オレを踏み台にしたぁ!? 作:(╹◡╹)
気付けば知らない天井を見つめていた。
どうやらつい先程まで眠っていたらしい。
清潔そうなベッドから身を起こし、周囲の様子を確かめる。
大きめの窓から差し込む柔らかな日差し。
子供用と思われる学習机の上にはノートタイプのパソコンと本が一冊。
部屋の奥手には洋服ダンスとガラガラの本棚。
その隣には姿見と思しき鏡が立てかけられている。
いかにも小洒落たワンルームといった風情だ。
適度に整理されていて、快適さと清潔さを訴えてくる。素晴らしい室内環境だ。
……オレに全く見覚えのない部屋だという一点を除けば。
少しでも情報を、と窓から景色を眺めてみてもその認識は変わることはなかった。
元々記憶力に自信がある方でもないが、全く覚えのない景色が広がっている。
周囲の様子からしてここは住宅街の一戸建ての家らしい、ということは判明したが。
寝ている間に一晩でご近所ごとマンション内外の間取りを改築しました… とか?
……いやいや、どこのファンタジーだよ。
幾ら近所付き合い皆無だとしても、管理組合から連絡の一つや二つくらいあるだろう。
まずは落ち着いて情報を整理しよう。
オレはもともと此処とは似ても似つかぬマンションに住んでいて、それから…
「………?」
どうにも記憶が曖昧だな。部分部分で断片的というか、名前すら思い出せない有り様だ。
困ったな。起き抜けで寝ぼけているのかもしれない。
というか、落ち着いている場合じゃなかったな。
この部屋の本当の主やその家族と鉢合わせてしまったら厄介なことになるだろう。
目が覚めたら此処にいたんです。自分も何が何だか分かりません。
なんてことを言っても通じるかどうか。
……オレだったら間違いなく警察に電話するな。逆上されないように宥めつつだけど。
音を立てぬようにベッドから降り、そっと移動する。
どうか家の中に誰もいませんように。いても気付きませんように。
抜き足差し足で移動する。……しかし、でかい間取りの部屋だな。
部屋も広い感じではあるのだが天井が高いというか、全てがビッグサイズというか。
そして扉に手を掛けようとして、姿見にチラッと写った自分の姿を見て唖然とした。
そこには信じられない光景が広がっていた。
陽の光に煌めく銀髪に、赤と青のオッドアイ。そして不自然なまでに整った美貌。
そんな10歳前後くらいの少年が其処に写っていたのだ。
「なん… だと…」
掠れながらも絞り出したその声は、変声期前の少年特有の高さを多分に含んでいた。
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