オレを踏み台にしたぁ!? 作:(╹◡╹)
もし今回のお話が不愉快に感じられます方がいらっしゃったら申し訳ありません。
「――この前みんなに調べてもらったとおり、この街には沢山のお店がありますね」
オレは今、席に腰掛けながら新たに担任となった美人の女性教師の言葉に耳を傾けている。
そう… オレはついに小学3年生へと進級したのだ。待望のクラス替えはなかった。
進学校のシステムというモノを甘く見ていた。なんだよ、それ… なんなんだよ… 畜生!
つまりここは超進学クラスであり、名無しの少年や三人娘は勿論のこと、ゴリくんや眼鏡くんも勉強できる系小学生だったのだ。オイやめろよ。英語ペラペラと喋るなよ。赤木キャプテンかよ。
ココは違う、オレの知る小学校の学習カリキュラムとは違う。必死で勉強せねば(使命感)。
「みんなは将来どんなお仕事に就きたいですか? 今から考えてみるのもいいかもしれませんね」
ていうか“この前”っていつだよ。明らかにオレが認識してない世界線のコトと思われるぜ。
このままじゃ悠人少年の(主に成績とかそういう方面の)“将来”がヤバイ。ヤバすぎる。
今後は愛想も振りまいて内申点の向上も狙っていかねば。先生とのコミュニケーションが鍵だ!
「じゃあ、ここでみなさんの将来の夢を聞かせてもらいましょう」
当てられた生徒たちは元気良く答える。弁護士、官僚、会社経営者… オイ、小学生ども?
ソコはホラ、仮面ラ○ダーとかウルトラ○ンって答える流れじゃないかな? そうだろ?
神様転生してチート能力貰って異世界で大活躍とか… あ、それは悠人少年の妄想ノートか。
「では… はい、桜庭くん」
え? ちょ、ま… オレぇ!? ま、まさか当てられてるとは思ってなかったぜ。あばばば。
だが待て、コレは降って湧いたチャンス。コレを乗り越えればボッチ解消&内申点上昇!
よし… 正直に答えなくては。そう、近い将来この身体は悠人少年に返す訳で、そうなれば…
「……成仏?」
――ざわ… ざわ…
「ず、随分と… その、将来過ぎる先のことを見据えているのね…」
アカン(白目)。
ちょっと待った。今のナシ。おいぃ、珍獣見るみたいな目で見るのやめてくれませんかねェ?
ひっひっふー… ひっひっふー… ラマーズは生命の呼吸法。オレに勇気を与えてくれる。
「無論、今のは軽い冗談です」
「そ、そうよね? ……先生、ビックリしちゃったわ」
「えぇ、申し訳ない。改めて述べても?」
「えぇ! それじゃ、改めてお願いね? 桜庭くん」
よし、オレの『□仕切り直し(偽):E』が辛くも発動した。だがチャンスはこの一度きり。
もはや間違いは許されない… 悠人少年になりきって答えるんだ。彼ならばどう答えるか!?
「オレは… 全てを望みます」
――シーン…
クラスが沈黙に包まれる。よしよし、今度は間違えてないみたいだな。オッケーオッケー。
「安息に満ちた日々。恐れるモノのない生活。それらは戦うコトによってしか得られない」
赤い第五人形も言ってた。生きることは戦いだって。そう、
穏やかな性格の悠人少年ならばそれらを乗り越え、安息の日々を目指すことだろう。うん。
それらは人にとって“全て”と言えるほどに満ち足りた生活になるんじゃないかな? と思う。
「よって、オレはココに宣言する。オレはオレの持てる全ての力を以って其れに挑む、と」
まぁ、オレじゃ力不足かもしれんけれどオレなりに全力を尽くして頑張るつもりだぜ?
フフッ… 一時的に身体を譲ってくれてる悠人少年に恥をかかせるわけにゃいかないからな。
落第とか、落ちこぼれとか、そういうのの恐怖とは無縁の生活に一刻も早く到達したいぜ。
「あらゆる困難や障害は、足を止める理由にはならない。力を以ってコレを排除する所存」
もちろん、困難や障害に当たっても頑張って乗り越えていきますよ! 学習力や勉強力でね!
え? 運動力? ……まぁ、それはおいおい(目線そらし)。
う~ん… 将来の夢を語るって言うよりも、なんか抱負とか所信表明っぽくなっちゃったかな?
「……以上です。先生並びに級友諸君らには清聴に対し深い感謝の程を」
お辞儀を一つして着席。弁護士やら官僚やらを目指す彼らには退屈過ぎる平凡な夢だろうな。
お、ゴリくんと眼鏡くんが頷いてくれてる。おー、分かってくれたか2人共。嬉しいなぁ。
そうだよな、勉強できると言っても庶民派も混ざってるよな。心の距離が狭まった気がするぜ。
その後、何故か妙に静かなままその日の授業は続けられた。
オレの余りに地に足の着いた将来設計に当てられて、みんなも自分を見直すコトになったか?
気にするなって。小学生らしくはないと思うが、大きな夢を語るのは子供の特権だぜ?
………
……
…
そして今、オレはスーパーで買ってきた鶏もも肉を手に台所と向かい合っている。
何故かような姿を晒しているのか、そこから説明せねばなるまい。
コトの切欠はやはり八神である。ヤツがオレの自炊スキルを聞き出し、鼻で笑ったのだ。
電気炊飯器のご飯と即席みそ汁で召し上がって何が悪い! 一人用だとこんなモンだろうが!
オレだって味噌汁くらいは(辛うじて)作れるわい! ただ少人数作るのが面倒くさいだけだ!
……と、無口クールに反論するオレにヤツは言った。「ほな、おかずのレパートリーは?」と。
野菜炒め、焼き肉、パスタ… 魚は捌くの苦手だけどなんとか焼けます… と小声で回答。
そしたら鼻で笑われた。そんで「あんな、パスタはおかずやないで?」と突っ込まれた。
どう思うよ、諸君! このオレが出来ない子みたいな扱い! コイツはめちゃ許せんよなぁ~?
というわけでオレは本日、生まれて初めて鶏の唐揚げに挑戦するのだ。大丈夫、出来るさ。
オレは巷でも「中の人はやればできる子なんだけど…」と絶賛評判中じゃないか!
今後感想でも「コイツは出来る厨二」「やるじゃん厨二」と言われる筈。いや、中二ちゃうし。
とりあえず、使われた形跡のないでかい中華鍋を取り出して… 目一杯サラダ油を注ごう。
で、火をかけておこう。よく分からんけれど、油が煮立つまでかければいいよね?
なんか男塾とかでよく煮立った油が出てくるし、中国じゃありふれた光景なんだと解釈する。
鶏もも肉は… えーと、確かビニール袋に入れて粉と一緒に揉むんだっけ?
……ふむ、小麦粉と片栗粉が出てきたな。
さて、どちらを選ぶべきか? よし、小麦粉! キミに決めた! ってあちっ! あちっ!?
恐る恐る背後を振り返ると… 紅蓮の世界が広がっていた。
――ボォオオオオオオオオ…
あばばばばばばばばばばばば! なんか中華鍋から火柱立ってますよ!?
どうしてこうなった! どうしてこうなった! 火事じゃん、コレめっちゃ火事じゃん!?
どうしようどうしよう。待て慌てるな冷静になれ… って出来るわけーねだろがボケェ!
えーと、えーと… とりあえずマヨネーズを投げてみる。
――パァンッ!!
ぎゃあああああああああああ! 破裂して飛び散って余計大惨事になった気がするぅ!?
ど、どうしようどうしよう… どうすれば! あ、そうだ。パソコン! 知○袋で!
ダメだ。つい先日未開封メールがついに8000通を超え、まともに動作しなくなってたんだ。
スマホは!? ぎゃああああああああああ! キッチンの上に置いてるぅうううううう!?
と、取りに行くことなんざ出来ねぇ… もうこうなったら消防車を呼ぶしかないのか!?
遠くにいる悠人少年のご両親に迷惑をかけてしまうしかないのか? 己の無力が恨めしいッ!!
『聞こえますか… 僕の声が…』
そんな時だった… 救いの電波が聞こえてきたのは。
続きは、なのはさん視点からのお話となります。事情により一挙二話掲載となります。
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