魔物王の道   作:すー

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第三話 家族と女神様

 数千人規模のプレイヤーが住んでいる《はじまりの街》。

 その東七区の川べりの教会前に俺とポチの姿はあった。

 街にある教会の中でも小さい部類に入る教会で、ちょっとした城程のサイズがあるゲート広場付近の教会と比べると、二階建ての教会というのはどうしても小さく感じてしまう。

 約一ヶ月半ぶりの帰還に心を躍らせて先生と皆に会うのを楽しみにしている俺は、ポチと一緒にいても予想以上に寂しかったのかもしれなかった。

 

「ただいまー!」

 

 両開きの扉を蹴破って元気良く我が家に入っていく。

 そう、我が家だ。

 ホームタウンにしている《フリーベン》の宿屋とは別に、SAO内の家族が待つ温かい家。

 ここに居たのは一週間にも満たなかったけれど、それでも俺が「ただいま」を言うくらいには愛着がある。

 正面に見える祭壇も、両脇に並んでいる古ぼけた椅子の行列も懐かしい。

 そして、俺の登場に目を丸くしている祭壇近くで遊んでいた五人の子供達も――。

 

「え~と、先生いる? またはギンやケイン、ミナでも良いんだけど」

 

 ここにいる皆とは面識が無かった。

 おそらく俺が出て行ってから先生に保護された奴らだろう。

 まあ、俺が一番の古株で、その後にギン達三人が先生に保護されて直ぐに俺は教会を出たから、今居る皆は話に聞くだけで大半とは初対面な訳だが。

 

「…………」

『…………』

 

 俺達の視線が混じり合い、果てしなく続く沈黙が痛い。

 しかし、それは唐突に破られた。

 

『モンスターだぁあああああっ!?』

 

 わざわざ説明しなくても分かるだろう。

 そう、ポチを見た初対面の家族達の悲鳴によって、この祭壇フロアは阿鼻叫喚のカオス劇場と化した。

 

「ちょっとストップ! コイツは仲間で俺はここの住人だから! というより先生やギン達から俺のこと聞いてない!?」

 

 やはりサプライズを狙って連絡もせずに来たのが不味かったのだろうか。

 部屋を震わす程の大音声に負けじと、喉を潰す勢いで落ち着くよう声をかけるが効果無し。

 その騒ぎが珍しいのか、又は好奇心を刺激されたのかは定かではない。

 まるで本物の犬のような動きで彼らに近寄るポチの姿には、思わず怒りが込み上げてしまった。

 その接近を察して恐怖がピークに達した面々は、我先にと祭壇右手の部屋へと逃亡する。

 というよりポチ、煽ってどうする。動きが自然すぎて、本当にお前はAIプログラムなのか小一時間ほど問い詰めたい。

 すると、

 

「いったい何の騒――」

『ミナ姉ェ!』

 

 駆け込む前に扉が開き、中から出てくるのは俺より二つ上の女の子。

 髪の両脇を短く紐で括り、茶髪のロングを一本の三つ編みにして背中に流し、俺より身長が高い――これ重要。というより皆、俺より背が高い――少女。

 やっと知り合いに会えた事で俺の顔も自然と綻び、入り口近くに立っている俺を見て、ミナは顔を輝かせた。

 

「シュウちゃん!」

「ちゃん付けは止めろっ!」

 

 群がった子供を押し退けながら嬉しそうに走って来るミナ。

 しかしその途中で椅子に躓いて転ぶのはご愛嬌だ。

 先天的なドジっ子属性持ちをナメてはいけない。

 転んだ拍子にぶつけた額を押さえて蹲っているミナを心配して皆が近寄り、接近に気付いたミナが年上としての威厳を保とうと痩せ我慢している。

 泣き虫臆病の癖に頑張っている様を見て、その見慣れない姿が可笑しくて、俺は久しぶりに心の底から盛大に笑った。

 

(帰ってきたんだよなぁ。一時的なもので、その分レベル上げが遅れるんだけどさ)

 

 それでも、訪れるには充分価値のある温かい光がここにはあった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「ギンとケインが買い物で、先生と他数名が外?」

「うん。シュウちゃんが帰ってきたってメッセージを送ったから、直ぐに帰ってくると思うよ?」

「だ・か・ら、ちゃん付けは余計」

 

 これは暢気にウーロン茶を飲んでいる俺とミナの会話。

 

「すげー! かっけえ!」

「かわいい! フサフサー!」

 

 そしてこれが祭壇フロアで遊んでいた面々の声だ。

 簡単な自己紹介はもう終えて、ポチの事も説明したので大事には至っていない訳だけど、祭壇フロアの奥にある一階広間は現在お祭りと化している。

 二つある長テーブルではなく、その端に設置された小さな丸テーブルで現状報告をし合った俺とミナは、揃って騒ぎの現状に視線を移した。

 あまりにも五月蝿すぎるために。

 

「なあシュウ! 他にはもう無いのかよ!?」

「シュウくん! ポチちゃん私に頂戴!」

「ああー! ずるいよミミ! ポチちゃんは私のだもん!」

「やかましい! 武器はそれで全部だし、ポチは却下!」

「あの……えっと……もうちょっと静かにね、みんな……」

 

 男供は俺が手に入れたドロップ品達をもっと見せろケチケチすんなと騒ぎ立て、女の子達は愛玩動物を寄越せと群がってくる。

 現在ここにいるのは俺とミナを含めて七人。外出している子供は五人。俺を除くと総勢十一人の子供と先生が教会で暮らしている事になる。

 この一ヶ月で随分と大所帯になったものだ。

 今までの仕送りで足りているか少し不安になってしまう。

 この人数だと食費だけでも馬鹿にならない。お布施をする事で教会を宿屋代わりに使用しているので、その家賃代も足りているか心配だった。

 

「ねえ、金は足りて――」

「シュウが帰ってきたって!?」

「シュウ! 生きてる!?」

 

 ミナに貯蓄を聞こうと思ったら、唐突に勢い良く開かれる扉。

 そこから雪崩れ込んできたのは黒色と鉄色の髪を持つ二人組。

 黒髪でやんちゃそうな少年がギン。細目がケイン。子供達のリーダー格であるミナと同じ最年長の二人だ。

 その後に続くように三人の男達――多分ギンと同年代の新入り達も入ってくる。

 そして、

 

「ただいま、先生」

「おかえりなさい。シュウ」

 

 そして一団の最後尾には、俺の元気な姿を見た所為かうっすらと涙を浮かべながら優しく微笑んでいるサーシャ先生の姿があった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 俺と先生が出会ったのはデスゲームが始まって一ヶ月が経過した頃だった。

 元々俺はゲームも好きだし外で遊ぶのも大好きな、インドア派とアウトドア派を両立させた活発な小学生。

 家にいる時はゲームをするか読書に耽るかのどちらかだった。

 ただ、そのゲームとは世間一般的なテレビゲームの類で、七歳も歳の離れた姉ちゃんとは違いMMOには興味が無かった。

 そう言うのも、MMOはゲームの性質上、長時間ゲームに時間を割けなければ強くはなれず、楽しめないかもしれないというのを姉ちゃんに教えられていたからだ。

 それは外で野球バッドを振り回し、近所の道場で棒を振るって汗を流すという行為を心底楽しいと思っていた俺にはキツイものがある。

 しかし、そんな考えをしていた俺にも転機が訪れた。

 仮想世界に旅立ち、実際に剣を、武器を振るってモンスターを倒せるゲーム世界の革命児。

 ソードアート・オンライン。

 大好きなゲームをしながら身体も動かせるという夢の両立を果たしたSAOに関心を抱き、同時に茅場晶彦を崇拝し始める自分が現れる。

 だから俺は、年齢制限にも引っ掛からず、幸運にもSAOとナーヴギアの購入に成功した姉ちゃんが羨ましかった。

 同時に姉ちゃんの修学旅行の日程とサービス開始日が重なったのは行幸だとも思った。

 ちょっとプレイし、後でデータを消して返せばいい。

 姉ちゃんも俺の気持ちを知ってか「私がいない間はプレイしてみても良いよ。でも、ちゃんと返して貰うからね?」という言葉をお見送り先の玄関で告げられ、俺は嬉々としてSAOにダイブした。

 

 説明に従いアバターを作成。

 現実世界の俺は道場で薙刀を振るっていたのだが、ここには槍はあっても薙刀が無い――槍派生のエクストラスキル薙刀の存在をまだ知らない――ので、どうせデータは消すのだから真剣に選んでも意味が無いと適当に短剣を選択した。

 型が似ている槍を選択しなかったのもコレが理由だ。

 しかし、俺にはRPGのプレイ経験はあれどMMOはよく知らない。

 だからこそ、街で装備を揃えて五分も経たずに始まった茅場晶彦のゲーム説明を受けた時もこういう設定なのかもしれないと最初は思ったし、実際に死ぬと言われても実感が沸かなかった。

 そう、これがデスゲームだと本当の意味で理解したのはチュートリアルが終わって三十分後。

 試しに街の外に出てみて直ぐに遭遇した交戦中のお兄さんが、俺の目の前で無数のポリゴン片と化して消滅した時だ。

 

 獰猛そうな牙に血走った眼つきが印象的の、相手は青いイノシシ《フレイジー・ボア》。

 驚愕と恐怖。

 様々な感情に支配された名も知らぬプレイヤーは、最後まで信じられないという表情をしたまま命を散らしていった。

 その時に感じた負の感情が、消える寸前に交わった視線からダイレクトに伝わってくる。

 命が終わり、何もかも失う人の、絶望と恐怖に塗れた目が未だに忘れられない。

 その散り様は自分自身の死亡を幻視させるほど衝撃的で、ログイン前には存在したモンスターと戦うという闘争心をへし折り、根深い恐怖を植え付けるには充分過ぎた。

 

「あ、ああ……あぁああああああああああっ!?」

 

 正直、この後の事はよく覚えていない。

 どうやってその場から逃げたのか。又は倒す事が出来たのか。どういう経緯を経て宿屋にチェックインしたのか。

 気付いたら街角にあるボロボロの宿屋で震えていた俺に今はもう思い出す術は無い。

 間近で感じた死の恐怖に心を凍らせ、失って初めて気付く家族の温もりを渇望して涙を流す。

 救いなのは精神的ショックから食べ物を食う気になれず、所持金の半分以上を宿屋代に回せた事だろう。

 二日に一回という頻度だったため金が浮いた。

 しかし、何もせず宿屋に一ヶ月も泊まれば所持金も尽きる。

 本当なら何か稼がなくてはいけない。だが、何かをする気にもなれない。

 まるで廃人のように心を失い、姉ちゃんと父ちゃんの笑顔を思い出しながら街角で膝を抱える。

 その時だった。

 

「君……どうしたの? 大丈夫?」

 

 ゲームシステム上、感情表現が豊かになってしまうこの世界では涙が枯れる事は無い。

 もはやデフォルトで涙を流す俺に声を掛けたのは、暗青色のショートヘアで黒縁眼鏡を掛けた二十歳前後の女性。

 それがサーシャ先生だった。

 何を話したかは全く覚えていない。

 しかし途切れ途切れの会話をした後に手を引かれ、連れて行かれた先生の宿屋で共同生活が始まった事だけは覚えている。

 食事と寝る場所を与えてもらい、泣いてしまう時はギュっと抱きしめて慰めてくれる。

 朝も昼も夜も、起きている時も寝ている時も、唐突に泣き出す俺の面倒を見てくれ、親代わり、姉代わりとなって接してくれるサーシャ先生。

 そんな先生の優しさと愛情はボロボロの心を次第に癒し、先生というこの世界での家族を得た事で多少元気になると、俺を叱る厳しさも時々見せてしっかりと教育してくれる。

 リアルでは教育者志望だというサーシャ先生はこの仮想世界でも先生として振る舞い、時には家族として接し、俺の中の初日の恐怖を一時的にでも忘れさせてくれる。

 

 そんな先生と出会って数日後、二人だけの生活にギン達三人が加わった。

 俺以外にも子供を保護しようと決意した先生が初めて見つけた子供達。

 それがギン達だったのだ。

 

「ここはもう狭いし、皆で引越ししましょう」

 

 そして始まる教会での生活。

 ほぼ同年代の友達兼家族を得た俺がいつもの『俺』になるのに、そう時間は掛からなかった。

 ギンやケインと馬鹿やって、ミナが俺を弟扱いして『ちゃん』付けし、俺達のやりとりを見て先生が笑う。

 先生は元々ゲームクリアを目指していたのでモンスターからの収入もあり、贅沢は出来ないけれど飢える事の無い共同生活は楽しかった。

 しかし、俺は知っている。

 ミナが夜な夜なベッドで泣いているのも、俺達に見付からないようにギンとケインが人知れず泣くのも、先生が俺達を不安にさせないように恐怖を押し殺しながら気丈に振舞っているのも知っている。

 それにコレは現実であり仮初でもある非常に不安定な生活、俺達はゲームシステムに支配・管理された仮想体に過ぎない。

 先生に添い寝をしてもらっていた度に人の温もりを思い出し、より家族に会いたくなっていたという理由もある。

 だけど俺はゲームシステムに管理された仮想体ではなく、新たな家族と生身で触れ合い、現実世界で思う存分遊びたい。

 もう家族に会えないかもしれないと不安になるのも真っ平だ。

 皆が時々見せる不安な表情も見たくない。

 

 だから俺は、自分のため、そして新しい家族のために、戦う事を決めた。

 この世界に入る前に抱いていた闘争心を復活させ、自分と先生達の平和な日常を取り戻す。

 きっかけはこんなものだった。

 そんな僅かな英雄願望を抱き、家族の温もりに想い焦がれながら、俺の冒険が始まったのだ。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「おい、それは僕の肉だぞ!?」

「隙を見せたアキが悪い……って、俺のパン取ったの誰だ!?」

「ハッハッハ! 油断したソニカが悪いんだよ!」

「ねえ、ポチちゃんってご飯食べたりするのかな?」

「やっぱりお肉? あ、私シチューおかわり!」

「私も!」

「僕も!」

 

 という昼食風景と会話から、現在ここがどんなに騒がしいかを物語っていると思う。

 目の前の長テーブルは正に戦場で、俺と同い年の五人の面倒を見ているギン達三人には少しだけ同情してしまう。

 離れた丸テーブルに座って昼食を食べている俺達と比べれば、この平和で落ち着きのある食事風景が際立って見えた。

 それにしても、先生はやはり料理スキルを上げているらしく、ここの食事は他とは比べ物にならないほど美味しい。

 聞けばミナも料理スキルを上げているらしいので本当にここに住む子供達は恵まれている。

 

「――仕送りは使ってない!? 何やってんの先生!?」

「シュウが心配しなくても大丈夫なのよ? 私だって巡回の合間にフィールドに出て稼いでいるから。それに、心配しなくても大丈夫だって言ったじゃない」

 

 ここで言う巡回とは、先生や皆が一日一回やっている見回りのことを指す。

 毎日一エリアずつ見て周り、助けを求めている子供がいないか探すのが、ここに住む皆の唯一の仕事と言って良い。

 その巡回があるからこそ子供達はここに集まり、こうして笑顔で生活している。

 混乱状態の極みにあるだろう子供にとって、この教会の存在は恐怖を打ち負かす希望になる筈だ。

 

「確かにそうだけどさ。いつ金が必要になるか分からないんだから、ちゃんと持っといてよ」

 

 おそらく、これからも家族は増える。

 そうなると先生一人では全員分の生活費を賄えない。

 その事は先生も分かっている。分かっていて尚、俺の仕送りを使わない大人としてのプライドに不満を持つし、同時に良い先生だとも思う。

 

「その事だけど、シュウに相談……いえ、お願いがあるの」

 

 シチューをすくっていたスプーンから手を離し、真剣な目で俺を見てくるサーシャ先生。

 そのお願いに何となく思い当たる節はあるけれど、残念ながら確証は無い。

 俺も食事の手を止めて怪訝な顔をしていると、今まで空気だった三人が先生の代わりに口を開いた。

 

「俺達も戦いたいんだ」

「だから君が稼いでくれたお金を、僕達の旅立ちの資金として使わせて欲しい」

「少しの間で良い。ついでに戦い方とかも教えてくれないか?」

 

 簡単な自己紹介でリク・カイ・クウと名乗った三人――それぞれが宮崎陸斗、菅原戒、森永空という幼馴染らしい――が、揃って頭を下げてくる。

 先ほど街外へ出ていたのは彼らのレベル上げのためで、先生は俺の時と同じように監督役を務めていたらしい。

 皆の生活費を稼ぎ、攻略組をサポートするために中層プレイヤーになろうと頑張る彼らの頼みを無碍にする筈が無かった。

 しかし、一つを除いて。

 

「良いよ。好きに使って。でも、戦闘指南は無理」

 

 初めて会った時の装備で分かった。

 彼ら三人の中には短剣使いも槍使いもいない。

 武器は片手長剣と両手剣、それにメイス。

 俺では戦闘スタイルが違うので教える事は難しい。

 それでも戦闘における注意やポジション取り等を教えられるかもしれないが、俺は情報以外を教える気は無かった。

 

「俺……このあと直ぐ最前線に行くから。それに人に教えられるほど余裕が無いんだ。ごめん」

 

 腑に落ちない顔をした三人が文句を言わない内に先手を打つ。

 日々レべリングに勤しむ俺には人に構う余裕なんて無い。

 こうしている合間にも攻略組とのレベルや実力差は広がるばかりだ。

 キリトクラスの強さを身に付け、この世界から皆揃って脱出する。

 そのためにも時間を無駄に出来ない。

 例え家族の頼みと言えど、それだけは活動の妨げになる行為を容認する訳にはいかなかった。

 

「そこを何とか――」

「ダメよ、リク。無理を言っちゃ」

 

 それでも食い付こうとするリクを窘めている先生には感謝だ。

 先生も少し納得出来ないのは顔を見ればよく分かる。

 それでも俺の想いと本気を知っているだけに引き下がってくれるのは、そこら辺はやはり大人と言うべきか。

 

「フレンド登録はしてあるから、何かあったら連絡して。あとコレもあげる」

 

 トレード・ウィンドウを表示し、リク達にアイテムを渡していく。

 ハーブルソードを始めとした武器達に、鎧や盾といった防具品。

 どれもドロップ品やトレジャーボックスから獲得したアイテムだ。

 まだ彼らの筋力値では装備出来ないだろう。

 それでもレベルが上がれば装備出来る。

 どうせ装備しない俺には売るしか選択肢が無いので、彼らに装備してもらった方が装備品も幸せだと思う。

 

「それじゃあ俺はもう行くから。ご馳走様」

 

 別れが惜しい。けれど立ち止まる訳にはいかない。

 正面扉に向うと皆が付いてきてくれて、ちゃんと見送ってくれる。

 その事が嬉しく、同時に心配させるのは申し訳ないと思う。

 泣いているミナを見れば余計に罪悪感が込み上げてくる。

 

「シュウ、無理はダメ。危なくなったら逃げるのよ?」

「……行ってきます」

 

 正面から先生にハグされ、照れ臭さを感じながらもしっかりと抱き返す。

 先生の優しさ、周囲にいる皆の声。

 これでしばらくは大丈夫。

 ポチもいるし、この温もりと声援を糧に、また戦っていける。

 疲れたり、ホームシックに掛かったらまた来れば良い。

 他の皆とは違い、俺には帰る家と家族がいるのだから。

 

「シュウ、装備ありがとうな!」

「また帰って来いよ!」

「バイバイ、シュウくん! ポチちゃんもね!」

 

 皆の姿を目に焼きつけ、更にゲームクリアの決意を固めて教会を出る。

 転移門に向って数十分後、現在の最前線――第十層主街区《リートバルド》に俺達の姿はあった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 《ジュエリーラット》。

 高経験値・高金・確定レアドロップ品持ち。

 そんな三拍子が揃った狩られるためだけに存在する宝石鼠の噂が立つのは当然の事であり、俺達攻略組予備軍以上の高位プレイヤーの間で噂が広まるのはかなり速かった。

 デスゲームが始まって三ヶ月。

 現実世界だと二月に入った今、アインクラッドは第九層まで攻略されて全体の1/10攻略に差し掛かっている。

 そして、現在の最前線である第十層のフィールド・ダンジョンに出現するレアモンスターの強さは第一層並みの下の下。

 隠蔽スキルと敏捷力が極端に高い攻撃力皆無なモンスター狩りが流行るのに一日も掛からなかった。

 ジュエリーラットの出現が唯一確認されている地下遺跡型フィールド・ダンジョン《地底街区》は、腕に覚えのある上位プレイヤーで溢れている。

 かく言う俺もその一人であり、教会を出発して三時間、俺は地底街区の南東を探索していた。

 

「ラスト!」

 

 短剣下位ソードスキル《ライドスラッシャー》。

 下からアッパー気味に振り上げられた逆手に握られた短剣は、アンデッド型モンスターの《スカルソルジャー》の顎を正確に捉え、その大人ほどの体格を切り付けながら上空高くに吹っ飛ばす。

 着込んだ鎧をガタガタ揺らして錆びた剣を零れ落とす骸骨は見事な放物線を描き、地上に到達する前にバシャアッという独特の破砕音を響かせて砕け散る。

 先ほどまで騒がしかった周囲は怖いくらい静まり返り、戦闘が終わった後の余韻は地上から吹き込む隙間風と共に訪れ、俺の黒髪を優しく撫でる。

 天井にびっしりと生える光苔の効果で松明要らずの地下世界は、周囲が静かな所為かどこか寂しさに満ち溢れていた。

 

「ほら、ポチ」

 

 コートに隠れたポーチから回復ポーションを取り出し、それをHPが半分近く減っているポチに飲ませてあげる。

 俺の補助を受けてポーションを呷る姿は、いつかテレビで見た動物園の白熊の赤ん坊が哺乳瓶でミルクを飲んでいる光景を連想させ、見ていて非常に和む。

 苔や蔓に覆われた石造りの街中で暫しの癒しタイムを満喫し、休憩も兼ねてポチの毛並みを手櫛でブラッシングする俺の手付きも慣れたもので、心成しかポチも気持ち良さそうに眼を細めているようだった。

 俺の獲得する経験値に比例して自動的に成長するポチの並外れた索敵スキルがあればこその余裕。

 バックアタックを主戦法にしているため右肩上がりの隠蔽スキルも味方し、崩れた廃屋の隅にいる俺に気付くモンスターは早々いないだろう。

 まあ、モンスターかプレイヤーが接近すればポチが気付くのだが。

 例えばこんな風に。

 

「数は一体。今度こそジュエリーラットだと良いなぁ」

 

 呟いて、確率はかなり低いと自己完結する。

 それはジュエリーラットが時間や期間限定で出現する特殊モンスターの疑いがあるからだ。

 第九層が攻略されて二日。

 そしてジュエリーラットが確認されて一日以上が経過してほぼ全ての上位プレイヤーが集まっているにも関わらず、遭遇数は極端に少ない。

 元々この地底街区が第十層地下全域に相当する広大なダンジョンなため遭遇頻度が低いという理由もあるだろう。

 しかし、それでも流石に少な過ぎる。

 それに攻略組クラスのプレイヤーが一気に二つもレベルアップしたというのも中々にパワーバランスを崩壊させるありえない数値だ。

 以上の事から、このモンスターは出現に限りがあるボーナスモンスターという推測が有力化していた。

 現在討伐された数は八体。

 数だとしたらキリの良い十体。時間だとすれば第十層に到達して三日間。

 その間に出るモンスターだと判断し、普段は迷宮区に出入りしている攻略組も地底街区に狩り出していた。

 

「……ポチ、グッジョブ」

 

 震える口を動かし、思わず相棒を褒め称える。

 何故なら、俺達の目の前二〇メートル程にいるからだ。

 金色の体毛に長い尻尾。ルビーやサファイアが直接埋め込まれたような光沢を放つモルモット大のネズミ。

 事前に入手した情報と合致する。ジュエリーラットが俺達に背を向けていた。

 

(くそっ、投剣スキルや忍び足スキルを習得しとけば、あんな雑魚、簡単に倒せるかもしれないのに)

 

 今のレベルは第九層のダンジョンでレベリングに勤しんだ結果18に達している。

 次にスキル追加制限が増えた場合上記の二つのどちらかをスロットに入れる事も視野に入れ、無いもの強請りをしながら、俺は自前のスキルに頼らない忍び足でジュエリーラットに近付いた。

 俺の短剣スキルの熟練度は現時点で約二割五分といった所で、その中でも最大射程・最速を誇るダッシュ技の範囲内に入るまで、あと五メートル。

 その道のりが永遠にも感じられる、信じられないくらい長い距離。

 その道を俺は進む。

 しかし、

 

「あっ!?」

 

 あと少しという所で接近を感知したジュエリーラットは疾走する。

 俺達の手から逃れるために。

 

「ポチ、追え!」

 

 確かにジュエリーラットの足は速い。

 その小さな姿から見失ってしまう可能性も高いだろう。

 しかし、こちらにはポチがいる。

 使い魔交信スキルでジュエリーラットを追うように指示し、走り出すポチを追いかける形で俺も鬼ごっこに参加する。

 あとはひたすら我慢比べ。

 俺達を引き離す方が速いか、ジュエリーラットを沢山ある袋小路に追い詰める方が速いか、二つに一つ。

 当然、負ける気は毛頭無い。

 

「くっそっ! すばしっこい!」

 

 先導するポチに従ってひたすら走る。

 大通りを、小道を、時には建物の屋上から飛び降りたりもした。

 既にジュエリーラットは視界ギリギリにしか見えず、いつ見失ってもおかしくない。

 だからジュエリーラットの位置を正確に掴んでいるポチを見失わないように気を付け、ただ走る。

 

 

 

 ――そう、俺はポチに夢中で、ポチは使い魔交信スキルでジュエリーラットの追跡に集中していたからこそ、俺達は接近したナニカに気付かなかった。

 

 

 

 

「……っ!?」

 

 背後から飛来したナニカが服に防護されていない左掌に突き刺さる。

 システム上痛みは無いが不快感と違和感を与えるそれに意識を向け、突き刺さっているのが赤黒くて細長いピックだと認識した瞬間、引き抜く間も無く俺は転倒した。

 自らのステータスを総動員していたためスピードに乗っていた俺は、急に動かなくなった身体に違和感を覚えつつ盛大に石畳を転がる事になる。

 右手からリーヴァス・ダガーもすっぽ抜け、最初は腹、顔面、背中と続き、HPを数ドット分減少させながら転がり続け、うつ伏せの状態で漸く静止。

 そして俺は転がる合間に確かに見た。

 HPゲージを緑色の点線が囲っていたのを。

 

(麻痺毒……だとっ!? ふざけんなっ!)

 

 そもそもこのダンジョンに麻痺毒を持つモンスターは存在しない。

 本当はいるかもしれないが、今の所目撃例は無い。

 未だに存在感を発しているピックの事もあるし、これがプレイヤーによる攻撃だという事も明白だ。

 いったい誰がこんな事を。そう考えながらも使い魔交信スキルで追跡中止を命令し、先行していたポチを呼び戻したその時、石畳を歩く振動と音が伝わってきた。

 数は三つ。そして、徐々に聞こえてくる声に聞き覚えがあった。

 

「ヒャッハーっ! 流石は俺の投剣スキルぅ! 見たかよお前ら、一発だぜ、一発!」

「バーカ。こりゃ、この前手に入れたゲーデルの毒牙のお陰だろうが! グルガの手柄はオマケだ、オ・マ・ケ!」

「それにしても、レアモンスターを追いかけてるガキを見つけられてラッキーだぜ! 探す手間が省けたっつーの!」

 

 つまり、ジュエリーラットを追いかけている最中の俺を偶然見つけ、獲物を奪う事に決めた、という事だろう。

 迂闊だった。目的のモノと目の前の幸運に舞い上がり、基本中の基本である警戒を怠ってしまった。

 その結果がコレだ。

 身体が動かず、声を出す事もままならない。

 唯一の救いは《ゲーデルの毒牙》という名称だろう投擲用ピックが使い捨てであり、既にポリゴン片と化して霧散している事だけだ。

 正直、だからどうしたと唾を吐き捨てたくなる状況だけれど。

 

「これでレアドロップと金は俺達のもんだ!」

「ジュエリーラットは俺達が頂いたぁあ! ついでにリーヴァス・ダガーもゲットぉお!」

「あと五分くらいで動けるようになるさ! あばよクソガキ!」

 

 地面とキスしている状態なので見る事は出来ない。

 しかし、ジュエリーラットを追うために足を止めず走り去っていく三人――以前ニーヴァで俺に絡んできたオッサン達の容姿を記憶から引っ張りだし、俺を攻撃したオレンジプレイヤーの名前を覚えるのに、視界なんて関係無い。

 これでアイツらは犯罪者プレイヤーの仲間入り。

 新たなオレンジプレイヤーの名前を情報屋にリークしてやる。

 そう強気の姿勢を見せ、感情を高ぶらせる事で、湧き上がろうとする恐怖心を抑えつける。

 

「……ポ……チ……」

 

 アイツらはジュエリーラットを追うためにポチへの攻撃を控え、俺はポチに攻撃しないよう命令していた。

 アイツらを攻撃させる時間が惜しい。

 今は、一刻も早く態勢を整える方が大事だからだ。

 ジュエリーラットとその場での報復など、とっくの昔に諦めている。

 

「ク……ッソ……がっ!」

 

 転移結晶というアイテムがある。

 一般的なモノは青いクリスタル状で、コレは使用する事によって指定した街へ直ぐに飛んでいける便利なもの。

 転移結晶は高価なアイテムだ。しかし高価なものと言えど命には返られない。

 だから俺達プレイヤーは転移結晶を常に携帯している。

 非常脱出用に準備していた転移結晶を、ここで使わずいつ使うのか。

 使うのに躊躇いは無い。

 躊躇いは無いが、現実が使用を許さなかった。

 

(動け……動けよ!)

 

 腕が動かず、腰のポーチから転移結晶を出す事が出来ない。

 帰ってきたポチに命令してみたけど『攻撃しろ』『スキルを使え』という単純な命令とは訳が違う『ポーチからクリスタルを取り出して手に握らせろ』という複雑な命令をポチが理解出来る筈も無く、ポチは俺の側でいつも通り警戒しているだけだった。

 そして、

 

(……嘘でしょ?)

 

 

 

 ――ポチが唸り声を上げ、直ぐに脅威が姿を見せる。

 

 

 

 数分経ったため徐々にだけど動けるようにはなってきた。

 今の状況に絶望しながら全神経と力を振り絞り、全身全霊を込めて右手をポーチに伸ばす。

 その間に規則正しい足音とナニカを引き摺る音が石畳に反響する。

 その死神の足音が一歩、また一歩と近付いてきても、手を休める訳にはいかなかった。

 

「……て……んい……」

 

 ゆっくりとした足取りで現れたのは、全身に錆付いた鎧を着込み、同じく錆びた大剣を右手で引き摺る巨体。

 身長二メートルの大柄な骸骨剣士《スケルトン・マーダ―》。

 先ほど倒したスカルソルジャーとは訳が違う、地底街区でも上位であり、最強の攻撃力を誇るモンスターの魔の手が迫っていた。

 

「……カ……」

 

 転移先に《カルマ》を選んだのは字数の問題。短い名前を選んだに過ぎない。

 主のピンチを悟ったのか、それともたまたまなのか、その間にポチが単身で化け物に飛び掛かる。

 けれどもそれは横薙ぎの一撃であっけ無く吹き飛ばされてしまう。

 俺と骸骨の距離は、もう五メートルも無い。

 

「……ル……っ!?」

 

 最後の一文字。

 それを口にする事は叶わなかった。

 言葉を発しながら少しでも距離を開けようと倒れたまま上体を起こそうとした俺の行動が裏目に出て、浮いていた腹に容赦無い一撃が襲い掛かる。

 下から振り上げられた大剣の刃先は俺の腹下に潜り込み、その怪力を持って、俺の小さな身体を上空高くに吹っ飛ばした。

 その際、右手から最後の希望が零れ落ちる。

 スカルソルジャーと全く似たような構図なのは何の皮肉か。

 そのまま地面に叩きつけられ痛みは無いものの、衝撃とダメージ判定で麻痺する俺の目に飛び込んできたのは、たった一撃で三割も減少したHPバーだった。

 

(……何で……何でだよっ!)

 

 スケルトン・マーダーなら既に何体も屠っている。

 図体が大きく攻撃力だけのノロマモンスターなど、俺にとっては絶好の的だった。

 当たらない攻撃なんて恐れるに足らず。

 それなのに、この現状が信じられない。

 武器も無く、転移結晶も手元を離れた。極めつけは麻痺する身体。こんな事、完全に想定の範囲外。

 逃げるために必死で状態を起こし、涙でぼやけた視界に現れるのは、横薙ぎに振るわれた大剣。

 

「……っ!?」

 

 またもや腹に叩き込まれた大剣で俺の身体がくの字に曲がった。

 そのまま体験したくもない空中浮遊を味わい、背中から石壁に叩き付けられる。

 錆びているため叩き切るではなく叩き付けられた大剣は装備していたシルバーシャツを破損させ、情け容赦無く俺のHPを削り取った。

 残りHPは半分以下。

 そして再度振り下ろされた攻撃で――HPは一割以下にまで減少した。

 

『グァアアアアアアっ!』

 

 勝利前の雄叫びか。

 スケルトン・マーダーの咆哮は、ただ耳を通り過ぎていく。

 再度立ち向かったポチは大木の枝のように太い腕で殴られる。

 それを確認している暇も、余裕も無い。

 初の危険域に脳が限界を迎える。

 フレンジー・ボアに殺されたプレイヤーの顔。グルガと呼ばれた犯罪者プレイヤー。クライン。風林火山。キリト。ポチ。教会の家族達。サーシャ先生。

 

 

 

 ――そして、一番会いたいと願っている、現実世界の家族。

 

 

 

 麻痺毒が完全に解けるまで、あと三分。

 それが絶望的なまでに長く、背に石壁を預ける形で目の前の死を見ている俺には、振り下ろされた大剣がスローモーションに感じられた。

 走馬灯なんて、見たくもなかった。

 

(……死……い、いや、だ……っ!)

 

 しかし俺の気持ちとは裏腹に、生への渇望を嘲笑うかのような死の一撃が襲い掛かる。

 視界一杯に広がった大剣が俺の顔面を叩き潰す――。

 

 

 

 ――前に、一筋の閃光が化け物の側頭部に炸裂した。

 

 

 

『グァアアアアアッ!?』

 

 先ほどとは毛色が違う叫び声が大通りに木霊する。

 その原因を作ったのは、黄色のライトエフェクトを纏った神速の突き。

 それが細剣スキルに分類される突進技《ソニックリニアー》の一撃だと理解する頃にはもう、颯爽と降り立った女神は次の行動に入っていた。

 起き上がり、雄叫びを上げる化け物に接近。

 ソードスキルに頼らない三度の中段突きは骸骨剣士の反撃を許さず上半身を仰け反らせ、袈裟懸けに振り下ろされたソードスキルによる斬撃は、眩い光と共に胸元へと叩き付けられる。

 その圧倒的な速度で敵を翻弄する彼女に。視認する事も難しい閃光のような一撃に。

 なにより、俺の命を救ってくれた恩人の姿から、眼を離す事が出来なかった。

 

 そして、呆気無く戦闘が終了する。

 あれほど濃厚だった死の気配はモンスターの敗北と共に砕け散り、虚空に消えたモンスターから目を放した彼女は、ゆっくりとこちらを振り返る。

 栗色の長いロングヘア。最前線で売られていた白を基調とした色彩のライトアーマーに、膝丈までのスカート。

 右手に持つ細剣はスケルトン・マーダーを倒したとは思えないほど細い。

 

「君……大丈夫?」

 

 心配するような声色で近寄ってくる彼女を見て、

 

(……いや、そっちこそ大丈夫?)

 

 つい、そんな失礼な事を考えてしまった。

 まだ麻痺の所為で声を出し辛い事が幸いした。

 細剣を仕舞いながら近寄って来る彼女は先程まで死にそうだった俺が心配するほど切羽詰ったような顔をしている。

 なんというか、それでいて少し怖い。

 目尻も上がり、普段なら温厚そうな瞳が切れ長な双眸へと変化しているのは、戦闘中でテンションが上がっていたからだと信じたい。

 しかし、それを差し引いても充分過ぎるほど美人で、背後で煌くモンスター欠片の名残が彼女の綺麗さを強調した。

 

(…………)

 

 ついでに言えば表情は固い。

 それが無ければ充分なほど神々しい絵だっただろう。

 しかし、その悠然と歩いてくる姿も、先程の強さも、心の底から俺を心配してくれている優しさも、その全てが魅力的に思えてくる。

 年齢は多分キリトと同じくらいで、綺麗で強い戦乙女。

 

 

 ――それが後に《閃光》と呼ばれる彼女に抱いた最初の印象であり。同時に十歳の俺が初めて女性を意識し、見惚れた瞬間だった。

 

 

 

 




もうお察しの方もいるとは思いますが、主人公は原作でサーシャ先生に初めて保護された少年、という風に書いていました。

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