プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第百六話:マーチ!怒りのインパクト!!

1、大蛇とプリキュアオールスターズ(その2)

 

 茶の大蛇がその巨体を擦りつけると、震動が地面を伝わり、メロディ、リズム、ビート、ミューズが思わずバランスを崩した。茶の大蛇は、七色ヶ丘中学校の校庭の砂を大量に吸い込むと、四人目掛けサンドブレスを吐き、砂嵐がスイートプリキュアを襲った。

 

「な、何これ!?目を開けてられない!」

 

「イヤァン!口に砂が・・・ペッペッ、もう最悪ぅ!!」

 

 メロディとリズムが顔を顰め、ビートとミューズも腕で目をガードするも、大蛇の尻尾攻撃を受け、四人が吹き飛ばされる。

 

「「「「キャァァァ!」」」」

 

 吹き飛ばされて校庭にゴロゴロ転がるも、四人は直ぐに受け身を取って体勢を立て直した。それを見た茶の大蛇は、再びサンドブレスを吐くも、瞬時にビートが反応し、

 

「弾き鳴らせ、愛の魂!ラブギターロッド!」

 

 ビートが、アイテムであるラブギターロッドを取り出すと、ロッドを弾いて正面にバリアを張って、サンドブレスを防ぎ続ける。直ぐにミューズも加勢し、青色の妖精シリーをモジューレにセットすると、

 

「シ、の音符のシャイニングメロディ!プリキュア!スパークリングシャワー!!」

 

 ミューズが放った大量の音符の泡が、茶の大蛇目掛け飛んで行く。メロディとリズムは、互いの手を叩き合い、二人で踊るように舞うと両手を繋ぎ、

 

「「プリキュア!パッショナート・ハーモニー!!」」

 

 二人の叫びと共に、手から金色の光が大蛇目掛け発せられた。

 

「シャァァァ・・・シャア!」

 

 大蛇は突然七色ヶ丘中学校の校庭に穴を掘り始め、地面へと消え去った。メロディ達は動揺し、何所から大蛇が現われて来るか神経を尖らせた。そこにキャミーが駆け寄って来ると、

 

「セイレーン!茶の大蛇は、甘いものが大好きニャ!それで誘き寄せるニャー!!」

 

「「「「甘い物!?」」」」

 

 そう聞いた途端、メロディはリズムを、リズムはメロディをジィと見つめ、

 

「メロディ、マーチに呼ばれる前、家の店でカップケーキ食べてたわよねぇ?」

 

「そういうリズムだって、カップケーキ運んで来た時に、生クリームが指に付いてたよねぇ?」

 

「失礼ねぇ!出掛ける前に手ぐらい洗ってるわよ!!」

 

「あたしだって・・・何!?ビート、ミューズ、キャミー?」

 

「どうかしたの?」

 

 メロディとリズムは、思わず言い争いをして居ると、見て居たビート、ミューズ、キャミーは目を点にし、指で二人の背後を指差し、

 

「「「後ろ・・・」」」

 

「「エッ!?」」

 

 釣られるように背後を振り返ったメロディとリズムは、二人の背後で舌をチロチロ出した茶の大蛇に顔を舐められた。見る見る二人は顔を青ざめると、悲鳴を上げながら逃げ出した。

 

「「キャァァァァァ!!」」

 

「シャアァァァァァ!」

 

 そんな二人を大蛇は追い回し、遅れてやって来たハミィを見たビートは、

 

「ハミィ、まだカップケーキ持ってたわよねぇ?」

 

「ニャプ!?後でセイレーンとキャミーと一緒に食べようと持って来たニャ!」

 

「悪いけど、私にくれない?」

 

 ビートはハミィに頼み、生クリームとチョコのカップケーキを受け取ると、

 

「大蛇ぃぃ!ほら、甘い物があるわよ?」

 

 ビートは、カップケーキで大蛇を誘き寄せようと試み、大蛇はピタリと動きを止めると、メロディとリズム、カップケーキを交互に見つめて首を傾げ、少しの沈黙の後、再びメロディとリズムを追い回した。

 

「「何でこっち来るのよぉぉぉぉ!?」」

 

「カップケーキじゃ小さすぎて、物足りない見たいニャ!」

 

「「私達は、ケーキじゃな~い!!」」

 

 再び全速力で逃げるメロディとリズムだったが、次第に大蛇に対して腹が立ち、呼吸を合わせたかのように立ち止まると手を繋ぎ、

 

「「プリキュア!ハーモニーショット!!」」

 

 メロディとリズムは、蝶のような閃光弾を放ち、茶の大蛇に直撃させる。大蛇は、効かないとばかり微動だにしなかったが、メロディとリズムは上空高くジャンプし、

 

「「スイートハーモニーキ~ク!!」」

 

 上空から急降下して跳び蹴りを放ち、地上に着地した二人、メロディは、ビートとミューズに声を掛け、

 

「ビート、ミューズ、決めるよ!」

 

「待ってよ!決めるって、大蛇は・・・」

 

「キャミーのお願い聞くんでしょう?」

 

 ビートとミューズは、メロディとリズムが、このまま大蛇を浄化しようと考えて居るのではと感じ、困惑気味にメロディとリズムに問うと、

 

「「四人でパショナートハーモニー!」」

 

「ああ、それなら大丈夫かも!?」

 

 メロディとリズムからの提案を受け、四人でパショナートハーモニーを放つと、危険を感じて再び穴に潜ろうとした大蛇だったが、先程以上の勢いを避ける事は出来ず、吹き飛ばされた。ヨロヨロ頭を動かす大蛇に、メロディ、リズム、ビートが近付き、カップケーキを口の中に放り込むと、大蛇の目はハートマークを浮かべて、舌をチロチロ出して喜びを表した。

 

「ねえ、大蛇!あなた、あいつに無理矢理連れ出されたんでしょう?」

 

「このまま魔界に帰ってくれないかなぁ?」

 

「今度キャミーに、カップケーキのお土産渡すから、キャミーが魔界に帰ったら、また食べて!」

 

 ビート、メロディ、リズムに、このまま魔界に帰って欲しい事を言われた大蛇は、頭の中で何やら考え、

 

「シャァァァ!」

 

 茶の大蛇はコクリと頷き、舌をチロチロ出して再びメロディとリズムの顔を舐めると、上空に浮かび上がった。ビートは、放心しているメロディとリズムに話し掛け、

 

「メ、メロディ、リズム、大丈夫?」

 

「な、何とか!ね、ねぇリズム・・・ひょっとして大蛇は、今度は私達を食べられると勘違いしてないよねぇ?」

 

「メロディ・・・こ、怖い事言わないで!」

 

 互いに変顔を浮かべ、メロディの嫌な予感を聞いたリズムが顔を顰めた。それを見たミューズとキャミーは、苦笑を浮かべながら、

 

「どうやら交渉成立したようね!」

 

「ホッとしたニャ!」

 

「大蛇!また遊びに来るニャァ!!」

 

「「来なくてイイわよぉぉぉぉ!!」」

 

 大蛇に手を振りながらの、ハミィの何気ない一言を、メロディとリズムは、引き攣りながら瞬時に却下した。

 

 

 合流したピーチ達とハッピー達は、緑の大蛇が嵐を呼び、黄の大蛇が雷を落とすコンビネーションに、目の前で居並ぶ二匹の大蛇に近付く事が出来ず、防戦一方だった。

 

「これじゃ近づけない!何とかしなきゃ・・・」

 

 ピーチが悔しそうに呟くと、パッションはジィとピースとマーチを見つめ、それに気付いた二人が不思議そうにパッションに話し掛け、

 

「あのぅ・・・私達に何か?」

 

「あたし達の顔をジィと見てますけど?」

 

「エエ・・・向こうが嵐と雷を使うなら、こちらもって思ってね」

 

「「エッ!?」」

 

 パッションの閃きに、思わずピースとマーチは驚き、ひょっとしたら、自分達を囮にしようと考えて居るのではと思うと、ピースは涙目になりながら激しく首を振り、

 

「無理ぃぃぃ!あんな攻撃受けたら・・・死んじゃいますぅぅ!!」

 

「フフフ、冗談よ!近づくだけなら、もっと簡単な方法があるわ!!」

 

『エッ!?』

 

 パッションは、口元に笑みを浮かべながらアカルンを呼び出すと、一同の姿が忽然と消えた。黄と緑の大蛇は、突然消えたフレッシュ勢とスマイル勢に驚き、辺りをキョロキョロ捜すも、視界に映るのは、他のプリキュア達だけだった。

 

「シャボォ!?」

 

「キシャァ?」

 

 互いに首を捻るも、どうも頭の上が騒がしく、二体の大蛇が上目使いになると、

 

「パッション!ここは?」

 

「大蛇の頭の上よ!」

 

 ピーチに聞かれたパッションが、大蛇の頭の上だと答えた。黄の大蛇の頭の上に居るのは、ピーチ、ベリー、パイン、パッションの四人、緑の大蛇の頭の上に居るのは、ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティ、エコーの六人で、パッションから大蛇の頭の上に居ると聞き、パッションを除いた一同は目を点にした。一同は、恐る恐る足下を見ながら、思わず驚きの声を発した。

 

『エェェェェ!?』

 

「此処なら、大蛇も迂闊に攻撃出来ないでしょう?」

 

 困惑する一同を余所に、パッションは笑み混じりにそう語るも、恐る恐る互いに隣を見ると、黄と緑の大蛇は困惑しながらも、ギロリと大きな目で一同を睨み付けてくる。顔色変えた一同がパッションに話し掛け、

 

『私達・・・』

 

「「あたし達・・・」」

 

『大変危険な状況何ですけどぉぉぉぉ?』

 

 直ぐ足下から感じる大蛇のプレッシャーが、パッション以外のプリキュア達には感じられた。パインは、慌ててキルンを呼び出すと、

 

「大蛇さん、話を聞いて!私達、あなた達と戦いに来たんじゃないの!!」

 

「「シャボ!?」」

 

「このまま魔界に帰ってくれないかなぁ?お願い!ほら、ピーチも、ベリーも、パッションもお願いして!!」

 

「エッ!?う、うん・・・お、お願い!」

 

「あたし達も、出来れば戦わないで済ませたいし・・・」

 

「そうね・・・お願い!」

 

 両手を組み、パインが大蛇に哀願し、ピーチ、ベリー、パッションにも言うと、三人は困惑しながらも、パインに言われるまま、黄の大蛇にこのまま魔界に帰るようにお願いをした。

 

「シャアァァ・・・シャボ!?」

 

「うん!私は、あなた達ともお話出来るよ!!」

 

 パインが大蛇と会話出来る事を伝えると、黄の大蛇は見る見る嬉しそうな表情を浮かべ、コクコク頷いた。

 

「本当!?ありがとう!」

 

「シャアァァァァ!シャ、シャ、シャァァァ!!」

 

「エッ!?私とお話したいの?別に良いけど・・・」

 

「「「話って、何?」」」

 

 ピーチ、ベリー、パッションは、困惑しながら黄の大蛇を見つめた。ハッピー達は、パイン達が黄の大蛇と打ち解けたのを見て、

 

「じゃあ私達も、緑の大蛇と・・・」

 

「シャアァァァァァァァ!」

 

 ハッピーが、緑の大蛇に魔界に帰るように説得しようとした時、黄の大蛇と違い、緑の大蛇は苛立って居るのか、身体を激しく動かし、スマイルプリキュアを頭から振り落とそうとする。ハッとしたパインが慌てて通訳し、

 

「そっちの大蛇さんは・・・さっき攻撃された事をまだ怒ってるみたい!」

 

「「「「「「エェェ!?」」」」」」

 

「という事は、ビューティブリザードで攻撃した事を、怒っているという事でしょうか?」

 

「けどあれは、あたしの家族を食べようとした大蛇だって悪いし・・・」

 

 困惑するビューティとマーチ、パインはスマイル勢に話し掛け、

 

「私が黄の大蛇さんを説得して、緑の大蛇さんも一緒に魔界に連れて帰るようにお願いしてみるから、もうちょっと頑張って!」

 

「パイン!お願い!!」

 

「たのんまっせ!」

 

「でも・・・その間私達どうするの?」

 

「パインが説得してくれるまで、逃げ回るしかないよ!」

 

「逃げるのは癪だけど、大蛇はあいつに利用されてるだけなら、戦うのは気が引けるし・・・」

 

「そうですね・・・では、時間を稼ぎましょう!」

 

 パインの提案に乗り、ハッピー、サニー、ピース、エコー、マーチ、ビューティは、大蛇から逃げ回り、時間を稼ごうと決めた。

 

 五分後・・・

 

「シャァァァ!シャ、シャ、シャ、シャボ!!」

 

「そう何だ・・・バルバスさんって人は、蛇使いが荒いんだぁ・・・大蛇さんも大変ねぇ?あのね、大蛇さん!あなたにお願いが・・・」

 

「シャアァァ!シャシャシャ、シャボ!!」

 

「そ、そう・・・扱き使われるのは嫌だもんねぇ?」

 

 十分後・・・

 

「シャシャシャ・・・シャァァァボ!!」

 

「こんな可愛い子と会話出来る何て嬉しい・・・ありがとう!それでね、私の話も聞いて貰えると・・・」

 

「シャシャシャシャアァァァァ!」

 

「久々に会話が弾む!?そ、そう・・・」

 

 十五分後・・・

 

「パイン!まだですかぁぁ!?」

 

「もうちょっと頑張って!」

 

 学校の外周道路を、全速力で緑の大蛇から逃げ回り続けるスマイル勢、学校内に戻って来たハッピーが、大声でパインに聞くも、大蛇の長話は続き、困惑しながらもう少し待って欲しいとパインが告げた。痺れを切らしたピーチ、ベリー、パッションは、

 

「パイン・・・大蛇の事はパインに任せて、私達はハッピー達の応援に行くよ!」

 

「パイン、後をお願いね?」

 

「じゃあね!」

 

「アァァン!待ってぇぇぇ!!私達、仲間でしょう?友達でしょう?お願い!最後まで付き合ってぇぇぇ!!」

 

「シャァ!?」

 

「うん!ちゃんと聞いてるよ!!三人共、行かないでぇぇぇ!!!」

 

「「「分かった!分かったから・・・スカート引っ張らないで!!スカート脱げちゃうぅぅぅ!!!」」」

 

 パインは、中々話が終わらない黄の大蛇に困惑しながらも、一人にされるのは嫌なようで、ピーチ、ベリー、パッションのスカートを、ギュッと握りしめながら泣きついた。

 

 二十分後・・・

 

「何や!?交渉が長引いてるようやな?」

 

「このままじゃ埒が空かないね?」

 

「私達で、何とかやってみましょうか?」

 

 サニーが、エコーが、そしてビューティが、自分達でどうにかやってみようかと仲間達と話して居ると、見かねたキャミーがやって来て、

 

「大蛇!プリキュア達は敵じゃ無いニャ!!ベレル様は、プリキュア達にシャックス様の処遇を任せたニャ!!このままプリキュア達と戦うと、ベレル様に反逆してるのと一緒になっちゃうニャ!!!」

 

「シャァ!?シャ、シャ、シャァ・・・」

 

「大蛇は、それは困るって言ってるニャ!」

 

「キャミー、あなたも大蛇の言葉が分かるの?」

 

 キャミーが大蛇と普通に会話している姿を見たハッピーは、驚きながらキャミーに問うと、キャミーはコクリと頷き、

 

「これでも使い魔だからニャ!」

 

「だったら、もっと早く来てよ!」

 

「いやぁ、何だかみんな楽しそうだったから・・・」

 

『楽しんでない!』

 

 キャミーには、ハッピー達が大蛇と追いかけっこしているように見えて居た。そうハッピー達に語ると、六人は声を揃えたかのように、即座に否定した。緑の大蛇は、スマイル勢の顔をジィと見つめると、

 

「シャア!シャシャシャシャ・・・シャア!!」

 

「俺もベレル様の大蛇!もしお前達が勝てば、このままおとなしく魔界に帰ってやるって言ってるニャ!!」

 

「結局・・・戦うしか無いって事!?」

 

 緑の大蛇の提案に、ハッピーが困惑気味にキャミーに聞くと、キャミーはコクリと頷き、

 

「大蛇に実力を示せば、それで良いと思うニャ!」

 

「どうしよう!?ロイヤルレインボーバーストじゃ、大蛇の身も危ないし・・・」

 

 エコーに相談された一同、ハッピーは何やら閃き、仲間達を手招きすると、

 

「こういうのはどうかなぁ?あのね、一人づつ・・・ゴニョゴニョゴニョ」

 

「フムフム・・・エエんやない?」

 

「そうだね!」

 

「私もハッピーの案で良いよ!」

 

「じゃあ、ハッピーの提案で行こう!」

 

「キャミー、大蛇に通訳して貰えますか?」

 

 サニー、エコー、ピース、マーチ、ビューティも同意し、キャミーが一同の提案を大蛇に伝えると、大蛇も承諾した。

 

 六人は、大蛇の前にランニングするかのように移動し、縦一列に並ぶと、戦闘を終えた他のプリキュア達は呆然とし、

 

「あの娘達・・・何しようとしてるのかしら?」

 

「ピーチ達もそう・・・何か大蛇とずっと喋ってるようだし・・・」

 

「加勢しようと思ったけど・・・少し様子を見て見ましょう!」

 

 アクア、ムーンライト、ホワイトは、困惑しながらスマイル勢とフレッシュ勢の行動を見守った。

 

 先頭に居たサニーが、五歩前に出ると右手を高々上げ、

 

「一番!キュアサニー・・・サニーファイヤー、行くでぇ!!」

 

「シャボ!」

 

「二番!キュアピース・・・ピースサンダー、行きま~す!!」

 

「シャボ!」

 

「三番!キュアエコー・・・ハートフルエコー・・・行きます!!」

 

「シャアァァ・・・シャボ!」

 

「四番!キュアハッピー・・・気合いだ!気合いだ!気合いだ!気合いだぁぁ!ハッピーシャワー・・・行くよぉぉ!!」

 

「シャボォォォォ!」

 

「五番!キュアビューティ・・・ビューティブリザード、参ります!!」

 

「シャ・・・シャボォォ!」

 

「六番!キュアマーチ・・・直球勝負!プリキュア!マーチシュート!!行けぇぇぇ!!!」

 

「シャァァァボォォォ!」

 

 サニー、ピース、エコー、ハッピー、ビューティ、マーチの順で、六人は緑の大蛇に対して、それぞれの必殺技を放った。六人の攻撃を、まるで確かめるかのようにその身で受けた大蛇は、

 

「シャァァァァァ!」

 

「お前達、中々やるなって言ってるニャ!」

 

「エへへへ!あなたこそ、私達の攻撃を受けても平然としてる何て・・・驚いちゃった!」

 

 ハッピーが、エヘヘと微笑みながら、緑の大蛇に話し掛けると、

 

「シャボ!シャァァァァァ、シャシャシャア!!」

 

「約束通り、魔界に帰るって言ってるニャ!」

 

 緑の大蛇はそう言うと、上空に浮かび上がり、スマイル勢はホッと安堵したものの、緑の大蛇は、少し疲れた表情で、黄の大蛇と会話し続けるフレッシュ勢に気付き、

 

「シャアァァ!?シャシャシャァ・・・シャア!!」

 

「エッ!?そのままそいつの話を聞いて居ると・・・三日は話し続けるぅぅぅ?」

 

「「「エッ!?」」」

 

「シャア!シャシャシャ・・・」

 

「う、うん・・・そうして貰えると助かる!」

 

「パイン、緑の大蛇は何て言ったの?」

 

 困惑顔のピーチが、大蛇の通訳をパインに頼むと、パインも困惑顔のまま、ピーチ、ベリー、パッションに話し掛け、

 

「あのね・・・黄の大蛇さんは、話し好き何だって!久しぶりに他の大蛇以外と話が弾んだようだから、そのまま続けさせたら、三日は喋り続けるぞって・・・」

 

「み、三日も!?」

 

「冗談じゃ無いわ!」

 

 ベリーとパッションが、心底嫌そうな表情を浮かべ、ピーチは思わず目を点にした。パインも苦笑し、

 

「うん!だから、緑の大蛇さんが、魔界に一緒に連れて帰ってくれるって!!」

 

「「「何だか、時間の無駄だった気がするんだけど?・・・」」」

 

「ゴメ~ン!」

 

 ピーチ、ベリー、パッションは、この数十分、ジッと我慢して大蛇の世間話を聞いていたのは、一体何だったんだろうか?と、目を点にしながら思わずポツリと呟き、パインは、そんな三人に申し訳無さそうに、思わず頭をペコリと下げて謝った。緑の大蛇に話を遮られ、渋々黄の大蛇も上空に浮かぶと、二匹の大蛇は、名残惜しそうに上空を旋回し、フレッシュ勢とスマイル勢に見送られ、魔界へと帰って行った。

 

 

 

2、ツインシュートインパクト

 

 シャックスは呆然として居た・・・

 

 七匹の大蛇全てが、プリキュアと和解し、魔界へと帰って行った事が信じられなかった。

 

「バ、バカな!?七匹の大蛇全てが・・・」

 

「みんな甘ちゃんだねぇ・・・あいつらなら、大蛇ぐらい倒せただろうに!さてと、こっちも決着着けるかい?」

 

 バッドエンドマーチは、大蛇に止めを刺さず、魔界へと逃がしたプリキュア達を見て、呆れたように呟いた。バッドエンドマーチは、長い右足でバレリーナのように半円を描くと、

 

「ハァァァァァ!」

 

 雄叫びを上げると、足下にエネルギーを蓄え始め、シャックスを動揺させる。

 

(クッ!?何とかこの場から逃げ切れば、家族さへ人質に取れば、プリキュアなどいくらでもどうとでも出来る!!)

 

 何か逃げる手段は無いかと、シャックスがキョロキョロすると、バッドエンドマーチの表情が険しくなり、

 

「戦闘中・・・何余所見してるのさ?」

 

「ヒィィィィ!」

 

 バッドエンドマーチが素早い連続蹴りを放ち、シャックスが無様に怯え、吹き飛ばされた。シャックスは、バッドエンドマーチに対して殺意を抱くと、

 

(調子に乗ってぇぇ!許さないですよぉぉ!!)

 

 シャックスは、怒りで身体中を振るわせるも、バッドエンドマーチは止めとばかり、足下にエネルギーを蓄え始めると、それはどんどん巨大化していった。

 

「これで仕舞いだ!バッドエンドォォ・・・シュ~~ト!!」

 

「ヒィィィィィィ!」

 

 バッドエンドマーチは、マーチシュートのようなバッドエンドシュートを、シャックス目掛け蹴り放った。轟音上げてシャックス目掛けるバッドエンドシュートは、シャックスの身体を包み込んだ。

 

「ギャァァァァァァ!」

 

「チッ!他愛もない野郎だぜ!!」

 

 無様に断末魔の悲鳴を上げたシャックスを見て、バッドエンドマーチは、見下しながら吐き捨てた。徐々にシャックスの身体が干からびていき、戦いは終りを迎えたに見えた。

 

(な、何かおかしい!?)

 

 緑の大蛇との戦いを終え、家族を危険な目に遭わせたシャックスが許せず、駆け付けたマーチは、バッドエンドマーチが倒したように思えるシャックスの姿に、何処か違和感を覚えて居た。マーチが駆けつけて来たのを見たバッドエンドマーチは、

 

「さてと、今回のは貸しにしといて・・・」

 

「バッドエンドマーチ!危ない!!」

 

「エッ!?」

 

 突然マーチがバッドエンドマーチに飛びつき、両者が校庭に倒れ込むと、今までバッドエンドマーチが立っていた場所に、先端が尖った鋭利な刃物のような物があった。刃物が縮んで行くと、その先には、バッドエンドシュートで消滅した筈のシャックスが居た。刃物はシャックスの舌だったようで、舌打ちしたシャックスは、

 

「チッ!外しましたか・・・だが、キュアマーチ、並びにプリキュア達よ、安心しない事ですねぇ!私は、何度でもあなた方の家族を狙って差し上げますよ!!私は執念深いですからねぇ・・・」

 

「お、お前は!?無事だったのか?」

 

 バッドエンドマーチは、バッドエンドシュートを受けて無傷でいるシャックスに驚愕するも、シャックスは高笑いを浮かべ、

 

「ヒャアッハハハ!あなたの攻撃が当る直前、私は、あなた方の言葉で言う、脱皮をしましてねぇ・・・あなたが消滅させたのは、私の抜け殻に過ぎないんですよ!!」

 

「クッ!?野郎・・・」

 

 シャックスに出し抜かれたと知ったバッドエンドマーチは、険しい表情で睨み付けるも、シャックスは戯けるように、

 

「さて、私は一先ず姿を消しますが、必ずこの恨みは・・・・ン!?」

 

 そんなシャックスの視線が、キュアマーチへと向けられた。マーチは雄叫び上げ、その周囲で風がざわめき、徐々にボールぐらいの大きさからボーリングの玉、更に大きな球体のエネルギーを作り出した。

 

「あんただけは、絶対許さない!あたしの家族に手を出した償い・・・させてやる!!」

 

「ヒャアッハハハハ!そんな大きなエネルギー波など、当たらなければどうという事も無い・・・そちらのプリキュア同様、あなたの技は直線にしか飛ばない!見切る事など造作も無い!!キュアマーチ、無駄な事をしますねぇ?」

 

「黙れ!それでも・・・あたしはあんたを倒す!!プリキュア!マーチ・・・」

 

 マーチは右足を振り上げマーチシュートの体勢に入ると、まるで鏡に映したかのように、マーチの隣で左足を振り上げたバッドエンドマーチの姿があった。

 

「癪だが、力を貸してやる!」

 

「バッドエンドマーチ!ウン!!」

 

「「ツインマーチ・・・シュート!!」」

 

 二人のマーチが、同時に蹴り上げた緑のエネルギー波が、うねりを上げてシャックス目掛け飛んで行くも、シャックスはやれやれといった表情を浮かべ、

 

「バカですねぇ!?あなた方の単調な攻撃など・・・・・な、何!?」

 

 シャックスは動揺した・・・

 

 直線に飛んでくるマーチシュートなど、躱せると高を括っていたが、バッドエンドマーチも加わったツインマーチシュートは、エネルギー球体を小刻みに揺らし、ツインマーチシュートの軌道を読めなくして居た。

 

「バ、バカな!?これでは軌道が読めない?な、ならば、脱皮を・・・」

 

 シャックスは、再び脱皮して逃れようと試みるも、ツインマーチシュートは益々その勢いを増し、タイミングを狂わされ、驚愕の表情を浮かべるシャックスに直撃した。

 

「ギャァァァァ!バ、バカな!?そんな・・・バカなぁぁぁぁ?」

 

「マーチ!シャックス様は、また逃げようとしてるニャ!!」

 

 絶叫しながらも、何とか脱皮しようと試みるシャックスに気付いたキャミーが、マーチに知らせた。このまま放って置いたら、確実にシャックスに逃げられる事を理解したマーチは、シャックスに駆け寄ろうとすると、

 

「キュアマーチ!あたしの右足に乗りな!!」

 

「バッドエンドマーチ!?・・・分かった!!」

 

 バッドエンドマーチが右足を振り上げると、マーチはバッドエンドマーチの右足に両足を乗せた。

 

「決着、着けて来い!バッドエンド・・・シュートォォォ!!」

 

 バッドエンドシュートの勢いを利用し、物凄いスピードで回転しながら、シャックス目掛け飛んで行くマーチ、それに気付いたシャックスは恐れ戦き、

 

「ヒィィィィ!?く、来るなぁ・・・来るなぁぁぁぁぁ!!」

 

「ウォォォォ!あたしの家族を危険な目に遭わせた事・・・後悔しなぁぁ!!」

 

「ヒィィィィィ!」

 

 マーチの右足に、強力な風のエネルギーが凝縮されていく、マーチは、恐れ戦くシャックスの懐に入ると、

 

「プリキュア!ツインシュート・・・インパクトォォォォォ!!」

 

「ギィィィヤァァァァァァァ!」

 

 マーチは、右足に堪った風のエネルギーを一気に解放し、強烈な右足の一撃でシャックスを上空へ蹴り飛ばした。シャックスは、白目を剥いて気を失い、先程のツインマーチシュートの威力も加わり、光りに交わり浄化されて行った・・・

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・あたしの家族を利用した事・・・後悔しな!!」

 

「フン、片付いたようだな!」

 

「バッドエンドマーチ、ありがとう!あんたが協力してくれたから・・・」

 

「チッ!たまたま利害が一致しただけだ!!」

 

 困惑気味にソッポを向くバッドエンドマーチ、それを見たビューティは、口元に笑みを浮かべると、

 

「フフフ、少し妬いてしまいますねぇ?」

 

「れ、れいかぁぁ!からかわないで!!」

 

『アハハハハハ』

 

 ビューティの冗談にマーチが動揺し、一同が笑い声を上げた。その時、突然上空からパチパチと疎(まば)らな拍手が鳴り、ハッとした一同が拍手の出所を見ると、そこには、二人の人物が宙に浮かんで居た。エコー、そして、ブラックとホワイトは、見る見る表情を険しくすると、

 

「あ、あの顔は・・・ソドム!?」

 

「何であんたが此処に!?」

 

「待って!二人共顔がソックリだわ!!もしかして、前にシーレインが言ってた・・・」

 

 ホワイトの言葉を受けたブラックは、二人組の正体が、シーレインが警戒していたカインとアベルだと気付いた。

 

「じゃあ、あいつらが、カインとアベル?」

 

「何だとぉ!?おい!どっちがアベルだ?家のバッドエンドピースにチョッカイ出したのは、どっちかって聞いてるんだよ!?」

 

 バッドエンドマーチは、ブラックが発したアベルという言葉に敏感に反応した。仲間であるバッドエンドピースを、酷い目に遭わせたアベルが目の前に現われた事で、バッドエンドマーチは怒り、どちらがアベルか名乗れと叫んだ。アベルは思わずニヤリとし、

 

「フフフフ、随分威勢が良いなぁ?俺がアベルだ!」

 

「上等!あたしがピースの借り・・・返してやるよぉぉ!!」

 

「フン、直情的な奴だ・・・少し相手をしてやろう!」

 

 アベルはそう言い、右手の人差し指を天に掲げると、忽ち辺りを黒雲が覆い、雷がアベルの右手に降り注いだ。アベルの身体が発光すると、

 

「所詮三下、貴様など我が雷の前に・・・」

 

 アベルが右手を振り下ろすと、雷がバッドエンドマーチ目掛け降り注ぐも、バッドエンドマーチは巧みに雷を躱し、アベルとの距離を詰めて行った。アベルとバッドエンドマーチの戦いを見て居たビューティは、ある疑問が浮かび上がり、

 

(おかしい・・・ある一点にだけ雷を放って居ない!?これは・・・罠?)

 

「貰ったぁぁぁ!!」

 

 バッドエンドマーチは、アベルの攻撃パターンを見切ったと判断し、一気に距離を縮めようとしたものの、

 

「バッドエンドマーチ!逃げてぇぇぇぇ!!」

 

「エッ!?」

 

 ビューティの絶叫を聞き、バッドエンドマーチは驚いてビューティを振り返るも、今正に自分が向かおうとした場所に、特大の雷が落ち、その威力に巻き込まれ、バッドエンドマーチが吹き飛び、

 

「キャァァ!?」

 

『バッドエンドマーチ!』

 

「手を掴んで!」

 

 悲鳴を上げたバッドエンドマーチを、心配そうにプリキュア達が声を掛け、マーチがバッドエンドマーチに手を差し伸べて掴み、体勢を整えさせた。

 

「クッ!?あ、危なかった!キュアビューティの声を聞いてなきゃ・・・あたしはただじゃ済まなかった・・・」

 

「あれが魔界で、バッドエンドピースに深手を負わせたアベル・・・」

 

 ブラックは、キッとアベルを睨み付けるも、バッドエンドマーチとプリキュアオールスターズを戦慄させた。アベルは、攻撃を避けられた事を意外そうに、

 

「フン、あの屑と同じように、消し去ってやろうと思ったんだがなぁ・・・流石はプリキュアという所か?」

 

「あの屑ですって!?」

 

 見る見るホワイトの顔が険しくなり、それを見たカインは愉快そうに、

 

「そう、貴様達が今倒したシャックスの事だ!利用出来るかと、十二の魔神に加えてやり、大蛇を七体も貸してやったが、とんだ見込み違いだった!」

 

「我らの手で葬ろうとやって来たが、手間が省けた!ゴミ掃除をしてくれて礼を言うぞ・・・プリキュア!」

 

 この瞬間、バッドエンドマーチも含めた、この場に居たプリキュア達は、カインとアベルに嫌悪感を抱いた。見る見る一同の表情が一層険しさを増していった。ブラックは、険しい表情のままカインとアベルに話し掛け、

 

「あいつは、あんた達の仲間でしょう?」

 

「仲間!?笑わせるな!」

 

「我らに仲間など居らん・・・手駒になるかならないか・・・それだけだ!」

 

「今日は挨拶代わりにしておいてやろう・・・次に我らに会う迄、せいぜい力を付けておけよ!!」

 

「「ハハハハハハハ」」

 

 カインとアベルは、プリキュア達に対し嘲笑を残し、魔界へと戻って行った・・・

 

(カイン、それにアベルか・・・)

 

 ブラックは、拳をギュッと握り、何れ戦うであろう二人に対し、心の中で闘志を燃やして居た・・・

 

 

3、伝説の妖精

 

 ようやく戦いは終わった・・・

 

 バッドエンドマーチは、ブラックに会釈したものの、無言のまま去って行こうとする。

 

「待って!あんたには、何とお礼を言って良いか・・・」

 

「さっきも言ったろ!必要無い!!じゃあな!!」

 

 そう言い残し、バッドエンドマーチは、歩きながらなみの姿に変化して行った。それを見つめるマーチは、右隣に居るハッピーに話し掛け、

 

「ハッピー・・・ダークドリームは、何時かバッドエンドプリキュア達と、共に並んで戦える日が来るって言ってたんでしょう?」

 

「うん!私もそう思うよ!!」

 

「あたしも、今ならそう思える!彼女達とは・・・友達になれる気がするなぁ!!」

 

 マーチは、去って行くなみの後ろ姿を見て、心の底からそう思った・・・

 

 

 変身を解いた一同、なおは一同の前に出ると、深々と頭を下げ謝罪を始め、

 

「みんな、今日は本当にゴメンなさい!」

 

「なおが謝る必要無いわよ!」

 

「そうです!ご家族を人質に取られたら、私達だって同じ事をしていたと思いますよ?」

 

「そうそう、だからさぁ、気にする必要無いって!」

 

『そうそう』

 

 美希が、つぼみが、えりかが、なおに気にしないように言うと、他の一同もそうだと同意し、

 

「みんなぁ・・・ありがとう!」

 

 なおは、一同の優しさに目をウルウルさせた。えりかは変顔を浮かべ、

 

「それにしても、神様ったら、あたし達がこっち戻って来ても現われなかったねぇ?」

 

「神様だって、ずっと僕達の事を見てる訳じゃ無いだろうからね」

 

「そうですよ、えりか!」

 

 いつきとつぼみは、地球の神ブルーをフォローするも、腕組みしたえりかは、

 

「でもさぁ・・・キャミーやバッドエンドマーチが居なきゃ、あたし達ヤバかったジャン?」

 

「「そ、それはそうだけど・・・」」

 

「えりか!あまり神頼みは感心しないわねぇ・・・あたし達は、今までもみんなと協力して困難に打ち勝って来たんだから!」

 

「それは・・・そう何だけどさぁ!」

 

 美希にも窘められたえりか、今までの戦いを振り返れば、確かに美希の言う事も理解出来た。今まで自分達プリキュア達は、砂漠の王デューン率いる砂漠の使徒、闇の救世主を名乗るバロムを、ノイズ率いるマイナーランドを、暴走した魔王を、そして現在、ピエーロ復活を目論むバッドエンド王国や、魔界の者との戦いを、みんなで力を合わせて乗り越えて来ているのだから・・・

 

「美希姉ぇの言う通りだね!」

 

「エエ、あたし達は、あたし達が出来る事をしましょう!」

 

 美希がえりかに言い聞かせていた言葉を、ラブは思わず心の中で繰り返した・・・

 

(私達が出来る事かぁ・・・)

 

 せつなは、なおに話し掛けると、

 

「なお、家まで送るわ!ご家族が目を覚ましたらまずいでしょう?」

 

「そ、そうだった!」

 

「なお、私もお手伝いします!」

 

「うん!お願い、れいか!!」

 

 れいかが手伝うという申し出を、なおは嬉しそうに聞き入れた。みゆきも手伝いに行こうと思うと、

 

「じゃあ、私達も・・・何!?あゆみちゃん?」

 

「みゆきちゃん、ここはなおちゃんとれいかちゃんの二人にさせて上げましょう!」

 

「せやなぁ・・・幼なじみ同士、久々に積もる話もあるかも知れへんし」

 

「そっかぁ・・・そうだね!」

 

 あゆみとあかねの考えにみゆきも同意し、なおは、家族を家で休ませる為、れいか、せつなと共に、自宅へと帰って行った。直ぐにせつなが一人で戻って来ると、ラブは、美希、祈里、せつなに話し掛け、

 

「美希たん、ブッキー、せつな、以前薫子さんに言われた事、覚えてる?」

 

「「「薫子さんに!?」」」

 

「ウン!ほら、私達が最初にナッツハウスで、ダークプリキュア5に出合った時・・・」

 

 ラブは、ダークプリキュア5との出合った時の事を思い出して居た・・・

 

 長きに渡る光と闇の影響で、この地上に蓄積された負のエネルギーが限界を迎えた事、千年前、一度浄化を試みた地球の神だったが、それは、当時のプリキュアを犠牲にする事で成し遂げた苦肉の策だった事、神はその行為をおおいに嘆き、その力を失った事・・・

 

 そして戦いは続き、数百年前からの砂漠の使徒とプリキュアとの戦い、そして、近年のドツクゾーン、ダークフォール、ナイトメア、エターナル、ラビリンス、マイナーランドとの戦い、カオスによって一度は闇に消えたこの世界は、負のエネルギーの蓄積に耐えられなくなった事、このまま放置しておけば、負のエネルギーが暴発し、地球は死の星と化してしまう事を・・・

 

「そうだったわね!そして、あの時せつなは・・・」

 

「ええ、ダークドリームの話を承諾した私は、再びイースとなった!」

 

「満さんや薫さん、なぎささん、ほのかさん、ゆりさん、薫子さんも同意し、私達と戦ったのよね!」

 

 美希、せつな、祈里も、ラブの話を聞いて当時の事を思い出して居た。

 

「うん!それは全て、この世界に蓄積された負のエネルギーを、パンドラボックスに封印する為だったよねぇ!またバロムが現われた時は驚いたっけぇ・・・その戦いの後、私達、薫子さんにアドバイスしたい事もあるから、尋ねてらっしゃいって言われたの!!」

 

「そういえば・・・でもラブ、あなたにしては良く覚えてたわねぇ?」

 

 美希は、ちょっとからかうようにラブに話し掛けると、ラブは右手で後頭部を押さえテレ笑いを浮かべると、

 

「アハハハハ!今まで忘れてたんだけど、さっき美希たんが、えりかに言ってた話聞いたら何か思い出してさ!!カインとアベル・・・何時かあの二人と戦う時が来るなら、役に立つんじゃないかって思って!」

 

 美希、祈里、せつなも、先程見たアベルの力を見るに、薫子に助言を求めるのは間違いでは無いとコクリとラブに頷いた。それを見たラブは真顔で頷き返すと、

 

「つぼみちゃん、そういう事で、薫子さんに話しておいて欲しいんだけど?」

 

 ラブに聞かれたつぼみは、見る見る困惑の表情を浮かべ、

 

「すいません・・・実はお婆ちゃん、私が入院している同じ頃、身体を壊して入院していたんです!今は退院していますが、あまり無理は・・・」

 

「そう何だ・・・じゃあ無理はさせられないねぇ?」

 

 ラブが残念そうな顔を浮かべると、ゆりがラブに話し掛け、

 

「ラブ、あの時の事なら私も覚えて居るわ!薫子さんは、あなた達に空手を教えようと考えて居たらしいわ!それだったら、薫子さんの代わりに・・・私が教えて上げるわ!!」

 

「エッ!?ゆりさんが?」

 

「ええ!これでも薫子さんには、免許皆伝のお墨付きを得ているのよ?」

 

『納得ぅぅぅぅ!!』

 

 ゆりが薫子から、空手の免許皆伝のお墨付きを得て居ると聞き、一同は納得してコクコク頷いた。

 

「そうだ!それだったら、みんなも一緒に参加しない?」

 

「賛成!ちょうど私も、プリキュアのみんなでどっか行きたいよねぇ?って思ってたんだぁ!!」

 

 ラブが一同に聞いてみると、響が真っ先に同意した。ラブは嬉しそうにコクリと頷き、他の仲間達に改めて聞くと、

 

「私も良いよ!カインとアベル・・・何かあいつら嫌な感じがするんだよねぇ?」

 

「私も良いですよ!お婆ちゃんに、話だけはしておきますね!!」

 

「私もOKです!なおちゃんとれいかちゃんには、後で私達から話しておきます!」

 

「あたしは部活があるけど・・・2日ぐらいなら何とか!」

 

 なぎさ、つぼみ、みゆき、咲も同意した。のぞみは腕組みして考え込むと、

 

「ウ~ン、これだけの人数だと目立っちゃうよねぇ・・・そうだ!かれんさん、前に行ったかれんさんの別荘がある島、あそこでプリキュア合宿しません?」

 

「エッ!?別に構わないわよ!日にちさえ前もって教えてくれれば、爺やに頼んで準備して貰うけど?」

 

 のぞみに聞かれたかれんは、別段困惑した様子も見せず、別荘を提供する事に同意した。他のメンバーは、島にある別荘と言う事で驚き、

 

『島!?』

 

「そう!かれんさんの別荘の一つは・・・まるごと島なの!」

 

『・・・・・・・・』

 

 島がまるごと水無月家の別荘と聞き、一同は絶句した・・・

 

「じゃあ、決まりだね!これから日にち決めて、みんなでプリキュア合宿しよう!!」

 

『OK!!』

 

 提案者のラブが、一同に確認すると、全員がOKと答えた。ほのかは思い出したかのように、

 

「そうそう、前もって準備もしなきゃねぇ!なるべくかれんさんに迷惑掛けないように、事前に食材や飲料水の買い出しもしなきゃ!!」

 

「私も買いだし手伝います!」

 

「じゃあ、私も手伝うよ!」

 

 ひかりとなぎさも買い出しの手伝いをすると告げ、

 

「島なら海も当然あるし、水着も用意しなきゃ!」

 

 少しウキウキした美希が水着の話題を振り、奏も思い出したかのように、

 

「宿題も持って来なきゃ!」

 

『ブゥゥゥ!それは要らない!!』

 

 のぞみ、ラブ、えりか、響、みゆきが同じような仕草で首を振った。

 

「あなた達・・・当初の目的忘れて無い?」

 

 ゆりは、はしゃぐ一同を見て呆れたように呟いた・・・

 

 

 

 この世界に存在しながら、神によって守られ、その存在を隠された島・・・

 

 一万年前、この世界を闇に飲み込んだ、大いなる闇と戦った三人のプリキュアの一人、キュアエンプレスが眠る島・・・

 

 ブルーは、プリキュア達がシャックスの罠に嵌って居たのを知らず、同じ頃この島を訪れて居た・・・

 

 人の存在をまるで感じない、無人島とも思えるこの島を、ブルーは懐かしそうに歩き、とある洞窟へとやって来た。

 

「誰だ!」

 

 人の気配を感じたのか、奥からゆっくり姿を現わした人物、亀の甲羅のようなものを、背中に背負った老人のような人物、この者こそが、嘗て一万年前、三人のプリキュアと共に戦った伝説の妖精だった。ブルーは懐かしそうに目を細め、

 

「メラン、久しぶりだねぇ!」

 

「ブルーか!100年振りじゃなぁ・・・キュアローズ、キュアフローラ、キュアマーメイド、キュアトゥインクルを連れて来て以来じゃったか?」

 

「そうだねぇ・・・僕達に取って、100年ぐらい前は、ついこの間のように思えるけどね?」

 

「フフフ、違わない!ところでブルー、このような島に何しに来た?」

 

「メラン、君ならもう、気付いて居るだろう?ここ数年、闇の力が急速に強まって居る!魔界からこの地に禍をもたらす者も多く現われ、今は静観しているカオスも、何やら不穏な雰囲気を醸し出して居る・・・このタイミングで、大いなる闇が再び暗躍すれば、プリキュア達といえ・・・」

 

「それで、100年前のように、プリキュアに試練を与え、あらゆる真実を映し出す水晶の鏡、マジカルラブリーパッドの力を、再び解放しようという訳か?」

 

 メランに聞かれたブルーはコクリと頷き、

 

「それだけじゃないんだ!実は、君の目で確かめて欲しいプリキュアが居るんだ!」

 

「やれやれ、年寄りに無茶させる神だのぉ・・・で、今度は何人じゃ?」

 

「今現在、プリキュアは30名以上居るんだが・・・」

 

「な、何!?この時代のプリキュアは、そんなに居るのか?」

 

「うん!それ程の危機が起こって居るんだ!!」

 

 悲しそうに視線を落としたブルー、メランは、先のカオスの暴走で、この世界が闇に覆われた事は知って居たが、プリキュアの人数が、それ程居るとは想像だにしなかった。

 

「やれやれ、30人以上も一度に相手にするには・・・」

 

「違うよ!僕は、その中の二人、キュアブラックとキュアホワイトを、君の目で確かめて欲しいと思ってねぇ!!」

 

「どういう事だい!?」

 

「彼女達は・・・この世界を終わらせる力を秘めて居る気が、僕にはするんだ!」

 

「な、何じゃと!?」

 

「彼女達は、まだ自分達の中に眠る力に気付いて居ない!だから、君との戦いで何かを学んでくれればと思って居てねぇ・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

 メランは目を瞑り、返答に困って居た・・・

 

 神の言葉とはいえ、二人のプリキュアが、世界を終わらせる力を持って居るとは、とても思えなかった。だが、意を決して目を開けると、

 

「良いだろう!会うだけ会ってみよう・・・ただし、加減はせんぞ?」

 

「ありがとう!近い内に、キュアブラックとキュアホワイトの二人を、君の下に必ず連れて来るよ!!」

 

 ブルーはメランに礼を述べると、姿見鏡を出現させ帰って行った。メランは、祭壇に祭られて居る水晶の鏡、マジカルラブリーパッドを見つめると、水晶の鏡に、微笑むエンプレスの姿を見た気がするのだった・・・

 

          第百六話:マーチ!怒りのインパクト!!

                   完




 お詫びをかね、第百六話本日投稿致しました!
 昨日の段階で7割方書き終えていたので、少し無理しましたが何とか間に合いましたw
 シャックス編もようやく終りです!
 大蛇の話で遊んだ分、後半ちょっとシリアスな展開にしました!
ドキで出てきた妖精メランは、この章で出そうと思いながら、プリキュア合宿中にするか、その前にするか悩みましたが、合宿前にしました。尚、今回名前だけ出てきたキュアローズは、フラワーの先代で、フローラ、マーメイド、トゥインクルも、先代プリンセスプリキュアの三人です。百年前、大いなる闇と戦ったプリキュアとして、名前のみ登場させました。


 魔法つかいプリキュア・・・何かまた凄いラスボスが現われそうですねぇ!デウスマストですかぁ・・・ドンヨクバールは貪欲と掛けて居そうですねぇ・・・新展開も楽しみです!!

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