プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第百十三話:Wピース

1、真琴、痛恨のミス

 

 プリキュア合宿を終えた一同は、再び元の生活に戻り、夏休みを過ごして居た・・・

 

 やよいは、プリキュア合宿でみんなに協力して貰い、頑張って描いたネームを元に、編集者に言われたページの描き直し作業をしていた。やよいは、編集者から画については褒められたものの、ストーリーに関しては、王道過ぎて少し面白みに欠けるから、もうちょっと遊び心を加えた方が良いと言われていた。

 

「みんなからアドバイス貰って、ネーム描いてみたけど、これで本当に大丈夫なのかなぁ?」

 

 初めて投稿した作品であるミラクル・ピースは、やよいが憧れていたヒーロー物を、女の子を主役にした作品で、こんなヒロインになりたいという、やよいの願望を表したキャラでもあった。以前、バッドエンド王国でアカオーニと戦った時も、ミラクルピースの事を思い描いた程だった。

 

「みんなと考えたんだし、きっと大丈夫」

 

 やよいはそう意気込み、ベレー帽を被って気持ちを高ぶらせて居ると、家のチャイムが鳴った。やよいが玄関を開けると、そこにはみゆき、あかね、なお、れいか、真琴の姿があった。みゆきは、あゆみの話題に触れ、

 

「あゆみちゃんは、用事があって来られないみたいだけど、その分私達が手伝うよ」

 

 五人は、やよいの陣中見舞いを兼ね、何か手伝える事があれば、手伝うと申し出てくれた。やよいは目をウルウルさせて感動し、

 

「みんな、ありがとう・・・さあ、入って」

 

『お邪魔します!』

 

 一同はやよいの家に上がり、部屋へと通された。やよいから漫画についての簡単な説明をされ、やよいはリビングからテーブルを持ってくると、みゆき達の作業場として提供した。みゆきは消しゴム掛け、れいかはトーン貼り、なおは効果で、スピード線などを描いた。あかねと真琴は、分担してベタ塗りを担当する事になった。

 

(ベタ!?指示された所を黒く塗れば良いのね?)

 

 真琴は、漫画について良く分かっては居なかった。そしてやよい達一同も、真琴がこの世界の事を、まだ良く分っていない事も忘れて居た・・・

 

 やよいが下書きとペン入れをしたページを、みゆき達が受け取って仕上げていく中で、真琴にも漫画用紙が回ってきた。

 

「真琴、こっちのベタ頼むわ」

 

 あかねから二枚の漫画原稿を渡された真琴は、ジィと漫画用紙と睨めっこすると、

 

(この枠を黒く塗りつぶすのね?折角画が描いてあるのに・・・)

 

 真琴は首を傾げながらも、四角く括られた画の中を、黒く塗りつぶしていった・・・

 

「出来ました!」

 

 真琴が黒ベタ作業を終えた事を報告すると、一同は感心し、

 

「へぇ、まこちゃん早いねぇ?」

 

「本当、あたしはまだスピード線書き終えてないのに」

 

「私も、まだトーンを貼ってる最中ですよ」

 

 みゆき、なお、れいかも、真琴の要領の良さに驚き、あかねもウンウン頷くと、

 

「ホンマやなぁ、ウチもまだ・・・・・エッ!?」

 

 あかねの目に、チラリと真琴が担当した、漫画原稿が視界に入り、あかねは思わず我が目を疑った。折角やよいが描いた画を、あろう事か枠だけ残して、黒く塗りつぶしてあったのだから・・・

 

 あかねは口をパクパクして放心し、あかねの異変に気付いた一同も、真琴が手に持つ漫画用紙を見て、思わず呆然とした。あかねは呆気にとられながら、

 

「ま、真琴、何しとんねん?」

 

「エッ!?言われた通り黒く塗りつぶして・・・」

 

「いや、それはそうねんけど・・・」

 

 一同の異変に気付いたやよいは、真琴を庇うように、

 

「まこちゃん、大丈夫だよ!はみ出したところは、修正ペンで消せるから」

 

 真琴をフォローしたやよいだったが、あかねとなおは跋が悪そうな表情で、

 

「いや、はみ出したちゅうか・・・」

 

「描き直した方が早いと言うか・・・」

 

 描き直した方が早いという言葉に反応し、思わずやよいが後ろを振り向き、

 

「エッ!?どういう事?」

 

 その瞬間、やよいの目に、真琴の手に握られた漫画原稿が、黒く塗りつぶされている事に気付いて呆然とした。描き直した枚数は数枚で、真琴が塗りつぶした枚数は、二枚ではあったが、ミラクル・ピースで漫画原稿を初めて描いたやよいにとって、何度も下書きを描き直して、苦労しながら描き上げた作品が、ほんの数分で水泡に帰してしまった。やよいの目にジワリと涙が浮かんでくる。真琴は、そんなやよいを見て狼狽へ、

 

「あ、あの・・・」

 

「酷いよ!まこちゃん!!」

 

 やよいは、堪えていた感情が爆発したように、思わず真琴を怒鳴ると、真琴の身体はビクリとし、慌ててやよいに頭を下げて、

 

「ゴ、ゴメンなさい・・・」

 

「やよい、真琴を責めんでやって・・・ちゃんと説明せ何だウチが悪いんや」

 

「や、やよいちゃん、あたし達手伝うから、もう一回・・・」

 

 あかねが真琴を庇い、なおも自分達が手伝うから、もう一度描いてみようと励まそうとしたものの、やよいの心は深く傷ついていた。

 

「もう、もう、放って置いて!」

 

「アッ!?や、やよいさん?」

 

「待って!やよいちゃぁぁん!!」

 

 やよいは、れいかやみゆきが止めるのも聞かず、漫画用紙を一同から引ったくるように手に取ると、泣きながら玄関を飛び出して行った。呆然とその様子を見ていた真琴の目にも、ジワリジワリと涙が浮かび、

 

「ウッ・・・ウワァァァァン」

 

 真琴は、自らの非でやよいを怒らせてしまい、その責任を感じて泣きじゃくり、みゆき達は、そんな真琴を気遣いながらも、飛び出して行ったやよいの身を案じた。

 

 

2、やよいとバッドエンドピース

 

 佐々木先生の家で、真琴同様居候生活をしているアン王女だったが、部屋のドアを佐々木先生がノックし、

 

「アン王女、真琴から電話ですよ!何か泣いてるのが気になるけど・・・」

 

「エッ!?ソードが?」

 

 アン王女は、佐々木先生から携帯を借りると、真琴と会話を始めた。

 

「ソード、どうしました?何かあったのですか?」

 

「アン王女ぉぉぉ・・・わ、私、どうしたら良いんでしょう?」

 

 真琴はそう言うと、事の顛末をアン王女に話した。アン王女は何度も頷き、

 

「分かりました!家臣の失態は、わたくしの責任も同然・・・今からわたくしもそちらに向かいます」

 

 アン王女は携帯を切り、佐々木先生に返すと、佐々木先生も気になったのか、

 

「アン王女、真琴に何かあったの?」

 

「トラブルが発生してしまったようです・・・所で佐々木先生」

 

「何でしょう?」

 

「漫画って・・・どう描くのですか?」

 

「エッ!?」

 

 佐々木先生は、アン王女が発した意外な言葉を聞いて、思わず呆然とした。

 

 

 夏休みを満喫していたやおいは、この日も個人活動をして、公園のベンチで気持ち良く眠って居ると、近くで大きなバッドエナジーを感じて目を覚ました。

 

「アレェ!?バッドエナジーを感じるぅ・・・どうしようかなぁ?夏休みは、お仕事休もうってみんなで決めたけど・・・」

 

 やおいは、腕組みしながら考え込むも、楽をしてバッドエナジーを回収出来るなら、貰って置こうと、バッドエンドピースの姿へと変化し、黒の書を取り出した。取り出した瞬間に、黒の書にバッドエナジーが吸収されていき、ピエーロ完全復活の目盛りが上がった。バッドエンドピースが出所をチラリと見ると、それはベンチに座って落ち込んでいるやよいだった。

 

「あれは!?そうだ!暇つぶしにからかっちゃおうっと!」

 

 バッドエンドピースは、小悪魔的な表情を浮かべると、そっとやよいに近付いて行った。ベンチに座って居たやよいは、黒く塗りつぶされたページを見ると溜息を付き、

 

「ハァ・・・折角の原稿が台無し!でも、まこちゃんにちゃんと説明しなかった私にも、非はあるよねぇ・・・ハァ」

 

 やよいにも、真琴がわざとやった事では無いと、改めて冷静になってみれば理解出来た。真琴がこっちの世界にやって来てから、まだ一ヶ月ちょっとだったのだから・・・

 

「まこちゃんの事、思わず怒鳴っちゃったけど・・・」

 

「フゥゥン、ソードと喧嘩したんだぁ?」

 

「ウウン、喧嘩って言うか・・・・・エッ!?」

 

 やよいは、背後から話し掛けられた事に驚き、思わず振り返ると、ニヤニヤしたバッドエンドピースが、ベンチの背もたれに両腕を乗せ、興味ありげな表情で、やよいが手に持つ漫画原稿を見つめた。バッドエンドピースの右手が伸び、驚いているやよいから漫画原稿を奪い取ると、

 

「ねぇねぇ、これ何!?見せてぇ!」

 

「アッ!?ダメェェ、返してぇぇ!」

 

「嫌だよぉぉ!ベェェェ」

 

 バッドエンドピースは、やよいに舌を出して大きな木の上に移動し、やよいはその木の下で、返してと叫びながら途方に暮れた。バッドエンドピースは、やよいが描いたミラクル・ピースを、ジィと読んでいくと、

 

「ねぇ、この二枚だけ、四角の中真っ黒だけど?」

 

「そ、それは、まこちゃんが間違えて塗りつぶしちゃったから・・・」

 

「ソードが!?フゥゥン、それでかぁ・・・」

 

 バッドエンドピースは、木の上から飛び降りると、やよいの前に着地し、やよいに漫画原稿を返した。やよいは慌てて漫画原稿を胸に押しつけて隠すも、バッドエンドピースは腕組みすると、

 

「ウゥゥン、画は良いから読みやすいんだけど、何かあなたの漫画って物足り無くて、面白みに欠けるんだよねぇ?」

 

「エッ!?」

 

 バッドエンドピースの感想を聞いたやよいは、思わずドキリとした。編集者に言われた事と、ほとんど同じだったのだから・・・

 

 やよいは身を乗り出して、バッドエンドピースに話し掛け、

 

「ど、どの辺が物足りないの?」

 

「エェェ!?聞きたい?続き教えてくれるなら、私も教えて上げても良いんだけどなぁ?」

 

「あのね・・・編集の人にも同じ事言われたの!私の漫画は、遊び心が足りないって・・・それで悩んでて・・・」

 

 やよいがモジモジしながら、本音をバッドエンドピースに話すと、バッドエンドピースはウンウン頷き、

 

「その編集さんって人、見る目あるね!私もそうだと思う、あなたの漫画には・・・お色気が足りないわ!!」

 

「お色気ぇぇ!?」

 

 やよいは、頭をトンカチで殴られたような衝撃を覚えた。ミラクル・ピースは、ヒーロー物を女の子で描いた作品で、お色気要素など考えた事も無かった。

 

「で、でも、ミラクル・ピースは、ヒーローの女の子版で描いたから・・・」

 

「エェェ!?昔の漫画でもあったよ!変身する時に裸になっちゃったり、パンツ丸出しになっちゃったりとか」

 

「そ、それは・・・そうだけど」

 

「時代は・・・エロだよ!」

 

「ガァァァァァァァァァン」

 

 バッドエンドピースが発した、時代はエロという言葉に、やよいの身体は、電流が流れたようなショックで、その場で膝から崩れ落ちた。自分が全く想像しなかった事を、バッドエンドピースは、難なく発想したのだから・・・

 

 やよいは立ち上がると、バッドエンドピースの両手を握り、

 

「ね、ねぇ、今暇!?良かったら家に来ない?お菓子もあるよ」

 

「エェェ!?一応、私達敵同士だしぃ・・・ところでチョコもある?」

 

「ウン!あるよ」

 

「そうと決れば・・・面倒だから空から行くよ!」

 

「エェェェ!?」

 

 バッドエンドピースからヒントを得たやよいは、バッドエンドピースに連れられ、自宅へと戻って行った・・・

 

 

3、コンビ結成!

 

 飛び出して行ったやよいの身を案じ、みゆき、あかね、なお、れいか、真琴は、途中で合流したアン王女と共に、外へ出て真琴を捜し続けた。

 

「見当らない・・・やよいちゃん、何所まで行ったんだろう?」

 

 みゆきが不安そうに、飛び出して行ったやよいの身を案じると、あかねは一同の顔を見渡し、

 

「一緒に捜してても埒がアカン。手分けして捜そうや」

 

「そうだね、じゃあ二人ペアで捜そう」

 

 なおもあかねの案に同意し、二人でペアを組んで捜そうと提案した。れいかも頷き、

 

「分かりました!合流場所は?」

 

「わたくしとソードは、あまり土地勘がありませんし、やよいさんの家の前ではどうでしょう?」

 

「「「「「ウン」」」」」

 

「スイマセン・・・皆さんに迷惑掛けちゃって」

 

 アン王女の提案で、待ち合わせ場所をやよいの家の前にした一同、真琴は申し訳無さそうな表情で一同に詫びるも、皆真琴に対して労りの言葉を掛けてくれた。みゆきは、念を押すように一同に話し掛け、

 

「じゃあ、一時間後にやよいちゃんの家の前で!」

 

「キャンディも行くクルゥ」

 

 みゆきは頷き、キャンディを連れて真琴とペアを組み、あかねとアン王女、なおとれいかのペアで別れ、再びやよいを捜しに向かった。

 

 

 やよいはそんな事とは知らず、バッドエンドピースを家に招待していた。バッドエンドピースは、再びやおいの姿に変わり、やよいは玄関を開けるも、中は静まり返って居た。やよいは少し寂しそうに、

 

(みんな、帰っちゃったんだ・・・)

 

「さあ、上がって!」

 

 やよいは気を取り直し、やおいを中に招待した。やおいは室内を見渡し、

 

「フゥゥン、ここがあなたの家なの?」

 

「ウン!私の部屋は此処だよ」

 

 やよいは、やおいを自分の部屋へと招き入れた。やおいが周りを見渡すと、ヒーロー物のグッズや、以前買ったロボッターの超合金が飾られ、やよいがアニメや特撮好きなのが、やおいにも分かった。やよいは、オレンジジュースとチョコを含めたお菓子を持って戻って来ると、やおいに差しだし、

 

「はい、食べて」

 

「ありがとう・・・あなたって、アニメとか好き何だねぇ?まあ、私もだけど」

 

「私の事は、やよいで良いよ!やおいちゃんも、アニメ好きなの?」

 

「私は、深夜アニメの方かなぁ・・・」

 

「深夜アニメかぁ・・・」

 

「そっ、エッチなの多いよ?」

 

「そ、そう何だぁ・・・」

 

「そういう作品見るのも、勉強になると思うよ?」

 

 やおいの提案に、やよいもコクリと頷いた。やよいは、ヒーロー物やロボット物が好きだが、深夜アニメはほとんど見た事は無かった。やよいは、目を輝かせると、一枚の漫画原稿をやおいに渡し、

 

「ちなみに、やおいちゃんなら、この場面どうする?」

 

「ン!?私?私なら・・・此処でこのヒロインが吹き飛ばされるでしょう?このシーンに太股のアップ描いて、股間付近が見えるか見えないかぐらいの描写入れるかなぁ・・・」

 

 やおいはそう言うと、慣れた手付きで鉛筆を握り、簡単なラフを描いた。やよいは、慣れた手付きのやおいに驚きながらも、ラフを見せて貰うと、確かに話の流れに上手く乗っており、違和感は感じなかった。

 

「確かに、これなら違和感沸かないねぇ・・・」

 

「でしょう!?こういうシーン増やして、お色気有りのヒロイン物にすべきだよ」

 

 やおいの提案に感化され、やよいは鼻息荒く頷き、

 

「ウン!何だか少しイメージ沸いてきた。やおいちゃん、ラフ描くから遠慮なく意見してみて」

 

「まっ、お菓子も御馳走になったし、そのくらいは良いかなぁ・・・」

 

 やよいとやおい、二人は楽しそうにミラクル・ピースの内容を話し合った。話し合っている内に、やおいも徐々に、ミラクル・ピースにたいして親近感が湧いていた。二人でネームを描くと、予想以上に早く終わり、やおいは満足気に頷き、

 

「じゃあ、やよいは下書きして。ペン入れは私がして上げる」

 

「本当!?でもやおいちゃん、漫画を描くの、慣れているよねぇ?」

 

「まあねぇ!ウチのビューティ、陰険な所あるでしょう?でも、直に言うと直ぐ怒るから、漫画で憂さ晴らししている内に、何か上達したみたい」

 

「そうなんだぁ・・・」

 

 やおいと話して居る間に、やよいの心の中に、ある構想が浮かび上がった。自分一人で漫画を描くのは、今のままでは厳しい気がするものの、やおいがパートナーとして加わってくれれば、自分の中の引き出しが、更に増える気がしてワクワクしてきた。やよいはやおいに話し掛け、

 

「ねえ、やおいちゃん・・・一緒にコンビ組んで、漫画描いてみない?」

 

「エェェ!?私達、敵同士だよ?」

 

「でも、それはプリキュアになった時だし・・・私は、やおいちゃんと一緒に漫画描けたら、もっと成長出来る気がするんだよねぇ?」

 

「ウ~ン・・・私、どっちかって言うと、エロい画描く方が好き何だけどなぁ?」

 

「程々なら、ミラクル・ピースでも描いて良いよ?」

 

「本当!?どうしようかなぁ・・・」

 

「二人で漫画描く時は・・・毎回おやつとジュース付き」

 

「乗ったぁぁぁ!」

 

 おやつに釣られたのか、やおいは右手を高々と上げてやよいとコンビを組む事を承諾した。やよいは心から嬉しそうにバンザイし、

 

「ワァァァイ!じゃあ、コンビ名を決めようか?」

 

「私達ピースだし、面倒だから、Wピースで良いんじゃない?」

 

「何か漫才コンビみたいだけど、私もそれで良いよ!」

 

 やよいとやおい、どちらが言いだしたわけでも無かったが、やよいが右手で、やおいが左手でピースしながら腕を突き出すと、二人のピースが合わさり、

 

「「美少女漫画家コンビ!Wピース!!・・・・・エへヘヘヘへ」」

 

 やよいとやおい、二人は思わずハモって顔を見合わせると、可笑しそうに笑い出した・・・

 

 

 みゆき達は、必死にやよいを捜したものの、やよいの姿は全く見当らず、一同は重い足取りでやよいの家の前まで戻って来た。

 

「念の為・・・チャイム押してみようか?」

 

「そうやな、もしかしたら帰ってるかも知れんし」

 

 みゆきの提案にあかねも同意し、みゆきの頭に乗っかったキャンディがチャイムを鳴らすと、中からドタドタ足音が聞こえて来た。みゆきはホッと安堵し、

 

「良かった!やよいちゃん帰って居るみたい」

 

 玄関のドアが開き、やよいが顔を出すも、さっきと打って変わってやよいは上機嫌で、

 

「みんな、さっきはゴメンね!まこちゃんも、怒鳴っちゃってゴメン」

 

「い、いえ、悪いのは私ですし・・・」

 

「アン王女も来てくれたんだぁ・・・さあ、上がって」

 

『お邪魔します!』

 

 みゆき達は、やよいに室内に通され、やよいの部屋に入ると、皆一瞬虚を突かれた。中にはやおいが居て、しかも漫画原稿にペン入れをしていたのだから・・・

 

「な、何であなたが居るのよ?」

 

 真琴は露骨に嫌そうな表情を浮かべると、やおいはゲスい表情を浮かべ、真琴が失敗した漫画原稿を左手でヒラヒラ揺らし、

 

「アレェ!?誰かさんの失敗をフォローしてあげてる私に、そんな口聞いちゃうんだぁ?」

 

「ウッ・・・・」

 

 やおいに図星を言われ、思わず真琴が悔しそうな表情で言葉に詰まった。やよいはニコニコしながら、

 

「あのね、やおいちゃんは、漫画描くのスッゴク上手なの!それで手伝って貰ってたんだけど・・・ジャァァン!私達、何とコンビ組んじゃいました!!」

 

『エッ!?』

 

「「美少女漫画家コンビ・・・Wピース!」

 

 やよいとやおいが、先程と同じポーズを、一同に見せ付けて決めた。一同は呆然としているも、やよいとやおいは盛り上がり、

 

「また決ったねぇ!」

 

「ウンウン」

 

 やよいの言葉に、やおいも顔を見合わせながら満足気に頷いた。みゆきとキャンディも目を輝かせ、

 

「何か凄いね、やよいちゃん!」

 

「凄いクルゥ」

 

「エへへへ、やおいちゃんは私に・・・時代はエロだと教えてくれたんだよ」

 

「「ハァ!?」」

 

 やよいの言葉を聞いたあかねとなおは、同時に変顔浮かべながら呆然とし、れいかは首を傾げながらアン王女に話し掛け、

 

「何時の時代でしょうか?」

 

「わたくしにも分かりませんわ」

 

 アン王女も首を傾げて不思議そうに表情を浮かべた。やおいは真琴を見つめると、

 

「所で、暑くて喉渇いてきちゃった・・・ソード、コーラ買って来て!」

 

「ハァ!?何で私が・・・」

 

 真琴が思わず不愉快そうな表情をすると、やおいはゲスい表情を再び浮かべ、真琴が失敗した漫画用紙を左手でヒラヒラしながら、

 

「アレェ!?誰かさんのフォローしてる私に、そんな口聞いちゃうの?感謝して欲しいぐらいなのになぁ・・・あの時、やよい、泣いてたなぁ」

 

「ウッ・・・あ、ありがとう」

 

 真琴の心は屈辱感で一杯だったが、現にやおいは真琴のフォローをしてくれている事は事実で、真琴は悔しさに耐えてやおいに礼を述べた。やおいは再びゲスい表情を浮かべると、

 

「そうそう、それで良いの・・・・・ソード、コーラ買うのダッシュね?」

 

「ウゥゥゥ・・・」

 

「やおいちゃん、まこちゃん虐めちゃ可哀想だよ!」

 

(や、やよいさん・・・)

 

 真琴は、酷い事をした自分を、やよいが庇ってくれたと思い、目をウルウルさせたものの、

 

「まこちゃん・・・私はサイダーで良いから」

 

「ウッ・・・ウワァァァン」

 

 真琴は、やよいにまで飲み物を頼まれ、泣きながら部屋を飛び出して行った。みゆき達一同は、予想も出来ない出来事の連続に呆然とし、アン王女はハッとすると、

 

「た、確かにバッドエンドピースは、ソードのフォローをしてくれたようですねぇ・・・」

 

「まさか・・・二人でコンビを組むとは、思っても見ませんでしたね」

 

「ウン・・・あたしも予想外で驚いてるよ」

 

 れいかとなおも、二人のコンビ結成には驚くも、みゆきは、敵であるバッドエンドピースと、仲良さそうなやよいを見て目を細めた。

 

「そうだね・・・でも、仲良く出来るなら良い事だよ」

 

 みゆきも、バッドエンドハッピー事みさきとは、話して居て楽しいと考えて居た。二人を見ていると、みさきと友達になれるような思い、それが現実味を増していくように感じた。

 

 やおいは何かを閃くと、

 

「そうだ!ねぇ、やよい、ソードを私達のアシスタントにしようよ」

 

「まこちゃんを!?」

 

「ウンウン、きっと面白いよぉ?」

 

「そうだねぇ・・・ワクワクしてきた!」

 

 やおいの提案に、やよいも同意し、二人は勝手に、真琴をWピースのアシスタントに任命した。あかねは変顔を浮かべながら、

 

「何やか、組ましてはアカン二人を、コンビにした気もするなぁ?」

 

 あかねの何気ない言葉に、一同がやよいとやおいを見つめると、なお、れいか、アン王女もそんな気がしてきて、

 

「「「確かに・・・」」」

 

 思わず三人は、やよいとやおいのWピースを見て呆然と呟き、二人はそんな一同の不安を余所に、キャッキャとはしゃいで盛り上がって居た。

 

 一方、勝手にアシスタントにされた事も知らず、コンビニ目指して駈け続ける真琴は・・・

 

(ピース何て、ピース何てぇぇぇ・・・)

 

「大嫌いよぉぉぉぉぉ!」

 

 腕で涙を拭いながら、思わず叫んだ・・・

 

 剣崎真琴・・・

 

 Wピースのアシスタント(パシリ)決定!!

 

 

4、コミケ

 

 やよいは漫画雑誌の編集者に、やおいとのコンビで改めて頑張る旨を伝えてから数日・・・

 

 会社勤めの人々も休みが多いお盆休み、毎年この時期になると、お台場にある東京ビックサイトでは、盛大なイベントが行われていた。最終日のこの日は曇天、雨が降るかも知れないような微妙な天気だった。なぎさ、ほのか、ゆりは、やよいとやおいのWピースコンビに頼まれ、朝早くから一緒に夏コミと言われる同人誌即売会へと出かけた。みゆき、あゆみも参加し、無理矢理二人のアシスタントにされた真琴も、憮然とした表情で参加していた。新橋駅からゆりかもめに乗った一同、電車の中は異様な熱気に包まれて居た。

 

「やけに込んでるのねぇ?」

 

「ウン、ゆりかもめって乗った事無かったけど、何時もこんなに込んでるのかなぁ?」

 

 ゆりとほのかは、大勢のリュックを背中に背負った、一種異様な集団を見て思わず呟き、なぎさも周りを見渡すと、

 

「テレビ局もあるし、イベントやってるからじゃないの?」

 

 みゆきはなぎさの言葉に頷き、

 

「やよいちゃんの話によると、このイベントがある時は、何時もこんな感じらしいです」

 

「同人誌即売会って凄いんですねぇ・・・」

 

 あゆみも、周りを見て驚きながら会話する一同、なぎさはみゆきに小声で話し掛け、

 

「ねえみゆき、魔王も一緒なの?」

 

「ウウン、魔王は、家でお母さんとお留守番してます」

 

「珍しいわねぇ?」

 

「こういう所に来たがりそうだけど・・・」

 

 魔王が一緒じゃ無いと聞き、ほのかとゆりは不思議そうにみゆきに聞くと、みゆきは苦笑気味に、

 

「アハハハ、エェェと何でも、コレクションの整理をするって、魔王は言っていました」

 

((((どんなコレクション何だろう?))))

 

 みゆきから、魔王がコレクションの整理をすると聞いたなぎさ、ほのか、ゆり、あゆみは、一抹の不安を覚えた。

 

 そんな会話をする一同だったが、真琴は会話にも加わらず、恨めしそうな視線で、楽しそうに会話するやよいとやおいを見て頬を膨らました。

 

「何で私まで・・・大体、何で私が、あの二人のアシスタントになってるの?」

 

 真琴は、独り言のようにブツブツ文句を呟き、あゆみは心配そうにみゆきに話し掛け、

 

「みゆきちゃん、真琴ちゃんどうしたの?」

 

「本当!何かさっきからずっと、やよいとやおいを恨めしそうに見つめているし」

 

 なぎさも気になったのか、みゆきにそれとなく聞いてみると、みゆきは苦笑しながら、この前の出来事を、あゆみ、なぎさ、ほのか、ゆりに伝えた。四人は改めて真琴の顔をジィと見つめ、

 

「成る程、それで真琴は、ご機嫌斜めなのね?」

 

「断れば良かったのに?」

 

 ゆりとほのかに話し掛けられた真琴は、少し口を尖らし、

 

「だってぇぇ・・・私が断ろうとすると、バッドエンドピースは、私が失敗した漫画原稿見せ付けて脅すんですよ」

 

「そういうずる賢い所あるよね、あの子・・・」

 

 真琴の話を聞いたなぎさは、ウンウン頷いた。そうこうしている内に、電車は目的駅である国際展示場正門駅に付いた。ドアが開いた途端、乗っていた人々は我先に駈け出したり、早歩きを始め、思わずなぎさ達が呆気に取られて居ると、

 

「ほら、ブラック先輩、私達も急ぐよ!」

 

「エッ!?ちょ、ちょっと腕を引っ張らないでぇ」

 

 やおいに腕を引っ張られたなぎさは、エスカレーターなのに、最早階段のように次々と下りて行く人々に混じり、改札正面まで降りてきた。天井を見上げれば、何かのアニメの画が描かれた大きなポスターのようなものが貼られ、周りを見れば、何かのコスプレをした人物の姿や、美少女のちょっとエッチな絵柄が描かれた、大きな紙袋を持つ人も居て、思わずゆりの眼鏡が曇り、ほのかが変顔を浮かべた。改札を出た正面には、東京ビックサイトへの案内板があり、まだ7時前なのに、続々と人々の波が、東京ビックサイト目掛け進んで行った。なぎさは人の多さに驚き、

 

「まだ7時前なのに、凄い人だねぇ・・・・アレェ!?ほのか、ゆり?」

 

 なぎさが背後を振り向くと、二人の姿が忽然と消えて居た。なぎさは、辺りをキョロキョロして二人の姿を捜していると、再び国際展示場正門駅の中に戻ったゆりとほのかが、無言のままなぎさに手を上げて合図し、新橋方面乗り場へと消えて行った。

 

「薄情者ぉぉぉぉ!」

 

 なぎさは、思わず変顔浮かべながら絶叫するも、やおいに背中をポンポン叩かれ、

 

「ブラック先輩には、私達が付いているから、元気出して」

 

「何であんたに励まされなきゃいけないのよ・・・大体、コミケって何なの?」

 

「同人誌即売会で、毎年夏と冬に開かれて・・・」

 

「そういうマニアックな話はどうでも良い!何で私まで呼ばれたの?」

 

「だってぇ・・・18才以上じゃないと買えないし」

 

 やおいから、18才以上じゃないと買えないと言われたなぎさは、思わず変顔を浮かべ、

 

「ハァ!?あんた達・・・一体何の本買いに来たの?」

 

「「エッチな本」」

 

「帰るぅぅぅぅぅ!」

 

「「ダメェェェェェ!」」

 

 変顔浮かべながら踵を返したなぎさの両腕を、やよいとやおいが掴んで嫌々をした。なぎさは変顔浮かべたまま、

 

「私じゃなくても、アン王女だって居るじゃない」

 

 なぎさがアン王女の話題を出すも、やよいは少しオドオドしながら、

 

「だってぇぇ・・・アン王女に年聞いたら、怖い顔で睨まれて怖かったんだもん」

 

「じゃあ、佐々木先生は?」

 

「こんな本買いに来たのバレたら・・・学校にママを呼び出されちゃうよぉぉ」

 

 やよいは、嫌々をして否定した。それもそうだと納得したなぎさは、

 

「それもそうか・・・で、私やほのか、ゆりを誘った訳?」

 

「「ウン」」

 

 なぎさは、あかね、なお、れいかの姿が見当らない理由が分かった気がした。なぎさも、二人の目的が分かって居たなら、当然断って居た。

 

「あかね、なお、れいかの姿が見えないと思ったら、そういう事か・・・」

 

「アハハハ、私もそうだと知って居たら、絶対来ませんでした」

 

 あゆみも今知ったのか、引き攣った顔でなぎさに同意した。あゆみのバックから顔を出したグレルとエンエンは、

 

「なぁなぁ、エッチな本って何だ?」

 

「面白いの?」

 

「キャンディも読みたいクル!」

 

 キャンディも興味ありそうに目を輝かせ、なぎさ、みゆき、あゆみが、必死に三人を宥めた。

 

 東京ビックサイト目掛け歩いて居た一同だったが、あまりに凄い人で、会場内は入場規制をされ、なぎさ達も長い列に並んだ。最初はおとなしく並んで居たやおいだったが、一向に移動しない列に痺れを切らし、

 

「アァァン、もう!みんな邪魔ぁぁ!」

 

 そう言うと、やおいはバッドエンドピースの姿に変身し、周囲に居たリュックを背負った男達が響めき、カメラや携帯で撮影しだした。なぎさ達は、慌ててバッドエンドピースを止めようとしたものの、バッドエンドピースは、黒の書を取り出すと、

 

「世界よ、最悪な結末に変わっちゃって!白紙の未来を、黒く塗りつぶしちゃおう!!」

 

 バッドエンドピースが、バッドエンド空間を発生させると、空が不気味に黄色く変化し、その周りを落書きで描いたようなイラストが覆っていた。掲げた黒き書に、バッドエナジーが吸収され、並んで居た人々が力なく座り込んだ。やよいは、大慌てでバッドエンドピースに話し掛け、

 

「ダ、ダメだよぉぉぉ!」

 

「だって、邪魔何だもん」

 

 バッドエンドピースは、座り込む人々を見て嫌そうに呟くと、なぎさは地団駄踏んで怒り出し、

 

「コラァ!私の前では悪さしないって約束したでしょう?約束破るなら帰るからねぇ!!」

 

「だってぇぇ・・・」

 

 なぎさにも怒られたバッドエンドピースは、不満そうに口を尖らせた。何気なく下を向いたバッドエンドピースは、慌ててスカートを抑えていると、真琴が突然ドヤ顔を浮かべてバッドエンドピースを指差し、

 

「フッフッフッフ、とうとう本性を見せたわねぇ、バッドエンドピース!ダビィ、行くわよ!!」

 

「何時でも良いビィ」

 

 真琴は、キュアラビーズを取りだし、ラブリーコミューンにセットすると、

 

「プリキュア!ラブリンク!!」

 

「L・O・V・E」

 

 ラブリーコミューンの画面に、真琴が指で「L・O・V・E」と描き、ダビィがそれに反応して、その都度その文字を読み上げると、真琴の身体が光に包まれ、プリキュアへと変化していった。

 

「勇気の刃! キュアソード!!」

 

 変身を終えたソードは、両手でスペード型の形を作り上げ、

 

「このキュアソードが、愛の剣で、あなたの野望を断ち切ってみせる!!」

 

 ソードはそう言うと、バッドエンドピースに対し、右手の人差し指で指差しポーズを決めた。なぎさは変顔を浮かべながら、

 

「あんたまで変身してどうすんのよぉぉ?」

 

「どうしよう!?私達も変身した方が良いかなぁ?」

 

「ウ~ン、今の所アカンベエも出してないし、もうちょっと様子見ようか?」

 

 みゆきとあゆみは、困惑気味にもう少し様子を見る事を決めた。ソードに指を指されたバッドエンドピースだが、バッドエンドピースは、そんなソードを無視し、バッドエナジーを吸われた筈なのに、座り込みながらも、バッドエンドピースの下半身を狙い、写真を撮ろうとする者達から逃げ回った。

 

「バッドエナジーを吸われて居るのに、何でぇぇぇ!?」

 

「待ちなさい!今こそ合宿の成果を・・・」

 

 ソードは、動揺しながら逃げ回るバッドエンドピースを追いかけたが、みゆきはソードを指差し、

 

「ねぇソード、あなたも下半身を・・・」

 

「エッ!?・・・・・キャァァァァ!ど、どこを撮ってるのよぉぉ!!」

 

 ソードもバッドエンドピース同様、スカートを抑えながら逃げ回り始め、なぎさは溜息付きながら頭を抱えると、

 

「あんた達、こっち来なさい!此処から離れるわよ!!」

 

「「イヤァァァン」」

 

 なぎさが二人を手招きすると、バッドエンドピースとソードは、スカートを抑えて並びながら逃げ戻って来るも、辺りではシャッター音が鳴り響いた。

 

 なぎさは、変身を解いたやおいと真琴、みゆき、やよい、あゆみを連れて、逃げるように国際展示場正門駅に戻って来た。やよいとやおいは悲しそうな表情で、

 

「「エェェ!?本当に帰っちゃうの?」」

 

「仕方無いでしょう!あんな騒ぎ起こしちゃったんだからぁ・・・」

 

「「ブゥゥゥゥ」」

 

 頬を膨らませたやよいとやおいだったが、やおいは何かを思い出したのか手を叩き、

 

「そうだ!だったらぁ、秋葉原って所行きたい。何でも、そこでもこういう同人誌を売ってるんだって」

 

 やおいの提案に、なぎさも秋葉原ならここからさほど遠く無いし、こんなに人も居ないだろうと考えると、

 

「秋葉原かぁ・・・ここからそんなに遠く無いし、別に良いよ」

 

「「ワァァイ」」

 

(もう・・・帰りたい)

 

 喜ぶやよいとやおい、苦笑を浮かべるみゆきとあゆみと対照的に、真琴はトホホ顔を浮かべながら、一同の後を付いて行った・・・

 

 

 秋葉原に着いた一同は、電気街口を出て、中央通りにある同人誌を取り扱う店へと向かった。なぎさ達に取って幸いしたのは、コミケを早々に断念した為、この秋葉原には店の開店時間ぐらいに着いた事で、店内は割りと空いていた。やよいとやおいは、嬉しそうに店内を物色し、なぎさ、みゆき、あゆみ、真琴は、エッチな表紙を見ると、見る見る顔を真っ赤にして俯いた。他のお客さん達は、なぎさ達をニヤニヤしながら興味あり気に見つめ、その視線に耐えられなくなったみゆき、あゆみ、真琴の三人、みゆきはやよいに話し掛け、

 

「や、やよいちゃん、わ、私達、外で待ってるから」

 

「ウン!分かった」

 

(私もさっさと出たい・・・)

 

 変顔浮かべたなぎさは、思わず心の中で呟いた。そんななぎさの気持ちも知らず、やよいとやおいは、気さくに店の従業員に話し掛けると、店の従業員もそんなに忙しくないのか、笑顔で色々教えてくれて、

 

「午後二時過ぎぐらいになると、コミケ帰りのお客さんで、閉店まで賑わうんだけど、午前中は、お客さんは少ない方ですねぇ・・・」

 

 なぎさは、恥ずかしそうにしながら、やよいとやおいを呼び、小声で話し掛けると、

 

「で、どれ買うのよ?早く出たいんだから、早く決めて」

 

「エェェ!?折角空いてるし、色々見たい」

 

「ウンウン!表紙だけじゃ、ミラクル・ピースの参考になるか分からないしね?」

 

 やおいの言葉にやよいも同意し、二人は目を輝かせて同人誌を物色するも、なぎさは拝むように二人に話し掛け、

 

「お願いだから、適当に選んで早く出よう。奢って上げるからさぁ」

 

「「本当!?」」

 

(ありえない!こんなエッチな本を買う嵌めになる何て・・・)

 

 なぎさはトホホ顔を浮かべるも、やよいとやおいの漫画に役立つなら、そう自分に言い聞かせ、恥ずかしさに耐え、エッチな同人誌を数冊購入した・・・

 

 外で待っていたみゆき、あゆみ、真琴は、顔を真っ赤にしながら項垂れるなぎさに声を掛け、

 

「なぎささん・・・大丈夫ですか?」

 

「顔が真っ赤ですよ?」

 

「何かフラついている気もします」

 

 みゆき、あゆみ、真琴に心配されたなぎさだったが、やおいは、更に奥のビルを指差し、

 

「ブラック先輩、次はあそこに行こうよ!あそこにあるのは何と・・・女性向けの、男の人同士が恋愛しちゃう同人誌専門何だってぇ!!」

 

「エェェ!?そういうのもあるの?」

 

 やよいに聞かれたやおいは、意味深な笑みを浮かべ、

 

「これも勉強だよ、やよい!」

 

「そうだね、やおいちゃん」

 

「「「「エッ!?」」」」

 

 更にマニアックな店に一同を連れて行こうとする二人に、流石のなぎさも涙目になり、

 

「もう、もう二度と嫌だぁぁぁ!帰るぅぅぅぅ!!」

 

 そう言うと、なぎさはレジで買う時を思い出したのか、顔を隠して駅方面に歩き出し、みゆき、あゆみ、真琴も続いた。

 

「エェェ!?もう帰っちゃうのぉぉ?」

 

「でも、良い勉強になったよ、やおいちゃん」

 

「そうだね、帰って早速研究しようよ」

 

 そんななぎさの気持ちなど知らず、やよいとやおいは、早速帰って追加エピを入れようと張り切っていると、やおいは、なぎさ達に聞こえないぐらい、小声でやよいに話し掛け、

 

「ねぇ、やよい。折角だから、この同人誌参考にして、プリキュア達のエッチなイラストも描いてみようかぁ?」

 

「エェェ!?みんなにバレたら・・・」

 

「見せなきゃ大丈夫だよ!」

 

「・・・それもそうだね?」

 

 やよいは、やおいの提案に乗り、二人は和気藹々と構想を話し出し、その背中を、なぎさ達は不安そうに見つめた。

 

「ハァ・・・私、恥ずかしくて、もう二度と秋葉原に来られないかも・・・」

 

「今回だけは同情するメポ」

 

 なぎさは、ガックリ項垂れ、コミューン姿のメップルが顔だけ出し、そんななぎさを労った。

 

 

5、Wピース、漫画家デビュー!

 

 お盆休みも終わろうとしていた8月某日・・・

 

 その知らせは、突然もたらされた・・・

 

 やよいは以前、やおいと共に編集者を訪ね、課題を出されていたミラクル・ピースを描き上げ、感想を聞こうと持ち込んだ。更に、同人誌で勉強した成果を試そうと、プリキュア達にセクシーなポーズを取らせたイラストを描いて、編集者に見せてみた。

 

「ウン!中々良いよね・・・こっちのイラストも、僕が預かっても良いのかな?」

 

「「ハイ!」」

 

「分かった!前より全然良いよ!ちょっとエッチなヒロイン物・・・これなら読者の反応も良いと思う。僕から編集長に頼んで、読み切りで一度載せて貰えるか頼んでみよう」

 

「「ほ、本当ですか?」」

 

「まあ、あまり期待はしないでね・・・」

 

 編集者はそう言っていたが、それは現実となった!

 

 編集者から電話を貰ったやよいは、緊張しながら話を聞くと、

 

「実は・・・ミラクル・ピースの月刊ジャンジャンでの掲載が決った!」

 

「エェェェ!?ほ、本当ですかぁ?」

 

「ああ、実は○○先生が、この月の原稿間に合わなくてねぇ・・・穴埋めになる作品を捜していたら、君達Wピースのミラクル・ピースが選ばれたんだ。おめでとう!」

 

「あ、ありがとうございます!やおいちゃんにも知らせなきゃ!!」

 

「発売は26日だから、楽しみにして!それと、出来ればお母さんと相談して、携帯を持って貰えないかな?学校の時間に掛けるような事はしないけど、何時でも連絡取れる手段を持っておきたいから」

 

「分かりました。ママに聞いてみます」

 

 電話を切ったやよいは有頂天だった・・・

 

 読み切りとはいえ、こんなに早く夢が叶うとは想像もしていなかった。やよいは、自分の世界に浸り、やおいと共に、本屋でサイン会をしている自分達の姿を、思わず妄想して顔がニヤけた。その時、窓をコンコンノックし、やよいが慌てて窓を開けると、バッドエンドピースが窓から入って来た。

 

「ヤッホー!暇だから遊びに来たよ」

 

「誰かに見られたらまずいよぉ!やおいちゃんの姿で遊びに来て」

 

「ハイハイ、分かった、分かった」

 

 バッドエンドピースは、そう言うとやおいの姿になり、やよいは嬉しそうにやおいの両手を握ると、

 

「それより、やおいちゃん!何と、ミラクル・ピースが、月刊ジャンジャンで読み切りの掲載が決ったよ!!」

 

「エッ!?本当?」

 

「ウン!今、編集さんから連絡来たのぉぉ!!」

 

「ヤッタねぇ!」

 

「イエイ!」

 

 やよいとやおい、二人はハイタッチをして喜びを分かち合った。やよいは、ハッと何かに気付くと、

 

「で、でもあの話を、バッドエンドプリキュアの他の四人に見られて平気なの?」

 

「平気、平気、やよいと漫画のコンビを組んだ事は教えたけど、ウチの四人、漫画とか興味無いし」

 

「そう、なら安心だね!」

 

 やよいとやおいは、話の流れで、自然とミラクル・ピースの続編の構想に入っていた・・・

 

 

 そして、月刊ジャンジャンの発売日である26日がやって来た・・・

 

 なぎさ達一同は、やよいからの報告で、今度漫画が月刊ジャンジャンに載るから、みんなの感想を聞かせて欲しいと言われていた。キャンディは、早く読みたいと、みゆきより先にやよいの家に遊びに行き、やよいと行動を共にして居た。普段漫画など読まないメンバーが多い一同も、仲間の晴れ舞台とあれば話は別で、一同は、月刊ジャンジャンを購入した。ミラクル・ピースは、自分達がプリキュア合宿で聞いていた内容とはかなり変わっていて、ちょっとエッチなヒロイン物に生まれ変わっていたものの、話自体は面白く感じられた。

 

「へぇ、何かこの敵役の五人の少女、バッドエンドプリキュアみたいだなぁ・・・」

 

 なぎさは、そう思うと、思わずクスリとして読み終えた。やよいも携帯を買って、メールアドレスも聞いているし、感想でも書こうと思いながら、何気に次のページを開いて目が点になった。

 

「な、何よこれぇぇぇ!?」

 

 そこにはこう書かれていた・・・

 

 次回のミラクル・ピース読み切りに、君達が選んだエッチなヒロインが登場するかも!?お気に入りのキャラの番号を三人まで選んで、官製はがきに住所、氏名、年齢、電話番号、ミラクル・ピースへの感想を書いて、月間ジャンジャン編集部まで送って欲しい旨が書かれていた・・・

 

 1に描かれていたのはキュアブラック・・・両足のブーツを脱いで、足の裏を見せながら、大きくM字に開いた足から、スカートが捲れて露わになった太股と、ピッタリ張り付いたスパッツが、健康的なお色気を醸し出していた。

 

「ありえない!ありえない!ありえない!何て画描いてるのよぉぉぉぉ!!」

 

 なぎさは、顔を真っ赤にしながら、慌てて本を閉じた・・・

 

 2に描かれていたのはキュアホワイト・・・自らスカートを捲り、媚びるような視線で太股露わにパンツを見せて居た。

 

「やよいさんに、どういう了見でこんな下品な画を描いたのか・・・問い詰めなきゃ」

 

 ほのかは思わず目付きが鋭くなり、漫画本を机に乱雑に置いた・・・

 

 3に描かれていたのはキュアムーンライト・・・長いロングスカートが捲れ上がり、太股まで見えた、スラリと伸びた長い足を露わにし、誘うような視線で横たわって居た。

 

「やよい・・・一体どういうつもり!?」

 

 険しい表情をしたゆりが、見るのも汚らわしいと本を閉じた・・・

 

 4に描かれていたのはシャイニールミナス・・・天使のような微笑みを浮かべながら、ホワイト同様、自らスカートを捲り上げ、パンツを見せて居た。

 

「こ、これは・・・私!?な、何故やよいさんはこんな画を?」

 

 ひかりは、休憩時間にTAKO CAFEのテーブルに座って読んで居たが、目を点にしながら困惑していた・・・

 

 5にはブルーム、6にはイーグレット、7にはブライト、8にはウィンディが描かれていた・・・ブルームは、笑顔を向けながらお尻を突き出し、イーグレットは、誘うような視線で横たわりながら、右足を高々と上げて太股露わにした生足を披露し、ブライトは、流し目をしながら、右足の膝を立て、スパッツに隠れた股間の膨らみの中を、想像させるような挑発ポーズを取り、ウィンディは口元に笑みを浮かべながら、胡座をかいたまま風で靡いたように、捲り上がったスカートの中から生足を披露してパンツを見せて居た。

 

「な、何よこれぇ!?」

 

「私達をこんな風に描くなんて、許せないわ!」

 

「やよいに、お灸を添えて上げなきゃ」

 

「エエ、自分がした事を、キッチリ反省させてあげなきゃね」

 

 咲、舞、満、薫は、PANPAKAパンのテラス席に座りながら、皆険しい表情を浮かべながら、咲が買って来た漫画を読んだ・・・

 

 9にはドリーム、10にはルージュ、11にはレモネード、12にはミント、13にはアクア、14にはローズが描かれていた・・・ドリームは、キスをせがむように潤んだ目を浮かべ、ルージュは、爽やかな笑顔で右足を蹴り上げて、股間付近のスパッツ丸見えの状態、レモネードは、はじける笑顔で右目を閉じて、ウインクしながら投げキッス、ミントは、優しげな微笑を浮かべてうつ伏せに寝転びながら、お尻のスパッツが丸見えになるポーズを、アクアは、女豹のように悩殺的な視線でお尻を高々と突き上げ、ローズは、ドヤ顔を浮かべながら、スカートの中のスパッツを見せ付けるような姿をそれぞれ披露して居た。

 

「や、止めてぇぇぇ!」

 

「み、見てるだけで、恥ずかしくなってくる・・・」

 

「私のは、まだマシだけど、やっぱり嫌です」

 

「やよいさん、どうしてこんな画を描いたのかしらぁ?」

 

「やよいぃぃぃ!こんな画を描いてどういうつもりよ?」

 

「エエ、みんなと連絡とって、やよいに直に問いただしましょう!」

 

 ナッツハウスに集合した一同は、ココ、ナッツ、シロップを慌てて下に下ろし、のぞみは恥ずかしげに顔を隠し、りんも不機嫌そうにソッポを向き、うららとこまちも困惑気味に首を傾げ、かれんとくるみは、不機嫌そうな表情で叫んだ・・・

 

 15にはピーチ、16にはベリー、17にはパイン、18にはパッションが描かれていた・・・ピーチは、おねだりするような表情で、乳輪が見えそうなくらい衣装を下げて胸の谷間を見せ付け、ベリーは、左目閉じてウインクしながら、スカートを捲り上げて太股を露わにし、パインは、微笑みながらピーチ同様胸の谷間を露わにし、パッションは、挑発するような視線を浮かべながら、黒のタイツを脱いで右手で持ち、太股露わにした生足を披露した。

 

「な、何!?何でこんなポーズを?」

 

「やよいぃぃぃ!これじゃあたしは露出狂じゃないのよ!!」

 

「見ているだけで恥ずかしくなってくるよね・・・・」

 

「ラブ、美希、ブッキー、みんなに連絡入れて・・・やよいが待ってる不思議図書館所に乗り込むわよ!」

 

 せつなの言葉に三人も頷き返し、ラブは急いでなぎさ達一同に、メールを書いて送信した・・・

 

 19にはブロッサム、20にはマリン、21にはサンシャインが描かれていた・・・ブロッサムは、キスのおねだりをするように目を瞑り、マリンは、Vサインしながら肩紐を外して衣装を脱ぎかけ、サンシャインは、ウインクしながらお尻を突き出した。

 

「こ、こんな画を描く何て・・・私、堪忍袋の緒が・・・切れましたぁぁ!」

 

「な、何でやよいは、こんな画描いたんだろう?」

 

 つぼみといつきは、困惑しながらも険しい表情を浮かべるも、えりかは変顔浮かべながら、

 

「全く、どうせなら、背や胸を一回り大きくしろって感じだよねぇ?」

 

「「えりか・・・ツッコミ入れる所そこ?」」

 

 つぼみといつきは、マイペースなえりかを見て呆気にとられた・・・

 

 22にはキュアメロディが描かれて居た・・・メロディは、小悪魔風の視線で、股間付近が見えるか見えないかのギリギリで、女豹のポーズをしていた。

 

「な、な、な、何よ、これ!?私が何時こんなポーズしたって言うのよぉぉぉぉ!!」

 

 響は、自宅で何気なく買って読んだ月刊ジャンジャンを見て、恥ずかしそうにベッドに叩き付けた・・・

 

 23には、キュアリズムが描かれていた・・・リズムは、右目を閉じてウインクし、セクシーポーズをしながら、自らスカートを捲り上げて太股を露わにしていた。

 

「や、や、やよいぃぃぃ!な、何て画を描くのよぉぉぉぉ!!」

 

 奏は、弟奏太に買ってきて貰った、月刊ジャンジャンを自室で読んで思わず叫んだ・・・

 

 24にはビート、25にはミューズが描かれて居た・・・ビートは、艶やかな視線をしながら、お尻を振って挑発しているかのような女豹のポーズで、ミューズは、可愛らしい愛想のある笑顔で。座りながら両手と両足を上げて、ハシャいで居るかのようなポーズをしていた。

 

「何これ!?何か意味があるのかしら?」

 

「やよいの考えてる事何て分かんないけど、スッゴク恥ずかしい・・・」

 

 調べの館で、音吉に頼んで買ってきて貰った、月刊ジャンジャンを読んだエレンとアコは、やよいの真意が分からず困惑していた・・・

 

 26には、キュアハッピーが描かれていた・・・ハッピーは、両手を振って笑顔を向けるも、そのスカートは下まで吊り落ち、ピンクのスパッツが丸見えになっていた。

 

「やよいちゃん、酷いよぉぉ、こんな画描く何てぇ・・・ハップップゥ」

 

 本を読んだみゆきは、不満そうに頬を膨らまし、みゆきが置いた月刊ジャンジャンを、やって来た魔王が見ると、目を輝かせて、みゆきに内緒で翼に隠した・・・

 

 27には、キュアサニーが描かれていた・・・サニーは、満面の笑みを浮かべながら胡座を掻き、スカートを自ら捲っていた。

 

「何やコレ!?ウチ変態みたいやんかぁ・・・アホかぁ!」

 

 自室で本を読んでいたあかねは、呆れたように本を投げた・・・

 

 28には、キュアマーチが描かれていた・・・マーチは、体育座りをしながらも、股間付近を見えるように座り、スパッツ越しの盛り上がった股間付近が丸見えになっていた。

 

「何よ、これはぁぁ!?やよいちゃんったらぁ・・・ピース姿は描かないのに狡いよぉ」

 

 やよいのフェアじゃないやり方に、なおは不満そうに口を尖らせた・・・

 

 29には、キュアビューティが描かれていた・・・ビューティは、艶やかな横座りで太股を露わにし、右の掌を口で吹くようなポーズをしていた。

 

「これは!?何の意味があるのでしょうか?」

 

 自室で読んで居たれいかは、やよいの真意が読めず首を傾げた・・・

 

 30には、キュアエコーが描かれていた・・・エコーは、小悪魔のような表情で、軽く舌を出し、お尻付近のスカートを捲って、スパッツ丸見えの姿でポーズをしていた。

 

「は、は、恥ずかしい・・・やよいちゃんったら、どうしてこんな画を!?秋葉原で買った同人誌って、この為に必要だったの?」

 

 自宅に居たあゆみは、不満そうに口を尖らし、意味が分からず月刊ジャンジャンを読んで居るエンエンとグレルから、慌てて本を取り上げて隠した・・・

 

 31にはソード、32にはエースが描かれていた・・・ソードは、服すら描いて貰えず、裸体に反省中の紙で胸と股間を隠し、エースは、右斜めに構え、自らスカートを捲り上げて投げキッスをするかのようなポーズを取らせていた。

 

「ひ、酷い!酷すぎます!!」

 

「何の目的があってこのような画を描いたのか・・・問い詰めなければなりませんねぇ」

 

 佐々木先生の家で、真琴とアン王女は、本を読んで憤慨していた。もっとも、ソードの画を描いたのは、やよいでは無くやおいであったのだが・・・

 

 

 Wピースの漫画は、ひょんな事からみさき達も目にして居た。立ち読みしていた小学生の男の子が、自分達の顔を見ると、

 

「アハハハ、お姉ちゃん達、この漫画の悪役に似てるよ」

 

「「「「悪役!?」」」」

 

 気になった四人は、男の子から漫画を読ませて貰うと、その内容を見てワナワナ震えだした。そこに、何も知らずに現われたやおいは、

 

「アレェ!?みんなもこの辺に居たんだぁ?私も・・・・・何?」

 

 無言のあおいとなみに両腕を掴まれたやおいは、みさきが手に持っているのが月間ジャンジャンだと知り、どんどん顔色が悪くなっていった・・・バッドエンド王国に連行されたやおいは、四人の沈黙に嫌な予感が漂い、顔から大量の汗を流した。みさきは、男の子から買った月刊ジャンジャンを指差し、

 

「酷いよぉ!バカなピンクって・・・思いっきり私じゃない!!」

 

「せや!下品な赤・・・これ、ウチの事やろう?」

 

「無駄飯ぐらいの緑・・・へぇ、あたしの事そんな風に思ってたんだぁ?」

 

「冷血で陰険な青・・・フフフ、本当にその通りの事してあげましょうか?」

 

 みさき、あおい、なみ、れいなの姿が、見る見るバッドエンドプリキュアに変化し、やおいは大慌てで

 

「ち、ち、違うよ!お話を盛り上げるために、ちょっと、ほんのちょっとデタラメを・・・」

 

「「「「言いたい事は・・・それだけ?自分の事は、美少女ガール何て描いて?」」」」

 

「アァァン、ゴメンなさ~い!許してぇぇぇ!!」

 

「「「「・・・嫌!」」」」

 

「バッドエンド・シャワー!」

 

「バッドエンド・ファイヤー!」

 

「バッドエンド・シュート!」

 

「暫く氷の中で反省してなさい・・・バッドエンド・ブリザード!」

 

「ヒィィィィィィィ!許してぇぇぇぇ!!」

 

 四人の攻撃を受けたやおいは、悲鳴を上げながら凍り漬けにされ、何度も謝り続けた・・・

 

 

 一方、不思議図書館の秘密基地では、やよいはキャンディと一緒に、みんなが感想を知らせに来るの待って居た。何度も左右に歩いては座り、また歩いては座り、何所か落ち着かない表情を見せて居た。キャンディは、テーブルの上にチョコンと座りながら、ミラクル・ピースを読んで居たが、

 

「やよい、良く分らないけど、キャンディは面白かったクル」

 

「フフフ、ありがとう、キャンディ!感想第1号だね」

 

 やよいは嬉しそうにキャンディの頭を撫でて居ると、キャンディは更にページを捲って首を傾げた。

 

「やよい、お話終わったのに、まだ何か描いてあるクル」

 

「エッ!?ミラクル・ピースはあれで終りだよ?」

 

 やよいが本を覗き込むと、それはやよいとやおいが、エロ同人誌を買った試しに、プリキュア達でエッチなイラストを描いた画だった。やよいは何故月刊ジャンジャンに載っているのか理解出来ず、慌てて携帯を手に取ると、編集者からメールが入っていた。やよいが読んでみると、そこにはこう書かれていた・・・

 

 ・・・やよいちゃん、実は、○○先生が急病で、15ページ分足りなかったから、君の描いてくれたイラストを、勝手ながらこちらで利用させて貰った事言うの、すっかり忘れてたよ・・・

 

(エッ・・・エェェェ!?)

 

 やよいは、思わずその場に座り込み放心すると、このまま此処に居たら、命の保証は無い気がしてきた。

 

「キャ、キャンディ、私急用思い出したから、みんなに・・・」

 

 その時、不思議図書館の外が騒がしくなり、やよいは恐怖で引き攣りながら、思わずテーブルの下に頭を抱えて隠れた。それと同時に、部屋のドアが勢い良く開き、

 

「やよいの・・・」

 

「やよいちゃんの・・・」

 

「やよいさんの・・・」

 

『バカはどこぉぉぉぉぉ!?』

 

 なぎさ達一同が怖い顔で乱入し、キャンディは怯えながら後退りし、

 

「キャンディ・・・知らないクルゥゥゥ」

 

 そう言いながら、テーブルの下を見たキャンディは、一同から逃げるように二階に避難した。一同の視線がテーブルの下へと向けられる。急に静かになった事で、やよいが恐る恐る顔を上げると、怖い表情でやよいを睨む一同の視線と目が合った。

 

「ヒィィィィィィ!ゴメンなさい!ゴメンなさい!ゴメンなさ~い!!」

 

 やよいは慌てて後ろに飛び逃げ、恐怖でガタガタ震えながら、何度も謝り続け、不思議図書館に、やよいの悲鳴と謝り続ける声が、遅くまで響いた・・・

 

               第百十三話:Wピース

                    完




第113話投稿致しました・・・
やよいとやおいが組んだらどうなるか・・・書いてる内にどんどんカオスな内容になってしまいましたw
この話も結構前から構想してましたが、ようやく描けました。
オチは、ちょっとこち亀っぽくしてみましたw

魔法つかい・・・明日でシャーキンスとはお別れっぽいですねぇ
ベニーギョさん好き何で、怪物化だけは遠慮願いたいです・・・

なお、12月は色々忙しくて、週末の執筆はほとんど出来ませんので、次回は、25日~31日の間ぐらいになると思います

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