立った。抉じ開けられた地獄門から、容赦なく暴風がバハムート目掛け暴風が吹き荒れるも、バハムートは言葉通り、まるで涼風の中を飛ぶかのようだった。

 

(ルミナス!?)

 

 ブラックは、一瞬ルミナスの事が頭に過ぎった。突如思考が停止したかのようなブラックに、ホワイトが気づき話し掛けた。

 

「ブラック、どうしたの?」

 

「ウウン、何か向こうに居るルミナスの事が気になって・・・」

 

「そうね・・・大分疲れて居たようだし」

 

 ホワイトもブラックに同意し、ルミナスの身を案じた。ブラックは、話題を逸らすかのように、ムーンライトに話し掛け、

 

「いやぁ、私達カインと戦う前に、また時の狭間に飛ばされちゃってさぁ・・・ねぇ、ホワイト?」

 

「ウン」

 

「エッ!?」

 

 ブラックの話にホワイトも頷き、ムーンライトは思わず驚きの声を発した。ブラックは更に話しを続け、

 

「私とホワイトは、どうやら二年後の世界に飛ばされて、そこでエール達HUGっとプリキュアのみんなと、私達成り行きで一緒に戦ったりしたんだけど、その前に飛ばされた時の狭間で、私とホワイトは、また色々不思議な体験しちゃってさ」

 

「不思議な体験?」

 

「ウン。私とホワイトを含むもう一組のみんなを何度か見たんだけど、その中には・・・ダークプリキュアや見慣れないプリキュアも、大勢居たんだよねぇ」

 

「エッ!?ダークプリキュアが?」

 

 ムーンライトは、ブラックが見たというダークプリキュアの話を聞き、思わず脳裏にダークプリキュアの容姿を思い描いていた。宿敵として出会い戦い、そして、自分の妹同然の存在となったダークプリキュアの事を・・・

 

「そう・・・別の世界の話かも知れないけど・・・そんな世界があるのね」

 

 ムーンライトは、口元に笑みを浮かべるも、バロムとの戦いで共闘し、再び光の粒子となって消え去ったダークプリキュアの事を思うと、フと寂しさも生まれた。それでも、ダークプリキュアと共に戦う世界があるのなら、それは自分にとっても嬉しい事のように感じた。ブラックは、更に話を続け、

 

「何となく、ブルースカイ王国のヒメルダ姫や、魔法界のリコちゃんに似たプリキュアが居たり、お姫様のような姿や、何か動物の耳や尻尾、触覚生やしたプリキュアも居たっけぇ。気になったのは、声しか聞こえなかったけど、グレースっていう名前のプリキュアが、何かヤバイ状況になってたようで・・・」

 

「下らない話はそこまでだ・・・見ろ!」

 

 ブラックは、その時を思い出しながら話を続けるも、バハムートの一言がブラックを黙らせ、ホワイトとムーンライトに緊張感を与えた。

 

 竜王バハムートは背中の羽を羽ばたかせながらその場に停止すると、ブラック達三人に下を見ろと促した。言われるまま下を覗き込んだ三人は、大きく開け広げられた巨大な地獄門の半扉を見た。半扉には、何かの模様が描かれているようであったが、それが何を意味するかまではブラック達には分からなかった。

 

「あれが・・・地獄門の半分の扉」

 

「あの扉に私達の技を放ち・・・」

 

「光の封印を施せば良いのね?」

 

「そういう事だ・・・お前達だけで出来るか?」

 

「「「エエ!」」」

 

 ブラック、ホワイト、ムーンライトが力強く頷き、バハムートは再び口元に笑みを浮かべた。バハムートは当初、自分一人ででもホーリーブレスを放って、地獄門の半扉を封じる気でここまで来たが、ブラック、ホワイト、ムーンライトの三人を見た時、三人に託してみたい気持ちが芽生えて居た。バハムートは両手で水をすくうかのように、手柄(てび)杓(しゃく)するようにさせると、

 

「プリキュアよ、わが手に移れ。背からでは体勢が安定しまい」

 

 ブラック達三人は、バハムートの忠告に素直に頷くと、バハムートの背から飛び降り両手に移動した。ブラックは、ちょっと困惑気味にバハムートの顔を見上げると、

 

「絶対・・・落とさないでね?」

 

 ブラックの確認に思わずバハムートは笑い出し、

 

「フハハハハ!安心しろ、どんな事が起きようと、この手は離さん」

 

 ブラックはホッと安堵の吐息をして、思わずホワイトとムーンライトが苦笑するも、三人は直ぐにキッと表情を引き締め、地獄門の開かれた半扉を見た。

 

「合宿の時はまだ未完成だったけど・・・いくよ、ホワイト、ムーンライト」

 

「「エエ」」

 

 ブラックの合図に、ホワイトとムーンライトが力強く頷いた。ブラックとホワイトは、バハムートの巨大な掌の中で、背中合わせにしゃがみながら構えると、二人の後方でムーンライトがムーンタクトを取り出し、ムーンタクトを前方に向けながら両手を付き出した。

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

 ブラックとホワイトは、激しい風に靡かれた髪を物ともせず、黒と白の雷をその身に受けると、二人の身体が虹色に包まれた。ブラックは右手、ホワイトは左手でムーンタクトを掴むと、ムーンタクトが虹色の輝きを発し始めた。

 

「「「ハァァァァァァァ!」」」

 

 ブラック、ホワイト、ムーンライトが雄叫びを上げると、バハムートは思わず唸り、

 

「グゥゥゥゥ・・・凄まじい光の力を感じる」

 

 その間にも虹色の輝きは増していき、バハムートが思わず目を背ける程、三人の身体が一層虹色の光を放ち始めた。

 

「「「プリキュア!エクスクラメーション!!」」」

 

 三人の叫びと共に、ムーンタクトから目映い光が一気に解放され、地獄門の開かれた半分の扉に、凄まじい閃光が直撃した。その威力に、一気に地獄門の半分の扉が轟音と共に閉じられた。

 

「オォォォォ!?これ程の威力とは・・・」

 

 バハムートは、思わず目を見開いて驚きの声を上げ、三人の実力を目の当たりにした。ブラックは、ホッと安堵した表情をみせ、笑顔でホワイトとムーンライトに話し掛けた。

 

「成功したね」

 

「ウン。上手く行って良かった」

 

「以前は、今ほどの威力じゃ無かったから連射は出来ても、コントロールするのも大変だったわね」

 

 三人は、閉じられた半分の地獄門を見て安堵した。その轟音は、反対側に居たシーレイン達にも轟いていた。

 

「どうやら、プリキュア達と竜王があちらの扉を閉じてくれたようね」

 

「ウム、では俺達も始めよう」

 

 シーレインの言葉にアモンも同意し、二人の視線が他の魔神達に向けられた。崖の側まで近づいたシーレイン、アモン、ベレル、ニクス、リリス、ミノタウロス兄、アロン、オロン、そしてバルバスの9人が眼下に見える地獄門の半分を見下ろした。

 

「いくぞぉぉぉ!」

 

 アモンの号令の下、魔神達が一斉に地獄門目掛け技を放つと、地獄門に衝撃音が響き渡った。

 

 だが・・・

 

「ヌゥゥゥゥ!?これだけの技を一斉に受け、ビクともせぬとは・・・」

 

 思わずベレルが動揺し、アモンは困惑の表情を浮かべながらも一同に檄を飛ばし、

 

「クッ・・・もっと力を込めるぞぉぉ!」

 

『ハァァァァァァァァ!』

 

 魔神達は、より一層気合を込めるも、地獄門が閉じる事は無かった。そんな魔神達の姿を、岩場に隠れながらほくそ笑んで見つめる者が居た。

 

(オ~ホホホホ、カインさんとアベルさん、宝瓶宮の魔神だったバルガンさんが居ない今、十二の魔神として機能されていないあなた方の力だけでは、闇の封印など出来る訳ありませんよねぇ?オ~ホホホホ)

 

 動揺する魔神達を愉快そうに覗いて居たのは、魔界の予言者を自称するモグロスだった。モグロスは、扉が閉じず動揺する魔神達を、愉快そうに眺め続け、

 

「わたくしが力を貸せば済む話何ですけど、それじゃあ面白くありませんからねぇ」

 

 モグロスは、バハムートが戻って来たのを見ると、口元をニヤリとさせた。

 

「貴様らぁ、雁首揃えて何をしておる!プリキュア達は我の力を借りずとも、たった三人で扉を閉めたというのに、貴様らの何と不甲斐無い事か・・・恥を知れぇぇぇ!!」

 

 バハムートの一喝を受けるも、魔神達に返す言葉は無かった。

 

「バ、バハムート、そう怒鳴らなくても」

 

「みんなも頑張ってくれてるし」

 

「エエ、もう少し様子を見ましょう」

 

 戻って来たバハムートは、烈火の如く怒りを露わにして、魔神達を怒鳴り付け、ブラック、ホワイト、ムーンライトが魔神達をフォローした。アモンは不甲斐無い自分達の姿に思わず唸り、

 

「グゥゥゥゥ・・・ま、まさか、俺達だけでは力が足りぬとは・・・」

 

「それでも、何とかしなきゃ・・・」

 

「エエ、プリキュア達がせっかく施してくれた光の封印が、無に喫してしまう事だけは・・・」

 

 必死の表情のニクスとリリスは、自分を奮い立たすように発した。魔神達は、雄叫びを上げ、残った力の全てをぶつけようと試みるも、地獄門が閉じる事は無かった。

 

「どうやら、限界のようですねぇ・・・ですが」

 

 モグロスは、魔神達の力の限界を見抜くも、何故か背後の上空を振り返った。

 

(ルーシェス様・・・も、申し訳ありません)

 

 シーレインは力を使い果たし、今にも倒れそうな自分を恥じ、心の中でルーシェスに謝罪したその時、

 

「みんな・・・よく持ち堪えてくれたね。ハッ!」

 

 突如上空から声が聞こえたかと思うと、上空からの掛け声と共に、あれだけビクともしなかった闇の結界の地獄門が、轟音と共に閉じられ、地獄門に光と闇の二重の五芒星のマークが浮かび上がると、地獄から轟いていた呻き声が全く聞こえなくなっていた。魔神達は、今自分達に掛けた声を聞き、思わずハッとした。

 

「い、今の声は!?」

 

「ま、間違いござらん・・・我らが王」

 

 シーレインが、ベレルが、そして残りの魔神達が、

 

『ルーシェス様ぁぁぁ!』

 

 魔神達が一斉に声がした上空を見上げ、バハムートとブラック達も見上げた。そこには、背中から片側五枚ずつ、計十枚の黒い翼を生やした全身黒い少年の姿があった・・・

 

「ルーシェス・・・様!?」

 

 シーレインは、容姿だけ見れば確かに魔王ルーシェスそのままだが、全身が黒い姿に驚きを隠せなかった。

 

       第百三十六話:シャイニールミナスとミルキィローズ

                   完




 第百三十六話投稿致しましたが、気付けば前話を投稿してから11か月経ってたようです。しかも、ハードな展開で放置したままになってしまいました。
 楽しみにしていらっしゃった方がいらっしゃいましたら、大変遅くなり申し訳ありませんでした。
 次回は、ルミナスとローズの安否は、ザンコックを倒す事は出来るのか、沈黙を守るゼガンは何時動き出すのか?魔王はどうなってしまったのか?などの予定です。
 現状としましては、夏の脳検診で血管が1.5ミリぐらい膨らんで居ると言われ、経過観察になり、MRIの検査も年1回だったのが年2回になりましたが、休みの日は25キロ前後歩くぐらいは元気です。元気ですが、その分小説はほとんど書かなくなってしまいました。ちょっとずつは書いておりますが、遅筆だったのが超遅筆になってしまいました・・・

 プリキュアもスタプリが終わり、ヒープリが始まり、もう最終クールに突入してしまいました。ヒープリはコロナ禍の影響で中断もあったりしましたが、大好きなプリキュアの一つです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。