フルメタルWパニック!!   作:K-15

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新年を向かえました。
この作品も投稿してから1年以上が経過しました。
いつも読んでくれる皆様、本当にありがとうございます。


第38話 砕け散る石弓

ECSで姿を隠す敵に宗介は殺気を感じ取るしか方法はない。

校舎の屋上、こんな目立つ場所で立ち往生して居ては的になるだけ。

ペダルを踏み込みアーバレストは跳躍した。

アスファルトに着地、風を切りながら走り抜ける。

前方、右、左。

敵の姿はまだ見えず攻撃も仕掛けて来なかった。

 

(どこだ……何処に居る?)

 

止まる事なく走り続ける。

数で不利な状況で挟み込まれたら一巻の終わりだ。

ラムダドライバの使い方は敵であるリーの方が上手い事はわかって居る。

また真正面から戦う事になればラムダドライバの力をフルに使わなくては勝てないかもしれない。

そうなればまだ避難も充分に出来てない街の人達は大惨事に見舞われる。

戦争に巻き込まれれば人は死ぬ。

心を切り離し、割り切らなければ兵士は戦えないが、それでも人として被害は少なくさせたかった。

進む先、空間が一瞬揺らぐ。

 

「っ!!」

 

息を呑む。

黒いエリゴールは姿を表すと同時に超大型単分子カッターを一閃して来る。

アーバレストは前面にラムダドライバで防壁を形成するが、力場を切っ先に集中しての攻撃はそれを難なく斬り裂く。

逃げる事は出来ない。

右手の単分子カッターでどうにか防ぐ。

 

『言った筈だ。装備が重すぎるとな』

 

「まだだ!!」

 

互いの単分子カッターが交わり激しい火花と眩い光が溢れ出す。

僅かな硬直。

動かなければ次こそは斬られる。

宗介はトリガーを引き、サイドスカートのハンドグレネードを2発発射した。

照準も定まってないハンドグレネードはエリゴールの後方で地面に直撃し大きな爆発を起こす。

炎と衝撃が背部から襲い敵の姿勢が崩れた。

 

「ここしかない。アル、全弾発射だ!!」

 

『了解。派手に行きましょう』

 

距離を取る宗介。

頭部機関砲に左腕に抱えたライフルと両足のミサイルランチャーを惜しむ事なくエリゴールに撃ち尽くす。

激しく撒き散る薬莢とマズルフラッシュ。

銃声はいつまでも鳴り続け両足に装備されたミサイルランチャーが煙を吐きながら発射された。

片足に6発づつ、計12発のミサイルごとエリゴールに叩き込む。

 

「ダメージは通らなくても良い。機体が軽くなれば」

 

エリゴールは単分子カッターを地面へ突き刺し支えにすると左手を前に出し広範囲の防壁を形成した。

必要最小限の範囲に力場を集中させるリーの戦闘スタイルからすれば広範囲なだけで他の兵ならば普通なくらいの範囲。

機体前面を覆う防壁は降り注ぐ弾丸とミサイルを防ぎきる。

ミサイルの直撃に爆発が起こり一時的に視界が悪くなるが装甲にはキズひとつ付かない。

 

『見た目は派手だが、俺以外にも居るんだぞ』

 

「来るか」

 

撃ち尽くしたミサイルランチャーを切り離し周囲を警戒する宗介。

レーダーにはまだ他の機体の反応はない。

ライフルのトリガーはフルオートで発射したまま。

瞬間、ライフルが狙撃された。

 

「しまった!?」

 

充填された弾が誘爆を起こしてアーバレストの左腕ごと持って行く。

肘かた先が失くなりズタボロに引き裂かれたケーブル類が顔を出す。

直ぐ様宗介はアーバレストを移動させた。

 

(さっきの攻撃でスナイパーのもおおよその位置は掴めた。ビルを盾にすれば動くしかない筈だ。その間に目の前の敵を仕留めるしかない)

 

方角を確認しながら走る。

少しの時間ではあるが1対1に持ち込めなければ一方的にやられてしまう。

リーのエリゴールも単分子カッターを握りアーバレストを追い掛ける。

代償は大きかったが装備を減らして軽くなったお陰で追い付かれる事もなくなった。

 

「残った武器は?」

 

『単分子カッター。頭部機関砲、残弾50。グレネードランチャー6発。ボクサー57ミリ散弾砲です』

 

「千鳥の事もある。時間は掛けられない」

 

後ろから追い掛けて来るリーの黒いエリゴール。

宗介がどのように対策するのか模索している中、幾つ目かのビルを通りすぎようとした瞬間。

 

『ここで終わりよ!!』

 

「なっ!?」

 

ビルの中から灰まみれのエリゴールが飛び出して来た。

コンクリートをバラバラに撒き散らし、マニピュレーターに単分子カッターを逆手に握りアーバレストに右側から組み付いて来る。

突然の襲撃に握ってた単分子カッターを落としてしまう。

 

「こんな所に!? そうか、ジャミングか」

 

『今更気付いた所でもう遅い!!』

 

振り下ろされる切っ先。

胸部に突き刺さる寸前で宗介の意思に反応してラムダドライバが防壁を作り出し寸前の所で止めた。

激しい衝撃と力場同士が干渉してまた強い光が発生する。

 

『コイツ、しぶとい!!』

 

『サビーナ、そのまま押さえ付けろ』

 

単分子カッターを振り上げたリーのエリゴールが迫る。

組付かれたせいで満足に動く事も出来ない今、脱出しなければ防壁を貫かれて終わりだ。

走るエリゴールの速度は早い。

20メートル、10メートル。

もう目と鼻の先。

 

「こんな所で死ねるかぁぁぁ!!」

 

宗介は右マニピュレーターを力任せに白いエリゴールの腹部へ叩き込む。

 

『なにっ!? ぐっ!!』

 

エリゴールは再び出てきたビルの中へ押し戻されてしまう。

鉄柱をなぎ倒しコンクリート片に埋もれる。

前を見据える宗介の眼前にはもう、ラムダドライバの力場でコーティングされた切っ先が。

 

「お前らを相手にする暇はない!!」

 

そのままマニピュレーターで単分子カッターを殴り眩い閃光が辺りを照らす。

 

「邪魔だ、どけぇぇぇ!!」

 

『コイツは!?』

 

黒のエリゴールが力負けして背後に吹き飛ばされた。

超大型単分子カッターは手放してしまい空中でクルクルと回転した後に駐車されて居たワゴン車に突き刺さる。

機体は制御を受け付けずきりもみしながら地面にぶつかった。

こすれ合う装甲から飛び散る火花。

AIがうるさく被害状況を知らせる。

激しい振動がコクピットのパイロットを襲いリーは歯を食いしばり何とかそれに耐える。

 

『ぐぅぅぅっ』

 

歴戦の戦士でもダメージを受ければ怯みもする。

数秒での隙が出来れば充分。

なぜなら宗介も歴戦の兵士だから。

腰部からボクサー57ミリ散弾砲を掴み目標へ銃口を向ける。

あとはトリガーを引くだけ。

そうすれば弾丸を媒体としてラムダドライバの力場が発射され敵機を撃ち抜く。

操縦桿を握る人差し指に力を込める。

 

『言った筈です。ここで終わりだと』

 

ビルの影から現れたサビーナのエリゴールが大型ガトリング砲を構えてアーバレストを狙う。

ここで撃てば敵を仕留められるがこちらもやられる。

トリガーを引く一瞬すらも惜しい。

アーバレストは前に向かって飛び退いた。

次にはラムダドライバの力場を乗せた大口径の弾丸が発射されアスファルトを砕き土を抉る。

宗介は白のエリゴールに銃口を向けて発射。

 

「ダメか。アル、右肩のグレネードランチャーだ」

 

『了解です』

 

寸前の所で避けられてしまい光の弾はビルの中に消える。

度重なる損害に耐え切れなくなったビルが地面へ飲み込まれるかのように崩壊し、激しい振動と煙を充満させる。

ジャンプするアーバレスト。

左腕がなくなり次の弾を装填出来ない。

最初の1発だけ。

もう使えない武器を投げ捨て右肩から切り離したグレネードランチャーを手に取り白いエリゴールに発射。

着弾。

大きな爆発が生まれる。

それでも敵の反応は依然健在。

着地の体制に入りつつもう1発。

 

『軍曹殿、照準がブレてます』

 

「相手のジャミングはここまで出来るのか!?」

 

弾は敵が通り過ぎた後の場所へ着弾した。

勿論、ダメージは通ってない。

迫る地面。

膝をバネにして衝撃を吸収し、すぐさま走る。

止まれば死ぬ。

土煙に視界は阻まれビルに隠れるサビーナの機体の反応はジャミングでレーダーに映らない。

 

『私には見える。貴様の位置が、向かう先が。砕け散れ!!』

 

大型ガトリング砲の弾がビルを貫きアーバレストに襲い掛かる。

 

「くっ!! こうも一方的な戦いはマズイ」

 

『アノような欠陥品に負けるのは我慢なりません』

 

「AIのお前がそう言う事を言うのか」

 

『機体性能ではこちらが上です。それでも負けると言う事は――』

 

「俺が下手だと言いたいのか?」

 

『いいえ。あの3機は部分的に見た性能だけは強力です。他と比べても特化してます』

 

サビーナは相手の目を潰す。

目を潰した上でレーダーの範囲外からカスパーの超長距離狙撃が敵を狙い打つ。

ラムダドライバの防壁を貫けるリーの存在は意識せざるを得ない。

強力な大型ガトリング砲を装備して後方支援に廻るサビーナを落とすにはリーを突破しなくてはならないし、カスパーを見つけるにはサビーナを落とさなくては困難だ。

リーと1対1で戦うにもラムダドライバの使い方を熟知してるせいで射撃戦では倒す事は出来ない。

接近戦でも相手に分がある。

その上、他の2機を意識しながら戦うのはかなりの負担だ。

 

『軍曹殿はそのトライアングルの中心に居ます』

 

「なら1機落とせば!!」

 

防壁を生成しながらガトリング砲の弾を受け流す。

まずは目であるサビーナの機体を倒せば戦況はガラリと変化する。

 

「このまま突っ込むぞ」

 

『了解』

 

レーダーにサビーナ機の反応はないが砲撃の中心地点には必ず存在する。

アーバレストは防壁を盾に正面から突っ込んだ。

黒煙や土煙で視界も最悪だが今は目の前の敵に組み付くしか手段がない。

絶え間なくぶつかる弾丸。

ダメージはないが直撃すれば致命傷、撃破される発射線上に突っ込むのは心臓に悪い。

それでも操縦桿を強く握りペダルを強く踏み込んだ。

煙を抜けた先。

目の前には敵影。

 

『真正面から突っ込んで来る人がありますか!?』

 

「見つけた……ここしかない」

 

握ったグレネードランチャーの銃口をエリゴールの胸部装甲に叩き付ける。

 

『させない!!』

 

光と光がぶつかり合う。

衝撃波と閃光が両機に迫り1つ目とツインアイが睨みを利かす。

寸前で受け止められてしまうがパワーならアーバレストの上。

防壁を突破し胸部を強く打たれたエリゴールが後ろに吹き飛ぶ。

ビルに激突しコンクリートが砕けてまた灰色の煙が舞い上がる。

激しく揺れるコクピットでサビーナを歯を食いしばり衝撃に耐えた。

唇を切り白い歯が赤く滲み一筋の線が顎に流れる。

メガネの奥の瞳に映るのはサビーナに銃口を向けるアーバレスト。

 

「これなら!!」

 

『やらせはせん!!』

 

「後ろだと!?」

 

復帰したリーのエリゴールが背後から襲う。

 

(もう1度接近するチャンスはない。撃つしかない!!)

 

振り上げられる単分子カッターを無視してグレネードランチャーのトリガーを引いた。

ラムダドライバの力場を乗せた弾が白いエリゴールに発射される。

瞬間。

 

「外した……うわぁぁっ!!」

 

弾がエリゴールに直撃する事はなかった。

発射されたその時、カスパーの狙撃がグレネードランチャーを撃ち抜き爆発が起こりマニピュレーターが破壊される。

立て続けに背後からリーの単分子カッターに斬り付けられた。

大きく振り上げて袈裟斬り。

背負って居た左側のグレネードランチャーのマガジンが斬られる。

 

『パージ』

 

瞬時に対応するアルが独断で切り離すが装填されら弾に誘爆してしまう。

更にまた爆発。

姿勢を崩して前のめりに倒れた。

 

「ぐぅっ!!」

 

もう両手は使えない。

残された武器も頭部機関砲だけ。

反転して残弾も少ない機関砲を立ち塞がる黒いエリゴールに目掛け無造作に発射。

だが相手はラムダドライバでコレを簡単に防いで来る。

そしてまた、長距離からの狙撃。

反応すら追い付かず頭部を撃ち抜かれた。

 

「ダメなのか……」

 

頭部が失くなり力なく倒れるアーバレスト。

コクピットではアルが機体の損害状況を知らせて来る。

 

『メインカメラの情報遮断、出力低下。放熱ファンも破損しました。ラムダドライバをこれ以上稼働させるのは困難です』

 

「まだ機体は動く。たかがカメラをやられただけだ」

 

『この状況下で勝つ確率は天文学的数値です。逃げる事も出来ません』

 

「まだ終われない!! 俺は千鳥を……みんなを……」

 

武器も使えない。

頭部を破壊されて前すら見えなくなった。

動く事すらままならないアーバレストにサビーナはトドメを刺すべく大型ガトリング砲の銃口を胸部へ叩き付ける。

 

「ぐぅっ!!」

 

ラムダドライバを展開出来ないアーバレストの胸部に固い銃身がえぐり込む。

コクピットへダイレクトに振動が伝わって来た。

フレームがきしみ、無理やり押し付けられる装甲は次第に変形して行き内部部品が損傷する。

トリガーを引かれれば機体は数秒でスクラップに変わってしまう。

ラムダドライバを使えばネジ1本残さず消滅させる事も可能だ。

 

『ようやく捕まえましたよ。ミスリルの機体がここまで出来るのは想定外でしたが、レナード様の命令は確実に実行します』

 

エリゴールは今まさに、アーバレストを、宗介を殺そうとした。

 

///

 

「ウソよ……こんなのウソよ!!」

 

『ウソじゃない。キミにだって良くわかってる筈だ。このまま戦えば彼は死ぬ。そうならない為にはどうするか? 僕と一緒に来るんだ。そうすれば彼を殺さないであげるよ』

 

TAROSを通して未来を見たかなめ。

3機のエリゴールに為す術もなくやられてしまうアーバレスト。

そして死の淵に立たされた宗介。

かなめにはもう、選択する余地などなかった。

ボン太くんのパワードスーツを脱ぎ捨て、自身を見上げるベリアルを見据える。

自分が生き残る為ではなく、彼の為に。

震える体を抑え込み、鋭い視線で睨み付けて、声高々と叫ぶ。

 

「アタシの負けよ!! アタシがアンタに付いて行く。そうすれば宗介を助けてくれるのよね!!」

 

『あぁ、約束する』

 

「なら鎖で縛り付けるなりしなさいよ。不愉快だけど付いて行くわよ!!」

 

『フフフッ、強情な所は変わらないね。そうでないとキミを好きにはならない』

 

「アンタに言われた所で嬉しくも何ともないわ」

 

『なら、行くとしよう』

 

地上に降り立つベリアルは膝を曲げるとマニピュレーターをかなめの前に差し出す。

かなめは意図を理解すると巨大な手の平の上に乗り移り親指に当たる部分を両腕で掴んで支えにする。

レナードはマニピュレーターを胸元にまで移動させ、ベリアルを再び浮遊させた。

コクピットの中でコンソールを叩き、戦場のサビーナへ通信を繋ぐ。

 

『サビーナ、こちらの目的は達成した。ここにはもう用はない』

 

『了解しました』

 

簡潔に応えるサビーナの返事を聞きレナードを通信を切る。

そして自らの目的達成が大詰めまで来た事に自然と笑みが溢れた。

 

『ふふふっ、これで世界はあるべき姿に……』

 

唐突にレーダーに新たな反応。

視線を向けて確認したソレに型式番号は登録されてない。

 

『これは……ガンダム』

 

バード形態のウイングガンダムがベリアルの上空を高速で通り過ぎて行く。

レナードが見上げた時には薄汚れた装甲のトリコロールカラーが少しばかり見えただけ。

方角から見て、向かう先はアーバレストが居る地点。

 

『キミとももうすぐお別れだね。僕が求める世界にガンダムなんて存在は必要ない』

 

///

 

コクピットで操縦桿を握るヒイロは全速力でアーバレストの元へ向かう。

風間達4人はようやく動き出した警察と自衛隊に任せた。

戦闘で滅茶苦茶になった街の有り様を見ながら、レーダーに映る反応に向かって突き進む。

右足でペダルを思い切り踏み込み、両翼のメインスラスターから青白い炎が噴射され速度が加速する。

それでも蓄積した損傷のせいで依然程早くは動けない。

空に煙が昇る街の中心部に3機のASの反応。

 

「アレか……」

 

戦闘不能に陥るアーバレストと白と黒の敵AS。

ヒイロは右手を操縦桿から天井のレバーを移し替え思い切り押し倒す。

バード形態の機体が変形し、瞬きもしない内に人型へ姿を変える。

バスターライフルを腰へマウントさせシールド裏からビームサーベルを引き抜く。

 

「敵機確認、攻撃開始」

 

黒いASに狙いを定め上空から急降下する。

両翼が推進力を生み出し機体の速度を上げる中で、射程外からの攻撃がガンダムを襲う。

レーダーが反応して警告音が響いた時にはもう遅く左腕のシールドに直撃した。

 

「くっ!! まだもう1機居る」

 

『情報通り無茶苦茶な装甲をしてるな。ラムダドライバの攻撃を耐えたか。サビーナ、上から羽根付きが来るぞ』

 

『羽根付き? 了解しました。リー、トドメは任せます』

 

カスパーのエリゴールから放たれた一撃がガンダムに直撃する。

機体にダメージはないが耐久限度を越えたシールドがバラバラに砕け散った。

衝撃でバランスを崩して落下しそうになるがスラスターで機体を制御して何とか踏み止まる。

けれども奇襲を仕掛けるつもりが敵にバレてしまい、サビーナが大型ガトリング砲の銃口を空に向けラムダドライバの力場を発生させてガンダム目掛けて容赦なく砲撃して来た。

ガンダムとは言えラムダドライバの攻撃をこれ以上受けるのは危険だ。

ヒイロは空を滑空して砲撃を避けながら、外部音声でアーバレストに乗る宗介に呼び掛ける。

 

「宗介、聞こえて居るならここまで来い」

 

『ヒイロ・ユイ……アル、あと1回だけ使えるか?』

 

『試してみます』

 

『行くしかない!!』

 

仰向けになるアーバレストは最後の力を振り絞り、ラムダドライバの力場を生成して飛び上がった。

 

『やらせはせん!!』

 

リーが振るう超大型単分子カッターが右膝から先を切断してしまうが飛び上がる事には成功した。

激しく損傷してるがラムダドライバのお陰で通常よりも遥かに高く跳躍したアーバレストはマニピュレーターの失くなった右腕を伸ばす。

ガンダムもマニピュレーターを伸ばして腕を受け止めるとメインスラスターを全開にし大空に羽ばたく。

見る見る内に小さく遠くなる街を見つめながら、宗介は独り言のように小さな声でヒイロに話し掛けた。

 

『また助けられたな』

 

「気にするな。俺は気にしない』

 

『アーバレストもこの有り様。千鳥は……』

 

「無理だ、諦めろ。だが死んではないだろう。敵の目的はかなめだ」

 

『そうか……クソッ』

 

悔しさに顔を歪ませる宗介。

戦場となった東京で、サビーナはアーバレストを仕留め損なった事に悪態をつく。

 

『あそこまで追い詰めて置きながら!! これではレナード様に何と報告すれば』

 

『気にする必要はないよサビーナ』

 

彼女の声に割り込んで来るのはレナード。

ベリアルはマニピュレーターにかなめを抱えたままサビーナの元まで来た。

 

『レナード様!?』

 

『さっきも言ったけど目的は達成した。ミスリルの本拠地も壊滅。彼らが生き残った所で些細な事さ。計画を進行する時が来た。行こう、次はヤムスク11だ』

 

『わかりました』

 

レナードが秘密裏に進めて居た計画。

ミスリルが壊滅した今、これを止められるモノは誰も居ない。




ストーリーもいよいよ終盤。
長いこの作品ですが4月くらいには終わらせたい。

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