フルメタルWパニック!!   作:K-15

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久々の更新、やっと2話です。
ウイングガンダムが出てくるのはまだもう少し先の話になりますのでお待ちください。
書いてて思ったのがモブキャラの書き方がわかりません。



第2話 転校生は工作員!?

ヒイロ・ユイが転校してきて1週間、いつものように宗介が騒動を起こす以外には学校は平穏だった。

授業も宗介とは違い学年でも上位に来るのではないかと思うくらいに優秀だ。

外国から来たのに日本史も現代国語も理解しており、雰囲気は宗介に似ている部分もあるが全然違っている。

かなめは1度その事について休み時間に聞いた事がある。

 

「ねぇ、ヒイロくんは塾とか行ってるの?」

 

「いいや、それがどうした」

 

「いや~、アメリカから来たって言ってたのに日本史とかも覚えてるからさ。以外と勉強熱心なのかなって」

 

「この国の情勢や経済は大方覚えた。それでだろう」

 

「やっぱり勉強熱心なんだ。宗介なんて1192つくろう鎌倉幕府ですらまだ間違える事があるのに。アイツにも少しは」

 

「話は終わりだ。次の授業の教師が来る」

 

「ってまだ話の――」

 

ヒイロは強引に話を中断させると真っ直ぐに黒板を見たまま顔を動かそうとはしなかった。

数秒後には教室の扉が開かれて数学の教師が現れた。

かなめはヒイロの事に気を取られていて教師がやってきたことにすぐには気がつけなかった。

いつもならすぐに委員長であるかなめの号令が聞こえないので教師は彼女の席を見た。

 

「委員長?」

 

(ヒイロくん、これじゃあ……)

 

「委員長、号令を」

 

「っ!? 起立!」

 

教師の声に気が付くとかなめは急いで号令をするとクラスの生徒はその声に従い席を立つ。

 

「礼、着席」

 

全員がもう1度自分の席に座るとかなめは隣のヒイロの顔を見た。

ヒイロは真っ直ぐに前を向いたまま彼女の事に気が付かない。

もどかしい気持ちのまま授業は始まった。

 

「では教科書の58ページを開いてください。今日は――」

 

教卓の上で教師は話を進めていく。

何事もないまま1時間が過ぎていってしまう。

 

///

 

時を同じくして日本にテスタロッサとカリーニンが極秘裏に来日した。

目的は成田空港で暴れた為に掴まった少年、クガヤマ・タクマの視察である。

掴まった当初、彼は極度の興奮状態に陥っており会話もまともに出来ない状態だった。

拘束されるとそのまま施設に送り込まれ精密検査を受けさせられる。

その結果、テスタロッサの視察が必要となった。

2人は施設の廊下を歩きながらタクマが拘束されている部屋に向かった。

 

「私が直接行く必要があるのですか?」

 

「ここは日本政府の管轄です。連れ出すには時間と労力が掛かり過ぎます。緊急事態でもありましたので直接ご足労いただきました」

 

「それで彼の容態は?」

 

「今は鎮静剤が効いているので大人しくしています」

 

「この施設の警備はどうなっていますか?」

 

「周囲は完全に包囲、ASも待機しております。着きました、この部屋です」

 

話しているとタクマが拘束されている部屋へと辿り付く。

扉を開けるとそこには特殊プラスチックで半分に仕切られておりその向こう側に彼は居た。

虚ろな目でぐったりした様子でパイプイスに座っている。

 

「彼が言っていた?」

 

「はい、精密検査の結果血中からTI971の反応が出ました。彼はラムダドライバ搭載機のパイロットとして強化されている可能性があります」

 

「その為に私を呼んだのですね」

 

「強化の際の薬物の副作用と思われる記憶の欠落、性格の凶暴化なども見られました」

 

「データだけ見たらその可能性は十分にあります。確たる証拠を掴むには専門の機関でもっと詳しく調べる必要がありますが……彼は黒です」

 

ついさっき自分でもっと詳しく調べないとわからないと言っていたのに彼女は自信を持ってそう言い切った。

その彼女の言葉をカリーニンは無条件で信じた。

テッサが上官だから信じたのではなく、真に信頼している仲間だからこそ。

 

「やはりそうですか。ラムダドライバ搭載機が開発されている事も考えてすでに調査は始めています」

 

「彼が居ない限りその機体は動く事はないはずです。見つけ次第早急に破壊しなければなりません。その間は身柄を拘束せざるをえませんね」

 

「はい、ですがここでは敵の襲撃に対応出来るとは思えません。手続きが済み次第すぐに」

 

「この事に関しては戻ってからもう1度考える必要があります。彼の事は頼みます」

 

テッサは透明な板の向こう側でピクリとも動かないタクマを横目で見ると部屋を後にしようとする。

これ以上ここに居ても何も出来ない、敵の行動を探る為にもトゥアハー・デ・ダナンに戻らなくてはならない。

けれども彼女の歩みを遮るように建物を振動が襲う。

激しい振動にガラスは割れ壁にヒビが走った。

崩れかける体の体勢をカリーニンの腕が支えてくれて何とか転ばずに済んだ。

 

「ご無事で」

 

「今の振動は?」

 

「恐らく敵の襲撃です」

 

「こんなにも早いなんて。カリーニンさん、すぐにタクマを」

 

敵に奪われる前にタクマを移動させようと考えたテッサだが廊下の割れたガラスの向こう側にサベージの頭部が現れた。

無表情なカエル顔のレンズにテッサの姿が反射して見える。

施設の警報が鳴り響き待機していたASと兵が動き出すが既に侵入されている。

周囲を気にしながら動くのと自由に動ける敵とでは力負けしてしまう。

緊急事態にも関わらず歴戦の戦士は慌てず迅速に行動を取る。

 

「大佐殿は彼をお願いします、私が2人を護衛します。ここから脱出したら相良軍曹の下へ向かいます」

 

「わかりました。敵がここに来るまでに脱出を」

 

カリーニンはスーツの内ポケットからハンドガンを取り出し弾丸を装填するとタクマが隔離されている部屋のドアノブを撃ち抜いた。

 

///

 

4時限目は体育館でバスケットの試合、かなめのクラスの生徒は全員体操服に着替えると体育館へと向かった。

 

「お前、負けたら購買のパンおごりな」

 

「いやだな~、ツメ折れたらどうしよ~」

 

皆が雑談をしている中でも円滑に授業は行なわれた。

5人のチームに分かれるとホイッスルが鳴り試合が始まった。

かなめ、宗介、ヒイロは順番が廻ってくるまで試合を観戦した。

 

「宗介、バスケットのルールぐらい知ってるわよね?」

 

「問題ない、ルールブックは少し前に読んでいる」

 

そう言った彼の言葉をかなめは信用出来ずに疑いの目でじっと見たが宗介の表情は変わっていない。

かなめは隣に居るヒイロにも同じ質問を投げかけてみた。

 

「ヒイロ君はバスケットのルールわかるわよね?」

 

「それぐらいわかっている」

 

「普通そうよね。宗介なんてボールに爆弾が仕掛けられている!ってナイフで切ろうとしたのよ」

 

常識では考えにくい行動を取る宗介は笑うかなめだが彼は真剣に答えた。

 

「千鳥、キミはテロリストの恐ろしさをわかっていない。いつ、如何なる時でも警戒を怠っては――」

 

「ボールに爆弾なんてあるわけないだろ!!」

 

彼女の一喝が響くと宗介は話していた口を閉ざした。

 

「ヒイロ君だって変だと思うわよね?」

 

「そうだな」

 

3人が話しているとまたホイッスルの音が響いた。

それを聞いたかなめは話を切り上げてコートへ向かう。

 

「あ、試合始まっちゃう。行こうヒイロ君」

 

「千鳥、アイツは工作員の可能性がある。くれぐれも注意するんだ」

 

「そんな心配いらないから。アンタはそこで大人しくしてなさい」

 

宗介の忠告も無視して2人は試合を始めた。

かなめのチームは5人の内男子はヒイロだけ、それに対して相手のチームは男子4人女子1人の構成。

 

「女だからって油断してたら痛い目見るんだから。行くわよ!!」

 

ホイッスルが鳴り響くと審判の教師がボールを高々と投げた。

 

「おりゃーー!!」

 

全力でジャンプして手を伸ばすも相手との身長差は歴然としておりボールに手が触れる事はなく空を切った。

取られたボールをドリブルして女子の間を悠々と進んでいってしまう。

 

「ディフェンス!」

 

「もう遅い、このままゴールだ」

 

ボールを握っているのはバスケ部の次期レギュラー候補の1人、意図も容易くディフェンスを潜り抜けていくとゴールが目の前に見えてくる。

けれども最後の防壁にヒイロが立ちふさがった。

前に進ませないように邪魔をするがじりじりとゴールへの距離は詰められてしまう。

 

「まずは2ポイント貰った!!」

 

シュートを決めようとボールを両手持ちに変えようとした一瞬、ボールを弾く乾いた音が響くとドリブルをしてヒイロが通り過ぎていく。

 

「ウソ!?」

 

ヒイロはチームの女子に頼る事なく1人で突き進んでしまう。

それを見てかなめはサポートに入ろうと彼の少し前を走った。

 

「ヒイロ君、パスパ~ス!!」

 

当然相手チームはボールを奪い返そうとするがヒイロはかなめの事も無視してゴールへと走った。

 

「早く止めろよ!!」

 

「アイツ走るの結構早いぞ」

 

「うわぁ、抜けられた」

 

「無理よぉ~」

 

残りの4人も簡単に抜けていくとものの数秒でゴールの近くまで来てしまう。

だがゴールなどさせまいとヒイロにボールを取られたバスケ部が全力で走って追い抜いた。

両手を広げて姿勢を低くしボールを取り返そうとモーションを掛けるとヒイロは2歩、3歩と後ろへ下がった。

 

「これ以上はやらせない」

 

「ヒイロ君、こっち!!」

 

かなめもゴールのすぐ傍まで陣取りボールをパスしてもらいシュートを決めるべく声を上げた。

けれどもヒイロは誰にも頼る事はなく目標のゴールへと狙いを定めた。

 

「はっ」

 

ボールを頭上まで持ち上げると軽くジャンプをしてゴールに向かって投げた。

 

「えぇ!?」

 

急いでボールを掴もうとジャンプして手を伸ばすが触れることも出来なかった。

そのまま妨害を受ける事無く流線型を描きながらゴールのネットを揺らした。

 

「スリーポイントシュート!?」

 

「って決めちゃった。でも凄いわね、バスケ部にも負けてないわ」

 

ボールが床をバウンドする音が数回すると力をなくしゆっくりと転がった。

何も出来ずにゴールを決められてしまった事に驚く彼と、その高い運動能力に舌を巻くかなめ。

華麗なゴールが決まるのを見てホイッスルが鳴り響く。

 

「よし、チーム交替だ。次はAチームとDチーム」

 

教師の指示に従い生徒達は移動を始める。

宗介は試合の間ずっとその鋭い目付きでヒイロの動きを観察していた。

 

「あの運動能力、状況判断力、そして今までのデータから見てもアイツは工作員に違いない」

 

「違うって言ってんでしょ!!」

 

ヒイロの事を工作員と結論付ける宗介、するとどこからともなく頭上にハリセンの一撃が飛んできた。

 

「痛いぞ千鳥」

 

「アンタまだそんな事言ってんの?いいから次の番でヒイロ君みたいに活躍してきなさいよ」

 

「任せておけ」

 

そう言うと宗介はコートに走っていった。

かなめはハリセンをしまうと宗介の試合を観戦しようとすると隣にヒイロがやって来た。

 

「どうしたのヒイロ君?」

 

「千鳥かなめ、耳を塞げ」

 

「え?何で?」

 

ヒイロの言う事の意味がわからないかなめ、でもそうしている間にまた試合開始のホイッスルが鳴った。

高く上げられるボールに宗介はまったく見向きもしない。

そして隠していた銃火器を取り出すと構えてゴールに狙いを定めた。

 

「支給されたばかりのMARK23だ。受け取れ!!」

 

トリガーを引くと爆音が鳴り響き鉛弾が高速で飛んでいく。

蜂の巣になるゴールはやがて固定していた鉄の柱ごと地面に落下した。

それを確認すると銃撃を止めて構えを解く、薬莢の匂いが充満する体育館でも彼の表情はいつもと変わらない。

 

「止まった的に当てるなど訓練にもならん」

 

そのセリフを話し終えると同時に頭部にハリセンの一撃が飛んできた。

目の前には怒り心頭のかなめが居た。

 

「なかなか痛いぞ千鳥」

 

「アンタはなんて物を学校に持ってきてるのよ!」

 

「千鳥、支給されたばかりのMARK23だ。耐久性、信頼性、命中精度が高く、特殊部隊・対テロ部隊にも使用されている――」

 

「そう言う事を言ってるんじゃないの!それにゴールが破壊されてバスケット出来ないじゃない!」

 

「ちゃんとゴールにガンシュートを決めたぞ。あれではダメなのか?」

 

「ダメに決まってるでしょ!ボールをゴールに入れるの。鉛弾を入れるなんて聞いた事ないわ!」

 

「う~ん、よくわからん」

 

結局残りの時間は破壊されたゴールの片付けに消えていった。

 

///

 

6時限目の授業も終了し生徒は部活に行く者や帰る者とさまざまだ。

ヒイロはカバンに荷物をまとめていると隣の席のかなめが話しかけてきた。

 

「ヒイロ君は部活どうするの?何か入りたい所見つけた」

 

「俺はやらない」

 

「何で?それだけ運動出来れば即レギュラーになれるわよ」

 

「興味がない、する必要もない」

 

かなめとの会話をする気がないヒイロは一言で言葉を区切る。

けれどもかなめは口数が少ないのは宗介で少し慣れているので擱くにもせず話を続けた。

 

「だったら生徒会はどう?人手が少なくて、ヒイロ君なら大歓迎よ」

 

「帰ったらやる事がある。もう行くぞ」

 

ヒイロは話を強引に終わらせると席から立ち上がりかなめを振り払うと教室から出て行った。

日ごろから1人で行動しているヒイロに教室に居るほとんどの人は関心を示さなかった。

 

「う~ん、でもあれだけ運動出来て何もしないなんて勿体無いわね」

 

「当然だ、アイツは工作員だからな。放課後になったら学校の機密事項を探す為に――」

 

いつの間にか宗介がかなめの傍にやって来ていた。

ヒイロの事を工作員だと言い続ける事に飽き飽きしながらも一応注意を施した。

 

「アンタいつまでヒイロ君を工作員だなんて言ってるの?」

 

「ヤツはまだ行動を起こしていないだけに過ぎない。これからも入念に行動パターンを把握する必要がある」

 

「はいはい、わかりました。それじゃ私は先に生徒会室に行ってるからね」

 

「俺もしばらくしたら行く」

 

かなめも自分のカバンに教科書などの荷物をまとめると宗介を置いて教室から出て行った。

いつものように廊下を歩いて生徒会室に向かう途中で誰かが囲まれていた。

人数は3人、学校でも有名な不良の集まりだ。

そのトライアングルの中心に居るのは一足先に教室から出て行ったはずのヒイロだった。

かなめはばれないように急いで壁際に隠れると聞き耳を立てて様子を伺う。

 

「おい転校生!あんまり粋がってんじゃねぇぞ」

 

「こいつは空手やってたんだ。その意味わかるよな?」

 

「大丈夫だって、俺達の言う通りにしたら何も怖くない」

 

不敵に笑う不良を相手にしてもヒイロの表情は崩れない。

いつもの冷徹なまでの態度のまま不良を相手に取って掛かる。

 

「言いたい事はそれだけか」

 

「お前、今の状況をわかってんのか!!」

 

「あ~あ、やっちまったな」

 

「可哀相だけどやられてくれや」

 

学生服の胸倉を掴まれいつ殴られるかもわからない事態に陥ってしまう。

 

「どうしよう、私1人じゃ助けられないしこのままじゃヒイロくんが……宗介!!」

 

壁際で見ていたかなめもいよいよ危ないと判断して教室に居る宗介の下へと全力で走った。

 

///

 

「ケンカ?」

 

「そうなのよ、3人に囲まれててこのままじゃヒイロ君が」

 

「アイツがたかが3人程度でやられるとは思えんが」

 

全力で教室に戻ってくるとそこにはまだ宗介が残っていた。

かなめは今までに起こったことを伝えて急いで助けに行こうとしたが宗介はその報告に納得がいかなかった。

腕を組んで考え込む宗介はその場を1歩も動こうとはしない。

 

「いいから行くわよ!」

 

痺れを切らしたかなめは宗介の首根っこを掴むと無理やり引きずって連れて行ってしまう。

 

「心配しなくてもアイツが簡単にやられたりなどしない」

 

「何でそんな事がわかるのよ!!」

 

「アイツは工作員として訓練されている。一般人にやられるようでは任務など勤まらん」

 

「んなわけないって何回も言ってるでしょ!それとアンタとヒイロ君を一緒にしないで!!」

 

人1人を引きずりながら走っているにも関わらずそのスピードはいつもより速いくらいだ。

そうしている間にも先ほどヒイロが絡まれていた場所まで到着した。

 

「着いた!この先に3人居るはずだから」

 

「ここでやられているようなら俺の見込み違いか」

 

「いいからさっさと行け!」

 

宗介を突き出すようにして現場へと突入するかなめ。

かなめの両手には掃除用具のモップがせめてもの武器として握られている。

 

「ヒイロ君今助け――あれ?」

 

「言っただろう、心配する必要はないと」

 

目の前には不良3人が伸びて床に倒れていた。

ヒイロは怪我1つ負っていない様子で倒れた不良を置いたままその場から立ち去ってしまう。

それを見た宗介はある事を決断した。

 

「3人がかりでも傷1つ負っていない。アイツはやはりエージェントだ。これは後を付ける必要があるな」

 

「何でそんな事をする必要があるのよ。それにこれから生徒会よ」

 

「千鳥から会長殿へ伝えてくれ。俺は行く」

 

かなめの静止も聞かずにそのまま宗介は飛び出していってしまう。

 

「って行っちゃった。変な事しないといいけれど」

 

ヒイロを工作員だと信じて疑わない宗介はそのまま彼を追跡しに行った。




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