プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第百三十五話:悪魔王ゼガン

1、 悪魔王ゼガン、四つ葉町強襲

 

 嘗て魔界を支配し者、悪魔王ゼガンが遂に復活した!

 

 ゼガンの禍々しい姿は、頭部正面に一本角を生やした巨大なカインの顔、左側に二本の角を生やした巨大なアベルの顔、右側に三本角を生やした巨大なソドムの顔、全身を固い針金のような焦げ茶色の毛で覆い、腹部には牙の生えた巨大な口が蠢いていた。大きく両腕を広げると、蝙蝠のような巨大な羽が露になり、ゼガンの禍々しさをより一層際立てていた。

 

 復活した悪魔王ゼガンの圧倒的威圧感は、魔界全土を恐怖に包み込もうとしていた・・・

 

 

 魔王とルーシェスも、遂に復活したゼガンの禍々しい気を感じて居た・・・

 

 ルーシェスは、ゼガン復活を察知すると、険しい表情を浮かべた。

 

(遂に復活してしまったか・・・)

 

「オイ!この禍々しい気が、お前の言ってるゼガンカゲ?」

 

「そう・・・もう時間がない。今話した通り、君は僕の影から生まれた存在何だ。君に記憶が無いのも、何れは僕と一つになる筈だったから・・・でも、君には自我が芽生えてしまった」

 

 ルーシェスはそう言うと、魔王の瞳をジィと見つめた。魔王もルーシェスの瞳を見つめ返し、両者の間に暫しの沈黙が流れた。ルーシェスは、そんな魔王を見て少し口元に笑みを浮かべると、

 

「単刀直入に聞くよ・・・ゼガンが復活した今、君が大切に思っているプリキュア達もどうなるか・・・魔王、君はどうしたい?」

 

「俺は・・・」

 

 魔王は、何かを決意し、ルーシェスの問いに答え始めた・・・

 

 

 悪魔王ゼガンの禍々しい気を受けたプリキュア達も、魔神と呼ばれる者達も、蛇に睨まれた蛙になったかのように、身動き出来ず、その姿を凝視する事しか出来なかった。三つ顔の悪鬼ゼガンは、まるで三つの顔が、同じ意思を持って居るかのように同時に喋り出し、

 

「「「フハハハハハ!礼を言うぞプリキュア共、忌々しき封印より我は目覚めた!!そして、我が配下達もなぁ・・・」」」

 

『ゼガン様ぁぁぁぁぁ!!!』

 

 抉じ開けられた地獄門の下から、無数のゼガンを称える声が聞こえてくる。ブラックは、恐怖心を飲み込むように生唾を飲み込むと、ゼガンに対し気丈に話し掛けた。

 

「あんた、またこの魔界を滅茶苦茶にする気なの?」

 

「「「魔界か?・・・フハハハハ、ルーシェスの居らぬ魔界など、バハムートさへ警戒して居れば、何時でも取り戻す事は出来る。それより我は、中々面白い余興を思い付いてなぁ・・・」」」

 

「余興ですって?」

 

 ホワイトは、ゼガンの語る余興という言葉に引っ掛かりを覚えた。何を企んで居るのか分からず、一層の警戒心を深めた。ゼガンは、三つの顔でプリキュア達を一人一人見つめると、見つめられたプリキュア達は、ゾっと鳥肌が立った。

 

「「「そうだ。プリキュア共よ、我がお前達が此処に来られるよう、人間界と魔界を繋ぐゲートを開いたのは知って居るな?」」」

 

「当然よ!それを利用して、こうして私達は魔界に来たのだから」

 

 ゼガンの問いに、パッションが答えた。カインの策を利用し、アカルンの力を解放し、プリキュアの仲間達と共にこの魔界に乗り込んで来た。ゼガンは含み笑いを浮かべ、

 

「「「ククク・・・だったら、逆も可能だとは思わんか?」」」

 

『エッ!?』

 

 ゼガンの問い掛けに、プリキュア達は何の事か分からず虚を突かれた。ゼガンは、そんなプリキュア達を愉快そうに眺めながら、

 

「「「我と、我が腹心であるザンコックとバルログ、他に数名の配下の者は、ルーシェスによって肉体のまま地獄へと封じられたが、その他の我が配下のほとんどは、戦いに敗れて肉体を失って居てなぁ・・・人間界には、我が配下共の新たなる肉体となる糧が、ウヨウヨしておるとは思わんか?」」」

 

「な、何を言っているの?そんな事・・・」

 

 ムーンライトの脳裏に、ゼガンは人間を、配下の魔物達の餌にしようと考えて居るのではと考え、思わずゾッした。だが、ベレルの考えは違っていた。

 

「ゼガン!お主まさか、人間共の肉体に、地獄に堕ちた亡者共を憑依させようと?させんぞぉぉ!」

 

『エッ!?』

 

「「「ま、まさか!?」」」

 

 ベレルは、ゼガンの企みに気付き、思わず刀の柄を握りしめた。プリキュア達は、ベレルの発した言葉の意味が、最初はよく分からなかった。だが、ホワイトやムーンライト、アクア達は、頭の回転を素早くさせると、ベレルの言葉の意味を理解し、そして恐怖した。ゼガンは、そんなベレルを一睨みすると、ベレルはゼガンの気に飲まれ、身動き出来なくなった。

 

「グッ・・・奴の気に飲まれたか・・・不覚」

 

「「「さて、お前達の世界と繋がって居たのは・・・確か、四つ葉町とか言ったなぁ?」」」

 

「エッ!?・・・嘘・・・でしょう?」

 

 ゼガンが四つ葉町という地名を出した時、ピーチは思わず呆然と呟き、ベリー、パイン、パッションから、思わず血の気が一斉に引いた。思わずよろめいた四人、ピーチをブラックとドリームが、ベリーをマリンとアクアが、パインをハッピーとビューティが、パッションをブライトとビートが咄嗟に支えた。

 

「「「フハハハハ!さあ我が配下達よ、我に続け!!プリキュア達の住む人間界に赴き、奴らの世界を、戦いに明け暮れる素晴らしい世界に変えようではないか」」」

 

『オォォォォォォ!!』

 

 ゼガンの考えに同調したかのように、再び地獄門の下から無数の雄叫びが響いた。

 

「「「ガァァァァァァァ!!!」」」

 

 ゼガンは満足そうに上空に向けて吠えると、曇天の空に魔法陣のような逆五芒星が描かれたゲートが浮かび上がった。

 

「「「行くぞぉぉぉ!!」」」

 

『オォォォォォ!!』

 

 ゼガンの合図に、地獄門から無数の雄叫びが響き渡り、ゼガンは巨大な蝙蝠のような羽を羽ばたかせ、上空に浮かぶゲート目掛け飛翔した。プリキュア達の目に、ゼガンの禍々しい全身が露になった。下半身も鋼のような焦げ茶色の毛に覆われ、尻尾は意思を持った黒い蛇で、大きく揺れながらプリキュア達を威嚇した。ゼガンの身体がゲートに吸収されたかのように消え失せた。

 

「行くぞ、者共!ゼガン様に続けぇぇ!!」

 

 それに続くように、新たなる魔物が地獄門から現れた。全身が青く、頭部から巨大な角を生やし、大きな金棒を右手に持った一つ目の大巨人、キュクロプス族でゼガンの腹心魔将軍ザンコックが現われた。

 

「久々に暴れてやるぜぇぇ!」

 

 ゼガンにその功を称えられ、ゼガンと同じ漆黒の翼を与えられ、身体から炎を揺らがせ、炎の悪魔と呼ばれ恐れられた魔将軍バルログが、ザンコックに続きプリキュア達の前を通り過ぎて行った。

 

『ウォォォォォォ!』

 

 二人の腹心を筆頭に、その後から、ゼガン、ザンコック、バルログを追いかけるように、猪のような頭部から、大きな二本の角を回転させながら空を駆ける獣エアーレ、双頭の大蛇アスプバエナが、ゲートへと突入し消えて行く、更に揺らめく蜃気楼のような大勢の魑魅魍魎の類が、雄叫び上げながら、我先に地獄門からゲート目掛け飛翔する。まるで目に見えない闇の道が、道標のように照らして居るかのように・・・

 

「アッ・・・アァァァァ」

 

 ゼガンの気に飲まれ動けなかったプリキュア達、ブラックは、その姿を呆然としながら見つめ、一同は皆何も出来なかった事に悔しそうな表情を浮かべていた。

 

「いかん!このままでは・・・人間界は滅びるぞ!!」

 

 アモンが・・・

 

「何とか地獄門を閉じなければ、人間界も、この魔界も終わりだわ」

 

 シーレインが・・・

 

「ムゥゥゥ・・・ザンコックやバルログまで・・・拙者達が揃って何も出来ぬとは・・・」

 

 ベレルが・・・

 

「プリキュア達よ、お前達は人間界に戻れ!」

 

 ミノタウロスが・・・

 

「地獄門は我らで何とかする」

 

 アロンが・・・

 

「ブォォォ」

 

 オロンが・・・

 

「何かヤバイ事になったわねぇ・・・」

 

 バルバスが・・・

 

「ゼガンを・・・お願い」

 

 ニクスが・・・

 

 そして、リリスもプリキュア達に何か声を掛けようとした時、リリスの心に話し掛ける者が居た。

 

(あなた方だけでは、とても地獄門を閉じる事は不可能ですねぇ・・・)

 

「誰!?」

 

 リリスは、突然心に話し掛けられ、思わず声を発した。シーレインは、そんなリリスを訝りながら声を掛け、

 

「リリス、どうしました?」

 

「いえ、誰かが私の心に・・・」

 

(リリスさん、確かに地獄門を再び閉じる事も重要ですが、今は人間界へと向かう魑魅魍魎達を阻止する事が先決ですよ・・・オ~ホッホッホ)

 

 そうリリスに忠告を与えたのは、自らを魔界の予言者と名乗るモグロスだった。リリスは、自分の心にだけ話し掛けて来たモグロスに驚き、

 

「その笑い声はモグロス卿!?何故私に?」

 

(ハイ・・・魔界と地獄が繋がった今、七つの大罪と呼ばれし色欲の悪魔、アスモデウスの子孫であるリリスさんなら、あの魑魅魍魎達を操る事も可能かと思いまして、声を掛けさせていただきました)

 

「私に・・・出来るの!?」

 

 リリスも、自分が七つの大罪と呼ばれ、色欲の悪魔の子孫だという話を、カインから聞いて知っては居たが、一人二人なら兎も角、あの集団を操る事が出来るとは思えなかった。モグロスは、そんなリリスの不安を見通したかのように、

 

(出来なければ・・・無数の魑魅魍魎達が、肉体を求め次々とプリキュアさん達が住む人間界目掛け、群がり続ける事でしょう・・・しかし、リリスさんが魑魅魍魎達を操る事が出来れば、彼らを地獄門が閉じる間、壁として利用する事も可能だと思いますよ)

 

 モグロスの忠告を受け、リリスの中に闘志が湧き上がって来た。リリスは意を決すると、

 

「やるしかないわね・・・プリキュア!大蛇に乗って人間界に戻ってぇ!!あいつらは、私が抑える!!大蛇ぃぃ!この場に集い、プリキュア達と共に人間界に向かいなさい!!」

 

『シャァァァァァ!』

 

 リリスの叫びに共鳴したかのように、四方から大蛇達の雄叫びが聞こえ、巨体を揺らしながら七匹の大蛇達が近付いて来た。

 

「「リリス!?」」

 

 シーレインとニクスが思わずリリスを見つめ、

 

「出来るのか!?」

 

 アモンも驚きながら、あの魑魅魍魎の群れを抑えると言ったリリスを見つめた。

 

「やるしかない・・・」

 

 リリスはそう言うと、目を閉じ精神を集中させた。リリスは、何者かが自分を見ている気配を感じた。不思議と嫌悪感は無く、どこか懐かしさを感じられるかのようだった。

 

(力が・・・溢れてくる!?)

 

 リリスは、自分を何処からか見ている人物が、モグロスが言ったアスモデウスだと確信し、子孫である自分に力を貸してくれた事を感じ取った。

 

(今の私なら・・・出来る!)

 

 リリスは確信し、上空に浮かぶゲートをキッと見上げた。だが、既にゲートを通過して行った、数百にも及ぶ魑魅魍魎達を、再び地獄門に呼び戻す事は不可能だとしても、今自分の視線に映る魑魅魍魎だけは、何としても阻止しなければならないと、リリスは大きく息を吸い込み叫んだ。

 

「聞けぇ、魑魅魍魎共よ!我が名はリリス、私の命令に従いなさい・・・チャーム!!」

 

 リリスは、ゲート目掛け群がる魑魅魍魎目掛け、精神を操る技であるチャームを放った。地獄と繋がり、アスモデウスの力の加護を受けたリリスのチャームは、何時も以上の効果を上げ、ゲート目掛け飛翔して居た魑魅魍魎達の動きが止まった。リリスは、魑魅魍魎達に指示を出し、

 

「お前達、地獄門より湧き出る輩を、壁となって塞ぎなさい!」

 

『ハイ!リリス様ぁぁぁ!!』

 

 リリスの命を受け、魑魅魍魎の精神体の群れが、目をハートにしながら今這い上がって来た地獄門目掛け降下して行った。ゲートに群がっていた魑魅魍魎が居なくなった事で、リリスはそれを見ると、直ぐにプリキュア達に視線を向けて指示を出した。

 

「今よ、プリキュア!大蛇に乗ってゲートを通り、急いで人間界に戻ってぇ!!」

 

『分かった!』

 

 プリキュア達は、リリスの申し出に頷くと、大蛇目掛け駆け出した。それを見たベレルは、傍に居るキャミーを振り返り、

 

「キャミー、お主も一緒に行って力になってやれ」

 

「分かりましたニャ」

 

 赤の大蛇の上に頭の上に、ブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディが・・・

 

 紫の大蛇の頭の上には、プリキュア5とローズ、ココとナッツが・・・

 

 黄の大蛇の頭の上には、ピーチ、ベリー、パイン、パッション、シフォンとタルトが・・・

 

 青の大蛇の頭の上には、ムーンライト、ブロッサム、マリン、サンシャイン、シフレ、コフレ、ポプリが・・・

 

 茶の大蛇の頭の上には、メロディ、リズム、ビート、ミューズ、ハミィ、キャミー、フェアリートーン達が・・・

 

 緑の大蛇の頭の上には、スマイルプリキュアの六人と、ハッピーに抱かれたキャンディ、エコーに抱かれたグレル、エンエンが・・・

 

 黒の大蛇の頭の上に先ずルミナスが乗り、ブラックとホワイトも乗ろうとした時、二人の心にモグロスの声が聞こえて来た。

 

(ブラックさん、ホワイトさん、あなた方はこのまま魔界に残り、地獄門を閉じる役目に回った方が宜しいと思いますよ)

 

「「エッ!?」」

 

 突然モグロスに心の中に話し掛けられた事で、思わずブラックもホワイトも戸惑った。仲間達を見ても、どうもモグロスの声が聞こえているのは、自分達二人だけのように思われた。モグロスは話を続け、

 

(元々地獄門は、ルーシェスさんが片側ずつ地獄門に、闇と光の二重の結界で封じ込めて居ましたし、ベレルさん達闇の魔神達だけで地獄門目掛け技を放っても、仮に闇の封印の扉半分は閉じる事が出来たとしても、封印は直ぐに破られ、再び地獄門は開く事になるでしょう)

 

「どうして私とホワイトだけに、あんたは話し掛けたの!?」

 

 ブラックは、自分とホワイトだけに心の中に話し掛けたモグロスを警戒しながら問うと、モグロスはその事について語り始めた。

 

(お二人には、先程放ったような秘められた力がありそうですし、ゼガンさんを追う人数は、多い方が良いでしょうしねぇ)

 

 ホワイトは、モグロスの話に納得がいったようで小さく頷き、

 

「そういう事・・・私達のマーブルスクリューシャイニングを、もう片側の扉に放てとあなたは言っているのね?でも私とブラックは、さっきの力を何時でも出せる訳では無いわ」

 

 ホワイトが困惑気味に語ると、ブラックは、ホワイトに話かけ、

 

「ルミナスも大分疲れてるし、ルミナリオを放つのも無理だよねぇ・・・そうだ!ねぇホワイト、だったらムーンライトにも残ってもらって、三人でエクスクラメーションを放つのはどうかな!?」

 

「そうね・・・必要最低限の人数でやるなら、それしかないわね」

 

 ホワイトも同意し、二人の視線が、青の大蛇の上に居るムーンライトへと向けられた。

 

「「ムーンライト!私達と一緒に魔界に残って、地獄門を閉じるのを手伝って!!」」

 

「エッ!?」

 

 ブラックとホワイトに話し掛けられたムーンライトは、思わず困惑の表情を浮かべた。今まさに、四つ葉町目掛け進軍するゼガンの事が気に掛かっていた。ブラックとホワイトも、そんなムーンライトの思いを分かって居た。自分達も同じ気持ちなのだから。だが、今は自分達が出来る事を最優先しようと、ブラックとホワイトは、ムーンライトに魔界に残る意味を説明し始めた。

 

「どうやら、地獄門を封印するのには、闇の力だけじゃなくて、光の力も必要何だって」

 

「ゼガンを追う人数を減らさない為にも、私達のプリキュアエクスクラメーションなら、三人だけでも何とかなりそうだと思うの」

 

「そういう事・・・良いわ」

 

 ブラックとホワイトの申し出を、ムーンライトは快諾して青の大蛇から飛び降りて、ブラックとホワイトに合流した。三人は、大蛇に乗った仲間達を見渡し、

 

「みんな、私達も地獄門を閉じたら直ぐに戻るから!」

 

「私達が戻るまで、何とか持ち堪えて!」

 

「頼んだわよ!」

 

 ブラック、ホワイト、ムーンライトが、一同にゼガンとの戦いを託し、一同が力強く頷いた。ルミナスは、固い表情をしながら三人に話し掛け、

 

「ハイ、三人も気を付けて!」

 

「「「エエ」」」

 

 ピーチは、険しい表情のまま大蛇に話し掛けると、

 

「大蛇、急いで四つ葉町までお願い!」

 

『シャァァァァ!』

 

 七匹の大蛇は、分かったとばかり雄叫びを上げると、黄、赤、紫、緑、青、茶、黒の大蛇の順に、ゼガンが作り出したゲートに突入して行った。仲間達を見送ったブラックは、ブルーから貰ったあるアイテムの存在を思いだした。

 

「そうだ!神様に貰ったこのアイテムで、ソード達に知らせなきゃ」

 

 ブラックは、ブルーから貰ったペンダントを握りしめると、四つ葉町に居るブルーへと連絡を試みた・・・

 

 

 四つ葉町・・・

 

 四つ葉町公園に移動したソード、ダークプリキュア5、ブルー、シロップ達、ソードは、プリキュアの仲間達の無事を祈り、空を見上げていると、突然空に魔法陣が現われ、異様な逆五芒星のマークが浮かび上がった。ソードは一同に知らせるように空を指差しながら、

 

「見て下さい!な、何なの!?あれは一体?」

 

「エッ!?何かしら・・・凄く嫌な感じがするわ」

 

 ダークドリームも表情を顰めながら、空に浮かぶ魔法陣を見て呟いた。ブルーが表情を険しくしたその時だった。

 

「神様、聞こえますか?神様?」

 

「その声は・・・なぎさ!無事で良かった」

 

「ハイ!無事っていうか・・・何か色々ヤバイ事になってて・・・」

 

 ブラックは、ホワイトやムーンライトにフォローされながら、魔界で起こった出来事を、ブルーやソード達に知らせた。見る見るソードの顔は青ざめ、

 

「そんな!?悪魔王ゼガンがこの町に?私達だけで、そんな者達と戦う何て・・・」

 

 ブラックは、ソードの不安を感じると、気休めかも知れないと思いながらも励ますように、

 

「直ぐにみんなが後を追ったから、ソード、ダークプリキュア5、お願い!みんなが来るまで何とか持ち堪えて!!私達も、地獄門を閉じたら直ぐ戻るから」

 

 ブラックからの通信は、そう言うと途絶えた。その間にも、魔法陣のゲートから漂う圧倒的な威圧感は増し続け、遂にゲートから巨大な足がゆっくり姿を現した。

 

「みんなぁ!悪魔王ゼガンが・・・来る!!」

 

 ブルーが叫び、ソードとダークプリキュア5が見上げたゲートから、悪魔王ゼガンがゆっくりとその全貌を露にした。その禍々しい姿を見た者は、恐怖に顔が引き攣り、思わず絶叫せずには居られなかった。

 

『キャァァァァ!』

 

「ウワァァァ!バ、化け物だぁぁ!!」

 

 ゼガンを見た四つ葉町の人々が、慌てて逃げ始める。それは未知なる生物に恐怖する、人としての本能かも知れなかった。ゼガンは薄ら笑いを浮かべると、そんな逃げ惑う人々に、逃げる事は出来ないとばかり、直接心に語り出した。

 

「聞けぇぇ、人間共!我が名はゼガン!悪魔王ゼガン!!この世界に災いをもたらす者なり!!」

 

 悪魔王ゼガンの叫びが、ソード達に、四つ葉町の人々に轟いた!

 

 

2、 ソードの危機

 

 突如現れた巨大な怪物悪魔王ゼガン、更にザンコックやバルログなど、続々と怪物が姿を現し、四つ葉町の人々は益々パニックになっていた。悲鳴があちらこちらから沸き起こり、車のクラクションの音が木霊し続けた。ブルーは、険しい表情で顔から冷や汗を流しながら、

 

「何という禍々しい気を放つんだ・・・」

 

 ブルーは、ゼガンから放たれる禍々しい気に戸惑いを見せた。嘗て戦った大いなる闇の軍勢ともまた違う、邪悪なる気を間近で感じ焦りを感じて居た。ダークドリームは、ゼガンの軍勢を険しい表情で睨むと、ブルーに進言を始めた。

 

「神様、私達はソードと共に、悪魔王ゼガンと戦いに行きます。いいわね、みんな?」

 

「「「「もちろん!」」」」

 

「ハ、ハイ・・・」

 

 ダークドリームの問い掛けに、仲間達は二つ返事で承諾し、ソードは緊張気味ながらも同意した。だが、ブルーは慌てて彼女達に話し掛け、

 

「君達六人だけでは無茶だ!」

 

「そうかも知れません・・・それでもやるしかない」

 

 ダークミントが・・・

 

「ブラックも、みんなも直ぐ戻って来るって言ってたし」

 

 ダークサニーが・・・

 

「私達とソードで、何とか時間を稼ぎます」

 

 ダークレモネードが・・・

 

「それに・・・私達の妹達もきっと駆け付けてくれるわ」

 

 ダークアクアは、そう言うと宙を見つめた。ブルーはハッとした表情を浮かべると、

 

「妹達!?ひょっとして、バッドエンドプリキュア達の事かい?」

 

「「「「「ハイ!」」」」」

 

「エェェ!?」

 

 ダークプリキュア5は、バッドエンドプリキュア達を妹同然に思って居た。そんな妹達なら、このゼガン軍団が発する禍々しい気を感じれば、きっとこの場に駆け付けてくれる事を信じて居た。それとは逆に、ソードは、思わず頭の中にバッドエンドピースの顔を思い浮かべると、思わず顔を顰めた。ダークドリームは、ブルーに話し掛け、

 

「生まれた場所も違うけど、私達と同じように、闇から生まれた妹達なら必ず・・・」

 

 ダークドリームは、そう言いながら少し穏やかな表情を浮かべた。直ぐに表情を引き締めると、

 

「みんな、行くわよ?」

 

「「「「「エエ!」」」」」

 

 ダークドリームの合図に、ダークルージュ、ダークレモネード、ダークミント、ダークアクア、ソードが返事を返し、ゼガン率いる軍団目掛け駆け出した。ブルーは、そんな六人の後姿を見つめながら、

 

「すまない・・・僕には君達と共に戦う力が無い。もう直ぐみんな戻って来る・・・無茶はしないでくれ」

 

 ブルーは、無力な自分に嘆きながらも、ソードとダ-クプリキュア5の無事を祈る事しか出来なかった。ゼガンは、そんな彼女達の存在に目もくれず、腕組みするとザンコックとバルログに指示を始めた。

 

「ザンコック、バルログよ、我はこれより瞑想を行い、人間界の様子を窺う。後の事は任せて良いな?」

 

「「ハ・・・ハハァァ」」

 

 ゼガンにジロリと睨まれ、思わずザンコックとバルログは、片膝付いて畏まった。ゼガンは頷き、三つの顔に付く六つの目を閉じると、人間界の様子を探る為に瞑想を始めた。立ち上がったザンコックとバルログからは、何故か焦りが見受けられた。

 

「バルログ、急いでこの町の者共を、亡者達の肉体に変えねば・・・」

 

「ウム、ゼガン様が瞑想を終わられる前に片を付けねば・・・」

 

「「我らの身が危うい!」」

 

 ザンコックとバルログは、ゼガンの性格を熟知していた。ゼガンの意に添わぬ者、ゼガンの命を実行出来なかった者達の末路を、嫌という程自分達の目で見て居た。バルログはゲートを仰ぎ見ると、中々人間界にやって来ない魑魅魍魎達に苛立ちを覚えた。

 

「遅い!奴らは何をモタモタしてやがる・・・ン!?何だ、貴様ら?」

 

 バルログは、自分達目掛け駆け寄って来る六つの影に気付くと、忌々し気に問いかけた。六人を代表するかのように、ダークドリームは宙に飛ぶと、

 

「ピーチ達に託されたこの町を、あなた達の好きにはさせないわ!プリキュア!ダークネス・・・スター!!」

 

 黒き流星が、バルログ目掛け急降下するも、その行く手を遮るかのように、空を駆ける獣エアーレと、双頭の大蛇アスプバエナが立ち塞がった。ダークドリームを援護するかのように、ソードもまた宙に飛ぶと、

 

「援護します。閃け!ホーリーソ~ド!!」

 

 ソードはホーリーソードを放ち、右手から無数の剣の形をしたエネルギー弾を飛ばし、二体の魔物を牽制するも、エアーレは頭部の二本の角を回転させると、まるで前方にバリアを張って居るかのように、ホーリーソードを次々と弾き飛ばして消滅させて行った。ザンコックは、六人のプリキュアを見て舌打ちすると、

 

「チッ、邪魔者共めがぁ!エアーレ、アスプバエナ、その目障りな奴らを血祭りに挙げろ!!」

 

 ザンコックの命を受け、奇声を上げたエアーレとアスプバエナが、六人のプリキュアに対して攻撃を始めた。アスプバエナは、その蛇のような身体を上手く使って、ソードとダークプリキュア5を分断すると、待ってましたとばかり、ソードに狙いを絞ったエアーレが、頭部の二本の角を回転させてソードに執拗に体当たりを試みた。

 

「キャァ!」

 

 ソードは、猪突猛進に突っ込んで来るエアーレの体当たりを辛うじて躱すも、直ぐに態勢を直したエアーレは、何度もソード目掛け体当たりを試みた。

 

「調子にのらないで!閃け!ホーリーソ~ド!!」

 

 ソードは、再びホーリーソードをエアーレ目掛け放つも、エアーレは先程同様頭部の二本の角を回転させて前方にバリアを張り、ホーリーソードを弾き返しながら尚も突進して来た。

 

「ホーリーソードが・・・」

 

 ソードは、ホーリーソードを弾き返されて動揺し、突進する度にスピードが上がるエアーレに、次第に追い詰められて行った。必死に躱し続けるソードに気付き、ダークプリキュア5達もソードの援護に向かおうとするも、その都度アスプバエナが五人の前に立ち塞がり、行く手を遮った。躱し続けて居たソードだったが、バランスを崩した隙を逃さず、エアーレはその勢いで突進し、ソードを上空に弾き飛ばした。

 

「キャァァァァ!」

 

 ソードは、悲鳴を上げながら弾き飛ばされ、ソードの落下してくる身体目掛け、エアーレは巨体を揺らしながら飛び、鋭利な二本の角でソードを刺し殺そうと迫った。

 

「「「「「ソード!」」」」」

 

 ソードの身を案じたダークプリキュア5が、ソードの名を叫んだその時・・・

 

「邪魔」

 

「エッ!?」

 

 突如ソードは何者かに蹴り飛ばされ、地上に落下したものの、エアーレの攻撃を回避する事が出来た。

 

 

3、参戦!バッドエンドプリキュア

 

 ソードは、自分を蹴り飛ばした人物を見ると、思わず頬を大きく膨らました。何故ならそこに現れたのは・・・

 

「私のパシリちゃんに、何してるのかなぁ?」

 

「バッドエンドピース!」

 

 バッドエンドピースは、エアーレとすれ違いざまに、エアーレに雷を浴びせて痺れさせた。ソードは、蹴り飛ばされた事を根に持っているのか、目でバッドエンドピースに抗議するような視線を送ると、バッドエンドピースはやれやれといった表情を浮かべ、

 

「やれやれ、助けて上げたのになぁ」

 

「助けてくれた事には礼を言うわ・・・でも、蹴り飛ばさなくてもいいでしょう?」

 

「いやぁ、蹴らなきゃ間に合わないかなぁって思って」

 

「絶対嘘よ!」

 

 ソードは、尚も頬を膨らまして抗議するも、バッドエンドピースは軽くソードに舌を出した。ホッと安堵したダークプリキュア5達に、声を掛ける者達が居た。

 

「苦戦してるね?」

 

 バッドエンドハッピーが・・・

 

「あんたらやったら、特別に手を貸したろか?」

 

 バッドエンドサニーが・・・

 

「まっ、暴れられるならそれも良いね」

 

 バッドエンドマーチが・・・

 

「禍々しい気を追って来て正解だったようね」

 

 バッドエンドビューティが、笑みを浮かべながら合流し、ソードを助けたバッドエンドピースも合流した。

 

「フフフ、来てくれると思ってたわ」

 

 ダークドリームは、思わず五人に笑みを浮かべるも、直ぐに表情を引き締め、

 

「手を貸して!他のみんなが戻って来るまで、何とか私達だけで食い止めましょう」

 

 ダークドリームに声を掛けられ、今更ながらブラック達がこの場に居ない事に気付いたバッドエンドプリキュア達、バッドエンドハッピーは、ダークドリームに確認するように話し掛け、

 

「エッ!?ハッピー達やブラック先輩達居ないの?」

 

「実は、みんなは今魔界に行ってて・・・」

 

「「「「「エェェ!?」」」」」

 

 ダークドリームから、ブラック達は魔界に乗り込んだ事を聞き、バッドエンドプリキュア達は思わず驚きの声を上げた。魔界に乗り込むのならば、アベルとは些か因縁があるバッドエンドプリキュア達も、魔界に行きたかったようで、些か不満そうな表情を浮かべた。

 

「カインって者に、この四つ葉町を魔界から攻撃されて、それを阻止する為に、みんなは魔界に乗り込んだわ。でも、状況は最悪なようで・・・」

 

 ダークドリームは、簡潔にブラック達から聞いた話を、バッドエンドプリキュア達に聞かせると、険しい表情で前方を見た。バッドエンドプリキュアの五人も、ダークドリームに釣られるように正面を見た。そこには、瞑想して沈黙しながらも無言の圧力を発するゼガン、バッドエンドプリキュア達も現れた事で、益々苛々を募らせたザンコックとバルログの姿があった。

 

「成程、禍々しい気の出所は・・・あの怪物なようね」

 

 バッドエンドビューティは、瞑想しているゼガンの姿を見た瞬間、禍々しい気を放つ存在が何なのか理解した。バッドエンドピースとバッドエンドマーチは、ゼガンの巨大な顔がアベルに似て居る事に気付き、表情を険しくした。

 

「アァァ!?あの顔アベルそっくりぃぃ!」

 

「確かに・・・だが、アベルにしては顔がデカすぎる」

 

「ブラックの話によれば・・・あれこそが、カイン、アベル、ソドムって言う者の真の姿で、悪魔王ゼガンと言うらしいわ」

 

「「「「「悪魔王ゼガン?」」」」」

 

 ダークドリームの話を聞き、バッドエンドプリキュア達はゼガンを凝視した。

 

「フゥゥン、あの怪物がアベルでもあるなら、話は簡単だよね?」

 

 バッドエンドピースが・・・

 

「アア、あいつを倒せば、あたしとピースが受けた借りも返せるってもんだ」

 

 バッドエンドマーチが・・・

 

「じゃあ、私達はゼガンと戦う?」

 

 バッドエンドハッピーが・・・

 

「せやな、一気に行ったろうやないか」

 

 バッドエンドサニーが・・・

 

「でも、用心なさい。あの者から放たれる気は尋常じゃ無いわ」

 

 バッドエンドビューティが・・・

 

 バッドエンドプリキュア達五人の心が一つになるも、直ぐにダークアクアが五人に話し掛け、

 

「それは得策じゃないわ。あのゼガンが何を考えて居るのかは分からないけど、下手に刺激してゼガンまで相手にする事になっては、今の人数では不利よ」

 

「ウン・・・私も先にあの動き回る怪物達や、指示を出すあの二体を先に倒す方が得策だと思う」

 

 ダークドリームもそう進言すると、不服そうにする仲間達を宥めたバッドエンドハッピーが小さく頷き、

 

「それもそうだね・・・みんな、ここはダークドリーム達の言う通りにしようよ」

 

「ハッピーがそう言うんやったら・・・ウチはエエで」

 

「「「分かった」」」

 

 バッドエンドサニーも同意し、バッドエンドピース、マーチ、ビューティも同意した。十人の闇のプリキュア達が横一列に並ぶと、忌々しそうにザンコックとバルログに睨み付けた。

 

「エアーレ!アスプバエナ!何をもたもたしている。さっさとそいつらを血祭りに上げろ!!」

 

 バルログの叱責を受け、エアーレとアスプバエナが左右から十人の闇のプリキュア達に攻撃を仕掛けて来た。エアーレをバッドエンドプリキュアが、アスプバエナをダークプリキュア5が迎え撃った。数度の小競り合いをした後、再び合流した両チーム、バッドエンドピースは、一同に話し掛け、

 

「ねぇねぇ、一々相手するの面倒だから、この前みたいに私達のバッドエンドバーストと、ダークプリキュア5のダークローズ何たらで、一気にあの怪物達やっつけない?」

 

「私達は構わないけど、そう上手く誘導出来るかしら?」

 

 バッドエンドピースの提案に、ダークドリームは仲間達とアイコンタクトして同意するも、ザンコック、バルログ、エアーレ、アスプバエナを、合体技で一気に倒すのは中々難しいのではないかと率直な意見を述べた。バッドエンドピースはニンマリしながら、

 

「大丈夫だよ、囮を使えば・・・」

 

『囮!?』

 

 バッドエンドピースを除いた闇のプリキュア達が一斉に首を傾げると、バッドエンドピースは、加勢にやって来たソードを手招きし、

 

「ソード!ちょっと、ちょっと」

 

「エッ!?私に何か用?」

 

 ソードは、訝りながらもバッドエンドピースの側に近付くと、バッドエンドピースはゲスイ表情を浮かべ、

 

「エイ!」

 

「エッ!?キャァァァ!」

 

 バッドエンドピースに突き飛ばされたソードは、哀れエアーレとアスプバエナの囮にされ、群れから逸れた子羊を狙うかのように、エアーレとアスプバエナが、先ずソードを餌食にしようとソード目掛けゆっくり近付いた。

 

「な、何考えてるのよぉぉぉぉ!!・・・・・エッ!?」

 

 ソードは、何かの気配を感じ、ゆっくり背後を振り返ると、エアーレが前足を何度も地面に擦り付け、アスプバエナが二つの頭から舌をチロチロ出すや、ソード目掛け襲い掛かって来た。

 

「キャァァァァァァ!」

 

 ソードは慌てて逃げ出し、そのソードを執拗に二体の魔物が追い駆けまわした。バルログとザンコックは呆れた表情を浮かべながら、

 

「何だ!?仲間割れか?」

 

「何を考えて居るのか分からん奴らだな?」

 

 バルログとザンコックは、まるで仲間を見捨てた様な行動をした闇のプリキュア達に、その真意が読めず首を傾げた。

 

「イヤァァァァァ!」

 

 ソードは、二体の魔物に追い駆けられ、悲鳴を上げながら必死に右に左に逃げ続けるも、バッドエンドピースは涼しい表情で、

 

「ソード、そっちじゃないよ・・・そっちでもない」

 

「み、見てないで・・・助けてくれても良いでしょ~~~う!」

 

「ベェェェェ!」

 

「覚えてなさいよぉぉぉぉぉ!」

 

 ソードは、舌を出して挑発するバッドエンドピース目掛け駆け寄って来ると、バッドエンドピースは、仲間達を見てニンマリしながらVサインをし、

 

「エへへ、上手く行ったよ」

 

「ウワァァァ・・・ちょっとドン引きしたかも」

 

「後でソードに謝りなさいよ?」

 

 バッドエンドハッピーとダークドリームは、ジト目でバッドエンドピースを見つめるも、バッドエンドピースは我関せずといった表情で、

 

「いいから、いいから、今だよ」

 

 バッドエンドピースの合図に頷き、十人の闇のプリキュア達が行動に移った。ダークプリキュア5は目を閉じ、精神を集中させ、

 

「「「「「我らがマスター!ダーククイーン・・・私達に力をお貸し下さい!!」」」」」

 

 そんなダークプリキュア5の心に、気高き声が聞こえてくる。

 

(親愛なるダークプリキュア5!例え離れていようと、あなた方の声は私に聞こえています!!さあ、あなた方に力を授けましょう・・・)

 

 ダークプリキュア5の頭上が輝くと、五人の手に黒いフルーレが装着される。五人は軽くフルーレを振ると、

 

「5つの闇に!」

 

「「「「希望を乗せて!」」」」

 

「「「「「プリキュア!ダーク・ローズ・エクスプロージョン!!」」」」」

 

 五人のフルーレの先端に、黒い薔薇が姿を現わした。一方のバッドエンドプリキュアも右手を合わせ、

 

「「「「「ドラゴンよ!私達に力を!!」」」」」

 

 バッドエンドプリキュア五人の思いが一つになった時、五人の身体から黒いオーラが沸き上がった。黒いオーラは竜へと代り、竜から放たれた黒い光が、バッドエンドプリキュア五人の手に注がれた。五人の手には、先端に竜の顔を象ったロッドが握られ、見る見るバッドエンドプリキュアの姿を変えていった。

 

「ダークプリンセスハッピー!」

 

「ダークプリンセスサニー!」

 

「ダークプリンセスピース!」

 

「ダークプリンセスマーチ!」

 

「ダークプリンセスビューティ!」

 

「「「「「バッドエンドプリキュア!ダークプリンセスフォーム!!」」」」」

 

 バッドエンドプリキュアが、ダークプリンセスフォームに変化すると、

 

「轟け!絶望の闇!!」

 

「「「「堕ちよ!闇の世界へ!!」」」」

 

「「「「「プリキュア!バッドエンド・バ~~スト!!!!!」」」」」

 

 巨大な闇の竜の背中に乗ったバッドエンドプリキュア達は、巨大な闇の竜の口から黒いブレスを放った。ダークプリキュア5は、嘗てと同じようにバッドエンドプリキュアと呼吸を合わせるように、

 

「「「「「ハッ!!!」」」」」

 

 五人がフルーレを前に突き出すと、フルーレから放たれた黒い薔薇が合わさり、巨大な黒薔薇となって、前方に向かって飛んでいった。ソードは目を見開いて驚き、

 

「嘘ぉぉぉぉ!?」

 

 ソードは涙目になりながらも、慌てて上空にジャンプして逃れ、バッドエンドバーストとダークローズエクスプロージョンから距離を取った。

 

 ソードが躱した事で、巨大な黒薔薇がエアーレとアスプバエナを飲み込んで動きを封じ、黒いブレスがエアーレとアスプバエナを直撃し、二体は悲鳴を上げながら消滅し、更にはザンコックとバルログ目掛けて、黒いブレスが飛んで行った。

 

「「何だと!?」」

 

 ザンコックとバルログは油断して居たものの、辛うじて攻撃を回避した。ソードは目を吊り上げて一同に抗議し、

 

「酷い!死んじゃうと思ったでしょう!!」

 

『ソードなら躱すと思ったから』

 

 苦笑気味にそうかたる九人の闇のプリキュア達に、ソードは大きく頬を膨らませた。バッドエンドピースは、そんなソードの両頬を指で押しながら、

 

「良いじゃん、二体の怪物もソードが囮なってくれたから倒せたようなもんだし・・・ねぇ?」

 

『そうそう』

 

「ウゥゥゥ・・・」

 

 十人の闇のプリキュア達に丸め込まれながらも、ソードは恨めしそうに一同を見つめた。

 

「おのれ、小娘共がぁぁぁ!」

 

「調子に乗りおってぇぇぇ!・・・ン!?ようやく来たか」

 

 ソードが無理やりされたアシストによって、闇のプリキュア達の合体技によってエアーレとアスプバエナを倒され、ザンコックとバルログが激高したその時、逆五芒星の紋章ゲートから、魑魅魍魎達が地上目掛け降下して来た。

 

 

4、魔の町

 

 ソードと十人の闇のプリキュア達は、突如現れた半透明の得体の知れない物体の群れに、皆一様に顔を顰めた。ソードは、その醜い姿を見ながら、

 

「また新手が来たの!?」

 

「でも、何か透けてない?」

 

 バッドエンドハッピーは、目を凝らして新たに現れた魔物を見つめると、魔物の群れの身体が透けて見えた。そんな魔物の群れが、逃げ惑う人々に次々触れ、一瞬人の動きが止まったその時・・・

 

『エッ!?』

 

 ソードと十人の闇のプリキュア達は、目の前の光景が信じられず、思わず驚きの声を発した。彼女達の視線の先には、あろう事か魑魅魍魎に触れられた人々が、人と動物が合わさった肉体は骨だらけの魔物、昆虫と植物が合わさった魔物、動物と植物が合わさった魔物など、突如醜い姿の怪物へと次々に変化して行ったのだから・・・

 

「な、何がどうなってんのよ?」

 

「どうして、人が怪物に!?」

 

 ダークルージュが、バッドエンドビューティが、目の前の信じられぬ光景にポツリと呟き、

 

「急いで助けなきゃ!」

 

 ダークドリームが今救出に向かおうとするも、ダークミントは右手を広げて静止した。

 

「待って!先ずは様子を見ましょう・・・ダークネスプラズマ!」

 

 ダークミントはダークネスプラズマを放ち、黒き閃光が半透明の魑魅魍魎達に輝くも、魑魅魍魎達にダメージを与える事は出来なかった。

 

(な、何というおぞましき光景何だ。あの魔物の群れに憑依された人々が、まさか魔物になるとは・・・それに、今プリキュアの攻撃がすり抜けたような・・・)

 

 ブルーはこの状況を見ると表情を歪めた。ソードと闇のプリキュア達も大いに動揺して居た。

 

「嘘!?攻撃がすり抜けちゃったよ」

 

 バッドエンドハッピーが・・・

 

「あの魔物の群れは・・・実態ではなく精神体とでもいうの?」

 

 ダークアクアが・・・

 

「じゃあ、あの実体化した怪物を先に倒そうよ」

 

「駄目よ!あれは元々この町の人達だもの、攻撃する何て・・・」

 

 バッドエンドピースの提案を、慌ててダークミントが否定した。

 

「ほな、どないすんねん?」

 

 バッドエンドサニーがそう告げた時、魑魅魍魎達は闇のプリキュア達目掛け近付いて来た。バッドエンドマーチは慌てて、

 

「ゲッ!?何かこっちに向かって来たぜ!」

 

「攻撃が効かないんじゃ、私達も手の打ちようが無いよ」

 

 ダークレモネードが、攻撃が効かない魑魅魍魎達を前に、どうする事も出来ず狼狽えた。ソードは悲鳴を上げる人々の声を聞き、ギュッと拳を握ると、

 

「それでも・・・守らなきゃ!」

 

「「「ソード、待って!」」」

 

 ソードがまだ魔物化していない人々を守る為に駆け出し、ダークドリーム、ダークレモネード、ダークミントが慌てて声を掛けたものの、何故か魑魅魍魎の群れはソードに襲い掛かる事は無く、逆に闇のプリキュア達目掛け近付いて来た。

 

「ダークプリキュア5とバッドエンドプリキュアの方に向かってるロプ」

 

 新たに現れた魑魅魍魎達に、ブルーとシロップも動揺し、シロップは不安そうに表情で更にブルーに話し掛け、

 

「か、神様、どうすればいいロプ?」

 

「クッ・・・何故ソードに目をくれず、ダークプリキュア5やバッドエンドプリキュア達に・・・そうか!」

 

 ブルーは何かに気付くと、右手を地面に触れ何かを唱えると、ブルーの周辺に光が満ち溢れた。ブルーは慌てて叫び、

 

「ダークプリキュア5!バッドエンドプリキュア!急いでこの光の中に入るんだ!!」

 

『エッ!?』

 

「ソードは?」

 

 バッドエンドピースは、さっきは囮に使いながらも、真っ先にソードの身を案じて声を掛けるも、

 

「ソードは大丈夫!だが、君達があの魔物の群れに憑依されたら、もう万事休すになる。詳しい事はこの中で話す!急いで!!」

 

 ブルーに急かされ、ソードを気に掛けながらも、十人の闇のプリキュア達は、ブルーに言われるまま駆け出し、ブルーが作り上げた光の結界の中へと逃げ込んだ。

 

「神様、どういう事でしょうか?」

 

 ダークドリームは、ブルーの真意が読めず問いかけると、ブルーは険しい表情のまま話し始めた。

 

「あの半透明の魔物は、負の力に導かれる習性があるよう何だ。君達は元々闇から生まれたプリキュアだと聞く。あの魔物達は、そんな君達と波長が合い、君達の身体を自分の物にしようと群がろうとしたんだ」

 

「じゃ、じゃあ、私達もあの魔物達に憑依されたら・・・」

 

 バッドエンドハッピーはそう言うと、思わず変顔を浮かべた。ブルーは小さく頷き、

 

「この町の人々と同じような目に遭っただろうね・・・残念だけど、今の僕の力では、この町全体に結界を張る事は出来なかった・・・」

 

 ブルーは力なく俯き、思わず拳を震わせた。目の前で叫び逃げ惑う人々を救う事さへ出来ず、神とは名ばかりのような自分の不甲斐無さに打ちのめされた。十人の闇のプリキュア達は、ブルーに掛ける言葉が見付からなかった。

 

「閃け!ホーリーソ~ド!!・・・どうして!?どうしてホーリーソードがすり抜けてしまうの?」

 

 ソードは、人々を救おうと何度もホーリーソードを放つも、その都度ホーリーソードは空しく魔物達をすり抜け、次々と人々を醜い魔物へと変えて行った。

 

「もう、もう止めてぇぇぇぇ!」

 

『シャァァァァァ!』

 

 ソードの叫びが空しく響いたその時、四つ葉町上空に浮かぶ逆五芒星のゲートから、獣の咆哮が聞こえた。

 

「そ、そんなぁ・・・また新手が来たの?」

 

 ソードが悲痛な表情で上空に浮かぶ逆五芒星のゲートを見上げると、ゲートの中から順番に七匹の大蛇が姿を現した。ザンコックとバルログは驚愕し、

 

「「大蛇だと!?」」

 

 七匹の大蛇は、悪魔王ゼガンの存在に気付くと皆一様に震えだし、近付く事を恐れているようだった。ピーチは、黄の大蛇の頭を優しく撫でながら、

 

「大蛇、四つ葉町まで送って来てくれてありがとう。あなた達は少し離れて居て」

 

 ピーチはそう言うと、ベリー、パイン、パッションにアイコンタクトをし、三人も頷き返した。更にピーチは、仲間達に大声で声を掛け、

 

「みんな・・・行くよ!」

 

 ピーチの合図と共に、低空飛行で飛ぶ大蛇から、ルミナスが、ブルーム達四人が、プリキュア5とローズが、ブロッサム、マリン、サンシャインが、メロディ達四人が、ハッピー達六人が飛び降り、ソードに合流した。ココとナッツ、シフォンとタルト、シプレ、コフレ、ポプリ、キャミーとハミィ、ピーちゃん、エンエンとグレル、眠ったままのキャンディは、大蛇の頭の上に残って居たものの、シロップが迎えに来て、妖精達はシロップの背に移動した。

 

「おのれぇぇ、また邪魔者が増えおった」

 

「これだけの人数が来るとは・・・」

 

 ザンコックとバルログは、大勢のプリキュア達がゲートを利用して四つ葉町にやって来た事に、激しい苛立ちを覚えた。

 

「みんなぁ・・・」

 

 ソードは、少し涙目になりながら一同を見渡し、ドリームは力強く頷くと、

 

「ソード、大丈夫!?ダークプリキュア5は?」

 

「はい、ダークプリキュア5は、バッドエンドプリキュア達と一緒に神様の側に居ます」

 

「エッ!?バッドエンドプリキュア達も来てくれたの?」

 

 バッドエンドプリキュア達も駆け付けてくれたと聞き、思わずハッピーの表情が和らぐも、

 

「ハイ・・・でも・・・この町の人達が・・・」

 

「「「「エッ!?」」」」

 

 ソードは返事を返しながらも俯き、思わずピーチ、ベリー、パイン、パッションの表情が変わった。自分達が住む四つ葉町に、ゼガンを始めとした魔物の群れが、我が物顔にしている事が許せなかった。

 

「よくも四つ葉町を・・・」

 

 ピーチは拳をギュッと握りしめると、傍に居る巨大な一つ目の犬のような怪物を、鋭い視線で睨み付けた。ピーチが攻撃しようとしたその時、ソードは慌ててピーチを止め、

 

「待って!その怪物は・・・元々四つ葉町の人だったの!!」

 

『エッ!?』

 

 ソードの話に、プリキュア達は皆一斉に驚きの声を上げた。ソードは、哀しげな表情を浮かべながら話を続け、

 

「あの半透明の怪物に憑依された町の人達が、次々に魔物に・・・」

 

「「「「そんなぁぁぁ!?」」」」

 

 ピーチ達の表情が凍り付いたその時、四人の視線の先に、逃げ惑う人々の中に見知った顔を見た。クローバータウンストリートの人達、大輔とその姉ミユキ、そして、四人の大切な家族、ピーチの母あゆみと父圭太郎、ベリーの母レミとその手を引いて逃げる弟和希、パインの母尚子と父正の姿があった。

 

「「お父さん!お母さん!」」

 

「ママ!和希!」

 

「助けなきゃ!」

 

 ピーチ、パイン、ベリー、パッションは、慌てて大切な者達の下へと駆け出し、他のプリキュア達も、人々を助ける為に駆け出した。

 

 だが・・・

 

『ワァァァァ!』

 

 クローバータウンストリートの人々の悲鳴が響き、イボや吹き出物に覆われた狼のような怪物、全身からキノコを生やしたキノコ人間のような怪物、腐った肉体のような怪物などに変化して行った。

 

「ウワァァァァ!」

 

「キャァァァァ!」

 

 大輔とミユキの悲鳴が響き渡った。見る見る二人の容姿は、無残にも醜い怪物へと変化して行った。大輔は、顔は馬のように長く、頭には角が生え、背には黒い翼、手には蹄、尻から槍のように尖った尾を持った怪物に、ミユキは、額から大きな角を生やし、木の幹に覆われた身体から、両手が鎌になった悪鬼のような怪物へと変貌した。

 

「大輔ぇぇぇぇ!ミユキさぁぁぁん!」

 

 ピーチの叫びも空しく、更には襲い掛かる半透明の魔物から、あゆみ、レミ、尚子を庇った圭太郎、正、和希にも魔物は憑依し、三人の容姿が醜い怪物へと変わって行った。

 

 圭太郎は、薄い皮で張られた翼と長い腕とかぎ爪を持ち、頭部から生えた毛は地面に付く程長く、身体の半分以上が尻尾の怪物に・・・

 

 和希は、巨大な耳のような身体から赤い大きな目が付き、地面に付くような細長い腕と、長い脚を持った怪物に・・・

 

 正は、頭部は狼、身体はゴリラ、背中にはコウモリのような翼、全身を灰色の毛で覆われた筋骨隆々とした怪物へと変化した。

 

 

「イヤァァァ!あなたぁぁ!!」

 

「和希ぃぃぃ!」

 

「あなた!あなたぁ!返事してぇぇ!!」

 

 あゆみが、レミが、尚子が、逃げるのも忘れて大切な家族を救おうと声を掛けるも、無情にも怪物化した三人に身体を押さえられ、あゆみ、レミ、尚子の身体にも、魔物が憑依しようとしていた。

 

「「「「止めてぇぇぇぇぇ!!!!」」」」

 

 ピーチが、ベリーが、パインが、パッションが、全力で駆けながら手を伸ばす先で、無情にもあゆみ、レミ、尚子の肉体にも直ぐに異変が起こり、醜い魔物の姿へと変貌していった。

 

 あゆみは、頭部は蝶のようで、腹部に狂った笑みを浮かべる女の顔が、下半身は茶色い毛で覆われた怪物に・・・

 

 レミは、上半身は熟女で両胸には牙を生やした口が、下半身は蛸、腹部からは三匹の犬が生えた異形の怪物に・・・

 

 そして尚子は、頭部は女、身体は豹のようで、背中から一つ目をしたミミズのような物体を蠢かせた怪物へと変化した。

 

 

「「「「ヒィィィィィ!・・・イヤァァァァァァァァァァァァァ!!!!」」」」

 

 ピーチ、ベリー、パイン、パッションは、両手で顔を覆いながら、その場で狂ったような絶叫を上げ、魔の町と化した四つ葉町に空しく響き渡った・・・

 

 

              第百三十五話:悪魔王ゼガン

                    完

 




 第百三十五話投稿致しました。
 今回は、ゼガン軍団四つ葉町襲撃をメインに、年の瀬らしいほのぼのとした展開には程遠い内容となりました。
 次回は、プリキュア達は魔物化した四つ葉町の人々を救えるのか?魔界に残ったブラックとホワイト、ムーンライトは、魔神達と共に地獄門を閉じる事が出来るのか?悪魔王ゼガンはどう動くのか?などの内容になる予定で、ルミナスとローズにもスポットが当たります。

 では、今年も読んで頂きありがとうございました。
 皆さん、よいお年を迎え下さいませ。
 

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