プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第百十七話:スマイルプリキュアとバッドエンドプリキュア(後編)

1、なおとなみ・・・激走!リレー対決

 

 9月も終りに近付き、秋の気配が深まってきた。七色中学校でも他の学校同様、体育祭の日程が近付いて来た。佐々木先生は、ホームルームを使ってリレーの立候補者を募って居た・・・

 

「じゃあ、男子はこのメンバーで行きましょう。次に、女子メンバーで立候補する人は居ないかしら?推薦でも構いませんよ」

 

 佐々木先生はそう言いながら教室内を見回した。一同が視線を避ける中、只一人背筋を伸ばして、大きく手を上げて居たのが、なおであった。佐々木先生は思わず笑みを浮かべた。このクラスの女子、いや男子と比べても一番速いであろう、なおが立候補してくれるのは、佐々木先生にしてもありがたい事だった。

 

「緑川さん、あなたが立候補してくれるのは大歓迎よ」

 

「ハイ!それと、推薦したい人達が居るんですけど?」

 

 なおの問いに、佐々木先生は一瞬驚いた表情を見せたものの、直ぐにコクリと頷き、

 

「どうぞ、誰かしら?」

 

「ハイ!青木さん、星空さん、日野さん、黄瀬さんです!!」

 

 なおはそうハッキリ断言した。名前を呼ばれたれいか、みゆき、あかね、やよいは、思わず驚愕しながらなおを見つめ、他の生徒達もざわついた。なおは、みゆき達を見つめると、嬉しそうに微笑んだ。だが佐々木先生は、なおの推薦メンバーを聞いて呆気に取られた。

 

(日野さんは分かるし、青木さん、星空さんも、足は速い方だと思うけど、黄瀬さんは・・・)

 

 佐々木先生の疑問は尤もだった。やよいは、クラスの中でも一、二位を争う程、足は遅かったのだから・・・

 

「な、なおちゃん・・・」

 

 やよいも、何故なおが自分を推薦したのか、その真意が読めず、困惑の表情でなおを恨めしそうに見つめた。なおは、白い歯を出すほどの笑みを浮かべ、やよいを安心させようとしているかのように、

 

「大丈夫!」

 

 なおがそう断言し、佐々木先生も生徒の自主性を尊重して、クラスの女子リレー代表は、なお、みゆき、あかね、やよい、れいかで決定した。

 

 その知らせは、隣の一組にも伝わった・・・

 

 なみは、右手の拳と左手を合わせ、音を鳴らすと、

 

「へぇ、あいつらが出るのかぁ・・・上等!あたしらもリレーって奴に参加しようぜぇ?」

 

 なみはやる気満々で、みさき、あおい、やおい、れいなに声を掛けたが、仲間達の反応は鈍かった・・・

 

「エェェ!?面倒だよぉ?」

 

「そうや!疲れるだけやろう?」

 

「私・・・疲れるの嫌ぁ」

 

「そんなもので彼女達に勝っても、何の自慢にもならないんじゃなくて?」

 

 みさき、あおい、やおい、れいなに拒否され、なみは髪を掻きむしると、

 

「ダァァ、分かってねぇなぁ!この姿でもあたし達の方が上だって、ハッキリするだろう?」

 

「「「「ウ~ン」」」」

 

 なみの言葉に、思わず四人は唸った。確かに学生姿は、バッドエンドプリキュアの時より、力はセーブされて居た為、なみの言う事も少しは理解出来るものの、この勝負に意味があるとは到底思えず、四人は首を傾げた。なみは、そんな四人を意に介さず、

 

「じゃあ、先生に言ってくるから!」

 

「「「「エェェ!?」」」」

 

 なみは半ば無理矢理、みさき達四人をメンバーに加えて、一組のリレー選手に立候補し、堀毛先生に受理された。とはいえ、なみ達五人は、リレーについて、ただ五人で走る競技としか知らなかった。

 

 その日の放課後・・・

 

 なおは、さっそくリレーの練習をしようと、仲間達に声を掛け、みゆき、あかね、やよい、れいかは、体操着に着替えて、なおが来るまで準備運動をして居た。なおは、嬉しそうにバトンを振りながら、みゆき達に駆け寄ると、

 

「陸上部からバトン借りて来たよ」

 

 あかねは、なおが来た事で、屈伸運動をしながら、素朴な疑問を口にした。

 

「なあなお、何でウチらを推薦したんや?」

 

 あかねに聞かれたなおは、何でそんな事を聞くのだろうかと思ったのか、少し首を傾げながら、

 

「ン!?何でって・・・この五人で走りたかったから」

 

「「「「エッ!?それだけ?」」」」

 

「ウン、それだけ」

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

 四人は、なおの真意が読めず思わず沈黙した。だが、なおと幼なじみであるれいかは、ハッと何かに気付くと、

 

「なお・・・ひょっとして、この五人で、記憶に残る思い出を作りたいと思ったのですか?」

 

「「「エッ!?」」」

 

「ウン!あたし達は、プリキュアになった事で絆が深まったけど、学校の行事でも、この五人で思い出になる事をやってみたいと思ったんだぁ・・・あゆみちゃんが同じ学校で、同じクラスだったら、また違う事考えたかも知れないけどねぇ」

 

 なおは、そう言うと苦笑した。本当は、あゆみも参加した何かをしたいとも考えたが、それはこの前、やよいの母である、千春の会社主催のファッションショーに、他のプリキュア達の何人かと共に参加して居た事もあり、今回は体育祭をみんなと一緒に走って、思い出を作りたいと考えた。

 

「じゃあ、練習始めるよ!」

 

「「「「ウン!」」」」

 

 なおの気合いの入った掛け声に、なおの真意を知った、みゆき、あかね、れいか、そして、走るのが苦手なやよいも同意した。勝ち負けよりも、みんなで協力して繋ぐバトンに意味があると、だが、それはなお達五人にとってであり、他のクラスメイト達に取っては、勝ち負けが大事だった。練習するなお達を、教室の窓から覗いて居た、同じクラスの男子、井上せいじと岡部かつとしは、微妙な表情を浮かべて居た。せいじは、かつとしに話し掛けると、

 

「なあ、何で緑川は、黄瀬何か推薦したんだ?」

 

「さあ!?仲が良いからってだけだろう?」

 

「何だそりゃ!?黄瀬何か出してたら、勝てるもんも勝てねえって」

 

「だよなぁ!?」

 

 せいじの言葉に、同じ事を思っていたかつとしが頷きながら同意した。せいじは更に言葉を続け、

 

「隣の一組は、何か緑川達にそっくりな、あいつら五人が出るそうだし、三組は陸上部らしいぜ?」

 

「四組、五組、六組も、足の速いの揃えたって聞いたし、ウチのクラスはビリじゃねぇ?」

 

「「アァァア」」

 

 やよいが代表で出る事に納得がいかない二人は、廊下に聞こえる程の声で嘆いた。そこにたまたま通りかかったなみとやおいは、少し教室の中を伺った。やおいは、漫画コンビを組んでいるやよいの悪口を言われた事で、自分でも分からないが、ムッとした表情を浮かべた。

 

「何よ、まだ始まっても居ないのに、あいつら、やよいだけ責めて・・・雷でも落としてやろうかなぁ?」

 

「止めな!あたしらが口だしする事じゃ無いだろう?あいつらの話聞く限り、キュアピースは、どうやら足が遅いようだな」

 

「だからってさ・・・」

 

「まっ、あたしらは、あたしらの走りをすれば良いさ・・・ハッピー達の下に行こうぜ」

 

 なみは、まだ不機嫌そうにしているやおいの背を押し、みさき達と合流する為戻って行った。

 

 

 練習を開始したなおは、先ずバトンをスムーズに次の走者に渡せるように、バトン渡しの訓練を始めた。初日という事もあり、四人はバトンを何度も落とすも、段々落とさずに出来るようになって来た。

 

「ウン、大分良くなってきたよ」

 

「けどなお・・・走る練習せぇへんで、バトンの練習だけでエエんか?」

 

「ウン、バトンをスムーズに次の走者に渡せるようになれば、少しはタイムを短縮出来るし、先ずはバトンを渡す事を重点にしよう」

 

「「「「分かった」」」」

 

 体育祭を一週間後に迎え、初日はバトン練習で終りを告げた・・・

 

 だが、なおの真意を知ったみゆき、あかね、やよい、れいかは、それぞれ家に帰ってからも独自の訓練をしていた・・・

 

 

 みゆきは・・・

 

 夕飯を終えて自分の部屋に戻ったみゆきは、キャンディと魔王に声を掛けると、

 

「キャンディ、魔王、バトン渡しに協力してよ」

 

「何だかよく分からないけど、分かったクル」

 

「面倒カゲなぁ・・・まあ良いカゲ」

 

「じゃあ行くよ・・・ハイ!」

 

 みゆきは、キャンディからバトンを受け取り、魔王にバトンを渡し、今度は逆に魔王からバトンを貰い、キャンディにバトンを渡す訓練を、何度も続けた。

 

 

 あかねは・・・

 

「父ちゃん、母ちゃん、悪いけどぉ、体育祭終わるまでは、店の手伝い堪忍してや」

 

「何やあかね、やけに気合い入っとるなぁ?」

 

「あんたぁ、ほら、ブライアンに・・・」

 

「ああ、成る程、体育祭でエエとこ見せて、それをブライアンに報告しようって事やな?」

 

「ちゃうわぁ!」

 

 あかねは両親にからかわれ、逃げるように走り込みに出かけた。

 

 

 れいかは・・・

 

 れいかもあかね同様、走り込みに出ようとしたものの、大学から帰って来たれいかの兄淳之介が声を掛け、

 

「れいか、僕も行こう」

 

「エッ!?でも、お兄様は先程お帰りになられたばかりですし・・・」

 

「ハハハ、れいかには、毎朝ランニングに付き合って貰ってるし、今回は僕が協力しよう。それに可愛い妹を、夜道に一人でランニングになど出せないからね」

 

「お兄様・・・ありがとうございます」

 

 れいかは、淳之介に頭を下げ、素直に行為を受け取り、ランニングをしながら、淳之介にリレーについてのアドバイスを受けていた。

 

 

 やよいは・・・

 

 不思議図書館に来たやよいは、ソワソワしながら誰かが来るのを待って居た。その時、本棚が光り出すと、本棚から光に包まれながらなぎさが現われた。なぎさは軽く右手を挙げ、

 

「やよい、お待たせ!この前は、やよいのお母さんのファッションショーに参加出来なくてゴメンねぇ、ちょっと講師に、夏休みに出したレポートの事で色々と聞かれてさぁ」

 

「いえ、気にしないで下さい。それよりなぎささん、急に頼んだのに、ありがとうございます」

 

「ウウン、私に出来る事なら協力するよ」

 

 やよいは、なぎさにメールを出し、今度リレーにみんなと出る事になった事を伝え、少しでもみんなの役に立ちたいと、なぎさに協力を頼んだ。メールを見たなぎさは、やよいの気持ちに動かされ、コーチ役を引き受けた。なぎさはやよいに話し掛け、

 

「今日はどんな特訓したの?」

 

「エェと、なおちゃんに言われて、バトンの渡し方と貰い方の練習です」

 

「へぇ、流石になお、良く分かってるね・・・リレーって、バトンをスムーズに渡せると、タイムロスをかなり減らせるだよねぇ」

 

「そ、そう何ですか?」

 

「ウン!やよいは、何番目に走るの?」

 

「まだ決まって無いですけど、アンカーはなおちゃんで決まりだし、最初はあかねちゃんじゃないかなぁ?」

 

「そっかぁ・・・じゃあやよい、取り敢えず何時ものように走ってみて」

 

「ハイ!」

 

 やよいは、何時ものように走ってみると、なぎさはジィとやよいの走り方を見つめた。一生懸命走っているのは伝わるものの、手足の動きが合っておらず、顎も上げ気味で、身体が左右に揺れて居て、やよいはかなり遅かった。

 

「大体分かった・・・じゃあ、今度は私が走るから、やよいは私の走り方見てて」

 

 なぎさは、そう言うと駈け出した。なおは、風のように舞うような華麗な走りだったが、なぎさの走りはどこか力強く、そして速かった。

 

「なぎささん・・・速い」

 

「まあ、私はリレーで何度もアンカーやってるしね。で、やよい、今私の走り見てて、何か気付いた事ある?」

 

「ウゥゥン・・・力強さを感じました」

 

「腕の振りとか、足の上げ方とか、身体は揺れたり、顎を上げたりしてた?」

 

「腕の振りや足の上げ方!?・・・・アッ!」

 

 なぎさは、やよいが自分のヒントに気付いた様子を見て、口元に笑みを浮かべた。やよいの走りは、腕と足の動きが合ってなく、身体も揺れてバランスが良いとはいえなかったが、なぎさの走りは綺麗なフォームで走って居た。

 

「やよい、確かに足の速い遅いは有るけど、やよいはもっと正しいフォームを覚えれば、タイムを大分短縮出来ると思うよ?」

 

「ほ、本当ですか?」

 

「先ずは身体がぶれないように、走る事を心がけて見よう」

 

「ハイ!」

 

 なぎさのアドバイスを受け、やよいは目を輝かせながらコクリと頷いた。

 

 

 なおは・・・

 

 なおは、夕ご飯の片付けを終えると、一回りしてくると、ランニングに出かけた。ランニングしながら、勝手に他の四人をリレーメンバーに推薦したのに、みんなが自分の気持ちを理解してくれた事が嬉しかった。

 

「みんなとの思いでのバトンを最後まで繋ぐ為にも・・・あたしも頑張ろう」

 

 なおが走って居ると、その隣に並ぶ者が居た。

 

「よう、今度のリレー対決っていうの、楽しみにしてるぜ」

 

「なみ!?あんた達もリレーに出るの?」

 

「知らなかったか?ああ、同じマーチ同士、この姿でも勝負したくてな」

 

「あたし達は、勝負には拘らないよ。思い出に残るように全力を出すだけ・・・」

 

「勝負の日を楽しみしてるぜ!」

 

 なみはそう言い残し、夜の街並みに消えて行った。なおは立ち止まり、

 

「勝負か・・・あんた達とも、楽しく過ごしたいんだけどなぁ・・・」

 

 なおは少し愁いを帯びた表情を浮かべるも、また走り出した・・・

 

 なおのコーチや、それぞれの特訓の甲斐もあり、四人は日に日に、なおが感心する程の上達を見せて居た。

 

 

 そして、体育祭の日がやって来た・・・

 

 女子リレーのメンバーが、それぞれスタート地点に並んだ。紫の一組と赤の二組の順番は、第一走者はあおいとあかね、第二走者はみさきとみゆき、第三走者はれいなとれいか、第四走者はやおいとやよい、アンカーはなみとなお、他のクラスのメンバーも足が速そうなメンバーばかりで、二組の井上せいじは、やよいの組み合わせメンバーを見て嘆き、

 

「アァア、見て見ろよ、かつとし!黄瀬の所」

 

「ああ、三組は陸上部の福田かよ」

 

 岡部かつとしも、あきらめ顔で両手を広げると、カチューシャをした岡田まゆと首の両脇をお下げにした金本ひろこも会話に加わり、

 

「四組には木島さんが居るわ」

 

「彼女も足速かったよねぇ?」

 

「だろう!?こりゃダメだ」

 

 せいじはそう言うと、あきらめ顔で天を仰いだ。そんなクラスメイト達の嘆きも知らず、先ず、第一走者がスタート位置に並んだ。あおいは、あかねを見てニヤリとすると、

 

「勝つのはウチやで」

 

「負けへん」

 

 二人が目で火花を散らしている間に、スタートの合図であるピストルが鳴った。

 

「「アッ!?」」

 

 二人は言い合いをしていて、最初こそ出遅れたものの、張り合うあかねとあおいは、五組と六組を抜き、更に三組と四組に追いつき、そして追い抜いて、あかねとあおいで首位争いをしていた。一組と二組が首位争い、以下陸上部を揃えた三組、四組、六組、五組と続いた。

 

(流石日野さん・・・良いわよ、そのまま行けぇぇ!)

 

 貴賓席で見守る佐々木先生は、教師である立場上、冷静を振る舞いながらも、勝負事に目がなかった。佐々木先生は思わず拳を握りしめて、心の中で熱くなって居た。首位争いを続ける二人は、視界に第二走者のみゆきとみさきの姿が飛び込んで来た。あかねとあおいは、思わずバトンを握る手に力が入り、

 

「みゆきぃぃ!」

 

「ハッピー!」

 

「「頼んだでぇぇ!!」」

 

「「任せて!」」

 

 あかねとあおいは、ほぼ同時にバトンを手渡したものの、バトンの特訓をしていたみゆきの方がスムーズに受け取り、みさきは少し出遅れた。みゆきが一位で走り、その直ぐ後をみさきが追う展開に、クラスメイト達も思わず立ち上がって声援を送り出した。

 

「ひょっとして・・・イケるんじゃね?」

 

「「ウン!頑張れぇ、星空さぁぁん!!」」

 

 豊島ひでかずが、クラスメイトに話し掛けると、背が小さく、頭の両脇に髪留めを付けた尾ノ後きよみと三つ編みをした柏本まゆかが、みゆきに声援を送った。貴賓席で見て居た佐々木先生は、みゆきが一位で走る姿を見て思わず右拳を振り上げ、

 

(流石星空さん、遅刻で鍛えた足は、伊達じゃないわね)

 

 遅刻常習犯であるみゆきが聞いたら、頬を膨らませてイジケそうではあるが、佐々木先生的にはみゆきを褒めていた。みゆきの視界に、第三者走者のれいかが目に入ってきた。れいかは、みゆきのタイミングに合わせるようにゆっくり走り出し、

 

「みゆきさん!」

 

「れいかちゃん、お願い!」

 

 みゆきのバトンをスムーズに受け、れいかが首位で走り出した。その直ぐ後で、みさきもれいなにバトンを渡し、れいながれいかの後を追う。

 

(クッ、勝負何てどうでも良いと思ってたけど・・・)

 

 れいなの闘争心に火が付き、れいかを追い上げるも、れいかも踏ん張り走り続ける。佐々木先生は思わず立ち上がって倚子の上に乗り、

 

(大丈夫よ!青木さん、そのままそのまま!)

 

 興奮する佐々木先生の姿を、隣で座って観戦していた堀毛先生は、呆気に取られながら見つめた。れいかとれいなの視界に、第四走者のやよいとやおいの姿が目に入って来た。

 

「やよいさん!」

 

「ピース!」

 

 れいかとれいなの二人が、やよいとやおい目掛けてバトンを伸ばした。その姿を観客席から見て居た真琴は、右腕を伸ばしてやおいに向かって、念を飛ばすように何かブツブツ呟きだし、

 

「バトンを落とせ、落とせ、落とせ、落とせ・・・・」

 

「ま、真琴ちゃん!?」

 

「何か怖いよ?」

 

 真琴の友人であるツインテールをした緑髪の少女若林さなえと、赤髪のショートヘアーの真鍋ゆきの二人は、まるで呪いを掛けているような、真琴の姿に困惑した。

 

 やよいは、スムーズにれいかからバトンを受け取ったが、やる気が無いやおいは、真琴の呪いの所為か、思わずバトンを落とした。その瞬間、真琴は小さくガッツポーズを取り、さなえとゆきを呆れさせた。その間に三組と四組に抜かれ、更には六組と五組にも抜かれて、一組は最下位になった。れいなは、思わずやおいを睨み、

 

「ピースゥゥゥ!」

 

「お、怒らないでよぉ・・・」

 

 やおいは、慌ててバトンを拾って駈け出したものの、トップを走るやよいは、後ろから追い上げてきた三組と四組に抜かれた。更には六組にも追い上げられ、最下位を走って居るやおいではあったが、自分の事よりも、思わずやよいの事を案じた。

 

(やよい・・・)

 

 やおいは以前、やよいのクラスのせいじとかつとしが、やよいの陰口を言っていたのを聞いていたのだから・・・

 

 佐々木先生は、やよいが六組にも抜かれた瞬間、力が抜けたように倚子に座り込み、

 

(誰よぉ!?黄瀬さんを推薦したのは・・・)

 

 佐々木先生は、思わずガックリ頭を垂れた。クラスメイト達の落胆の声が聞こえ、せいじは頭を抱えながら、

 

「だぁぁ!黄瀬何か出すから・・・」

 

 せいじは、髪を掻きむしるかのように悔しがった。

 

 少し本気になったやおいは、やよいを猛追する五組を追い抜き、やよいに並ぶと、

 

「やよい、しっかり!」

 

「やおいちゃん・・・ウン!」

 

 やおいの励ましを受け、やよいは、なぎさに受けたアドバイスを思い出していた。

 

(手と足がバラバラにならないように、顎を上げないように、身体がブレないように)

 

 その時、やよいの走りが変わった!

 

 それに気付いた豊島ひでかずは、やよいを指差して一同に聞こえるように話し出し、

 

「見ろ!黄瀬の奴、まだ諦めてねぇ」

 

「ウン!それにやよいちゃん・・・何だか今までで一番速い気がする」

 

「そう言われれば・・・何か走る姿も綺麗かも!?」

 

 ひでかずの言葉に同意したのは、少しポッチャリして眼鏡を掛けた藤川あみ、やよいと一、二位を争う程、クラスの中で足の遅い彼女の言葉は、一同の心に響いた。まゆかは、あみの言葉を聞いて良くやよいを見てみれば、抜かれたとはいえ、懸命に走るやよいの姿が遅いとは思えなかった。ショートヘアーでカチューシャをした若林かおりは、あみとまゆかの言葉を受けてポツリと呟き、

 

「黄瀬さん、この日の為に特訓してたんだね・・・」

 

「「・・・・・・・」」

 

 クラスメイト達の声を聞き、やよいの事を認めていなかったせいじとかつとしは、思わず沈黙し、改めてやよいの走りを見た。確かに一同が言うように、やよいの走る姿は、以前見た時より綺麗だった。やおいと共に、前を走る六組を追い上げるやよいを見たせいじは、倚子の上に乗り大きく息を吸い込むと、

 

「黄瀬ぇぇぇ!頑張れぇぇぇ!!」

 

 せいじの言葉を合図にしたかのように、二年二組の生徒達から、やよいに大して声援が飛んだ。

 

「「「「みんなぁぁ・・・」」」」

 

 みゆき、あかね、れいか、そしてアンカーとしてやよいを待っていたなおは、クラスメイト達が送るやよいの声援を聞いて感動し、なおの心の中に闘志が宿った。一同の声援を受け、やよいは六組を懸命に抜き返し、先ず三組がトップでアンカーにバトンを渡し、次いで四組がアンカーにバトンが渡った。なおとなみは、やよいとやおいをチラリと振り返り、

 

「やよいちゃん!」

 

「ピース!」

 

「なおちゃん、お願い!」

 

「マーチ!」

 

 数秒遅れて、やよいとやおいが、ほぼ同時になおとなみにバトンを渡すと、二人は風のように優雅に競り合いながら駈け出した。なみとなお、二人の走りはほぼ互角、一気に四組を抜き去り、トップを走って居た三組をも抜き去った。佐々木先生は再び倚子に乗ると、拳を振り上げながらなおに大声援を送り、

 

「行けぇぇぇ!緑川さぁぁぁん!!」

 

「さ、佐々木先生!?」

 

 隣に居た堀毛先生は、呆然としながら佐々木先生を見た。

 

「流石にやるな?」

 

「あんたもね」

 

 なみとなお、両者互角のまま最終コーナーを回ると、

 

「「なおちゃぁぁん!」」

 

「「なおぉぉ!!」」

 

 みゆき、やよい、れいか、あかねの気持ちが伝わったかのように、なおがなみを振り切りトップに立った。

 

「何ぃ!?クッ」

 

 なおにトップを許したなみだったが、懸命になおの後を追った。ゴールが遂に見えてきた時、なおに一瞬の油断が生じた。

 

「エッ!?」

 

「なんだと!?」

 

 足が縺れバランスを崩したなおは、激しく転倒し、右膝からは血が滲んだ。咄嗟になみはジャンプして躱し、一着でゴールをした。直ぐに背後を振り向いたなみは、右膝から血を流しながらも懸命に立ち上がり、右足を引き摺りながらゴールを目指すなおの姿に呆然とした。なおは、三組と四組、更には六組と五組にも抜かれて最下位になったものの、足を引きずりながらも諦めずゴールした。そんななおを、泣きながらみゆき、やよい、れいか、あかねが出迎えて抱き付くと、

 

「「なおちゃぁぁん!」」

 

「「なおぉぉぉ!!」」

 

「みんな、みんな、ゴメン・・・ゴメン・・・ワァァァ」

 

 なおも思わず号泣した・・・

 

 そんななおを出迎えたのは、みゆき達だけでは無かった。クラスメイト達が思わず駆け寄ると、なおは涙ぐみながら謝罪を始め、

 

「み、みんなぁ・・・ゴメン」

 

「緑川、良くやったぞぉぉ!」

 

「ほら、僕の肩に掴まって」

 

 佐藤かずやがなおを称え、体格の良い宗方しんやがなおに肩を貸した。やよいに近づいたせいじとかつとしは、

 

「黄瀬、良く走ったな」

 

「お前、この日の為に特訓したんだろう?」

 

「エッ!?う、うん・・・」

 

 やよいは戸惑いながらも、自分は役に立てなかったと思って居たのに、称えてくれるクラスメイト達にまた涙目になった。みゆき、あかね、れいかもクラスメイト達に称えられた。涙を拭いながらやって来た佐々木先生は、

 

「緑川さん、青木さん、日野さん、星空さん、黄瀬さん・・・先生は、先生は、感動しました!」

 

「先生、泣いてちゃ化粧が落ちるよ?」

 

 野川けんじにからかわれた佐々木先生は、涙を拭いながら、

 

「コラ!教師をからかうんじゃありません!!」

 

 そんな仲間達や恩師を見たなおは、目から涙を零しながら、

 

(あたし、あたし、勝てなかったけど、やっぱりみんなとリレーに出て良かった)

 

 最下位ながらも、仲間達と一生懸命走った事を、クラスメイト達に認められ、なおはリレーに出て良かったと心から思うのだった。

 

 そんな二年二組の生徒達の姿を見た真琴は、貰い泣きして泣きじゃくり、さなえとゆきに慰められた。なみ達五人も、二組の様子を見ていたものの、あおいは呆れたように両手を開き、

 

「勝ったのはウチらなのになぁ・・・ン!?マーチ、どないしたん?」

 

 あおいは、なみの表情が優れない事に気付き、怪訝な表情で話し掛けると、なみは、険しい表情で首を左右に振り、

 

「あんなの、勝ったとは言えない!現にあたしは、緑川なおに抜かれたんだからな」

 

 なおに勝ったとは思えないなみだったが、みさき、れいな、やおいは、そんななみを宥め、

 

「まあまあマーチ、ここは素直に喜ぼうよ?」

 

「そうね・・・クラスのみんなも喜んでくれてるわよ?」

 

「って事で、今日はマーチの奢りで、デザートで祝勝会しよう」

 

「「「「賛成!」」」」

 

「お前らなぁぁぁ!?」

 

 なみは、仲間達に呆れ返りながらも、心の中でなおとの勝負を思い返していた。

 

(緑川なお・・・あの時、仲間の声援を受けたあいつの走りは、確かにあたしを上回った。あれが思いの力って奴なのか?)

 

 なみは、なおが仲間達と共に、涙ながらに全力を出しきった姿を、呆然と見つめて居た・・・

 

 こうして、体育祭は終りを告げたが、なお、みゆき、あかね、やよい、れいかにとって、決して忘れる事はない思い出となった・・・

 

 

2、れいかとれいな・・・生徒会長は誰!?

 

 七色ヶ丘中学校は、体育祭、そして文化祭も終りを告げ、現生徒会の役目は終了した・・・

 

 次の生徒会を決める選挙が、近々行われる事になっていた。前生徒会長である入江は、校内を歩いて居たれいかを見付けて声を掛けた。

 

「青木くん」

 

「入江生徒会長」

 

「おいおい、僕はもう引退しただろう?」

 

「そ、そうでした・・・」

 

「ところで青木くん、君は次期生徒会長に立候補してくれるんだろう?」

 

「そ、それは・・・まだ決めかねて居て」

 

「そうか・・・僕は、次の生徒会長に相応しいのは、青木くん、君だと思っているよ」

 

 れいかは、入江に聞かれて思わず返事に困った。生徒会の仕事は好きだったが、弓道部にも所属し、かつプリキュアとして戦う日常で、生徒会長のような激務をこなせる自信が、れいかには無かった。入江も深くはれいかに言わず、その場を後にした。

 

(生徒会長か・・・)

 

 れいかの脳裏に、ある人物達が過ぎった。プリキュアとして戦って居た頃、学校で生徒会長をしていた、水無月かれんと明堂院いつきの二人の事が・・・

 

(かれんさんやいつきさんに相談してみよう)

 

 れいかがそう思って考えながら歩いて居ると、みゆき達四人が、掲示板の前に居るのが目に入った。れいかが近づくと、どうやらみゆき達は、生徒会の立候補者募集の張り紙を見て居たようだった。れいかに気付いたみゆきは、

 

「れいかちゃん、れいかちゃんは立候補するんでしょう?」

 

「エッ!?いえ、まだ立候補するかどうかは決め手ないです。弓道部もありますし、プリキュアとしての使命もありますから・・・」

 

 れいかは、困惑気味にみゆき達に小声でそう話すと、みゆき達四人は残念そうな表情を浮かべた。れいかならば、この学校を良い方向に導いてくれると考えて居た。そこにちょうどみさき達もやって来た。みさきはみゆきに話し掛け、

 

「何見てるの?」

 

「今度の生徒会選挙の、立候補者募集のポスターだよ」

 

「「「「「生徒会!?」」」」」

 

 みさき達五人が思わず首を傾げると、れいかが五人に説明を始め、

 

「生徒会とは、生徒により組織される自治組織の事で、学校生活の充実を図る為の活動です。文化祭や体育祭等のイベントの実行に関する活動など、主に行うと思って頂いて構いません。知り合いの通っていた学校では、部活動の予算なども生徒会で決めますが、我が校では、そこまでの権限はありません」

 

 みさき、あおい、やおい、なみは、れいかが話して居る事がチンプンカンプンのようで、呆然として聞いて居たが、れいなは、何か心に引っ掛かる事があったようで、れいかに生徒会長について質問し、

 

「ここに書いてある、生徒会のトップの生徒会長は?」

 

「生徒会長は、生徒会の最高責任者で、生徒会長を中心として、日常的な生徒会の業務が行われます。多くの学校においては、複数の生徒会役員を選挙で選出しますし、我が校もそうで、それがこの募集ですね。選挙をする事によって、多様な意見を生徒会運営に反映する事が出来ます。それと、我が校では生徒会長に一つ権限が与えられていまして、副会長、会計、書記の中から一人だけ、自分で推薦した人物を選ぶ事が出来ますよ」

 

 れいかの説明を聞いたれいなは、少し口元に笑みを浮かべた。れいかは、そんなれいなの態度に違和感を持った。れいなは再びれいかに質問し、

 

「ようは、生徒の中で一番権限を持つ者って事ね?」

 

「そうですね、ですから、先ず生徒会長を決める選挙が最初に行われ、後日残りの生徒会を決める選挙が行われます。それと、立候補が認められるには、推薦人が最低二人必要ですよ」

 

 れいなの質問に、れいかはコクリと頷き、更に補足の説明を伝えると、見る見るれいなは、自信満々な表情を浮かべた。

 

「フフフフ、それなら、私は生徒会長に立候補するわ!」

 

『エッ!?』

 

 れいなの生徒会長選挙立候補宣言を聞き、思わず一同が驚きの声を上げた。

 

「私が生徒のトップに立ち、私が生徒達を美しく導いて上げましょう。他の生徒は、何もせず、只私に従えば良い・・・ハッピー、サニー、マーチ、ピース、あなた達、推薦人になってくれるわよねぇ?」

 

「「良いよ!」」

 

「エエで!」

 

 みさき、なみ、あおいは、即座に同意したものの、やおいは何か考えて居るようで、腕組みをして居た。れいかは慌ててれいなに話し掛けると、

 

「ま、待って下さい!それでは、生徒達に自主性が・・・」

 

「私の感性に合わない生徒は・・・必要無いもの」

 

 れいかは、れいなの言葉を聞き疑問を覚えた。生徒会長とは、生徒の見本となるべき人物であるという事では、れいなが生徒を導くと言った内容に関しては、れいかも同じ考えだったが、れいかは、ただ生徒会が中心に動くのでは無く、生徒達の自主性も尊重しようと考えて居た。以前かれんから聞いた、徳川吉宗が行ったとされる目安箱のように、生徒達の意見も広く募集し、それを踏まえた上で学校生活をより良くして行くのが、生徒会長の勤めだと考えて居た。れいなは、そんなれいかの思いに気付いたのか、

 

「ならキュアビューティ・・・あなたも生徒会長選挙に立候補なさい」

 

「・・・・分かりました!立候補致します!!」

 

 れいかは、れいなの挑戦を受けて立ち、生徒会長選挙に立候補する事を決めた。みゆきは目を輝かせると、

 

「本当!?だったら、私達れいかちゃんを応援するよ」

 

「「「ウン!」」」

 

 みゆきの言葉に、なお、あかね、やよいも同意すると、れいかは表情を和らげてみゆき達にお辞儀をし、

 

「急な事になってしまいましたが・・・お願い致します」

 

「「「「任せて!」」」」

 

 胸を叩いた四人だったが、突然やおいが叫び、

 

「ちょっと待ったぁ!私も、生徒会長選挙に立候補するぅぅ!!」

 

 やおいの突然の立候補宣言に、その場は思わず静まり返った。やおいは一同を見渡し、

 

「な、何で静かになるの?」

 

「ピース・・・あなた、生徒会長になって何がしたいの?」

 

 れいなに聞かれたやおいは、よくぞ聞いてくれましたとばかり、軽く咳払いすると、

 

「ゴホン!エェェと、私が生徒会長になったらねぇ・・・宿題は無くすでしょう、それに、休憩時間を増やすなぁ、十時と三時にはおやつタイムも作るでしょう、お昼寝の時間も居るよね、それに・・・」

 

「聞いた私がバカだったわ」

 

「話になりませんね・・・」

 

 やおいの滅茶苦茶な動機に、れいなとれいかは呆れ返り、みゆき達とみさき達が苦笑する。やおいは頬を膨らまし、

 

「何よ、立候補するのは自由でしょう?ハッピー、推薦人になってくれるよねぇ?」

 

「エッ!?私は、ビューティの推薦人になるからダメだよ」

 

「ガァァァン!?」

 

 みさきに聞いたやおいだったが、みさきはれいなの推薦人になるからと断った。やおいの視線が、あおいとなみに向けられ、

 

「じゃあ、サニーとマーチはなってくれるよね?」

 

「ウチも、ビューティの推薦人になる言うたから無理や」

 

「あたしもダメだな」

 

「ガガガァァァン!?」

 

 あおいとなみは、首を振りながらやおいの申し出を断った。やおいの視線がれいなに向けられると、

 

「じゃあ、ビューティは?」

 

「ハァ!?・・・バカなの?私も生徒会長に立候補するって言っているでしょう?」

 

「ウゥゥ、バカじゃないもん!」

 

 れいなが、呆れ返りながらやおいの申し出を拒否し、やおいが涙目になる。やおいは涙目になりながられいかを見つめ、

 

「推薦人って、同じクラスじゃなきゃダメなの?」

 

「エッ!?いえ、我が校の生徒なら、どなたでも構いませんよ」

 

「本当!?」

 

 れいかから、この学校の生徒なら誰でも良いと言われたやおいは、目をキラキラ輝かせながら、やよいを見つめた。やよいは思わず、瞬きしながら自分を指差し、

 

「わ、私!?」

 

「そう、やよい!やよいは、私の推薦人になってくれるよねぇ?」

 

「エッ!?で、でも、私もれいかちゃんの推薦人に・・・」

 

「アァァア、Wピース解散の危機になっちゃった」

 

「エェェ!?そんなぁぁ?」

 

「なってくれるよねぇ?」

 

「ウゥゥゥ・・・」

 

 やよいは思わず言葉に詰まった。先の体育祭でも、やおいは自分を励ましてくれた恩もあるものの、れいかは大切な仲間で、どうすれば良いのかやよいは分からず動揺していると、れいかがやよいに助け船を出し、

 

「やよいさん、私に気兼ねせず、やおいさんの推薦人になって上げて下さい」

 

「で、でも私、れいかちゃんを応援するって・・・」

 

「やよいちゃん、れいかちゃんの応援は私達がするから大丈夫だよ」

 

「みゆきちゃん・・・じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」

 

「ワァァァイ!これで立候補出来るぅ!!」

 

 やおいが両手を上げて喜びを表すも、れいかは首を傾げながら、

 

「でも、推薦人はもう一人必要ですよ?」

 

「宛てはあるのかよ?」

 

 なみに聞かれたやおいは、思わず口元をニヤリとし、

 

「フフフフ、私達Wピースには、可愛いパシリちゃんが居るから大丈夫」

 

 やおいがゲスい笑みを浮かべた瞬間、一同は、やおいのターゲットが誰だか直ぐに理解した。

 

「やよい、もう一人の私の推薦人の所に行くよ」

 

「う、うん・・・でも、勝手に決めて良いのかなぁ?」

 

「大丈夫!」

 

「じゃあ、れいかちゃん、みんな、ゴメンね」

 

 やよいはペコリと一同にお辞儀をし、やおいに腕を引っ張られながら去って行った。れいなは、呆れながら溜息を付き、

 

「ハァァァ・・・キュアビューティ、どうやら生徒会選挙は、私とあなたの一騎打ちになりそうね?」

 

「そうですね、私も全力を尽くします」

 

 れいかと、れいな、二人の信念を掛けた選挙活動が始まろうとしていた。

 

 

 一年一組・・・

 

 窓側の一番前に座る真琴は、休み時間に仲の良いさなえとゆきと談笑していたものの、不意に悪寒に襲われ、思わず辺りを見渡した。さなえとゆきは不思議そうに首を傾げ、

 

「真琴ちゃん、どうしたの?」

 

「急にソワソワしだして?」

 

「う、うん・・・何だか急に悪寒が走って・・・」

 

「風邪かなぁ!?」

 

「念の為保健室行く?」

 

 そんな会話をしていると、教室内がざわめき出し、真琴達が何気なく前ドアを見ると、そこにはニコニコしたやおいと、後ろでペコペコ後輩達に頭を下げるやよいの姿があり、真琴は慌ててしゃがみ込んだ。やおいは教室内をキョロキョロ見渡しながら、

 

「まぁぁこぉちゃん!」

 

 やおいに呼ばれた真琴は、益々悪寒が走り、この場から逃げ出したい衝動に駆られたものの、下手に動くとやおいに見つかると考え、さなえとゆきに頼み込み、二人の背後で耳を塞ぎながらジィとして居た。だが、やおいの行動が気になるのか、真琴は耳を塞ぐのを止め、やおいの言動に聞き耳を立てた。

 

「アレェ!?返事が無いねぇ・・・まぁこぉちゃん、出て来ないなら、このまま推薦人に名前書いて提出しちゃうよ?」

 

(推薦人!?バッドエンドピース、今度は何を企んで居るの?)

 

 真琴が恐る恐る顔を出すと、真琴を見付けたやおいがゲスイ顔を浮かべ、用紙をヒラヒラさせた。真琴は、嘗て自分が失敗した漫画原稿を、クラスメイトのみんなに話すと思い、慌てて飛び出すと、やおいは真琴を指差し、

 

「ソード、見~付けた!」

 

「ソードって呼ばないで!それより何の用よ?」

 

「何の用?」

 

 やおいは、耳に手を当てて真琴に何かアピールすると、真琴はハッとした表情になると不機嫌そうに、

 

「何の用ですか?や・お・い・先輩」

 

「そうそう、それで良いの。先輩には敬語を使わなきゃダメだよあのね、私今度生徒会長に立候補する事になったから、やよいとソ・・・じゃなくて、真琴に推薦人になって貰うから、その報告に来ただけだよ」

 

「生徒会長!?あなたが?」

 

「ウン!」

 

「何で私が、勝手に推薦人にされてるのよ?」

 

「だってぇ・・・真琴は、私達のパシ・・・」

 

「ワァァァァァ!」

 

 真琴は慌ててやおいの口を塞ぎ、教室からやおいとやよいを連れ出した。階段に連れ出した真琴は、やおいとやよいから事の顛末を聞き、自分が知らない間に、やおいの推薦人にされた事を知った。真琴は大きく頬を膨らまし、

 

「何で勝手に決めるのよ?れいかさんが出るなら、私は、れいかさんの応援するわ」

 

「またまた、真琴は、私達Wピースのパシリ何だから、言う通りにしなきゃ」

 

「パシリじゃなぁぁい!」

 

 そう叫ぶ真琴だったが、悪知恵に長けたやおいは、真琴の数々の失敗を上げ、協力しないと生徒会長選挙でつい話しちゃうかもと脅し、真琴を無理矢理陣営に引き込んだ。

 

 こうして始まった生徒会長選挙、三人の候補者が、七色ヶ丘中学校生徒達に自己アピールを始めた。やおいは、真の公約は本番当日まで秘密にして、ありきたりな内容でアピールするも、その親しみやすい人柄で好印象を与え、れいなは、その毅然とした態度に好印象を与えた。れいかは、生徒達の声を取り入れながら、一丸となって学校を盛り上げようと訴えた。

 

 日に日に盛り上がっていった生徒会長選挙は、本番当日を迎えた!

 

 体育館に集まった、七色ヶ丘中学校の全校生徒の視線が、生徒会長選挙に立候補した三人の候補者を見つめる中、司会に立ったのは、前生徒会長の入江だった。入江から、順に立候補者の名が読み上げられ、先ずやおいが挨拶に立った。軽く咳払いしたやおいは、

 

「生徒会長に立候補した、二年一組の黄野やおいでぇす!私が生徒会長になったらぁ・・・何と、十時と三時におやつの時間を作りまぁぁす」

 

『ワァァァ!』

 

 やおいの予期せぬ公約を聞き、一年生から歓声が沸き、二年と三年からは失笑が漏れた。やおいは両手を振って一年に愛想を振りまき、

 

「どうもどうも!更に、宿題も無くしまぁぁす!」

 

『ワァァァ!』

 

「更に更に、漫画やゲームも持ち込み放題にしまぁぁす!」

 

『ワァァ!』

 

 再び一年生から大歓声が沸き、真琴は思わず、やおいが当選したらどうしようかと不安を覚えた。そんなやおいの公約を聞き、堀毛先生の眉間に皺が寄り、隣に居た佐々木先生と何やらヒソヒソ話を始めた。調子に乗ったやおいは、

 

「それに、お昼寝の時間も・・・・エッ!?」

 

 やおいの演説の途中であったが、堀毛先生と佐々木先生が壇上に上がり、やおいの両脇を二人で掴むと、佐々木先生は、困った表情でやおいに話し掛け、

 

「黄野さん、我が校の生徒会長に、そんな権限はありません!」

 

「黄野さん、そんな悪ふざけをするなら・・・あなたの立候補は却下します!」

 

「エェェェェェェ!?何でぇぇぇぇ?」

 

 佐々木先生と堀毛先生に両脇を抱えられ、引き摺られるようにやおいは強制退場し、立候補取り消しとなった。場内に失笑が響く中、やおいの推薦人だったやよいと真琴も呼び出され、やおい、やよい、真琴は、体育館から職員室に連れ出され、佐々木先生と堀毛先生からお説教をされた。体育館では、何事かとざわめく生徒達を沈めようと、入江は苦笑しながら、

 

「エェェ、予期せぬハプニングがありましたが、このまま生徒会長選挙を続けたいと思います・・・では、次に青田れいなさん!」

 

「ハイ!」

 

 入江から紹介されたれいなは、毅然とした態度で倚子から立ち上がり、マイクに近付いて行った。生徒達からは、何所か威厳があるれいなを好意をもって見つめる視線が結構居た。れいなは、マイク前で一礼し、

 

「生徒会長に立候補した、二年一組青田れいなです!私が立候補した理由はただ一つ・・・」

 

 れいなが演説を始めたその時だった・・・

 

 やおいは嘘泣きをして堀毛先生と佐々木先生を騙し、職員室からやよいと真琴を置いて逃げ出し、バッドエンドピースの姿に変化して体育館に戻って来ると、

 

「何で私だけ除け者なのよぉぉぉ!頭来ちゃった・・・世界よ、最悪な結末に変わっちゃって!白紙の未来を黒く塗りつぶしちゃおう!!」

 

 バッドエンドピースは、黒き書を取りだし、黒い絵の具を黒き書を開いて、白紙のページに勢い良く叩き付けると、体育館の天井が不気味に黄色く変化し、その周りを落書きで描いたようなイラストが覆い、七色ヶ丘中学校の面々が、ネガティブな言葉を喋り出し、バッドエナジーが黒き書に吸い取られ、ピエーロ完全復活の目盛りが上がった。れいなは、険しい表情でバッドエンドピースを見つめながら声を掛け、

 

「ピース、これは何の真似?」

 

 れいかもれいな同様、険しい表情でバットエンドピースを睨み、

 

「生徒会長選挙を妨害しようとする何て・・・」

 

「許さない!」

 

「許せません!」

 

 互いにライバルでありながら、まるで示し合わせたかのように、れいなとれいかが同時に叫び、れいなはバッドエンドビューティの姿に、れいかはスマイルパクトを取りだした。

 

「プリキュア!スマイルチャージ!!」

 

「しんしんと降り積もる、清き心!キュアビューティ!!」

 

 バッドエンド空間を出現させて、生徒や教師達をネガティブにして、生徒会長選挙を滅茶苦茶にしたバッドエンドピースに対し、Wビューティが並び立った。二人の迫力の前に、バッドエンドピースは少しビビリながらも、

 

「な、何よぉ!?私を除け者にしようとしたのが悪いんだからぁ」

 

 だがWビューティは、そんなバッドエンドピースの言い分に耳を貸さず、険しい表情でバッドエンドピースを指差し、

 

「悪いのは・・・」

 

「あなたの方です!」

 

「「頭を冷やして反省しなさい!」」

 

「バッドエンド・・・」

 

「ビューティ・・・」

 

「「ブリザ~~ドォォォ!!」」

 

「ヒィィィィィィ!?」

 

 まるで呼吸を合わせたかのように、Wビューティが放ったツインブリザードが、逃げようとしたバッドエンドピースに直撃し、バッドエンドピースの全身が凍り漬けになった。みさき、なみ、あおいは、バッドエンドピースに近づくと、バッドエンドピースは、凍り漬けにされて寒いのか、涙目になりながら三人に助けを求めた。

 

「エェェェン!ハッピー、マーチ、サニー・・・寒いよぉぉ、助けてぇぇ」

 

 バッドエンドピースから助けを求められた三人であったが、何所か人事のようにバッドエンドピースを眺め、

 

「アララ!?二人のビューティを怒らせちゃったねぇ?」

 

「まっ、少しそのままおとなしくしてな」

 

「自業自得ちゅう奴やなぁ・・・生徒会長選挙が終わったら、ウチが氷を溶かしたるから、それまでおとなしゅうしてや」

 

「そ、そんなぁぁ!?」

 

 バッドエンドピースは、三人が直ぐに助けてくれると思ったものの、三人はそのままの姿で居るように伝え、バッドエンドピースは今にも泣き出しそうな表情を浮かべた。三人は更に、凍り漬けになったバッドエンドピースの周りに立つと、

 

「「「邪魔だから、どっかに退かそう」」」

 

「エェェェン!酷いぃぃぃ!!」

 

 みさき、あおい、なみの三人は、凍り漬けになって泣き喚くバッドエンドピースを、何処かへと運び去った。みゆきはそんなみさき達を見て苦笑しながら、

 

「アララ・・・でも、今の二人のビューティ、凄かったよねぇ?」

 

「せやなぁ、何やかんやで、根っ子ではあの二人似とるなぁ」

 

 並び立つWビューティを見たあかねが、思わず呟いた。なおは、れいかの心意を読み、

 

「真面目と言うか、何と言うか、れいかは、生徒会っていう仕事に情熱を注いでるからねぇ・・・バッドエンドピースに選挙を妨害された事が、許せなかったんだろうね」

 

「そうだね・・・みさきちゃん達がバッドエンドピースを何処かに連れて行ったし、直ぐにみんなも元に戻るね」

 

 みゆきの言葉を表すかのように、Wビューティが変身を解いたと同時に、バッドエンド空間が解除され、生徒達や教師が我に返った。入江は辺りをキョロキョロし、

 

「アレ!?僕は一体何を?」

 

「続きを始めても良いのかしら?」

 

 れいなに聞かれた入江は、一瞬キョトンとするも、直ぐに我に返り、

 

「エッ!?そ、そうだったね、始めて下さい」

 

「では改めまして、生徒会長に立候補した、二年一組青田れいなです!私が立候補した理由はただ一つ、それは生徒会長として、この学校を他校が羨む美しい学校へとする事です。美しい学校とは、色々な意味があります・・・学校を美しくする事、生徒達の美への思いを深めさせる事、その為にも、新たに風紀委員を創設したいと考えます。私が理想とする生徒会長とは、己が信念を貫く事、時には皆さんに、厳しい言動を言う事もあるかも知れません。しかし、トップに立つとは、例え恨まれる事になっても、生徒達を美しく導いていく事と私は考えます。私は、生徒達の先頭に立ち、皆さんを引っ張って行く事をここにお約束致します!是非皆さんも、この私を信じ、私に全てを任せて付いて来て下さい。後悔は決してさせません!!」

 

 れいなが演説の最後に発した、後悔はさせないという言葉は、生徒達の心に響いたようで、生徒達から盛大なる拍手が浴びせられた。れいかは、れいなが持つカリスマを目の当たりにし、少し自信が揺らぎそうになっていた。

 

(生徒達のこの歓声・・・みなさんが求めているのは、れいなさんのような人なのでしょうか?)

 

 盛大な拍手で送られたれいなは、勝利を確信したかのように自分の席に戻り、れいかをチラリと見た。その表情は、れいかのお手並みを、拝見しようと言っているかのようだった。動揺するれいかに、入江から声が掛かり、

 

「では次に、青木れいかさん」

 

「ハイ!」

 

 れいかは、緊張した面持ちで倚子から立ち上がった。生徒達が、自分の演説に聞く耳を持ってくれるだろうか、れいかはマイクに近付きながらも、不安が大きくなっていた。その時だった、

 

「れいかちゃ~ん!」

 

 みゆきがれいかの名を呼んだ。ただそれだけだったのに、れいかは、今までの不安が嘘のように消えた事を悟った。

 

(みゆきさん、ありがとう!私は、何を不安に感じていたのでしょうか、私の思いが生徒の皆さんに伝わらないなら、伝わるまで訴え続ける!!)

 

 れいかの表情が変わった!

 

 れいかは、マイクの前で一礼すると、

 

「この度、生徒会長選挙に立候補した、二年二組青木れいかです。私が生徒会長として目指す事は、我が校を清く明るく美しい学校に皆さんと共にする事です。それには、皆さんのお知恵も借りなければなりません。私は、皆さんの声が直接生徒会に届くように、目安箱を設置したいと考えて居ます。私の考え方は、面白みに欠けて退屈かも知れません。ですが私は、皆さんと共に、この学校で過ごす時間を大切に育んでいきたい。私に皆さんの力を貸して下さい!」

 

 れいかはそう演説すると、最後にお辞儀をした。れいなと違い、盛大な拍手が起きる事は無かった。だが、数人が拍手をし始めると、段々拍手の音が大きくなり、先程のれいなに勝とも劣らない拍手が、れいかにも送られた。れいかは、倚子に座ると少し目頭が熱くなるのを感じていた。

 

「それでは、これより投票を始めます。入場した時に投票用紙は貰ってますね?それでは先ず、黄野やおいさんの名前の所に、線を引いて除外して下さい。そして、青田れいなさん、青木れいかさんの名前の下にある四角い枠の中に、どちらが生徒会長になって欲しいか、なって欲しい人の下に○をして、前にある投票箱に順番に投票して下さい」

 

 入江の説明を聞き、一年から順番に投票が始まった。教師達がそれぞれ投票箱の後ろに二人ずつ並び、投票が終わると即座に開票を始めた。その間もれいかとれいなは、舞台の上で倚子に座りながら、集計結果が出るのを待っていた。

 

 数十分後、選挙結果が出て、司会者である入江の下に当選者の名前が告げられた。入江はマイクを握る力を強めると、

 

「結果が判明しました!近年稀に見る接戦でしたが、来期の生徒会長は・・・・・青木れいかさんに決定しました!!」

 

『ワァァァァァァ!』

 

『おめでとう!』

 

 生徒達から、盛大な拍手と歓声が沸き上がった。呆然とするれいかに対し、敗北したれいなは、無言のまま舞台を降りようとした。れいかはそれに気付くと、

 

「れいなさん、待って!待って下さい!!」

 

「何か用!?勝ったのはあなた何だから、私がここに残る理由は無いわ」

 

「いえ・・・れいなさん、以前私は、あなたに説明した事がありましたよね?」

 

「どういう事!?」

 

「れいなさん・・・私は次期生徒会長として、あなたに副生徒会長をお願いしたいと思います」

 

「!?」

 

「入江前生徒会長が仰有っていましたよねぇ?近年稀にみる接戦だったと、裏を返せば、それは生徒の皆さんが、れいなさんを必要としている事を意味します。私は、生徒の意見を尊重し、れいなさん、あなたと一緒に、生徒会を美しく盛り上げていきたいと考えます」

 

 れいかはそう言うと、右手を前に差し出した。れいなは、フッと口元に笑みを浮かべると、れいかが差し出した右手を右手で握り返し、

 

「良いでしょう!今回はあなたの勝ちだもの・・・敗者は素直に勝者の言う事を受け入れましょう。でも、後悔する事になるかも知れないわよ?」

 

「フフフ、そうですね」

 

『ワァァァァァァ!』

 

 れいかとれいなが壇上で握手をした事で、この日一番の大歓声が二人に浴びせられた。みゆき達も、みさき達もその中に混じり拍手をしていたが、みさきは首を傾げると、あおいとなみに話し掛け、

 

「そう言えば、何か忘れて無かったっけ?」

 

「ン!?ウチ覚えとらん?」

 

「あたしも・・・まぁ忘れるぐらいだし、たいした事じゃ無いさ」

 

「それもそうだね」

 

 こうして、生徒会長選挙は幕を下ろし、凍り漬けにされたまま、一人忘れられたバッドエンドピースは、堀毛先生と佐々木先生に怒られて、落ち込んで戻って来たやよいと、ふて腐れて戻って来た真琴に見つかり、真琴は怒っていた事も忘れたかのように、バッドエンドピースを指差して大笑いをして居た・・・

 

 

 魔界・・・

 

 双児宮に呼び出された双魚宮のニクスと、処女宮のリリスは、カインからの命令を聞き呆然としていた・・・

 

「シーレイン様を処刑!?ど、どうして?それは以前に・・・」

 

「お前達も今のシーレインの姿を見ているのだろう?最早あの腑抜けには、生かす価値は無いと魔王ルーシェス様はお考えだ」

 

「「・・・・・」」

 

 カインの言葉を、ニクスもリリスも返す言葉は無かった。何故なら、アモンに裏切られたシーレインは、あのまま心を閉ざしてしまって居た。ニクスは、そのままカインに平伏し、

 

「カ、カイン様、お慈悲を!どうか、どうか」

 

「私からも、お願い致します。シーレイン様の処刑だけは・・・」

 

 リリスもニクスの横でカインに平伏すと、カインの口元がニヤリとした事に、二人は気付く事は無かった。

 

「ウム!お前達の活躍によっては、この処刑、私から掛け合い無かった事にする事も可能だぞ?」

 

「「本当でございますか?」」

 

「嘘は言わん・・・お前達が、この私の命令通りにしてくれるならなぁ?」

 

 カインの拒否する事を許さぬかのような気に、ニクスとリリスは、思わずゾッと鳥肌が立った。

 

     第百十七話:スマイルプリキュアとバッドエンドプリキュア(後編)

                    完




 第百十七話投稿致しました。
 今回は後編で、なおとなみ、れいかとれいなの話を、スマイル本編であった話で書いてみました。前回ゲストキャラ出すと書きましたが、次回に回しました。

 劇場版魔法つかいプリキュアが発売され、改めて見ましたがやっぱ良いなぁこの映画・・・ドリームスターズも楽しみですが、見に行くかどうかは考え中です。
 キラプリ・・・1話は録画出来てましたが、2、3、4話と録画失敗してましたwまあ、2話と3話はリアルタイムで見られたんですけど、4話は親父の三回忌で見られませんでした。マカロン回で、キラプリ萎えかけた気持ちを立ち直らせます・・・

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