マシュ・マックの短編集   作:マシュ・マック

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遊戯王ARC-Ⅴ FOUR SIMILAR BOYS

  NoSide

 

(世の中には自分と同じ顔をした人間が三人いる。誰かがそんな事言ってたっけ・・・)

 

 舞網市に住む少年、榊遊矢が朝起きて一番に目にしたのは・・・、

 

 

 

 

 

『デュエルで、笑顔を・・・。世界に、みんなの未来に、笑顔を・・・』

 

 

 

 

 

『融合じゃねぇ! ユーゴだ!』

 

 

 

 

 

『君たち、邪魔だよ』

 

 

 

 

 

 自分と同じ顔をした三人の半透明の少年たちの姿だった。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・。まだ寝ぼけてるんだな。もう一度寝よう・・・」

 

 目の前の状況を忘れようと布団に入り直す遊矢。

 残念ながらこれは夢ではない・・・。

 

 

 

 

 

 デュエルチャンピオン、ストロング石島とのエキシビジョンマッチの果てにペンデュラム召喚という新たな力を得た遊矢。

 そんな彼の前に現れた自分の名前と、デュエリストである事以外の記憶を無くした三人の自分そっくりの少年。

 

 

 

 

 

「バトルだ! ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンで攻撃! 反逆のライトニング・ディスオベイ!」

 

 無益な争いを好まず、他者を傷つける事を望まない心優しきエクシーズ使い、ユート。

 

 

 

 

 

「クリアウィング・シンクロ・ドラゴンの効果発動! レベル5以上のモンスターが効果を発動した時、それを無効にしてそのモンスターを破壊できる! ダイクロイックミラー!」

 

 思った事をすぐに口にしてしまう直情的な熱血シンクロ使い、ユーゴ。

 

 

 

 

 

「すごいよ! 僕を相手にここまで戦った君は本当にすごい! 褒めてあげるよ。でももう遊びは終りだ。とどめだ! スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!」

 

 桁外れの実力を持つ冷酷な融合使い、ユーリ。

 

 

 

 

 

 突然始まった謎の共同生活。彼らと出会い、遊矢の人生は大きく変わった。

 

『なあ遊矢! このカード、デッキに入れてみろよ! ゼッテー役に立つからよ!』

 

『何言ってんの。そんな運任せのギャンブルカードなんか入れるだけ無駄だよ。遊矢君もこんな単細胞のアドバイスなんか間に受けることはないからね』

 

『んだとゴラァ!! 誰が単細胞アメーバだ!?』

 

「ちょっ!? 落ち着けユーゴ! そこまで言ってないよ!」

 

『止めないか二人とも、遊矢が困ってるだろ。だがユーリの言う事も一理ある。そのカードは遊矢のデッキに入れるには、いささかリスクが大きすぎる。だがユーリ、余計な事を言ってユーゴを煽るのはやめろ』

 

「・・・・・・、またやってる。遊矢・・・、やっぱり病院行った方がいいんじゃ・・・」

 

 

 

 

 

 彼らの協力を経て、遊矢はペンデュラムの更なる可能性を見出す。

 

「力を貸してくれ! ユーリ!」

 

『しょうがないな。負けたら承知しないよ』

 

「『振り子の申し子よ。神秘の龍と一つになりて新たな力を生み出さん! 融合召喚!! 出でよ! 雷鳴轟く剛嵐の龍! オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!!』」

 

 融合。

 

 

 

 

 

「頼むぞ、ユーゴ!」

 

『よっしゃあ! 任せろ!』

 

「『星の命を司る紅蓮の炎。今ここに激しく燃え上がれ! シンクロ召喚!! レベル7! オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!!』」

 

 シンクロ。

 

 

 

 

 

「ユート!」

 

『問題無い! 既に勝利の方程式は整っている!』

 

「『二色の眼の龍よ。絶対零度の凍気を放ち、立ちはだかる敵を打ち砕け! エクシーズ召喚!! 現れろ! ランク7 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!』」

 

 エクシーズ。

 

 

 

 

 

 それぞれの召喚法を会得し、デュエリストとして成長していく遊矢。

 また、行動を共にする内に四人の絆は深まっていった。

 

『やったな遊矢! ついに舞網チャンピオンシップ出場決定だ!』

 

『全く、特別枠で出場可能だったにも関わらず、それを辞退してわざわざ四戦すると決めた時は、何考えてるんだって思ったけど、心配は杞憂だったみたいだね』

 

『ああ。何より遊矢は今回の四戦を経てさらに強くなった。大会でもいい成績が期待できるだろう』

 

「これもみんなユートやユーゴ、ユーリのおかげだよ。三人が俺に融合、シンクロ、エクシーズを教えてくれたおかげで、赤馬零児が言ってたペンデュラムのその先を見つける事ができた。本当に感謝しても仕切れないよ」

 

『礼なんて水くせぇぜ。別に大した事はしてねぇんだからよ!』

 

『そうだね。そこの単細胞バナナは大した事はしてないね』

 

『そうそう、単細胞バナナの俺は大した事は・・・っておい! 誰が単細胞バナナだ!? この冷血無愛想紫キャベツ!!』

 

『へぇ、ユーゴ。キミ、死にたいのかい?』

 

『いい加減にしないか。ユーゴ、ユーリ。せっかく遊矢のジュニアユース選手権出場が決まったのに、こんな時に喧嘩なんか・・・』

 

『『うるせぇ(うるさい)な! いの一番に退場したナストラルは黙ってろ(黙ってなよ)!!』』

 

『・・・・・・・・・』

 

「お、落ち着けユート! 無言で拳を握らないでくれ!! お前まで喧嘩する(そっち)側に行ったら、ストッパーが俺一人になるから! 止められなくなるから!!」

 

 

 

 

 

 始めは戸惑いの連続のこの共同生活だったが、いつしか四人には自然と笑顔が浮かぶようになった。

 こんな日々がずっと続けばいい。遊矢は心からそう思った。

 

 

 

 

 

 だが、その思いは届かなかった。運命は彼らを放ってはおかなかった。

 

 

 

 

 

 舞網市で起こる謎の失踪事件。それを切っ掛けにユート、ユーゴ、ユーリの記憶が蘇る。

 

『思い・・・、出した・・・。俺の・・・、俺たちの故郷は・・・』

 

『リンを・・・、俺の幼馴染みを攫ったのは・・・!』

 

『僕は・・・、僕のやるべき事。それは・・・』

 

 

 

 

 

『融合次元のアカデミアによって滅ぼされた!!』

 

『ユーリ!!』

 

『プロフェッサーの命令に従う事!!』

 

 

 

 

 

 記憶が戻り、互いを敵と認識し、戦いを始めようとするユート、ユーゴ、ユーリ。

 そんな三人を止めようと、遊矢は三人の間に立ちはだかる。

 

「止めてくれ!! 何で!? 何でこんな事になったんだ!? どうして三人が戦うんだ!? さっきまで笑い合っていたのに!?」

 

 涙を浮かべながら戦いを止めようとする遊矢に、ユート、ユーゴ、ユーリは戻った自分たちの記憶、関係、遊矢の知らない四つの次元の事を全て話した。

 三人の話を聞いた遊矢はただ自分の思いを口にする。

 

「ユート達の事情は大体分かった。この世界が四つの次元に分かれているとか、正直信じられないけど、これだけは言える。デュエルは争いの道具じゃない!! そして何より、俺はユートやユーゴ、ユーリを今でも仲間だと、親友だと思ってる! 俺は親友同士で争って欲しくない!!」

 

 遊矢のその言葉はユート、ユーゴ、ユーリの胸に深く突き刺さった。

 

 

 

 

 

『プロフェッサーの命に従う。それが僕の絶対理由。なのにどうして・・・』

 

『ユーリはリンを連れ去った張本人。それは間違いない。なのに何で・・・』

 

『アカデミアは俺の敵。つまりアカデミアに所属するユーリも敵。なのに何故・・・』

 

 

 

 

 

『『『こんなにも、四人で過ごした日々が、心に残るんだ・・・』』』

 

 

 

 

 

 記憶が戻り、一切の交流が途切れた遊矢、ユート、ユーゴ、ユーリの四人。

 そんな四人を他所に進んで行く舞網チャンピオンシップ。

 その三回戦、バトルロイヤルの最中、舞網市はアカデミアの精鋭部隊、オベリスクフォースの襲撃を受ける。

 舞網市にやってきた少女セレナを捕まえるため、遊矢の幼馴染みの少女柊柚子を捕らえるため、オベリスクフォースはバトルロイヤルの参加者達に襲い掛かる。

 幼馴染みにアカデミアの魔手が伸びている事を知った遊矢は柚子を守るために戦う事を決意をする。

 そして、そんな遊矢を目の当たりにしたユート、ユーゴ、ユーリが下す決断は・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遊戯王ARC-Ⅴ 『FOUR SIMILAR BOYS』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『『『お楽しみはこれからだ!!!!』』』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 運命の輪は回る。

 

 

 

 

 

 四人の少年を中心に・・・、

 

 

 

 

 

 多くのモノを巻き込みながら。

 

 

 

 

 

 その結末を知る者は、まだ、いない。

 

 


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