プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第百話:神様からの警告

1、激昂!花鳥風月!!

 

 海原市夕凪・・・

 

 咲の妹みのりは、夏休みに入り、今年の自由研究は大空の樹がある、トネリコの森に付いて調べようと思い立った。

 

「でも、一人であそこに行くの、怖いなぁ・・・」

 

 みのりも咲に似て明るく、友達も多かったが、やはり背伸びをしたい年頃の少女、咲の友人舞や満、そして特にみのりは、仲の良い薫の事が大好きで、彼女達と話すのが大好きだった。だが、高校生になった彼女達は何かと忙しく、みのりも小学校5年生になった事で、自分でもお姉さんのように振る舞いたかった。みのりは、店の前で昼寝をしているコロネを抱っこすると、

 

「コロネ、一緒にトネリコの森に行こう!」

 

「ニャァ!?」

 

 コロネは、そんなみのりに首を傾げながらも、無理矢理連れ出された・・・

 

 大空の樹があるトネリコの森には、姉の咲は良く出掛けていたが、みのりは滅多に来る事は無かった。だが、そこは咲の妹、みのりも大空の樹の事は知っていて、こっそり薫に連れて行って貰った事もあった。コロネを抱いたみのりは、途中で道に迷ったのか、奥深い林の中に入ってしまい、

 

「アレェ!?間違えちゃったかなぁ?」

 

 みのりが引き返そうとした時、急に抱いていたコロネの様子がおかしくなり、毛を逆立ててみのりから飛び降りると、ニャァと低い声で林の奥に居る何かを威嚇した。首を傾げたみのりだったが、嗅覚を刺激する甘い匂いが漂って来た。

 

「何だろう!?甘い匂いがする?」

 

 みのりはクンクン匂いを嗅ぎながら、甘い匂いがしてくる林の中を伺ってみると、そこには食虫植物のウツボカズラのような、黒い不気味な物体が地面から生えていた。みのりは不思議そうに近付くと、急激な目眩に襲われ、思わず倒れた。心配そうにコロネが近寄り、食虫植物を威嚇するように唸り声を上げ、心配そうにみのりの顔をペロペロ舐めた。みのりはボーとしながら立ち上がり、目の焦点も定まらないまま、元来た道を戻って行き、コロネも慌てて後を追った・・・

 

(ククク、この世界に来た事で、大分力を使っちまったが、あの娘の養分を吸い取って糧とし、この世界に居るプリキュアとやらを倒してやる!!)

 

 みのりが見付けた、ウツボカズラに似た植物の正体は、魔界の魔マキシマだった・・・

 

 マキシマは自ら行動を起こさず、近付いた獲物を暗示に掛け、その養分を吸い取って力に変える魔だった。みのりが悪魔の植物に魅入られた事を、咲はまだ知る由も無かった・・・

 

 その日、家に帰ったみのりだが、咲や父大介、母沙織が話し掛けても上の空で、食事にもほとんど手を付けなかった。当初は夏バテかとさしたる心配もしなかった咲だったが、夏休み二日目、三日目と、出掛けて帰ってくると、みのりの様子は必ずおかしくなり、遂に三日目の夜には寝込んでしまった。

 

「あなた、明日みのりを病院に連れて行くわ!」

 

「そうだねぇ・・・」

 

 みのりを心配そうに見つめる大介と沙織に、咲も胸を痛めていた。

 

(みのり、あんなに張り切ってたのに、どうしたんだろう?)

 

 咲とみのりは、同じ部屋を半分に仕切って使っていて、ベッドの頭部から勉強机のある壁に衝立が置かれているだけで、行き来が出来る分、みのりの苦しそうな声が聞こえてきて、咲は居たたまれなかった。その時、部屋のドアをガリガリする音が聞こえ、咲がドアを開けると、コロネがニャアニャア鳴き、咲は、そんなコロネに右手の人差し指を鼻に当て、シッとジェスチャーすると、

 

「コロネ、静かにしてなきゃダメだよ!」

 

 咲はコロネを抱き上げると、コロネの寝床でもある両親の部屋へと連れて行った。

 

 翌日、元気の無い咲を見かねて、咲の家にやって来た舞、満、薫が、裏庭のテーブル席に座りながら、心配そうに咲に話し掛け、

 

「咲・・・どうかしのたの?」

 

「何か一昨日辺りから変よ?」

 

「夏バテ!?」

 

「ううん、あたしは何とも無いんだけど、みのりが・・・」

 

「「「エッ!?」」」

 

「さ、咲、みのりちゃんに何かあったの!?」

 

 驚いた三人、薫は思わず目の色変えて咲に聞くと、咲はコクリと頷き、

 

「うん、この間からみのりの様子がおかしいんだよねぇ!出掛けて帰ってくると、心此処にあらずって感じで、遂には昨日寝込んじゃって・・・」

 

「そう・・・それは心配ね!」

 

 舞も沈痛な表情を浮かべた時、普段は店の看板前で寝ているコロネが、テーブルにピョンと乗っかると、咲達の顔を見ながら、何か訴えるようにニャァニャァ鳴き続けた。

 

「コロネ、私達に何か伝えたい事があるんじゃないの?」

 

 満に聞かれた咲は困惑気味に、

 

「でもコロネが、フィーリア王女を身体の中に住まわせていた時なら兎も角、普通の猫になったコロネの言葉何て・・・」

 

 そう思った咲だったが、四人はパッと表情を明るくすると、

 

「そうだ!あたし達には、祈里が居た!!」

 

「エエ、祈里に訳を話して、こっちに来て貰いましょう!」

 

 咲の言葉に薫も同意し、咲は祈里に携帯を掛けた。幸い祈里は家に居て、詳しい事情を聞くと、

 

「コロネさんの話を聞きたいのね?分かった!急いでるようだから、私からせつなちゃんに頼んでみるね!!」

 

「本当!?それは助かるよ!」

 

 咲はホッと安堵すると、それから三十分経たずに、咲の家の裏庭が赤く発光し、祈里とせつなの他に、ラブと美希もやって来た。

 

「ラブと美希も来てくれたんだ?」

 

「うん!何か大変みたいだから、手伝える事があればと思って」

 

「咲、大変ねぇ・・・」

 

「うん・・・でもみんなが来てくれて、少しホッとしたかなぁ」

 

 咲はそう言うと、口元に笑みを浮かべた。祈里を見たコロネは、薫子の植物園で、祈里と会話をした事を思いだしたのか、自ら祈里の前に移動し、ニャアニャア鳴き出した。祈里はコクリと頷くと、直ぐにキルンを呼び出し、コロネの話に耳を傾けた。

 

「うん・・・エッ!?トネリコの森に?・・・うん、うん・・・た、大変!!」

 

「い、祈里!?ど、どうしたの?」

 

「ブッキー、コロネ何て言ってるの?」

 

 早くコロネが話して居る内容が聞きたい咲とラブが、身を乗り出して祈里に聞くと、祈里は一同の顔を見渡し、

 

「コロネさんの話じゃ・・・トネリコの森の奥深くに、邪悪な植物が生息してるんですって!その植物に近付いた途端、みのりちゃんの様子がおかしくなったって言ってるわ!」

 

「「「「トネリコの森に!?」」」」

 

 咲達が知る限り、トネリコの森にそのような危険な生物が存在している事は無い筈だった。だが、コロネが嘘を言う筈も無く、咲が困惑していると、コロネはテーブルから飛び降り、一同を見てニャアと声を発すると、すかさず祈里が通訳し、

 

「案内するから追いて来てだって!」

 

「分かった、行こう!舞、満、薫」

 

「「「分かったわ!!!」」」

 

 コロネが駈け出し、咲達が後を追おうとすると、ラブ達も立ち上がり、

 

「なら、私達も行くよ!」

 

「ううん、折角来てくれたんだし、ラブ達はゆっくりして行って!」

 

「私も行くわ!コロネちゃんの言葉が分かる私も居た方が良いでしょう?」

 

「なら私も行くわ!何かあった時、ラブ達に連絡取れるようにしておいた方が良いわ!!」

 

「そうだね・・・じゃあ、祈里!せつな!悪いけどお願い!!」

 

 咲は、祈里とせつなに感謝の言葉を伝え、ラブと美希を残した一同が、コロネの後を追ってトネリコの森へと向かった。

 

「私達も行かなくて良いのかなぁ?」

 

「そうね・・・でも、向こうにはブッキーやせつなも居るし、何かあったら呼びに来るでしょう」

 

 ラブと美希は、一同の無事を祈りながら咲の家に残った・・・

 

 

 トネリコの森目指して駈け続ける一同、あまり運動が得意では無い舞や祈里だったが、一同に付いて懸命に走り続けた。だんだん奥深くに入っていくと、フラッピとチョッピの表情が険しくなり、

 

「咲、気を付けるラピ!」

 

「何か邪悪な気配を感じるチョピ!」

 

 更にはコロネも低い声を上げながら毛を逆立たせて、一同にも緊張感が走った。コロネがニャァと発すると、すかさず祈里が通訳し、

 

「みんな、あの林の中だって!!」

 

「分かった!」

 

 勢い良く林の中に入って居た一同は、人など丸ごと飲み込みそうな程大きくなったマキシマが居た。茎が蠢くと先端に目玉が付いて居て、一同を見ると、

 

「ほう、あの子供だけでなく、栄養がありそうな奴らがゴロゴロ現われたぞ!」

 

 マキシマは、一同からもみのりのように養分を吸い取ろうと、周囲に漂う嫌な匂いを発した。直ぐに表情を曇らせた咲は、

 

「舞、満、薫、行くよ!」

 

「「「分かったわ!」」」

 

「せつなちゃん、私達も!」

 

「ええ!」

 

「「「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」」」

 

「「チェインジ・プリキュア!ビートアップ!!」」

 

 咲、舞、満、薫、祈里、せつなの身体が輝き、プリキュアへと変化していった・・・

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「天空に満ちる月!キュアブライト!!」

 

「大地に薫る風!キュアウィンディ!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「イエローハートは祈りのしるし!とれたてフレッシュ、キュアパイン!!」

 

「真っ赤なハートは幸せの証!熟れたてフレッシュ、キュアパッション!!」

 

「「レッツ!プリキュア!!」」

 

 六人のプリキュアがマキシマに対して名乗りを上げた。マキシマは驚愕するも、

 

「プリキュア!?お前達がプリキュアだったのか?丁度良い!貴様らの養分を吸い取れば・・・この俺の力も上がるって訳だ!!もう、あんなガキの養分も要らねぇなぁ!!!」

 

「まさか・・・みのりの事!?あんた、良くもあたしの可愛い妹を・・・許さない!!ダァァァァ!!!」

 

 雄叫び上げたブルームが、マキシマに怒濤の連続パンチを浴びせ、マキシマはサンドバッグのように打たれ続けた。必死に触手でブルームを遠ざけると、

 

「テメェ、良くもやりやがったなぁ!今、可愛い妹って言ってたよな?ククク!あのガキには、俺の分身が取り憑いて養分を奪い、俺に養分を与え続けてるんだよ!!俺の指示一つで・・・テメェの可愛い妹を干からびさせて、殺す事も容易いんだよ!!!」

 

 マキシマの言葉に一同は驚愕し、更に攻撃をしようとしていたブルームの表情は強張った。迂闊にマキシマに攻撃すれば、みのりの身が危なかった。

 

「な、何て奴!?」

 

「卑怯よ!」

 

 ブライトが、イーグレットが、拳を振るわせながらマキシマを罵るも、マキシマは不気味に笑い、

 

「ククク、おとなしく俺様に養分を吸わせな!逆らえば・・・分かってるよなぁ?」

 

 マキシマに脅され、手も足も出せないプリキュア達、パッションは、小声でブルームに声を掛け、

 

「ブルーム、私とパインで向こうに戻って、ラブと美希に知らせる!私達が、あなたの妹に取り憑いてる奴を倒すまで、何とか持ち堪えて!」

 

「パッション・・・お願い!みのりを・・・」

 

「うん、大丈夫だよ!絶対救えるって、私信じてる!!」

 

「パイン・・・二人共、お願い!」

 

「「エエ!」」

 

 パインとパッションは力強く頷き、瞬間移動でこの場を後にした。マキシマは、二人消えた事に不快感を見せるも、

 

「逃げたのか!?まあいい・・・おい、抵抗すればどうなるか・・・分かってるよなぁ?」

 

「わ、分かったわよ!」

 

 ブルーム達四人は、苦悶の表情を浮かべなら、その場で棒立ちとなった・・・

 

 

 戻って来たパインとパッションからの報告を聞き、ラブと美希の表情が見る見る険しくなると、

 

「何て卑怯な奴!許せない!!」

 

「ええ、ラブ、あたし達も変身よ!」

 

「「チェインジ・プリキュア!ビートアップ!!」」

 

「ピンクのハートは愛あるしるし!もぎたてフレッシュ、キュアピーチ!!」

 

「ブルーのハートは希望のしるし!つみたてフレッシュ、キュアベリー!!」

 

 四人のプリキュアは、沙織が背中にみのりを背負い、病院に連れて行こうとする姿を見付けると、ピーチは慌てて沙織を呼び止め、

 

「待って下さい!」

 

「エッ!?あ、あなた達は?」

 

 突然話し掛けられた沙織は、ピーチ達四人を見て困惑した。

 

「通りすがりのプリキュア・・・フレッシュプリキュアです!」

 

「プリキュア!?あの横浜の?」

 

 沙織も、プリキュアの事は以前ニュースで見て知っていた。そのプリキュアが、何故自分達の家に居るのか疑問だった。ベリーはコクリと頷き、

 

「はい!実は、娘さんに悪い怪物が取り憑いてるんです!!」

 

「私達は、その怪物を退治に来ました!」

 

「私達を信じて、娘さんをそこのテーブルに座らせて頂けませんか?」

 

 パイン、パッションも自分達を信じて欲しいと沙織に訴え掛け、四人の真剣な眼差しを見た沙織は、それでみのりが治るならと思い、半信半疑ながら、みのりをテーブル席に座らせた。パインは、パインフルートを取り出すと、

 

「悪いの、悪いの、とんでいけ!プリキュア!ヒーリングプレアー・・・フレッシュ!!」

 

 パインの浄化技ヒーリングプレアーがみのりに放たれた。沙織はどうなる事かとハラハラしたものの、みのりの首筋から何かが逃げるように離れると、みのりの表情は見る見る安らいで行った。みのりは目を擦りながら目を覚まし、

 

「アレェ!?みのり、どうして此処に?」

 

「みのりぃぃぃ!良かった!!」

 

 何時ものみのりに戻り、沙織は涙ぐみながらみのりに抱き付いた。それを見たピーチ達は目を細めるも、みのりから離れた物体は、徐々に大きくなり、白い身体をしたマキシマのような姿になった。ピーチ、ベリー、パインは、表情を険しくしながら白マキシマを睨み、

 

「あいつね!」

 

「パッション、こっちはあたし達に任せて!あなたはブルーム達に・・・」

 

「ブルーム達を援護して上げて!」

 

「分かったわ!」

 

 この場をピーチ、ベリー、パインに託すと、パッションは、みのりが無事元気を取り戻した事をブルーム達に伝えに、瞬間移動で消え去った。ピーチ達は、この場から離れているように沙織とみのりを逃がすと、みのりは店の看板の陰に隠れながら、ピーチ達三人を見つめた。ピーチはピーチロッド、ベリーはベリーソード、パインは再びパインフルートを取り出すと、

 

「人に取り憑いて、養分を奪おう何て・・・許せない!ベリー、パイン、行くよ!!」

 

「「「悪いの、悪いの、飛んでいけ!」」」

 

「プリキュア!ラブサンシャイン・・・」

 

「プリキュア!エスポワールシャワー・・・」

 

「プリキュア!ヒーリングプレアー・・・」

 

「「「フレ~~ッシュ!!!」」」

 

 ピーチからピンクのハート型の光弾が、ベリーから青いスペード型の光弾が、パインから黄色いダイヤ型の光弾が同時に発射され、三人の合体技が白マキシマに放たれた。その威力の前に、白マキシマは為す術無く浄化され、ピーチ達三人はその場を離れた。

 

 

 みのりを人質に取られたも同然のブルーム達は、マキシマに手を出せず、一方的にいたぶられ、いま養分を奪われようとしていた。

 

「クッ!?みのりを酷い目に合わせた、こんな奴にぃぃ・・・」

 

 ブルームが悔しそうに拳を握ったその時、周囲が赤く発光し、パッションが姿を現わした。四人の視線が一斉にパッションに向けられると、パッションは口元に笑みを浮かべ、

 

「みんな、安心して!咲の妹は、無事元気を取り戻したわ!!」

 

 パッションの言葉を聞き、ブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディの表情は一斉に晴れ渡り、

 

「本当!?」

 

「良かったわね、ブルーム!」

 

「さあ、後は・・・こいつに御礼をしなきゃね!」

 

「ええ・・・みのりちゃんにした報い・・・百倍にして返してやらなきゃね!!」

 

 ウィンディの目が険しくなったその時、マキシマの蔦が突風によって次々に切り裂かれ、マキシマが悲鳴を上げてのたうち回った。更にブライトがその場で連続光弾を放ち、マキシマの身体に穴が空いて行く・・・

 

(こ、こいつら、強ぇぇ!?に、逃げなきゃ遣られる!!)

 

 マキシマは、溶解液を地上に吐きまくり、砂埃を周囲に撒き散らし、その間に地中に逃げようと試みるも、パッションがその行動を読み、

 

「逃がさないわよ!」

 

 パッションはアカルンを使い、マキシマを宙に浮かせると、

 

「ブルーム、イーグレット、今よ!」

 

 パッションの合図に頷いた、ブルームとイーグレットは、

 

「よくもみのりを・・・」

 

「みのりちゃんが苦しんだ分・・・私達が纏めて返して上げるわ!」

 

 互いに見つめ合い、頷き合った二人、ブルームはベルトに、イーグレットは左手に付いているハート形の中心部分にリングを装着し、

 

「精霊の光よ!命の輝きよ!!」

 

 イーグレットが叫べば、

 

「希望へ導け!二つの心!!」

 

 ブルームが叫ぶ、

 

「「プリキュア!スパイラルハート・・・」」

 

 力を込めたブルームとイーグレットが一旦腕を引くと、

 

「「スプラ~~ッシュ!!!!」」

 

 一気に力を解放し、両腕を突き出した二人から、凄まじいエネルギー波が、上空から落下してくるマキシマ目掛け放たれた。直撃を受けたマキシマは、

 

「こ、この力!?この力さへ取込めれば・・・俺は、俺はぁぁぁぁ」

 

 スパイラルハートスプラッシュを受け、マキシマは消滅した。ブルームはパッションに礼を言うと変身を解き、コロネを抱き上げ、ラブ達が待つPANPAKAパンへと瞬間移動で戻って行った・・・

 

 

 咲は、妹みのりの事で、舞、満、薫、そして心配してやって来てくれたラブ、美希、祈里、せつなの友情に改めて感謝し、一同にお店のパンをどんどん差し入れし、裏庭のテーブルに運んでくると、元気を取り戻したみのりも、一同に顔を見せた。

 

「薫お姉ちゃん、みのり、プリキュアを見たんだよぉ!」

 

「へぇ、良かったわね、みのりちゃん!」

 

「ウン!」

 

 みのりは、ピーチ達が白マキシマを、浄化した時の真似をしているつもりなのか、ストローを右手でクルクル回しながら、左手でメロンパンを揺らした。ラブは首を傾げながら、

 

「みのりちゃん、そのメロンパンはどういう意味!?」

 

「うん、あのピンクのプリキュアのオッパイが、こう揺れて・・・」

 

「エェェェェェ!?」

 

 ラブは思わず顔を赤くしながら、自分の胸を触り、美希と祈里に小声で話し掛け、

 

「私って、技放つ時あんな風になるの?」

 

「さ、さあ!?」

 

「どう何だろう!?」

 

 聞かれた美希と祈里は困惑気味に首を傾げ、思わずせつなはクスリと笑った。

 

「ラブ・・・また胸が育ったの?」

 

 ラブの胸を、羨ましそうに咲が見つめ、一同から笑い声が響いたその時、一同の携帯が鳴りメールが届いた。見て見るとそれはなぎさからで、中身はこう書かれていた。

 

 ・・・みんな、急で悪いけど、TAKO CAFEに今から来られないかなぁ?みんなに会いたがってる人が居て・・・信じられないだろうけど、何とその人は、地球の神様!!詳しくはみんな集まったら話すよ!そうそう、ゆりはもうこっちに来てるから!!・・・

 

 メールを読んだ咲達、ラブ達は目を点にし、

 

「か、神様!?神様って本当に居るの?」

 

「まあ、女神様も居るから、居てもおかしくは無いよね?」

 

 ラブに気かれた咲は、フィーリア王女の事を思いだし、居てもおかしくは無いと語った。

 

「取り敢えず、行くしか無いわね!」

 

 せつなは、また自分がみんなを、瞬間移動で連れて行く事になりそうだと苦笑を浮かべた・・・

 

 

2、あなたが神様!?

 

 咲達がマキシマと戦って居た頃、TAKO CAFEで談笑していたなぎさとほのか、ひかりはアカネに頼まれて買い出しに行っていて留守にしており、ゆりも後から合流する事になっていた。

 

「大学生ともなると、夏休みが長くて良いよねぇ?」

 

「もう、なぎさったらぁ・・・」

 

 たこ焼きを頬張りながら、談笑している二人の視線に、青髪の青年が微笑んでいる姿が映った。今まで居なかったのに、何所から現われたんだろうと不思議に思いながらも、なぎさもほのかも、さして気にしていなかったのだが、青年は、なぎさとほのかに近付いて来ると、

 

「やぁ、僕は地球の神ブルー!君達の事は・・・」

 

 突然近づいて来た青年が、自分の事を神様だと名乗り始め、なぎさとほのかは、目を点にしながら呆然とし、微笑むブルーを見て困惑した。二人は、同じような仕草で、倚子を引き摺りながらその場を後退ると、思わず小声で話し合い、

 

「な、何あの人!?自分の事神様だとか言い始めたよ?」

 

「そ、そうね・・・」

 

「大体さぁ、神様があんなチャライ格好する?」

 

「胸元が大きく開いた、白いシャツの事?」

 

「神様って言ったらさぁ、長い顎髭を蓄えて、白い仙人のような服を着て、雲に乗ってるよねぇ?」

 

「見た事無いから知らないわよ!でも、自分で神様って名乗ってるのは・・・確かに怪しいよね?」

 

「でしょう?それとも・・・ちょっと頭のおかしい、関わっちゃいけない人かも!?」

 

 なぎさに言われたほのかが、胡散臭そうに改めてブルーを見ると、ブルーはニコリとして、ほのかも思わず愛想笑いを浮かべ、

 

「な、なぎさの言う通りかも!?」

 

「でしょう!でしょう!」

 

 ほのかも同意してくれた事で、なぎさは改めてブルーを胡散臭そうに見つめた。再びコソコソ話をしていると、買い出しに行っていたひかりが戻って来て、ブルーはひかりを見て微笑むと、

 

「やあ!僕は地球の神ブルー!!」

 

「神様!?初めまして!私は九条ひかりです!!」

 

「君達には、幾度もこの世界を救って貰い、いくら感謝しても仕切れないくらいだよ!」

 

「そんな事ありません!」

 

 ひかりは、なぎさとほのかと違い、ブルーの言葉を信じて居るようで、楽しげに会話していた。気付いたなぎさとほのかは、慌ててひかりを呼ぶと、

 

「ひ、ひかり!無闇に話掛けたら駄目だよ?」

 

「付きまとわれてしまうかも知れないわ!」

 

 二人にダメ出しされ、ひかりは首を傾げると、

 

「でも、神様ですよ?」

 

「「信じちゃ・・・駄目!!」」

 

 なぎさとほのかは、同じような仕草をしながら、ひかりにブルーの言葉を信じないように忠告した。ひかりは再び首を傾げ、

 

「でも・・・あの人からは、光の園のクイーンのような、温かい光を感じます!悪い人では絶対ありません!!」

 

「「エッ!?」」

 

 ひかりにそう断言され、顔を見合わせたなぎさとほのか、再びブルーを見つめると、ブルーは優しげな表情でニッコリ微笑み、二人も愛想笑いを返した。再びヒソヒソ話を始めたなぎさとほのか、ほのかはなぎさに話し掛け、

 

「ねぇ、なぎさ!」

 

「何、ほのか?」

 

「私・・・あの人何処かで見た気がするんだけど?」

 

「エッ!?・・・・・そう言われると、私も・・・」

 

「「アッ!?」」

 

 なぎさとほのかが同時にブルーを指差し、アッと驚きの声を上げた。二人がブルーを見た場所、それは時空の狭間に迷い込んだ時、過去の世界に流されたとある世界で、プリキュアらしき少女と、今目の前に居るブルーが、巨大な敵と戦っている姿を見ていたのを思い出した。

 

「じゃあ、じゃあ、あの人は・・・」

 

「「本物の神様!?」」

 

 変顔を浮かべたなぎさとほのかは、自分達が神様に失礼極まりない態度を取っていたと反省し、同じような仕草でブルーに近付き、先ずなぎさが、ブルーの肩をさっとはたきながら、

 

「アッ!神様、服に埃が・・・」

 

「エッ!?ありがとう、でも大丈夫だよ!」

 

 続いてほのかが、ブルーをテーブル席に座らせると、

 

「ひかりさん!神様に何かお飲み物を!!神様は、何時も何をお飲みになります?」

 

「エッ!?僕は、紅茶を・・・」

 

「ひかり!神様、紅茶だって!!」

 

 なぎさもほのかの言葉に合わせるかのように、ひかりに紅茶の手配を頼んだ。ひかりはそんな二人を見て思わずクスリとし、

 

「はい!ただいまお持ちします!!」

 

 ブルーは、先程までと急に態度が変わったなぎさとほのかを見て首を傾げ、

 

「エェェと、二人共、急にどうしたんだい?」

 

「「ホホホホ、何でもありません!!」」

 

 同じような仕草で、誤魔化し笑いを浮かべるなぎさとほのか、遅れてやって来たゆりは、

 

(なぎさとほのか・・・何やってるのかしら!?)

 

 なぎさとほのかが、ブルーに媚びているような姿を見て、ゆりは眼鏡を曇らせ呆然として居た・・・

 

 

 なぎさとほのかは、遅れてやって来たゆりにも、青髪の青年が、地球の神ブルーだと紹介するも、ゆりのブルーを見つめる視線は険しかった。

 

「あなたが本当の神様だとして・・・何故あなたは、この世界が何度も危機に陥った時、救ってはくれなかったのですか?」

 

「君達には済まないと思っている!僕は・・・千年前に力を失い、今では、ただこの世界の行く末を見守る事ぐらいしか出来なくなってしまった・・・」

 

 憂いを帯びた表情で俯いたブルーを見て、なぎさとほのかは、とある少女の事を思いだした。

 

「ひょっとして・・・神様が一緒に戦ってたプリキュアと関係が?」

 

「エッ!?君達は、キュアミラージュの事を知っているのかい?」

 

「いえ、直接には・・・ただ、私達は以前、時空の狭間に迷い込み、過去のプリキュア達を見た事があったものですから・・・」

 

「そんな事が・・・やはり君達は、闇の神ブラック、光の神ホワイトと、何か関係があるのでは・・・」

 

「エッ!?闇の神ブラック?」

 

「光の神ホワイト?」

 

 なぎさとほのかは、ブルーの意外な言葉を聞いて思わず顔を見合わせた。ブルーはそこで、ひかりが持って来てくれた紅茶を一口飲み、なぎさ、ほのか、ひかり、ゆりの顔を見つめていくと、

 

「僕が君達に会いに来た理由がまだだったね・・・可能ならば、全てのプリキュア達にも伝えておきたいのだが・・・」

 

「分かりました!じゃあ、みんなにメールしてみます!!」

 

 なぎさは慌てて一同に、神様が伝えたい事があるから、こっちに来られないかというメールをすると、信じる者、冗談だと思う者が居たが、せつなから一同を連れて来るというメールが入り、なぎさはホッと安堵した。

 

「みんな、こっちに来てくれるそうです!」

 

「そう!それは良かった!!」

 

 ブルーはそこで笑みを浮かべたものの、直ぐに真顔になり、

 

「君達は、魔界の者と接点があるのかい?」

 

 ブルーに聞かれた四人、ゆりが代表するように、

 

「ええ、シーレインという人とは仲良くなりました!」

 

「魔界に何かあったんですか?」

 

 ひかりが不安そうにブルーに問うと、ブルーはコクリと頷き、

 

「うん!この地上に・・・魔界の者達が入り込んでいる!!それも、君達を倒そうと企んでいるようだ!!!」

 

 ブルーの言葉を聞き、なぎさ、ほのか、ひかり、ゆりの顔色が変わった。シーレインの忠告通り、カインとアベルが動き出した事を、四人はこの時初めて知った。

 

「既にプリキュア達の何人かは、魔界の者と戦い、退けては居るようだけど、君達は知らないようなので、僕はその事を忠告に来たんだ!」

 

 ブルーは良かれと思って、一同に忠告にやって来たのだが、プリキュア達を全員集めた事が、逆にプリキュア達全員を、生死の分かれ道に立たせる事になるとは、この時のブルーには知る由も無かった・・・

 

               第百話:神様からの警告

                    完

 




第百話投稿致しました!
まさか、百話越える事になるとは・・・

劇場版オールスターズ見てきました!
冒頭突然始まったミュージカルで、これは駄目かもと思いましたが、内容は十分楽しめました。マリンが出ると幼女達が笑ってたのを直に見て、マリンの代りはマリンしか出来ないと実感しましたw

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