崩壊する大地。そこに立つ青年と彼を見守る仲間達
「・・・みんなは急いで脱出してくれ。俺はここでローレライを解き放つ」
「ローレライとの約束だ。これは俺がやるべき事だから」
自身の決意を告げる青年に対し、各々の思いを伝える仲間達。
仲間達が去った後、青年は持っていた剣を地面に突き刺し、一回転させる。そこから魔方陣が発生し、青年は地面の下へと沈んでいった。
青年Side
まもなく俺は消える。覚悟は出来ていた。これを終えたら俺は消えると。
後悔は無かった。これは俺にとって、犯した罪に対する贖罪であり、果たすべき使命であったから。
只、それでも僅かな未練はあった。自分を支えてくれた仲間達。そして、傍にいてずっと見守っていてくれた女性。
みんなともう会えないのは残念だし、もっと一緒に居たかった。
そう思っていると、俺にとって関わりの深い存在の声が聞こえて来た。
『世界は滅びなかったのか。・・・・・私が見た未来が僅かでも覆されるとは、・・・・驚嘆に値する』
その言葉を聞いて俺は誇らしく思えて、思わず笑った。そして、段々と体の感覚が無くなって行くのを感じた。
『私はローレライ。私は今・・・・・解放され空に還る』
『最後にお前達に・・・感謝の印を・・・・・』
その言葉を最後に、俺の意識は途切れた。
「うっ、う〜ん・・・」
朦朧とする意識の中、辺りを見回した。そこは、真っ暗な空間だった。その時、ふと思った。
「ここは一体、俺は確かローレライを解放して、その後、消滅したはず・・・」
自身の今までの行動を思い返し、思考の海に潜る青年。
「もしかして、ここが所謂、死後の世界って言うやつなのか。つーか、本当にあったんだな」
そんな事を考えていると・・・。
『目が覚めたようだな、ルーク』
俺の良く知った声が聞こえて来た。
「この声は・・・・・、ローレライ!」
『どうやら、一先ずは成功したみたいだな』
成功、だって?
「どういう事なんだ?俺はどうなったんだ?それに、ここは一体・・・」
『落ち着け。まずはお前が置かれている状況を説明しよう』
「あ、ああ。頼む」
『まず最初に伝えなければならない事がある。ここは先程までお前が居た世界とは違う別の世界だ』
「なっ!?」
別の世界、だって!?
「ちょ、ちょっと待ってくれ!別の世界ってどういう事だよ!なんでそんな所に俺は居るんだよ!」
『それは私がお前をその世界に送ったからだ。そうするしかお前を救う手はなかった』
「俺を救う、だって?」
『そうだ。お前をもう一度仲間の元へ帰す為にどうしてもそうしなければならなかったんだ。』
「みんなの所に帰れるのか!?」
『ああ。だが今すぐには無理だ』
「なっ!。どうして!!」
『お前の体の消滅は私にも止める事は出来なかった。もう一度お前を元の世界に戻すには一度体を完全に消滅させて、再度体を作り直す必要があった。だが、あのままでは体の再構成が終わる前に魂が消滅してしまっていた。そこで私はお前の魂を別の世界へ送り込む事で消滅を回避させた』
・・・・・・。何だか難しくてよく分からないけど、
「え〜っと、・・・つまり、今俺がここに居るのは、元の世界に帰る為に必要な準備が終わるまでの間、魂が消えないよう避難させたから・・・って事か?」
『簡単に言えばそういう事だ。体の再構成にはまだ時間が掛かる。だからそれまでの間、この世界に居て欲しい』
「・・・・・。分かった。ありがとうな。俺の為に色々と」
『気にするな。私としてもお前が消えるのは心苦しかったからな。体の再構成が終わったら、また呼びかける』
「分かった。それじゃあ頼む」
『最後に少しではあるが力を貸そう。きっと役に立つ筈だ』
そう言うとローレライの声は聞こえなくなり、俺の目の前に光が3つ現れてその内の2つが俺の中に入って来て、残りの1つが1本の剣になった。
「ありがとう。ローレライ」
俺はもう一度、俺の為に動いてくれている存在に礼を言った。
ローレライと会話を交わしてしばらくして・・・。
「・・・・・。これからどうしようか?」
早速俺は悩んでいた。
「こんな真っ暗で何も無い所でどうすれば良いんだ?せめてここがどういう場所なのか聞いときゃ良かったな〜」
これからどうしようか考えていると・・・、
「・・・・・ッ!!!」
突如強烈な頭痛が俺を襲った。
「・・・ってぇ!!。・・・・何だ、・・・これ・・」
それが只の頭痛でない事はすぐ分かった。この頭痛がし出したときから頭の中に何かが入ってくるのを感じた。まるで何かを与えられているような感じだった。
暫くして、頭痛が治まった。そして俺の中にはさっきまで知らなかった事に関する情報があった。
「はあっ・・・、はあっ・・・、聖杯・・戦争だって・・・」
聖杯戦争、聖杯、英霊、サーヴァント、マスター、魔術師、令呪。
この世界で起きようとしている戦いの情報に俺は少し混乱したが、直ぐに回復した。
「・・・・・。入って来た情報の通りなら、今俺はサーヴァントとして召喚されるのを待っている。ってことか」
今自分が置かれている状況を理解した俺は少し気を落とした。
「また、・・・・・戦うんだな・・・」
元の世界で戦い、異世界に来てまでまた戦いに身を投じるのかと思うと気を落とさずにはいられなかった。しかし、
「・・・・・って、いつまでも落ち込んでても仕方ないな」
直ぐに気持ちを切り替えた。
「ローレライとの約束もあるし、それにローレライから貰った力もある」
そう言って俺は背中の剣を手に取る。
「戦ってやろうじゃないか、その聖杯戦争とやらを」
これから起こる戦いに、俺はこの戦争を戦い抜く事を決心する。
「・・・・・っと、そういえばどんな奴が俺のマスターになるんだ?。それにどんな奴らが参加するんだろうな」
これから起こる戦いについて思いを馳せる俺。 すると、
『イヤダ』
「ん?」
突然声が聞こえてきた。ローレライとは違う、別の誰かの声が聞こえて来た。
「なんだ?この声は?」
『イヤダ』
「おい、どうしたんだ!」
『イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ』
「おい!大丈夫か!!?おい!!」
先程から聞こえてくる何かを恐れ、拒絶する声。そして、
『タスケテ』
「えっ!?」
『ダレカ、・・・・タスケテ・・・』
聞こえてくる声が助けを求める声に変わった。そして
「っ!何だ!?これ」
突然体が引っ張られる様な感覚に襲われる。
「もしかして、この声の主が俺を召喚しようとしてるってことか!」
俺は自分の身に起こった事を予測する。 そして、
「分かった。・・・・・今いくぜ!!」
声の主の元へ行く事を決意し、【英霊の座】から消える。