オレを踏み台にしたぁ!?   作:(╹◡╹)

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少年と魔導師と魔法使い

 みなさん、ごきげんよう。いかがお過ごしでしょうか。あ、はい。オレですか? オレは…

 

「桜庭くん、今日もわざわざごめんなさいね」

「あ、いえ。協力させていただくという話ですし… こちらこそ大したお役に立てず」

 

 今日もアースラのブリッジにおります。しかも、オレ一人だけ通いなので目立ちます。

 けれど、みなさん何も言わずそんなオレを暖かく迎え入れてくれます。

 わざわざオレ一人のために迎えを寄越すのも大変だろうに… ええ人たちやで、ホンマに。

 

「フフッ、そんなことないわ。あなたが来るとクロノもエイミィも嬉しそうだもの」

「ちょっ… 艦長!」

 

「……そう言っていただけると、こんな自分でもみなさんの一員になれたようで光栄です」

「もう、堅いなぁ… 悠人くんは。いくらお仕事とはいえ、もう少し楽しくいけばいいのに」

 

「いやエイミィ、君が緩すぎるんだ。まったく… 少しは悠人を見習ったらどうなんだ?」

「あちゃ~… ヤブヘビだったか」

 

「恐縮です」

 

 場を和ませるリンディさんはじめとするみなさんのナイスフォローに、思わず頭を下げる。

 あからさまなリップサービスだが言われた側としては悪い気はしないけどね。ありがたいし。

 

 本来、ハリウッド・スターのみなさんと一般人のオレとでは言うまでもなく住む世界が違う。

 こうした触れ合いが出来るのも撮影が終わるまでの僅かな期間。いずれ終わりの時が来る。

 けれど、同じ時を過ごしたという余韻には出来るだけ長く浸っていたいのも、一般人の人情だ。

 

 こんなオレでも何かの役に立てるなら全力で頑張りますよ、みなさん!

 ……まぁ、現状何の役にも立たない置物と化してるんですけどね。

 はい、マジで何もしてません。たまにリンディさんに話を振られるので答えているだけです。

 

 と言っても、ロストロギアの捜索方針について聞かれたんでちょいと言っただけですけどね。

 折角人員で優ってるんだから現地に私服局員を配備して巡回させたらどうでしょう、的な。

 そりゃアースラで調べてすぐに飛んでいけるのは大事ですけど、対抗勢力がいるみたいですし。

 

 むしろ、その対抗勢力側に思うように動かせないようにするのも大事なんじゃないですかね?

 管理局から逃げ回るような相手なら接触を避け動き難くなるし、逆なら囲んで袋にしちまえ。

 的なことを言葉遣いに気を付けつつ具申した。この程度みなさんが思いつかない筈もないよね。

 

 まぁ、却下されたとしても思うところを言ってみるのは大事だろう。そう思ってた。そしたら…

 

「うわ、えっぐ」

「け、結構えげつない手を考えつくのね」

 

「桜庭、おまえってやつは…」

「……流石にソレにはドン引きなの、桜庭くん」

 

「でも効果的、なのかな」

「あぁ、呆れるほどに有効な戦略だと思う。流石は悠人だ」

 

 上からエイミィさん、リンディさん、名無しの少年、白い少女、ユーノ君、クロノさんです。

 このようにみなさんに言われてしまう始末。みなさん結構遠慮しないですね。……解せぬ。

 まぁ、その言葉をそのまま真に受けるほど子供じゃありませんけどね。もうちょっと、こう…

 

 何故か採用されたんですけどね。オレの苦し紛れの戯言なんて普通に却下すれば良かったのに。

 

 というかこれ、むしろみなさんに気を遣われてるってことですよね? オレだけ浮いてるし。

 クロノさんはじめとする他のみなさんのようにたまに出動するということすらしませんし。

 いやまぁ、オレみたいな一エキストラが俳優の見せ場に出て行って何をするんだって話ですが。

 

 ロストロギアとやらが出現した時に対処するために待機中… と言えば聞こえはいいけれど。

 実際はボーッと突っ立ってるだけのニートです。肩身が狭い。何故オレはここにいるのか?

 そんなニートをやってて暇してるオレの見せ場を、みなさんで作ってくれてたってことですね!

 

 うわ、自分のあまりのダメさ加減に死にたくなってくる。……いや、死んじゃダメだけどさ。

 

 ………

 ……

 …

 

 そして今日。

 

「立て続けに3つ持って行かれた時はどうなるかと思ったけど、瀬戸際で踏み止まれたわね」

「えぇ、悠人の案のおかげでその後2つを確保することに成功しました。残りはあと6つか…」

 

「探してはいるのだけれど、中々見つからないのよねぇ」

 

 フォローしてくれる管理局のみなさんの優しさが心に痛い!

 もうやめて! とっくにオレのライフはゼロよ!

 

 あとクロノさん、最近やたらとオレをageてくれてませんかね? 気のせいだろうけれどさ。

 クロノさんの方がはるかにイケメンで文武両道で社会的地位もあるというのに、一体何故…

 も、もしや… クロノさんもホモなのか? くっ、ウェイターさんだけでお腹いっぱいなのに。

 

 なんてことだ。悠人少年が心を閉ざしたのは、周囲がホモだらけだったからという可能性も…

 いや、絶望するのは早い! クロノさんには萌え美少女のエイミィさんがいるじゃないか!

 ダメだ、ウェイターさんも桃子さんっていう超絶美人の彼女がいるのにモーションかけてきた!

 

 そういえばゴリ君とメガネ君も、こちらを見る視線に妙に熱っぽいものが混じってた気がする。

 くそっ! 一人を疑い出すと際限なく誰も彼もが怪しくなってくる! ここだけ世紀末かよ!

 このままじゃ夏に海水浴とかに出掛けたら男にナンパされてしまうのか? そんなの嫌過ぎる!

 

 いや、出かけなければいいじゃん。そうそう、それがいい。……いやいや、ここは海鳴市。

 海辺の都市で観光も盛ん。そして近隣の学校には夏場の必修項目として海水浴があげられてた。

 図書館で調べた知識を脳味噌から引き出すとともに、絶望する。……詰んだ。あかんやん。

 

「はぁ、海か… 憂鬱だ…」

 

 思わずボヤきたくなるってもんですよ。

 

「海… やっぱりそうなるわね。捜査区域を地上から広げてみましょうか」

「今、エイミィがやってくれています。例の黒い魔導師の少女は巡回班に任せているので…」

 

「ビンゴ! 見つけました! …って、えぇ!?」

 

 いやいや、そもそもクロノさんがホモだと決め付けるのがおかしい話じゃないか。そうとも。

 単に、オレみたいな一般人にも優しく接してくれるナイスガイという可能性が一番高いさ。

 なんか色々と騒がしくなってる背景を尻目に、オレは自身の価値観を左右する思考に没頭中だ。

 

 うん、クロノさんから正式に「僕はホモだ!」ってカミングアウトされたわけでもなし。

 彼のことは、ただの紳士的でイケメンなナイスガイなのだと考えておくことにしよう。

 ウェイターさんやゴリ君、メガネ君たちも同様にね。そう、心に棚を作って置いておくんだ。

 

 考えないことで問題を先送りにしたなんて言わないで欲しい。今はこれが精一杯なのだから…。

 

「なんてことしてるの! あの子達…っ!」

「なんとも呆れた無茶をする子だわ…!」

 

 背景が妙に騒がしいな… そう思って顔を上げると、モニターいっぱいに金髪少女が映ってた。

 クルクル回りながら竜巻に向かって飛び回ってる模様。意味は理解できないが、なんか凄い。

 彼女もイースターの行事に参加しながら、こうして撮影をもこなしてて凄いと思う。尊敬する。

 

 だが5月に入っている。ゆで卵は衛生的に大丈夫なのだろうか? ……考えないようにしよう。

 

「海中に魔力を叩き込んで、ロストロギアを無理やり起動した模様!」

「無謀だ… ただでさえ消耗した魔力に加え、6つの暴走体。その先にあるのは自滅のみだ」

 

「局員は警戒態勢を維持したまま待機。巡回中の武装局員は各自、現場に急行させるように」

「了解!」

 

「エイミィ、周辺に被害が及ばないよう結界の様子には常に気を配って。それから…」

 

 エイミィさん、クロノさん、説明アザッス! そしてテキパキと指示を出すリンディさん素敵!

 やはり金髪少女の見せ場らしい。彼女の活躍する場面も入れるのは映画的に重要なのだろう。

 他人の見せ場は奪わないことに定評がある管理局。つまりここは待機一択ということになるか。

 

 ――プシュー…

 

「フェイちゃん!」

 

 ドスッ!

 

「あべしっ!?」

 

 身を乗り出し見物しようとしてたら、扉の開く音と共に現れた白い少女に跳ねられてしまった。

 は、跳ねたね…。そんなことを思いつつ、立ち上がる。ここは一言、文句を言ってやらねば!

 

「高町、突っ走るなって!」

 

 ゴスッ!

 

「もののべしっ!?」

 

 二度も跳ねた! 親父にも跳ねられたことないのにッ! ……ないよね? 多分、ないよね?

 悠人少年の貧弱ボディは壊れ物のように慎重に扱う必要があるというのに、この蛮族どもは…!

 

「ご、ごめんよ。大丈夫? 立てるかい?」

「……ありがとう」

 

 そんなオレにそっと手を差し伸べてくれるユーノ君。何これ? 天使なの? 結婚してくれ!

 待て、落ち着け。可愛らしい容姿だがユーノ君は男だ。結婚したらオレがホモになってしまう。

 

「む…」

「どうしたんだい?」

 

「いや、なんでも… ありがとう、助かった」

 

 差し出された手を取りつつ自分の腕時計を見れば、そろそろ道場に向かう時間に近付いていた。

 ユーノ君にはあまり関係ない話なので、話されても困るだろう。適当にごまかしお礼を言う。

 そしてそのままさり気なく出口付近に移動。後はタイミングを見てリンディさんに伝えるのみ。

 

 今日はクロノさん忙しそうだし久々に一人で行くことになるのかな。まぁ、それもいいだろう。

 

 そんなことを考えていると、白い少女たちがこっちに駆け寄ってきた。え? また跳ねるの?

 思わず身構えてしまいそうになる。ビビり過ぎとは思うが、流石に三回目はノーサンキューだ。

 

「っ! ……桜庭くん、お願い。其処を通して!」

「………」

 

 だが、少女はオレに気付くと立ち止まり、瞳を真っ直ぐと見上げながらこうのたまってきた。

 え? どゆこと? 通してって… あ、なるほど。3人とも出口に用があったってことか。

 ふぅ… 一瞬、なにがなんでもオレを跳ね飛ばさないと気がすまないのかと思ってしまったぜ。

 

 どうも邪魔にならないようにと移動してた場所が、ピンポイントで邪魔な位置だったようだ。

 さて、どうしたものか… 彼らを通すのは一向にかまわないが映画的にはどうなのだろう?

 そもそも悠人少年は貧弱ボディ。本当に通る必要があるなら先程のように跳ねればいいのでは?

 

 いや、跳ねられたいわけじゃないけどね。決して。決して。大事なことなので二回言いました。

 

「用がないなら邪魔しないでくれ、桜庭。こんなことをしている時間も惜しいんだ!」

「………」

 

 ボケッと考えこんでたら怒られた。ごめんちゃい。そうだよね、撮影のロスは問題外だよね。

 自分で結論を出すのを諦め、どうすべきか視線でリンディさんとクロノさんに問いかける。

 二人とも首を左右に振った。だよな! やっぱり、映画的にここでの特攻はNGだったんだね!

 

「あの子は目的の障害で敵… なのかもしれない。けど、あんな姿を見たら放っておけないよ」

「ユーノ…」

「ユーノ君…」

 

 おっと。

 

 そうこうしているうちに、(心の中で)ソウルフレンドと認定してるユーノ君が口火を切る。

 なるほど、あの金髪の少女は管理局のライバルポジションだったのか。状況説明サンクス!

 流石は出来るハリウッド・スター。オレが理解してないと見るやさり気ないフォローを入れる。

 

 あとは特攻しちゃまずいよってことを、それとなく、ふわっと伝えていかなければならない。

 いや、そもそもオレが答える流れでいいのだろうか? 脇役がでしゃばり過ぎてないかな?

 でも、リンディさんとクロノさん沈黙してるし… うーん、間違えたらフォローされるだろう!

 

 これ以上ここに尺を取るのも不味そうだ。

 

「管理局の人たちは間違ってるという。……君も、そうなの?」

 

 となれば… いくしかないか!

 

「あぁ、そうだ。間違っているのは君たちで… この場では、管理局の判断が正しい」

 

 オレはふてぶてしい笑みを浮かべて、両手を広げつつ、そう言った。

 瞬時に強張る彼ら3人の表情… あれ? なんかオレ、悪役になってない?

 

 ………

 ……

 …

 

 その後、なんで彼らが間違っているのかということをオレなりに丁寧に説明しておいた。

 人情としては即時の救助は理解できるけど、任務がある以上そうはいかないね、とか。

 その任務と金髪少女の保護の両立を考えた上での待機指示だったんだよとか、とか色々とね。

 

 うん、勝手に拡大解釈してマジすんません。でも、リンディさんたちなら保護すると思うし。

 

 そんで理解できるとは言ったが人情大事だからって勝手に動いちゃったらあかんよね、とか。

 正しいと思って動いた結果で人の好意を台無しにしたら黒歴史なんてもんじゃない、とか。

 その辺のことをふわっと語ってたんだけど、泣きそうになってたんで最後は背中押しちゃった。

 

 結果、少女たちは笑顔で出口を突破。この場には、オレと管理局のみなさんが取り残された。

 

 

 

 

 

 

 

「………」

「………」

 

 き、気不味い…!

 いや、うん、ダメなのは解ってるよ。でもしょうがないじゃん! 泣く子と地頭には勝てんよ!

 

「まったく… とんでもないことをしてくれた。止められないならまだしも、背中を押すなんて」

「申し訳ない」

 

「分かっているのか、君は! 魔導師とは法と任務を護るべき存在なのに、それを…」

 

 クロノさんが怒ってる。やっぱり通すのはあかんかったのか… すまぬ、すまぬ。

 

「まぁまぁ、クロノ。桜庭くんもなにか思うところがあったんでしょう? 仕方ないじゃない」

「しかし、艦長… いや、すまない。……確かに、理由も聞かずに責めるべきではなかった」

 

「いえ、悪かったのは自分ですから」

「そう自虐的にならないの。でも桜庭くん、聞かせてくれる? なんで彼女たちを行かせたのか」

 

 え、理由を説明しないといけない流れっすか? 3人がかりの涙目に押されましたじゃダメ?

 ……いや、うん、ダメだろうね。クロノさんがますますキレてしまう未来しか見えないし。

 と、とりあえず待たせたらますます印象が悪化するし、会話を繋げながら言い訳を考えないと!

 

「先程クロノさんは、魔導師とは法と任務を護るべき存在である… と、そう仰せになった」

「……あぁ、確かに言った」

 

 考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、考えろ…!

 

「ですが、彼らはここ地球の“魔法使い”。……管理局の“魔導師”とは異なる存在なのです」

 

 

 

 

 

 

 

 アカン、時が止まった(白目)。

 

 

 

 

 

 

 

 や………

 や……

 や…

 

 やっちまったぁー! 追い詰められたからって何斜め上の回答しちゃってんだよ、オレは!?

 そりゃ「魔導師じゃないから法と任務を破っても仕方ないね」って理屈が通れば一番だよ!

 通ればな! むしろこれ火に油注いだ状態になってんじゃねぇか! あばばばばばばばばば!?

 

「ば… バカなことを言うなっ!」

 

 ほら、やっぱり怒った! 土下座か? 土下座すべきなのか? いや、もう押し通すしかない!

 

「事実です。地球(ここ)では魔法使いとは“夢と希望を叶える存在”… 故に、彼らは止まらない」

「それは屁理屈だ! 彼らは魔導師だし… なにもかもを救うなんてただの夢物語だ!」

 

 乗ってくれた。クロノさん優しい! 心の中で管理局万歳を叫びながら、更に舌を回転させる。

 

「そのとおりでしょう。だけど、子供は夢を見る」

 

 ――ガンッ!

 

 クロノさんが左拳を壁に叩きつける。コワイ! 思わず、ヒュンッとなってしまいそうになる。

 

「夢で任務は果たせない。……夢は、いつか覚める。子供は、辛い現実に圧し潰されるッ!」

「そうはならない、と信じています」

 

「何故だ!?」

「ここに、頼りになるみなさんがいますから」

 

「な…っ!?」

 

 ドヤ顔で言ってのける。……うん、ここまで引っ張っておいて丸投げなんだ。すまない。

 自分が最低のクズ野郎というのは重々承知しているので、どうか石を投げず見逃して欲しい。

 あ、クロノさん呆気にとられて固まっちゃったよ。すまぬ、すまぬ… 大根役者ですまぬ。

 

「フフッ… あなたの負けよ、クロノ」

「もしかして今まで一人で生きてきたつもり? それって冷たくないかな、クロノ君」

 

「子供の夢を支える。任務もこなす。両方やらなくちゃならないのが管理局の辛いところだな」

「ま、大人である以上… 多少はね?」

 

「母さん、エイミィ、アレックス、ランディ… みんな」

 

 けれど、丸投げすればここにおられる一流のハリウッド・スターのみなさんが拾ってくれる。

 信じてた! ありがとうリンディさん! エイミィさん! アレックスさん! ランディさん!

 

「それに、ほら… 彼女たちの方も終わったみたいよ。色々と言いたいことはあるけど、ね?」

 

 リンディさんの言葉に振り返り、モニターを見る。

 そこには金髪少女に合流し、なんか不思議な合体攻撃を披露する白い少女の様子が映っていた。

 よくわからないけど、なんかすごいなとおもった(小並感)。

 

「もう一度あの黒い魔導師の少女に対話を呼びかけます。引き続き、警戒を厳にせよ!」

「了解!」

 

 リンディさんの指令に対して、みなさんが唱和を以って応える。一糸乱れぬとはこの事か。

 なんか良く分からないけれどさっきまでの件は解決したみたいだ。良かった良かった。

 ……おっと、話し込んでる間にもうこんな時間か。オレも、もうそろそろ道場に行かないとね。

 

「それじゃ、そろそろ行きます」

「……桜庭くん?」

 

 リンディさんに軽く挨拶をして、出口となっている床に足を踏み入れる。

 この床の上に乗ると、なんか知らない間に外に出ているんだよね。

 ハリウッドの超技術って凄いと思った。……ハリウッドの超技術でいいんだよね? これ。

 

「あ、待って。まだユーノ君が設定した座標のまま」

 

 ――ブォン…

 

 エイミィさんが止めてくれるも時すでに遅し。

 何故かオレは奇妙な浮遊感とともに、大海原の上空に踊り出ていた。え? なんぞ、これ?

 いずれモブとして適当な場面でアッサリと死ぬ役が与えられるのだろうと思ってたけど!

 

 事前に心の準備とかさせてくれませんかね、監督!? いやぁああああ! 死にたくない!!

 せめて悠人少年が戻ってくるなら涙を飲もう… でもこれ、100%犬死にじゃねぇか!?

 

「うわぁああああああああああ!?」

 

 ――ドンッ!

 

「え… きゃっ!」

 

 パニックに陥ったオレは暴れ回り、落下線上にいた白い少女を蹴飛ばしてしまう。

 しまった! あの白い少女に縋り付けばよかった! なんて下らない凡ミスしてんだオレは!

 セクハラだ? 緊急避難って言葉もある! ……ちゃんと紐ついてるよね? 安全だよね?

 

 あばばばばばばばば! 脳裏に浮かぶろくでもない思い出の数々。これは走馬灯じゃないはず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ピシャアアアアアンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、何かが光って… ビリッと来た。

 

「あ… れ…」

 

 身体から力が抜けていく。

 

 後はもう、落ちるに任せるのみ。

 

 なんか、焦げ臭い匂いがする。

 

 どこから匂ってくるんだろうか、これは。

 

 あぁ… 何故か無性に焼き肉が食べたくなってきた。

 

 

 そこに、ぐいっと持ちあげられる感覚。

 

「しっかり… しっかりしてください! こんな、こんな… いやぁああああああ!」

 

 この声は… 金髪少女だったかな?

 

 そういえば、親御さんとは上手くいったのだろうか。

 

 うん、オレの見当違いのアドバイスで迷惑かけてたら…

 

 なんか、申し訳ないからね。

 

 

「……すま、ない」

 

 

 そんな、まとまらない思考を最後に…

 

 オレの意識は、闇に、呑まれた。





 申し訳ありません。恐らく最後のあたりは意味不明になっていると思います。

 これを補完する別視点を近日中に仕上げたく思います。(顔文字の人も出るよ! タブンネ!)

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