フルメタルWパニック!!   作:K-15

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今回、ヒイロは前半だけしか登場しません。


第24話 恐怖!! 迫り来る圧迫感

ガンダム。

その名前を聞いてテッサは表情を険しくする。

今まではミスリル側で『羽付き』と命名して読んで居たが、ここでようやく相手の本性に近づいた。

 

「ガンダム。それがあの機体の名称ですか?」

 

「そうだ。アレはアームスレイブとは決定的に違う。既存の兵器では歯が立たない」

 

「こちらでもあの機体の性能はある程度把握してます。強靭な装甲、単独での自立飛行。そして、まだ世界中の何処でも実用化されてないビーム兵器。素人目に見てもあのライフルは強力過ぎます。ヒイロさん、アナタはウィスパードなのですか? もしくは関係者にウィスパードが居るのですか?」

 

テッサが考えた可能性、それは自分と同じウィスパードの存在。

ウィスパードの頭脳からブラックテクノロジーを引き出さない限り、オーパーツの塊であるガンダムの開発は不可能だ。

現に彼女が設計に携わったトゥアハー・デ・ダナンも、ウィスパードのブラックテクノロジーがなければ完成出来なかった。

ウィスパードは人によって引き出せる情報が違う。

故にテッサはヒイロ本人、もしくは組織の関係者にウィスパードが居るのだと考えた。

けれども返って来た言葉は彼女が求めたモノではない。

 

「ウィスパード……何の意味だ?」

 

疑問を口にするヒイロの瞳の奥をテッサは覗こうとする。

曇りのないその瞳にテッサは惚けて居るのではないと判断し、続けて次の質問を聞いた。

 

「どうやらウソを付いてはないようですね。アナタが所属する組織の構成がどうなって居るのかはわかりませんが、ウィスパードの重要性を理解しては居るからこそ、味方にも情報は流さないのでしょう」

 

情報を元に頭の中でロジックを組み立てて行く。

さながらジグソーパズルを作る様に、浮かび上がる単語と単語が結び付き大きな形となり全体像が薄っすら見えて来る。

だがテッサはピースを組み間違えており、出来上がりかけたパズルがあっと言う間に全壊してしまう。

 

「1つだけ言っておいてやる。俺は誰にも縛られるつもりはない」

 

「つまりアナタは組織の構成員ではないのですか? あの機体、ガンダムの搭乗者はアナタなのでしょう? でしたら何故、アナタはアレに乗って居たのですか!!」

 

はぐらかす様にしか話さないヒイロにテッサは声を荒らげてしまう。

聞かれてもヒイロはこれ以上は情報を流そうとはせず、彼女に背を向けて部屋から出て行こうとする。

 

「お前にもう言う事はない。後は自分で考えろ」

 

「待って下さい!! 私はまだ聞きたい事があります!!」

 

「言った筈だ。この話はもう終わりだ」

 

強引に切り上げてしまうヒイロ。

テッサは頭の中で崩れてしまったピースを拾い集めもう1度組み立てようとするが、まだ混乱しており中々上手くはいかない。

 

(どう言う事? 組織でないのなら個人……いいえ、それこそありえない。全長が18メートルもある機体を製造しようと考えれば工場が必要。それも外部には一切悟られない様にするなら情報統括もしなくてはなりません。世界の何処にも、私達ミスリルにも見つからないように大規模な開発をするのなら相当巨大な組織でなくては説明が付きません。でも彼は違うと言った)

 

ウィスパードの能力も相まったテッサでさえ、ガンダムが開発された経緯が皆目検討が付かない。

ヒイロは足を2歩3歩と進めて行き、彼女は悩む思考を抑えこんで慌てて呼び止めた。

 

「ヒイロさん!! お話がダメなのなら、私のお願いを聞いてはくれませんか?」

 

立ち止まったヒイロは振り返りテッサとまた向かい合う。

 

「内容による」

 

「千鳥かなめさんを守ってはくれませんか?」

 

「それは相良の仕事だ。わざわざ俺がする必要がない」

 

宗介の異常な行動はヒイロでなくても誰でも変だと感じる。

彼が取る可笑しな行動はかなめが絡むと特に際立っており、ヒイロはその事に気が付いていた。

学校の友人としてではなく裏で何か繋がりがあると容易に想像出来る。

自分を説得しに軍用ヘリコプターに乗って朝鮮半島まで一緒に来たのを見た事で確信した。

だが無用な出来事に突っ込もうとは思わないのでそれ以上の事は知らないし、2人の関係性も詳しくはしらない。

 

「アナタが内部事情を話さない様に私も詳しい事を説明する事は出来ません。ですが簡単に言える事となると、相良さんはもうこの学校には来れなくなるかもしれません」

 

「アイツの補充要員なら別のヤツを派遣すれば良いだけだ」

 

「アナタの言う事は正しいです。ですがそう簡単にもいかないんです」

 

ヒイロはテッサのお願いに簡単には返事を返さない。

静寂する空気が部屋の中を包み、時計の針が動く音が鮮明に耳に入る。

テッサは息を呑み、ヒイロから聞かされる言葉を待つしかない。

 

「ハッキリさせておく。俺はお前達とは組まない」

 

「聞いては……貰えないのですか?」

 

「千鳥かなめは弱くない。過保護に守る必要もない」

 

この言葉を最後にヒイロは空き部屋から出て行ってしまう。

残されたテッサもこれ以上追いかけて引き止めても無駄だと考え、彼の背中を見るだけに止めた。

開かれたドアが自然と閉じて行きバタンと音を鳴らす。

 

///

 

テッサの人気は凄まじく、男子からも女子からも慕われ2年4組のマドンナ的な存在にまでなる。

勉強はクラスで1番の秀才。

スポーツは相変わらず全く出来なかったが、欠点がある所が更に彼女の魅力を上乗せしてくれた。

傍から見ていたかなめはモヤモヤした感覚に苛まれ、あまり良い気分にはなれないで居る。

親友である恭子はかなめの感情に少なからず気が付いて居た。

 

「かなちゃん、ちょっと元気ないね」

 

「うん。ま~ね~」

 

「テッサちゃんが来てから相良君ずっと付きっ切りだもんね」

 

宗介はかなめの護衛任務も今まで通りにこなして居るが、割合で言えばテッサの比重が大きい。

そのせいで他の事に構っては居れず必然的に2人の時間も少なくなってしまう。

面倒事ばかり引き起こして鬱陶しく感じる事もあるが、いざ自分以外の所へ行かれてしまうと一抹の寂しさが過ぎる。

でも認めたくないかなめは恭子へ否定的に返す。

 

「別に。あんなヤツ、アタシには全っ然関係ないから。南の島だろうと潜水艦だろうと何処へでも行けば良いわ」

 

「アハハ。なら今度デートにでも誘ってみたら?」

 

「で!? アタシと宗介は只のクラスメイトで、そんなんじゃないんだから!?」

 

かなめの表情は途端に赤く染まり、必死に宗介との事を誤魔化した。

恭子は微笑みながらかなめの様子を眺めて居る。

 

「あんな無愛想でぶっきらぼうで、こっちの気持ちなんか全く考えない様な男。迷惑を被るアタシの身にもなって欲しいわ!! 宗介と一緒なくらいならヒイロ君の方がマシよ!!」

 

「へぇ~。かなちゃん、ヒイロ君とも仲が良いんだ」

 

「仲が良いって程でも。友達……そう!! 2人とも只の友達よ。それ以上でもそれ以下でもない!!」

 

「かなちゃんってミーハーさんなんだね」

 

「そこにさんを付けるな!! さんを!!」

 

和気あいあいと話す2人、教室には珍しく宗介の姿もヒイロの姿も見えない。

そこへ話題にして居たテッサがいつの間にかやって来て会話は途切れてしまう。

 

「あの、かなめさん。校長室は何処ですか?」

 

「校長室? どうしてそんな所に?」

 

「私にもわかりません。風間さんを通して、校長室に来るようにと言われたモノで」

 

「わかった。なら一緒に案内してあげる」

 

「ありがとうございます」

 

パァっと笑顔になるテッサを連れて、かなめは先ほどの感覚は何処かへすっ飛ばした。

かなめの背中に続いて付いて行くテッサを見守りながら、恭子は聞こえないように呟く。

 

「かなちゃんは面倒見が良いんだから」

 

昼休みの教室を出て廊下を歩き校長室へ向かう2人。

職員室から少し歩いた先にある校長室の扉は分厚く、何重にもワックスを厚塗りした高級感の漂うモノ。

かなめは右手の甲で叩いてしばらく扉の前で待つも、中から返事は聞こえて来ない。

 

「アレ? 居ないのかな?」

 

「ですが急いで来るようにと風間さんからは伺ったのですが」

 

「う~ん……入ってみよ」

 

悩んだがすぐに決断したかなめは返事の返って来なかった校長室へ足を踏み入れる。

床に敷かれた絨毯、木製の大きなデスク。

来客用に置かれた革調のソファーが2つ。

学校のどの教室とも違う高級感の漂う部屋にかなめは空気すら変わっているように感じた。

 

「やっぱり誰も居ない」

 

中を隅々まで見渡しても校長の姿はなく、2人は立ち往生してしまう。

壁際に設置された人の背丈よりも大きなタンスの中から除かれて居る事にも気が付かずに。

 

(こうも思い通りに事が進むと自分の悪知恵が恐ろしくなって来る。さて、後はデジカメでテッサちゃんを撮るだけだ)

 

暗闇で息を殺し潜むのは同じ4組の小野寺。

手にはデジカメを持ち、光の漏れる僅かな隙間から外の様子を覗き見ている。

 

(千鳥まで来たのは予想外だが、俺がここに隠れてるなんて想像もしてないな。相良のせいで誰も写真1枚すら撮れてないからな。他の奴らに高く売れそうだ。風間には特別にタダで譲ってやろう)

 

ほくそ笑む小野寺の存在にかなめもテッサも気が付く素振りすらない。

小野寺はカメラを構え、テッサの顔にピントを合わせる。

高性能のデジカメが手ブレを補正し高画質で鮮明に映し出す。

 

「っん……」

 

バレない事と失敗出来ない事から緊張し体が強張り、外へ聞こえてしまいそうな程に心臓がバクバクと高鳴る。

シャッターのボタンへ指を軽く当て、息と一緒に生唾を飲み込んで撮影しようとした。

その瞬間、爆音が響くと同時に校舎が大きく揺れる。

小野寺は姿勢を崩してしまい、タンスの扉の内側から盛大に転げ落ちた。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「小野D!? こんな所で何してんのよ!?」

 

「今度は何ですか!?」

 

爆発に体を縮こまらせるテッサとタンスの中から小野寺が現れた事に驚くかなめ。

けれども彼女達に驚いて居る暇などなかった。

校舎を揺らす大きな振動と、小野寺が内側から勢い良く飛び出したせいで重たいタンスが傾き重力に引っ張られる。

 

「ひやぁぁぁ!!」

 

「うわぁぁぁ!?」

 

2人は咄嗟には体が動かず、倒れて来るタンスの下敷きになる寸前でかなめは両腕を伸ばした。

両足を踏ん張り、押しつぶそうとするタンスを何とか支える。

 

「ぐぐぐググッ!!」

 

「かなめさん……」

 

「ボサッとしてないで早く手伝いなさい!!」

 

「は、はい!!」

 

テッサも急いでタンスを支え、かなめの負担を軽減させる。

それでも力の差で200キロ以上はある重さの7割はかなめが支える事になってしまう。

 

「お、重い!! そんなに長くは保たない」

 

「かなめさん、このままではみんな潰されてしまいます!!」

 

「アタシ達だけじゃ無理、とにかく誰か人を呼ばないと。テッサ、アタシのポケットに携帯入ってるからソレ使って!!」

 

「わかりました」

 

テッサは片手を離し、かなめのスカートのポケットへ手を伸ばし携帯電話を掴んだ。

負担して居た重量が更に重くなり、苦しい呻き声を漏らす。

 

「ぐぬぬぬぬ!!」

 

「すぐに相良さんを呼びます!!」

 

通話ボタンを押し、宗介の携帯電話へコールする。

宗介の反応は早く、繋げて2秒もしない内に通話出来るようになった。

 

「はい、こちら――」

 

「相良さん、今すぐに校長室に来て下さい!!」

 

「その声は大佐殿!? 何故千鳥の携帯から――」

 

「良いから早く!! 緊急事態なんです!!」

 

宗介の疑問の声を断ち切り切迫した緊張感を伝える。

それを感じ取った宗介も電話越しに返事を返そうとした。

 

「了解です。今すぐに――」

 

『相良宗介君!! 今すぐに職員室へ来なさい!! 来なければ退学です!!』

 

神楽坂の声が放送で学校中に響き渡る。

宗介が冷や汗を流しているのを想像し、聞こえた声も少し震えて居た。

 

『す……すみません、大佐殿。すぐに向かいますので、もう少しだけお待ち下さい。では』

 

通話は切られてしまい、耳にはプープーと機械音しか聞こえなくなる。

テッサは力なく耳元から携帯電話を離し、かなめも表情を伺って事情を察した。

けれども力を緩める事など出来ず、次の方法を考えるしか生き延びる方法はない。

 

「ぐぅぅぅっ!! こうなったら小野Dを叩き起こすしかない!!」

 

絨毯の上に寝っ転がって気を失って居る小野寺。

かなめは顔面に狙いを定め、靴底を思い切り押し付けた。

 

「ふんっ!!」

 

顔の皮膚にはギザギザの靴底の痕がクッキリと付き、小野寺は脳が揺らされた衝撃で目を覚ます。

 

「う……ん? 何で俺、ここに居るんだ。千鳥、そんな必死になってどうした?」

 

「周りの状況を見なさいよ!!」

 

「周り? うぎぃ!!」

 

言われて小野寺は霞む目で自信の周りを確認し、自身に迫るタンスを目の当たりにして悲鳴を上げる。

恐怖に駆られる小野寺は四つん這いになりながらも逃げようとするが、かなめはそれを許さず制服のズボンを踏みつけ動きを止めた。

 

「な!? 道連れにする気か? 俺はまだ死にたくない」

 

「アタシだって死にたくないわよ!! とにかく支えるのを手伝いなさい!!」

 

「ひぃぃぃ~!? 助けて!!」

 

情けない声を上げながらも小野寺は立ち上がりタンスの重量を支えるのを手伝う。

それでも男1人加わったぐらいでは押し戻す事は出来ず、かなめの負担が減っただけだ。

 

「そろそろ、限界かも……」

 

「ウソだろ? どうすんだよ、このタンス!?」

 

100キロ以上の負荷を与えられたかなめは体力の限界が近づき、体がブルブル震え両腕の力も衰え始める。

 

「こうなったら元に戻す事よりも生き残る方法を考えましょ」

 

「一斉に離して後ろへ逃げるか?」

 

「今のアタシにそれは厳しい。それにこの傾き加減と重さから考えて、落ちて来るのに1秒掛かるかどうか。逃げるのは無謀ね」

 

「このまま押し潰されろってか!?」

 

いたずらに時間が過ぎてしまい小野寺の体力も消費してしまう。

名案が浮かぶ訳でもなくジリジリ目の前のタンスは距離を詰めて来る。

諦める選択肢が頭を過り始める中で、弱い力ながらも全力で押し返していたテッサが不意に口を開いた。

 

「あの……小野寺さんはこのタンスの中に入って居たのですよね?」

 

「そうだけど、それがどうしたの!!」

 

「良い方法が思い付きました」

 

「ホント!! で、どうすんの?」

 

小野寺は危機的状況から開放される事に安堵の表情を浮かべ、テッサは目をキラリと輝かせる。

 

「小野寺さん、1人で何秒程耐えられそうですか?」

 

「これだけ重いと良くて10秒くらいかな?」

 

「それだけあれば充分です。小野寺さんが1人で支えて居る間に私達はここから逃げます」

 

「ちょっと!? 俺はどうなるんだよ!!」

 

置き去りにされてしまうと思い小野寺は必死になって懇願する。

無論テッサはそのような事など考えてはおらず、続けてどうするのかを説明した。

 

「大丈夫です。小野寺さんは私達が逃げたら、タンスの中へ避難して下さい」

 

「そんなに上手く行くのかぁ?」

 

涙目になりながらも決して力を緩めたりはせず、小野寺も生き残る為に全力を尽くす。

3人は覚悟を決めてテッサの考えた作戦を決行する。

初めに1番力の弱いテッサが抜け、その分だけかなめと小野寺にズッシリ重量が掛かって来た。

両足を踏ん張り、床に敷かれた絨毯がしわくちゃになり強引に生地が伸ばされる。

 

「行くよ、小野D!!」

 

「わかってる。早いとこ助けてくれよな!!」

 

「さん、にぃ、イチ!!」

 

カウントダウンが終わると同時にかなめは手を離し後ろの安全な場所にまで引き下がる。

1人になった小野寺は全重量を何とか受け止め、開けたままのタンスの扉に視線を向け、人がギリギリ入れるだけのスペースに目掛けて体を滑りこませた。

重たいタンスが床へ完全に倒れ、地響きが発生し校長室の中を揺らす。

下敷きにされて居た埃も舞い上がり、静寂が周囲を支配する。

 

「た……助かった」

 

光が全く届かない真っ暗なタンスの中でケガ1つ負っていない小野寺は安堵の声を出し、まだ生きて居る事を充分に噛み締めた。

かなめとテッサも何事も無く、絨毯に座り込んだまま肩で息をする。

 

「全員、何とか無事ね」

 

「はい、もうダメかと思いました」

 

「うん。取り敢えず誰か呼ぼう。タンスも何とかしなくちゃいけないし、中に小野Dも居るしね」

 

そこへ神楽坂から呼び出しを受けた宗介が扉を勢い良く開けて現れた。

 

「千鳥、大佐殿!!」

 

宗介は中の凄惨な現場を見ても驚いたりはせず、座り込む2人の元へ駆け寄って来る。

タイミング悪く現れた事と、原因を作り出した宗介にかなめは立ち上がり怒鳴り散らした。

人差し指を突きつけ、口の中から唾が飛び出るくらいに声を張り上げる。

 

「遅い!! それにちょっと前の爆発の振動もアンタでしょ!!」

 

「肯定だ。話せば少し長くなる」

 

「もう良い。それよりもって……」

 

「千鳥!?」

 

力をなくして倒れそうになるかなめを宗介は抱き抱える。

何か異変はないかと瞬時に状態を見極めようとすると、かなめの血の気が引き顔が少し青白くなった。

 

「ずっと腕を上に上げてたから血が……」

 

「軽い貧血だな。すぐに医務室へ行こう。俺も一緒に行く」

 

「うん、今だけはお願い」

 

宗介はかなめの腕を肩に回して体を担ぎ移動を始める。

それにテッサも付いて行こうとするも、宗介に呼び止められてしまう。

 

「大佐殿は屋上へ」

 

「屋上ですか?」

 

「はい。先程マデューカス中佐から連絡があり、至急ダナンへ帰還して欲しいとの事です。予定では6分後にヘリが到着します」

 

「ですが留学はどうなるのです?」

 

「手続きは完了して居ると伺っています。名乗り小越とは思いますが」

 

そこまで聞いてテッサは事情を把握し、これ以上は何も聞こうとはしない。

学生として過ごして居た頃とは違う、艦長の職務に付いて居る時の鋭い目線に切り替わり、キビキビした態度で校長室から出て行く。

 

「わかりました。相良さんはこのままかなめさんをお願いします。私は予定通りにダナンへ戻ります」

 

「了解です」

 

「では、行きましょう」

 

3人は高級感の漂う校長室を後にして、各々が思う場所へ向かう。

テッサは学校から遥か遠くの海中へ向かい、かなめは貧血で頭が思うように働かない。

細かい事情を知らない宗介には気付きようもなかった。

 

「お~い。誰か居ないのか~!! テッサちゃぁぁぁん!!」

 

小野寺のくぐもった声だけが不気味に校長室から聞こえて来る。




これで日常編は終了です。
次回からはTSR編に突入しますので暫くお待ち下さい。
今回のタンスの話は別の漫画からアイディアを貰いました。
ご意見、ご感想、質問等も受け付けております。

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