プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第百十二話:プリキュア合宿終了

1、二日酔いだよ、全員休養

 

 プリキュア合宿三日目・・・

 

 何時もなら早起きする筈のメンバーもまだ眠って居るのか、別荘内は静まり返っていた。部屋割り通りに、なぎさと真琴、ほのかと舞、ひかりとくるみ、咲、のぞみ、なおの三人、満と奏、薫とアコ、りんと響、うららといつき、ラブとあゆみ、美希とえりか、祈里とエレン、せつなとあかね、つぼみとみゆき、ゆりとやよい、れいかとアン王女が、美希とえりかの部屋にはヒメルダも寝ていて、皆熟睡し、誰一人起きる気配を見せなかった・・・

 

 本来は、この日がプリキュア合宿最終日になる筈だったのだが・・・

 

 

 フラッピは、眠い目を擦りながら、コミューン姿から妖精姿へと変化した。少しよろめいたフラッピは、自分は咲、のぞみ、なおの部屋で寝て居る事に気付き、大あくびをした。時計を見ればまだ朝6時、フラッピは、もうちょっと寝ていようとした時、ある事に気付いた。

 

「アレ!?咲は、昨日家に帰るって言ってたような・・・・・」

 

 フラッピが腕組みしながら考え込むと、徐々に記憶が整理され、フラッピは大慌てで咲に声を掛けた。

 

「咲、咲、起きるラピ!咲ぃぃ!!」

 

「ウ~~ン・・・何よ、フラッピ・・・」

 

 眠そうに起き上がった咲は、昨夜の誕生会で着ていた服装のまま寝ていたらしかった。起きてみると、頭がガンガン痛く、吐き気すらしてきた。咲は再びベッドに倒れ込むと、

 

「もうちょっと寝かせてぇ・・・何か気持ち悪いし」

 

「咲!合宿はどうするラピ?」

 

「合宿!?だから今してるじゃない?」

 

「こっちの合宿じゃないラピ!ソフトボールの合宿の事ラピ!!」

 

「ソフトボールの?・・・・・アァァァァ!?」

 

 咲は慌ててベッドから飛び起きるも、頭はクラクラし、吐き気がしていた。咲は、取り敢えず顔を洗おうと洗面所に向かい、口を濯ぎ、顔を洗うも、まだ体調は最悪だった。

 

「どうしよう!?」

 

 咲は困惑しながらも、二日酔いに耐えながら、荷物の整理を始めた。のぞみとなおは熟睡していて、当分起きる気配を見せなかった。咲はメモを書き、ソフトボールの合宿があるから、悪いけど先に帰る事をメモに残した。

 

「フラッピ、一緒に来て!」

 

 頷いたフラッピがコミューン姿になり、咲はコミューンとカバンを手に持ち、せつなに家までアカルンで送って貰おうと、せつなとあかねの部屋へと向かった。せつなとあかねの部屋も、他の部屋同様静まりかえり、二人もまだ寝ているだろう事も想像出来たが、咲は、二人に悪いと思いながらもドアを叩いた。

 

「せつな!せつな起きて!!せつなぁぁ!!せつなちゃぁぁん!!」

 

 咲が何度もドアを叩くと、ようやく気付いたのか、ボサボサ髪のせつなは、機嫌が悪そうな表情でベッドから上半身を起こし、ドアの方を見たものの、咲同様二日酔いの為、頭が朦朧としていた。せつなは二度三度瞬きするも、少しボーとした後、

 

「・・・・寝る」

 

 せつなはそう言い残し、そのままベッドに倒れ込んで再び熟睡を始めた。一向にせつなが起きてくる様子も無く、途方にくれた咲に背後から声が掛かった。

 

「ブルーム、おはよう!昨日は済まなかったね」

 

「エッ!?神様、おはようございます」

 

 咲に声を掛けたのはブルーだった・・・

 

 最早神頼みとばかり、咲はブルーに頼み事を始めた。

 

「神様、あたし本当は、ソフトボールの合宿があって、昨日帰る筈だったんですけど、何だか覚えて無いんだけど、パーティーの後、そのまま寝ちゃったみたいで困ってるんです」

 

「そうか、君には本当に済まない事をしたね・・・ブルーム、この丸薬を飲んでみると良いよ、少しは気分が楽になる」

 

 ブルーはそう言うと、咲に自ら調合した丸薬を与えた。咲は言われるまま口に含むと、少し苦みがあり、思わず咲は変顔を浮かべた。だが少しすると、ブルーの言うように、頭痛や吐き気が治まった気がして来た。

 

「ワァァ、何だか少し楽になって来た気がする」

 

「そう、それは良かった・・・じゃあ、僕が君の家まで送ろう」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ああ、それぐらいの償いはさせて貰うよ」

 

「償い!?まっいっかぁ!神様、お願いします」

 

 頷いたブルーが、姿見鏡を出現させた時、調子が悪そうな舞が起きて来た。舞は、目を擦りながらも、咲を見るとホッと安堵した表情を浮かべ、

 

「咲、良かった!ちゃんと起きられたのね?」

 

「エェェと、フラッピが起こしてくれなかったら、完全に終わってたけどね・・・舞、あたし先に帰るけど、他のみんなによろしく言って置いてくれるかなぁ?」

 

「分かったわ!気を付けてね、咲」

 

「ウン!舞もね・・・じゃあ!!」

 

「イーグレット、すまなかったね!非礼は後ほど詫びさせてもらうよ」

 

「エッ!?」

 

 咲は舞に軽く右手を挙げると、ブルーと共に帰って行った・・・

 

「非礼って、何の事だろう?」

 

 舞は不思議そうに首を傾げるも、咲がちゃんと起きていた事にホッと安堵した。舞は、咲の事が気掛かりで、体調が悪いのを我慢して、咲を起しに向かう途中で咲と出会えた。

 

「良かった、咲が起きてて・・・まだ気持ち悪いから、もうちょっと寝てよう」

 

 舞は、少しよろめきながら、再びほのかと相部屋の、自分の部屋へと戻って行った・・・

 

 

 それから四時間後・・・

 

 午前10時頃になって、ようやく何人かがリビングに起きて来た。

 

 起きて来たのは、ほのか、ゆり、ひかり、舞、かれん、こまち、れいか、あゆみ、真琴、アン王女の10人だったが、一同は調子悪そうに、リビングに腰掛けグッタリし、ほのかはゆりに話し掛けると、

 

「ねぇ、ゆり・・・今日の特訓止めにしない?」

 

「私もそうしようと思って考えてたわ。起きてるのがやっとで、特訓どころじゃないもの」

 

 アン王女は、二人の会話を聞いて、ホッと安堵した表情を浮かべると、

 

「そうして貰えると助かりますわ。恥ずかしながら、わたくしもまだ二日酔いで・・・」

 

『二日酔い!?』

 

 アン王女が発した二日酔いという言葉に、一同は思わず驚きの声を上げると、アン王女は首を傾げたものの、直ぐにみんなが知らなかった事を悟り、

 

「あら!?皆さんはご存じ無かったんですの?昨日神様から頂いたお飲み物は、果実酒だったそうですわ」

 

『果実酒!?』

 

 再びアン王女から真実を聞き、一同は呆然とした。ほのかは深い溜息を付き、

 

「ハァァァ・・・どうりで、おかしいと思ったわ」

 

 ゆりもほのかの言葉に同意し、コクリと頷くと、

 

「ええ、途中からの記憶が無かったし、ココとナッツは、私の顔を見ると大慌てで逃げ出したし、変だとは思ったわ」

 

「それで神様は、咲に悪い事をしたと思って送ってくれたのね」

 

 舞も、この頭痛や吐き気が二日酔いからくると分かり、困惑気味にそう話した。こうして一同は、全員二日酔いになり、完全休養日として特訓は中止し、各自で自由に過ごす完全休養日となった・・・

 

 

 お昼になるとようやく全員集まったものの、皆本調子にはほど遠く、グッタリしていた。そこに姿見鏡が姿を現わすと、ブルーが戻って来た。舞は、咲の事を真っ先にブルーに問い、

 

「神様、咲は間に合ったんでしょうか?」

 

「ウン、ギリギリだったけど、何とか間に合ったよ。ブルームは、みんなによろしくって言っていたよ」

 

「そうですか・・・良かった」

 

 咲が無事に合宿に間に合ったと聞き、舞はホッと安堵した。ブルーは一同を見渡すと、立ったまま一同に頭を下げ、

 

「みんな、すまなかったね。僕の甘い考えが、君達を・・・」

 

「神様、気にしないで下さい。調子に乗って飲み過ぎた私達も悪いし・・・」

 

 なぎさはブルーをフォローするも、明らかに体調が悪いのはブルーにも分かった。

 

「みんな、ブルームにも渡したけど、これを飲んで見て欲しい、少しは症状が良くなるから」

 

 一同は、戻って来たブルーから、お詫びと共に貰った、酔い覚ましに効く丸薬を貰って飲み、ようやく二日酔いが治まった。

 

「それじゃあ、僕はこれで・・・ヒメ、夜に迎えに来るから、それまでみんなと楽しんでおいで」

 

「ウン!ありがとう、神様」

 

 ヒメルダはブルーに手を振ると、ブルーは一同に微笑みながら、姿見鏡の中へと去って行った。

 

 それを見届けたゆりは、一同に話し掛けると、

 

「症状は治まったけれど、今日はこのまま休養日として、帰る日を一日延ばそうかと考えて居るんだけど、みんなの都合はどう?」

 

 ゆりに聞かれた一同、真っ先にのぞみが言葉を発し、

 

「私は別に良いけど・・・かれんさん、もう一日別荘を借りちゃっても、大丈夫何ですか?」

 

「ええ、気にしないで!爺やに連絡を入れれば済む事だから」

 

 かれんは、穏やかな表情で気にしないで良いと一同に語った。なぎさは一同を見渡し、

 

「私達も、家にさえ連絡入れておけば大丈夫じゃないかな?用事ある人居る?」

 

 なぎさはそう言うと、一同に問い掛けた。一同は、顔を見合わせながら、

 

『別に無いです』

 

 そう告げたものの、やよいだけはモジモジし、

 

「あのぅ・・・私、一回家に帰っても良いですか?今日休養日になるなら、済ませておきたい事があるんで・・・」

 

「別に良いわよ、でも、勉強だったら、私達で見て上げるけど?」

 

「いや、あのぉ・・・実は私、この前漫画を応募してみたんです。そうしたら、編集さんから指摘されたページを、描き直して持って来て欲しいと言われてて、その締め切りがそろそろ近いんで、ネームだけでも済ませておきたいなぁって思って・・・」

 

 やよいの突然の告白に一同はざわめくも、直ぐに拍手が沸き起こった。漫画に興味なさそうな、ゆりやかれんも笑顔を見せて、やよいを称えてくれて、やよいは恥ずかしそうにモジモジしていた。みゆき達にも内緒にしていたようで、

 

「やよいちゃん、凄い!」

 

「何時の間にそんなの描いてたんや?」

 

「あたし達、全然気付かなかったよ」

 

「本当ですねぇ・・・」

 

「驚いちゃった」

 

『手伝える事があったら、言ってね!』

 

 みゆき、あかね、なお、れいか、あゆみも、笑顔を浮かべながら、何時でも手伝うとやよいに伝えた。やよいは目をウルウルさせながら、

 

「みんなを驚かせようと思って・・・でも、ありがとう!じゃあ、今から構想するから、みんなの意見も聞かせて?」

 

『喜んで!』

 

 やよいは嬉しそうに、なぎさ達一同と漫画のネームを考えた・・・

 

 

2、肝試し

 

 やよいのネームも大方出来上がると、急にこまちが真顔になり、

 

「ねぇ、みんな・・・咲さんは帰ってしまったけど、折角の休養日だし、みんなで何かしてみない?」

 

「それは構わないけど・・・具体的には何をするの?」

 

 かれんは、こまちの提案に、一抹の不安を覚えて問い掛けると、

 

「私は、肝試しが良いと思うの!ちょうどお誂(あつら)え向きに、森も近くにあるし・・・」

 

 こまちが、声のトーンを落として告げた時、外で雷が鳴り始めた。思わずシーンと静まりかえった室内だったが、見る見る怖がりトリオの、りん、エレン、なおの顔色が悪くなり、更にはなぎさ、のぞみ、うらら、かれん、くるみ、ラブ、美希、つぼみ、えりか、あゆみ、真琴、アン王女の顔色も怪しくなった。そんな中、急にみゆきが騒ぎだし、

 

「反対、反対、反対、絶対反対!」

 

「あら、どうして!?」

 

 みゆきが頬を膨らませながら、こまちに異を唱え、こまちがみゆきに問うと、みゆきは今にも泣きそうな表情で、

 

「だって怖いもん!オバケさん出そうだもん!!」

 

「そこが面白いと思うんだけど?」

 

 こまちは不思議そうに首を傾げるも、恐がり軍団が同時に叫び、

 

『面白くない!』

 

「みゆきさん、妖怪は平気なのに、オバケは苦手なのですか?」

 

 れいかに聞かれたみゆきは、目をウルウルさせながら、

 

「だってぇ、妖怪さんは良い人だもん、お婆ちゃんが言ってたもん」

 

「妖怪とオバケって・・・同じようなもんちゃうの?」

 

 あかねは、首を傾げながらみゆきに尋ねると、みゆきは激しく首を左右に振り、

 

「違うもん!全然違うもん!妖怪さんは優しいけど、オバケさんは意地悪するもん!!」

 

 みゆきは、涙目になりながら、妖怪とオバケの違いを熱く語ったものの、他の一同には、妖怪とオバケの違いが理解出来なかった。こまちは窓の外を見ると、残念そうに溜息を付き、

 

「そう・・・じゃあ、森の中の肝試しは諦めて、室内でしましょう!」

 

『何でそうなるの?』

 

 恐がり軍団が異を唱えるも、祈里、響、奏、やよいは、嬉しそうにこまちに話し掛け、

 

「こまちさん、私手伝います」

 

「面白そうだから、私と奏も手伝います」

 

「そうね、加音町のお祭りを思い出すわねぇ」

 

「ちょっとワクワクしてくるかも?」

 

 こまちの提案に同意した祈里、響、奏、やよいが手伝う事に同意し、恐がり軍団の抗議を無視し、段取りを決め始めた。かれんは首を左右に振り、

 

「ああなったこまちは・・・止められないわ!」

 

 かれんの言葉を聞き、恐がりトリオは見る見る青ざめていった。なぎさは、引き攣った表情でこまちに語り掛け、

 

「ねぇねぇ、ここは間を取って、怖い話ぐらいにしとかない?」

 

「怖い話は前にもしてるし、ここは肝試しにした方が良いと思うんです」

 

「あっ、そうですか・・・・・」

 

 こまちに却下され、なぎさはスゴスゴ怖がり軍団に戻った。りんは不思議そうになぎさに話し掛け、

 

「なぎささん、怖い話で散々あたしら怖がらせたのに、肝試しは嫌い何ですか?」

 

「なぎさは・・・オバケとか苦手だから」

 

 苦笑したほのかが、真実を怖がり軍団に話すと、怖がり軍団は驚きの声を発し、

 

『エェェ!?』

 

「いやぁ、驚かせるのは好き何だけど、驚かされるのは苦手何だよねぇ・・・アハハハ」

 

『質悪い!』

 

 なぎさが誤魔化し笑いを浮かべると、怖がり軍団からなぎさに対して総ツッコミが入った。

 

 だが、この時の少女達は知らなかった・・・

 

 本当の恐怖が近付いて居た事に・・・

 

 

3、ほ~ら、ホラーだよ

 

 ブルーは、メランの下に訪れ、昨夜の事を詫びて居た・・・

 

 酔っ払って熟睡した一同を、メランは巨大化して背に乗せ、それぞれの部屋の窓から、ブルー、ココ、ナッツ、シロップ、ピーちゃんが、室内のベッドに移動させて寝かせて居た。

 

「メラン、君には本当に世話になったねぇ」

 

「フン、それより、小娘共はもう大丈夫なのか?」

 

「ウン、お陰様で、何とか酔いは治まったようだよ」

 

「まっ、何だかんだで私も楽しかったさ・・・エンプレスも、大勢の後継者達を見られた事で、嬉しがって居た事だろう」

 

「そう言って貰えると、僕も助かるよ」

 

 ブルーが口元に笑みを瞬間、なぎさ達が居る島に、一瞬強大な気配を感じた気がして、ブルーはハッとした。

 

「どうした、ブルー?」

 

「いや、プリキュア達が合宿している島に、今強大な力を感じた気がしたんだけど・・・」

 

「今はせんのか?」

 

「ウン!何事も無ければ良いんだけど・・・」

 

「お前の気のせいかも知れんし大丈夫じゃろう?仮に何者かが現われたとしても、酔ってさえなければ、あ奴らが早々遅れを取る事は無い」

 

「そうだね・・・」

 

 ブルーはメランの言葉に同意し、再び会話を続けた・・・

 

 

 午後5時を過ぎ、別荘がある島に雷と共に激しい雨も降り始めた。ほのかとゆりは、こまちに協力する為、ひかり、舞、満、薫、せつな、いつき、アコ、あかね、ヒメルダ、妖精達と共に、和気藹々と肝試しの準備をする、こまち達の手伝いをしていた。その一方、順番待ちをしていた怖がり軍団は、皆引き攣った表情で落ち着きが無かった。外から聞こえる激しい雨と雷の音、そのせいで外は薄暗く、怖さも倍増していた。

 

「な、何か待ってるだけって嫌よねぇ?」

 

「確か、開始は18時って言ってたよね?」

 

 沈黙に耐えられないとばかり、かれんが引き攣りながら一同に話し掛けると、なぎさが開始時刻を確認するように一同に話した。りんは不服そうに、

 

「何であたし達まで、肝試し何てしなきゃならないの?」

 

「ハァ・・・こんな事になるなら、あたしも咲さんみたいに帰れば良かった・・・」

 

 りんの言葉に同意するかのように、なおは帰れば良かったと後悔していた。エレンに至っては、極度の緊張でみゆきやあゆみを連れて、トイレに何度も行っていた。年長者のなぎさは、一同を励ますように、

 

「まぁまぁ、みんな居るから大丈夫だよ」

 

「でも・・・此処に居るメンバー、みんなオバケ苦手だよ」

 

『・・・・・・・・・・』

 

 えりかの何気ない一言で、再び室内が沈黙した時、それは始まった・・・

 

 

 激しい雷と共に、突然別荘の電気が一斉に消え、一同や部屋で寛いでいた妖精達が悲鳴を上げた。

 

「な、何!?これもこまち達の仕業?」

 

 かれんは、電気が消えた事で焦りだし、ラブは、今の雷が原因かも知れないと思うと、

 

「それとも、今の雷で停電したとか?」

 

「その可能性もあるよね・・・取り敢えず懐中電灯はあるし、ブレーカーを見に行ってみる?」

 

 なぎさが一同に聞くと、りんはかれんを見つめ、

 

「じゃあ、かれんさん・・・お願いします」

 

「エッ!?わ、私一人で?な、何人か一緒に来てくれても良いでしょう?」

 

「じゃあ、私行きます!」

 

 真っ先にのぞみが一緒に行くと立候補してくれて、かれんはホッと安堵した。更にアン王女も右手を挙げ、

 

「わ、分かりました。私とソードもお供致しますわ」

 

「わ、私もですか?」

 

 真琴は自分を指さすと、アン王女はコクリと頷き、真琴は渋々ながらかれん、のぞみ、アン王女と共に、地下にあるブレーカーを調べに向かった。途中、トイレでパニクるエレン、みゆき、あゆみと合流し、七人は地下へと向かおうとした。二階に向かう階段と、地下に降りる階段が見えて来た時、再び外で激しい雷が鳴り、一同に緊張が走った。更に稲光が、階段の窓から室内を照らした瞬間、一同は恐怖でその場から動けなくなった。

 

「い、今・・・階段の前に誰か居ませんでした?」

 

 真琴は怯えながら、確認するように一同に問い掛けると、一同もコクリと頷き、あゆみは生唾を飲み込むと、

 

「な、何か居たよね?」

 

「もう、こまちぃぃ!悪い冗談は止めてぇぇ!!」

 

 かれんが叫んだ瞬間、再び稲光が室内を照らした。七人の顔は、照らされた場所に立つ何かを見て、青ざめながら目を見開き、

 

『キャァァァァァァァ』

 

 七人の悲鳴が別荘中に響き渡った・・・

 

 

 悲鳴が沸き起った時、くるみは恐怖でミルクの姿に戻り、美希にしがみついた。美希はミルクの頭を撫でながら、

 

「な、何!?今の悲鳴?」

 

「かれんさん達に何かあった?」

 

 りんは恐怖で顔が引き攣り、心臓の鼓動が早くなっていた。つぼみも不安そうに、

 

「早速、こまちさん達に驚かされたんでしょうか?」

 

「こまちさんならやりかねませんね」

 

 うららもつぼみの話に頷くも、なおは震えながら時計を見て、

 

「で、でも、開始時間にはまだ早いよ?」

 

「それも有り得るけど・・・行ってみよう!」

 

 なぎさの提案に同意し、なぎさ、りん、うらら、ラブ、美希とミルク、つぼみ、えりか、なおは、かれん達の様子を見に、リビングを出て行った。

 

 一同は、恐る恐る悲鳴の聞こえた階段方面に向かって行くと、

 

『イヤァァァァァァァ!!』

 

 悲鳴を上げながら、全速力で駆け戻って来る七人を見て、思わずなぎさ達も合流して逃げ出した。

 

「か、かれん、何があったの?」

 

 なぎさは、恐る恐るかれんに何があったか聞くと、取り乱したかれんは、変顔浮かべながら、

 

「で、出た・・・オバケが出たのぉぉぉ!」

 

「じょ、冗談よね?」

 

「こまちさん達じゃ無いんですか?」

 

 美希とラブが、顔を引き攣りながら改めて問うと、

 

「そうかも知れないですけど、怖くて見てられないですわぁぁぁ」

 

 アン王女も普段の冷静さはどこへ、一同に混じって半泣きしながら駈け続けた。意を決したなぎさが立ち止まり、背後を振り向くと、追って来ているであろう、何かの正体を見極めようと待った。

 

「待てぇぇ!」

 

 遠くの方で声が聞こえたかと思うと、再び稲光と共に室内が一瞬明るくなり、なぎさは、骸骨が追い駈けて来る姿を目にした瞬間、脱兎の如く逃げ出した。

 

「ありえない!ありえない!ありえない!が、骸骨が追い駈けて来てるよぉぉぉ!!」

 

『が、骸骨!?イヤァァァァァ!!』

 

 なぎさから骸骨が追いかけて居ると聞かされた一同は、益々パニックになり、

 

「もう、誰よぉぉぉぉ!?響でしょう?」

 

 半泣きのエレンが響を疑うも、とうの響は、奏、アコと共に、今エレン達が通り過ぎた部屋の室内で、傘オバケを制作中だった。

 

「奏、アコ、今エレンの声がしなかった?」

 

「した!した!もう怖がってる何てねぇ」

 

「本当、臆病何だからぁ・・・」

 

 三人は、廊下に居るであろう、エレンの様子を見ようとドアを開けた瞬間、骸骨と至近距離で顔を合せた。

 

「「「・・・・・エッ!?」」」

 

「お前達も・・・」

 

「「「キャァァァァァァ!」」」

 

 響達は、骸骨が発した、地の底から響き渡るような声を聞き、思わず鳥肌が立つと、悲鳴を上げて逃げ出した。

 

 

 響、奏、アコも加わり、一同は追って来る骸骨から別荘の中を全速力で逃げ回って居た。途中で電気が点き、こまち達がブレーカーを入れ直してくれたようだったが、その分一同には、不気味な骸骨がハッキリ分かった。腰に下げた剣をカチャカチャ鳴らしながら、執拗に追いかけてくる骸骨、エレンは恨めしそうに響を睨み、

 

「な、何で響達も逃げてるのよぉ!?あなたが私達を脅かしてたんでしょう?」

 

「ち、違う、違う、私達じゃないよ!」

 

「私達、肝試しに使うオバケ傘作ってただけよ」

 

「あんな骸骨知らないわよぉぉ」

 

 響、奏、アコが否定し、それを聞いたなおは、半泣きしながらみゆきに話し掛け、

 

「み、みゆきちゃん、妖怪は大丈夫何でしょう?骸骨説得して帰って貰ってぇぇぇ!」

 

「エェェェ!?骸骨さんは妖怪じゃないよぉぉぉぉ!」

 

 みゆきは頬を膨らませて否定するも、引き攣った表情のなぎさも加わり、みゆきに話し掛けると、

 

「いや、骸骨って色々な妖怪居るよ。ガシャドクロとか、骨女とかさぁ」

 

「そんなの知らないもん!妖怪さんは、河童さんや天狗さんは、良い人だってお婆ちゃんに聞いてるけど、他のはオバケさんだもん!!」

 

 みゆきは、頭の中がパニックになっているのか、激しく取り乱し、あゆみは逃げながらも、そんなみゆきにツッコミを入れ、

 

「みゆきちゃん・・・オバケも妖怪も似たようなもんじゃ?」

 

「違うよぉ!全然違うよぉぉぉぉ!!」

 

「待てぇぇぇ!」

 

 再び背後から聞こえた不気味な声に、一同の逃げ足は益々速くなった。みゆきは半泣きしながら、

 

「アァァァン!ゴメンなさ~い!!骸骨さんも良い人です・・・だから、追って来ないでぇぇぇぇ!!」

 

 執拗に一同を追い回す骸骨に追われ、徐々に一同もへばって来ていた。かれんは意を決すると、

 

「こうなったら、こまち達の所に行きましょう!そうよ、骸骨何か居る筈無いわ・・・これはこまちの仕業よ!」

 

 かれんは、自らを奮い立たせるかのように言い聞かせ、こまち達が準備している大浴場へと向かった。

 

 大浴場で準備をしていた、ほのか、ゆり、こまち、舞、満、薫、祈里、せつな、あかね、やよい、ヒメルダと妖精達だったが、悲鳴を上げる人数が、どんどん増えていく事に気付いたほのかとゆりは、

 

「ねえ、何だかなぎさ達の様子が変だわ!」

 

「ええ、まだ肝試しの開始時間じゃないのに、尋常じゃ無い悲鳴を上げてるし・・・」

 

「ウフフ、かれんやりんさん達ったら、恐がり何だからぁ」

 

 こまちは楽しそうに、せっせとオバケの小道具を準備するも、いつきとひかりも、困惑した表情で、

 

「でも、まだ始まっても居ないのに、ちょっとおかしく無いですか?」

 

「はい、何かがあったんじゃないかと思います」

 

「そうですね。廊下を走るのはよくありませんし・・・」

 

「れいかさん・・・心配するとこそこ?」

 

 れいかも二人の意見に同意するも、どこか的外れな言葉を喋ったれいかに、舞が苦笑気味に呟いた。そうこうしている間に、悲鳴がどんどん近付いて来ると、大浴場の扉が勢い良く開かれ、かれん達が慌てて入って来た。かれんは、こまちを見付けると慌てて近づき、こまちの両肩をギュっと掴んで激しく揺さぶった。

 

「こまちぃぃぃ!あの骸骨はあなたの仕業なのよねぇ?そうよねぇ?そうだと言ってぇぇぇぇ!!」

 

「かれん、落ち着いて!骸骨!?そんなの用意してたかしら?」

 

『さあ?』

 

 こまちに聞かれた脅かし役は、皆一斉に首を傾げた。騒ぎに気付いた妖精達も近付き、キャミーは不思議そうに首を傾げながら、

 

「ニャンの騒ぎニャ?」

 

「何でも、かれん達が骸骨に追い回されたそうナツ」

 

 少し怯えた表情のナッツが、妖精達に語ると、

 

『骸骨ぅぅ!?』

 

 妖精達は、骸骨の話を聞くと、魔王とピーちゃん、キャミー以外は、少し怯えながら怖がり、シャルル、パフ、リボンは、思わずガタガタ震え出す中、キャミーは思案するように考え込み、

 

(骸骨!?ひょっとして・・・)

 

 キャミーが考え込んで居ると、魔王は怯えるなぎさ達を見て笑い出し、

 

「カゲカゲカゲ、全く、プリキュアなのに骸骨何かにビビってる何て、お笑いカゲ」

 

『悪かったわねぇ』

 

 怖がり軍団が一斉に頬を膨らませると、魔王は入り口の方に移動し、

 

「俺が見て来てやるカゲ」

 

「流石に魔王を名乗るだけあって、こういう時は頼もしいわねぇ」

 

 魔王が様子を見てくると大浴場から出て行くと、かれんは少し魔王を見直した。何やら廊下の方で声がすると、魔王が再び現われ、

 

「お前達に客カゲ!」

 

『客!?』

 

「入ってくるカゲ」

 

 魔王に促されて入って来たのは、なぎさ達を散々追い回した、腰に剣を差した骸骨だった。骸骨が入ってきた瞬間、

 

『ギャァァァァ』

 

 怖がり軍団は絶叫し、今にも失神しそうな表情を見せるも、こまちは笑みを浮かべながら骸骨に近付き、

 

「連れの者が失礼致しました。何かご用でしょうか?」

 

「ほう、貴公は拙者を見ても悲鳴を上げぬとは、中々肝が据わっておるなぁ?」

 

 不気味な声でこまちと会話をする骸骨だったが、どうやら敵意は無さそうで、怖がり軍団は、怯えながらも骸骨を凝視した。いつきは、何事も無いように骸骨と会話するこまちに困惑し、

 

「れ、冷静に骸骨と話してる?」

 

「流石はこまちさん」

 

「時々こまちの事がわからなくなるわ・・・」

 

 のぞみはこまちを称え、かれんは引き攣った表情でこまちを見た。すると、奥の方から嬉しそうなキャミーの声が聞こえ、

 

「やっぱり、べレル様ニャ!」

 

「ン!?オォ、キャミーではないか!プリキュア達と一緒だったのか?」

 

「はいですニャ!プリキュア達には、良くして貰いましたニャ」

 

「そうか・・・お前の気配を辿って此処に来て正解だったようだな。プリキュア達よ、我が使い魔キャミーが世話になったようだな」

 

 ベレルが一同に礼を述べると、少し緊張した表情のほのかがベレルに頭を下げ、

 

「いえ、私達の方こそ・・・ベレルさんの事は、キャミーから聞いてます。オークの森を元に戻して頂いたそうで、助かりました」

 

「いや、あれはこちらの方が詫びを入れねばなるまい・・・シャックスの奴めが勝手に行った事とはいえ、貴公らにも迷惑を掛けたな」

 

「あ、あのぅ・・・ありがとうございました!あなたのお陰で、お母ちゃん達が危ういところで救われました」

 

 なおは、ゆりの影に隠れ、恐がりながらもベレルに頭を下げた。ベレルは愉快そうに笑い出し、

 

「ハハハハハ!何、礼には及ばん・・・しかし、貴公ら、中々怖がりが揃っておるなぁ?拙者が現われただけで逃げ出すとは・・・」

 

『だってぇぇぇぇ』

 

「まあ良い、今日は噂に聞くプリキュアに会いに来てみたが、全員揃っているとは好都合だったわい」

 

「たまたまみんなで、合宿で特訓してたから・・・」

 

 なぎさから特訓の事を聞いたベレルは、

 

「ほう、特訓かぁ・・・これは丁度良い!何人か、拙者と手合わせしてみんか?」

 

 ベレルから予想外の声が掛かり、一同がざわつく中、ラブは手を上げると、

 

「じゃあ、私達と手合わせして貰えますか?」

 

「エェェ!?」

 

「良いわね!」

 

「そうね」

 

 美希は、ラブの提案に変顔浮かべ驚くも、祈里とせつなはラブの提案に同意した。ベレルは何度も頷き、

 

「ほう・・・良いぞ!では、外の雷雲を何とかせねばな!!」

 

 ベレルは、そう言うと外へと移動し、剣を上に掲げると、雄叫びと共に振り下ろした。それと同時に、雷雲は剣に斬られたかのように真っ二つに裂け、ちょうど島の周辺だけを雷雲が避けるように移動した。

 

「す、凄い!?」

 

 なぎさは、目を見開いて驚き、ラブは、美希、祈里、せつなに話し掛けると、

 

「美希たん、ブッキー、せつな、ゆりさんから教わった修行の成果、試して見よう!」

 

「ちょっと気が引けるけど、良いわよ!」

 

「私も良いよ!」

 

「ええ、何時でもOKよ!」

 

 美希、祈里、せつなも同意し、ラブ達四人はプリキュアへと変身し、ビーチに移動すると、ベレルとの組手を始めた・・・

 

「ダァァァァァ」

 

 ピーチは、雄叫びと共にパンチを繰り出すも、ベレルはそれを躱し、反撃を試みようとした。すると空中からベリーが飛び蹴りを行い、ベレルは右足を軸にして上体を反らすと、ベリーに反撃のパンチを浴びせた。だが、その瞬間にパインが両腕をクロスしながら割って入り、ベレルのパンチを防ぎ、パッションが激しい連続攻撃で二人を援護した。

 

(ほう、コ奴ら中々のチームワークを持って居る・・・)

 

 ベレルは一旦距離を取ると、ピーチ、ベリー、パイン、パッションが横一列に並び、ベレルと向き合った。

 

「今度は、ベレルさんの方から攻撃して貰っても良いですか?」

 

「何!?・・・フッ、良かろう!」

 

((((は、速い!?))))

 

 ベレルの瞬発力は凄く、一気にピーチ達との距離を詰め、四人を激しい連続攻撃で吹き飛ばした。四人は体勢を崩しながらも持ち直し、

 

「特訓の事を思い出さなきゃ・・・」

 

「ピーチ、ベリー、パッション」

 

「「「!?」」」

 

 パインは、無言で三人にアイコンタクトを送ると、ピーチ、ベリー、パッションも無言で頷いた。再びベレルが一気に距離を詰め、一人前に出たパインに連続攻撃を浴びせるも、ピーチ達は一斉にパインを援護せず、交互に入れ替わりながらベレルと戦い、戦いから距離を取った者は、ベレルの動きをジィと見つめた。

 

(何だ!?)

 

 ベレルは困惑するも、尚も攻撃を続けて居ると、四人の目が一斉に輝き、

 

「「「「見切ったぁ!」」」」

 

「何!?」

 

 ベレルの猛攻を、四人は完全に見切り、すんでの所で攻撃を躱し続けた。ベレルが動揺した瞬間を見逃さず、ピーチは左腕でベレルの右ストレートを持ち上げ、カウンター気味の右ストレートを放った。

 

「グゥゥゥ!?」

 

 ベレルは、足をスリップさせて衝撃を弱めると、そのまま大きく後方にジャンプして着地した。

 

「ハハハハ、拙者の攻撃を順番に受ける事で、残りの者が拙者の攻撃を見極めておったか・・・まんまとしてやられたわい」

 

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

 四人はベレルに頭を下げ、特訓の甲斐があった事を直に感じた。

 

 それを見て居た満は、いつきの側に近寄ると、

 

「いつき、今日は休養日だけど、ちょっと私とあなたで出来そうな技を考えたんだけど、後で付き合ってくれるかしら?」

 

「良いですよ!どんな技だろう?」

 

 いつきは、満からの提案を聞き、技を想像するとウキウキしていた・・・

 

 

 模擬戦を終え、ピーチ達四人が変身を解くと、ベレルは一同に、プリキュアに興味があって会いに来た事を告げた。更に先程ピーチ達と模擬戦をした事に触れ、

 

「良いか、くれぐれも今手合わせした事は内密になぁ。バレると、色々面倒だからのぉ・・・」

 

「「「「ハイ!」」」」

 

「さて、プリキュア達の顔も見た事だし、拙者は帰るとしよう・・・キャミー、お前はどうする?」

 

「今まで自由にさせて頂きましたし、キャミーもベレル様と一緒に魔界に帰りますニャ」

 

「エェェ!?キャミー、帰っちゃうニャ?」

 

「寂しくなるわね・・・」

 

 キャミーが魔界に帰ると伝えると、ハミィとエレンが少し寂しそうな表情で別れを惜しんだ。

 

「ハミィやセイレーンには仲良くして貰ったニャ・・・ありがとうニャ!」

 

 キャミーとハミィが、固い握手でまたの再会を約束していると、ベレルは笑い出し、

 

「ハハハハ、プリキュアもそうだが、貴公らと共に過ごす妖精達も、興味を引く者達が多いな」

 

 ベレルはそう言うと、なぎさ達や妖精達を一人ずつ見つめ、魔王と目が合うと、

 

(特にあの者、拙者は何処かであった気がするのだが・・・)

 

 ベレルは首を捻るも、直ぐに気を取り直し、

 

「そうそう、これは拙者からの忠告だと思って頂こう!」

 

『!?』

 

「そこの四人との戦いや、シーレイン殿の話を聞く限り、拙者は、貴公達が魔界に仇をなす存在とは、到底思えぬゆえ敵意は持たぬが、カイン殿とアベル殿は、何故か貴公らに拘っているように思われる。もし、処女宮を守護するリリスを差し向けたなら・・・貴公らは全滅するであろう!!」

 

『エッ!?』

 

 ベレルの発言を聞き、一同は心の底から驚愕した。特訓の甲斐もあって、自分達は、少しは強くなった自負を持って居た。ベレルは、そんな一同に気付いたのか、

 

「勘違いするなよ、貴公らは強い!それは認めよう・・・だがリリスには、貴公らが勝てぬ訳がある・・・これから戻って、ニクスとリリスには言い含めるが、仮にリリスが現われても、戦ってはならんぞ?」

 

「どういう事?」

 

 ゆりが険しい表情でベレルに問い掛けるも、ベレルは、もう助言はしたと言いたげに、

 

「言った通りだ・・・ン!?」

 

 そんなベレルの視線が、何気なしにアコを見た時、思わずベレルは愉快そうに笑いだした。

 

「ハハハハハ、本当に貴公らは面白いなぁ・・・全滅するかも知れないに訂正しておこう」

 

「あまり変わってないんですけど?」

 

 なぎさが困惑気味に呟いた。ベレルは、改めて一同に向き合うと、

 

「では、さらばだ!!」

 

「アッ!?ベレル様、待って下さいニャ!みんな、今まで世話になったニャ・・・また、何時か会おうニャ!!」

 

『キャミーも、元気でね!』

 

 一同は、複雑な心境で、去って行くベレルとキャミーの後ろ姿を見送った・・・

 

 

 その夜、プリキュア合宿最後の夜を迎えた一同の晩ご飯は、みんなで作ったカレーだった。ヒメルダとリボンも、帰る前にみんなとの団欒を楽しみ、

 

「私、こんなに楽しかったのって・・・久しぶりだよぉぉ!」

 

「そうですわねぇ」

 

 ヒメルダとリボンは、楽しそうに顔を見合わせてハシャギながらカレーを食べた。えりかは何度も頷き、

 

「ウンウン、ヒメを招待して大正解っしゅ」

 

「えりかお姉様、ありがとう!」

 

 ヒメルダがえりかに抱き付き、えりかは本当の妹が出来たと言いたげに、ヒメルダの髪を優しく撫でた。食事も終え、後片付けを終えたヒメルダとリボンは、改めて一同に礼を述べた後、迎えに来たブルーによってブルースカイ王国に帰って行った。

 

 

4、打ち上げ

 

 プリキュア合宿四日目・・・

 

 最終日のこの日は、朝からビーチに集合して、ゆりから教わった空手のおさらいをしていた。皆ベレルが残した、意味深な発言に刺激されたのか、稽古に身が入っていた。ゆりは満足そうに頷き、

 

「みんな、お疲れ様!それぞれ帰り支度もあるでしょうし、これから、私となぎさ、ほのかで、みんなが試して見たい事に付き合うけど、誰か居るかしら?」

 

 ゆりに聞かれると、真っ先に満が声を掛け、

 

「私といつきで行うわ!薫、プリキュアに変身するから協力して」

 

「良いわよ」

 

 薫は頷くと、二人はブライトとウィンディに変身し、それを見たいつきもポプリに話し掛け、

 

「ポプリ、僕達も行くよ!」

 

「ハイでしゅ!」

 

 ポプリからプリキュアの種を貰い、いつきもサンシャインへと姿を変えた。つぼみ、えりか、うららはヒソヒソ話を始めると、

 

「私達も、この前のローリングフォルテッシモを試すんですか?」

 

「でも、この前失敗したじゃん?」

 

「特に何の改良もしてないですしねぇ・・・」

 

「「「じゃあ、今回は試さないって事で」」」

 

 三人は、ローリングフォルテッシモを披露する事を止めた。ブライト、ウィンディ、サンシャインがプリキュアになった事で、なぎさ、ほのか、ゆりもプリキュアに変身し、ブライトとサンシャインが一歩前に出た。

 

「私達が試したい技は・・・これよ!」

 

 ブライトの合図と共に、サンシャインがシャイニータンバリンを取り出すと、ゴールドフォルテバーストの力で、太陽のような光のゲートを空中に作り出した。ブライトはそれを見届けると、上空に目映い輝きを放つ巨大な光のエネルギー体を作り上げると、

 

「月と」

 

 ブライトが叫び、

 

「太陽を」

 

 それに応えるようにサンシャインが叫び、

 

「「今、一つに!プリキュア!サンライズムーン!!」」

 

 二人の作り上げた技が重なった時、上空から目映い輝きが起こり、ブラック、ホワイト、ムーンライトを始めた一同は、目映い光に目が眩んだ。技を披露し終えたブライトとサンシャインが、一同に説明を始め、

 

「私達が考えたのは、簡単に言えば目眩ましね」

 

「ブライトが昨日閃いたんだけど、私もこの技は、色々な局面で使える気がするの」

 

「成る程・・・これは予想を遙かに超える技ね?」

 

「ウン、確かに色々な局面で役立ちそうね」

 

「凄いじゃない、二人共」

 

 ムーンライト、ホワイト、ブラックからも絶賛され、二人は互いに顔を見合わせ微笑んだ。更にアクアがアクアキックを、ミントがエメラルドソーサーリフレクションを、ルミナスがハーティエルシャワーを、ルージュ、サニー、マーチが、キャノンショットをそれぞれ披露した。のぞみは、悔しそうに頭に両手をおいて藻掻き、

 

「しまったぁぁぁ!?私達名前決めるのに夢中で、実際の特訓忘れてたぁぁぁ」

 

「「ショボン」」

 

 みゆきとやよいも項垂れ、あゆみは三人を見て呆れたように、

 

「だから言ったのに・・・」

 

「「「でも、あゆみちゃんもノリノリだった」」」

 

「エェェと・・・そうでした」

 

 三人にツッコミを入れられ、あゆみは思わず舌をペロりと出した。一同からの報告を聞いたムーンライトは、改めて満足そうに何度も頷き、

 

「みんな、お疲れ様!これでプリキュア合宿は終了よ!!後は各自で技を磨いて頂戴」

 

『ハイ!』

 

「じゃあ、これで合宿も終りだけど、みんな集まって!」

 

 ブラックは一同を呼ぶと、ヒソヒソ話を始めた・・・

 

 

 魔王は、つまらなそうにラケルを連れ、森を散策していた。苦心して一同の水着を拾って来たのに、あれから一同が水着を着る事は無かった。

 

「折角苦労して水着を拾って来てやったのに、あれから一度も着てないカゲ」

 

「みんな薄情ケル」

 

「これで合宿も終りカゲなぁ・・・お前はまた妖精学校に戻るカゲ?」

 

「ハイ!また学校に戻って、プリキュアのパートナーになれるように勉強ケル」

 

「お前なら・・・必ずなれるカゲ」

 

「魔王さん・・・」

 

 魔王とラケル、スケベコンビに今奇妙な友情が生まれた瞬間だった・・・

 

 その時、別荘の方からなぎさ達のはしゃぐ声が聞こえて来て、魔王とラケルはハッとした。

 

「あ、あいつら、また俺を除け者にして帰る気カゲか?」

 

「置いてかれたら困るケルゥゥ」

 

 魔王とラケルは、大慌てで別荘へと戻って行った・・・

 

 別荘に戻った魔王とラケルは、水着を着てプールではしゃぐなぎさ達一同と、妖精達が戯れて居る姿を見て、思わず呆然とその場に立ち尽くした。上下紐で結ぶビキニを着ているのは、満、薫、のぞみ、ラブ、美希、祈里、せつな、真琴の八人、フレア付きビキニを着ているのは、なぎさ、ひかり、咲、舞、りん、うらら、くるみ、つぼみ、えりか、いつき、響、奏、アコ、みゆき、あかね、やよい、なお、あゆみの十八人、ワンピースを着ているのは、ほのか、こまち、かれん、ゆり、エレン、れいか、アン王女の七人、一同は、魔王とピーちゃんがビショ濡れになりながら、懸命に海の中から集めて来た水着を着ていた。

 

「あいつら・・・着てくれたカゲかぁ」

 

 魔王は嬉しそうに羽をパタパタ動かし、ラケルは目をハートマークにしてハシャいだ。それに気付いたなぎさが、二人を手招きし、

 

「ほら、魔王もラケルもこっちおいでよ!」

 

「今日も暑いし、冷たくて気持ち良いわよ!」

 

 笑みを浮かべた舞が・・・

 

「折角プールがあるのに、一度も入らないのは勿体ないしね」

 

 ニンマリしたのぞみが・・・

 

「まぁ、折角魔王とピーちゃんが、水着を拾って来てくれたんだし」

 

 少し照れながらも胸を揺らしたラブが・・・

 

「プリキュア合宿の締めは、プールで大いに遊ぼうってなぎささんが提案して」

 

 えりかの浮き輪を引っ張りながらつぼみが・・・

 

「それで、こうしてみんなで遊んでるって訳」

 

 楽しそうにはしゃぐ響が・・・

 

「魔王も一緒に遊ぼう!こっちにおいで!!」

 

 笑顔を浮かべながら、両手を広げて魔王を呼ぶみゆきが・・・

 

『魔王、遊ぼう!』

 

 そして、プールの中ではしゃぐ一同が、皆魔王に笑顔に向けていた。魔王は目をウルウルさせると、

 

「オォォ!遊ぶカゲェェェェ!!」

 

 魔王は嬉しそうに、ビーチボールのように跳ねながら、一同の頭に次々当ってはしゃいだ。

 

 楽しげな水着姿の少女達と妖精達の声が、島中に響き渡っていた。

 

 こうして、プリキュア合宿はその幕を下ろした・・・

 

            第百十二話:プリキュア合宿終了

                   完

 




 第百十二話投稿致しました
 今回は、プリキュア合宿三日目と最終日の模様を書きました。
 やよいのは次回への伏線で、ベレルの忠告も後の伏線になってます

 リコママのリリアさんが見られる事で、気力が充実して、短期間で書き終える事が出来ましたw
 リリアさん、予想以上に良いキャラでした。美人で可愛さもあって、天然っぽい所も良かったですし、娘思いな面も素敵でした。今日子さんとの2ショット、リコ、リズとの美人母娘の3ショットと、もう歓喜しながら見てましたw

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