オレを踏み台にしたぁ!?   作:(╹◡╹)

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車椅子の少女は可哀想?

 私には少し変わった知り合いがいます。

 

 物静かなように見えておしゃべりで。

 真面目なように見えてお調子者で。

 捻くれてるように見えて根っこは素直で。

 

 こっちの言葉に飾らぬ反応を返してくれる。そしてありのままの言葉を返してくれる。

 隠してるつもりでも、いちいち盛大にキョドったり目が泳いでたりするその反応が面白くて。

 悪いこととは思いつつも、こちらもついつい悪ノリして仕舞いにはからかってしまう。

 

「お? ゆーとんやん」

 

 突拍子もない我儘を言ってみたりほんのり無茶振りをしてみたり。

 何気ない軽口を応酬するだけの、そんな、きっとありふれている筈の会話。

 それは私が、「可哀想な車椅子の女の子」から解放されるひと時で。

 

「これからもはやてちゃんの友達として、色々気を付けてあげてくれるかな?」

 

 壊れる時はこんなにアッサリしたもんかな… と思いつつ、石田先生の言葉を聞いていた。

 

 ……分かってる。石田先生は何も悪くない。私のことをいつも気遣ってくれるええ先生や。

 私が「可哀想な車椅子の女の子」であるのは紛れもない事実で、今後も付いて回るもの。

 それやったら早めに現実と折り合いをつけて、キチンと向き合っていくべきやとも思うしな。

 

 付き合い方がちょっと変わってしまうだけ。縁が切れるわけでもなし。……そう思っとこ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「石田先生… 残念ですが、それは約束できかねますね」

 

 ……え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 信じられん言葉やった。

 今までがそうやったように、これでゆーとんとも壁ができるもんとばかり思ってたから。

 

 せやけど、ゆーとんはその逆を真っ直ぐ突っ走っていった。

 石田先生に向かって… 日頃私とどんなことをしているのか、どんな会話をしているのか。

 それらを笑顔で語っていった。とても楽しそうに。とても嬉しそうに。

 

 そして、褒めてくれたんや。私自身の良い所を。

 「身体が不自由なのに頑張ってるね」とか「ご両親がいないのに偉いね」とかやなしに。

 最後に、私とは互いに気を遣わない対等の関係なんやって石田先生に伝えてくれた。

 

 

 

 ……なんてことはない。

 誰よりも一番相手のことを偏見の目で見とったのは他でもない私自身だった、ってことやん。

 

 恥ずかしいなぁ… ゆーとんのことを見縊(みくび)っていた自分自身が。

 

「ありがとう」

 

 その言葉が素直に言えなくて、ついつい関係ないことを口走って別れてしまう。

 ……呆れられたかな?

 

 

 

 そして今日。

 

『あ、拙者拙者拙者~。今、スーパーに向かってるんだけど大至急…』

「拙者なんて知り合いはおらん」

 

 つい切ってしもた。

 流石ゆーとん… 自分が呆れる前にこちらを呆れさせるなんて、狙っても中々出来ん芸当や。

 

 ………。

 

「ったく。しゃあないな…」

 

 なんの用件かは分からんけど、いつものスーパーに来てくれっちゅうことらしい。

 苦笑いを浮かべつつ外出の準備を整える。

 

 

 

 

 

 

 

 私にはかなり変わった知り合いがいます。

 

 物静かなように見えておしゃべりで。

 真面目なように見えてお調子者で。

 捻くれてるように見えて根っこは素直で。

 

 冷たいように見えてとても優しくて。

 ちょっぴり缶コーヒー臭くて。

 でも、私にとって最高の… そんな友達(ツレ)が。





 生存報告代わりに。短くて申し訳ありません。
 時間が出来次第、加筆に取り掛かりたいと思います。

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