フルメタルWパニック!!   作:K-15

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戦闘シーンに躍動感を出すのは難しいものです。
今回のを書くのは特に難しく感じました。
だからあまり上手ではないですが、いずれは上手く書けるようになりたい。


第18話 新たな始まり

「ぐぅっ!! な、何が起こった……」

 

放心状態で目を覚ました司令官は状況を確かめるのもやっとな程に疲労している。

目の前に広がる光景に思考が追いつかず、理解するのに時間が掛かってしまう。

バスターライフルの高出力ビームの余波により分厚い防弾ガラスが粉々に吹き飛ばされ、衝撃波により他の兵士も床や壁に体を叩き付けられた。

プラズマにより電子機器類は使用出来なくなり、砕かれた防弾ガラスにより負傷している兵士も多く居る。

血を流し、助けを乞う声。

空気を汚染する煙の匂いに器官が刺激され、自然と喉の奥から咳が出る。

 

「ごっ!? ごほぉ、グッ!! 何なのだコレは!? あんなヤツに、たった1機にこの基地が壊滅させられたのか!?」

 

現実を受け止められず、発狂したかの様に声を荒げる司令官。

もはや正常に物事を考える事すらおぼつかず、ふらふらとよろけながら司令室を歩く。

 

「もうダメだ。こんな事が閣下に知られれば、俺は家族諸共銃殺刑にされてしまう!! ふふふっ、あっはははは!! そうだ、簡単ではないか!!」

 

焦点の定まっていない瞳で、ガラスが散らばる司令室を歩きミサイル発射装置が備わっている機器にまで到達する。

電気配線がショートしまともに動きはしないが、あるモノだけは他とは別系統で作成されていた。

どのような事態に陥ったとしても確実に制御出来るように仕上げられている。

 

「これさえなくなれば……そうだ、なくしてしまえばいい!!」

 

パネルを操作し、ヒビの入ったモニターには座標が表示される。

震える指で工程を次々に完了させて行く。

もはや司令官は正気を保っておらず過酷な現実から逃げる術しか思いつかない。

そして選んだのが貯蔵されていく核兵器で基地を自爆させる事だった。

如何なる時でも1発は発射出来るようにと、この基地には核ミサイルが発射出来る体制で準備されている。

地下に収納された発射台を起動させ、いよいよ最後の工程に移ってしまう。

他の兵士達は負傷し、今を生き残るので精一杯で彼を止める余裕など残されていない。

肉が裂け血が流れ落ち、地面に這いつくばって助けを乞うしか出来ないモノも居る。

司令官は彼らを助けるよりも、楽に終わらせる手段を選んだ。

 

「ハハハハハッ!! 何もかも終わりなんだ!!」

 

上着の内ポケットから小さな鍵を取り出し、最後の砦である安全装置へ差し込んだ。

鍵を捻り薄い鉄で作られた小さな扉を開放させると真っ赤なスイッチがそこにある。

彼は砂埃で汚れている人差し指でスイッチへ触れ、躊躇いなく核ミサイル発射装置を起動させた。

発射された核ミサイルの着弾点は発射された場所と同じ、この核貯蔵基地である。

 

「これで、ようやく……眠る事が……でき――」

 

脇腹に突き刺さったガラス片から止めどなく血液が流れ落ちる。

床に赤い血溜まりが出来ており、彼の体力は既に限界を迎えていた。

誰にも看取られる事もなくこの基地の司令官は人生の最期を向かえる。

 

///

 

かなめに殴られた頬がズキズキと熱く痛む。

素人のパンチなど避けようと思えば簡単に避けられた筈なのに、その時のヒイロは精神が不安定で流されるがままだった。

殴ってきたかなめに反撃する訳でもなければ文句を言う訳でもなく、何も言葉を発さずに見つめるだけ。

鋭い視線で見つめる先には瞳に涙を浮かべている千鳥かなめの姿。

 

「バカ!! こんな事して一体何考えてんのよ!!」

 

「俺は死ななくてはならない」

 

「そんな訳ないじゃない!! 誰がアナタに死ねなんて言うのよ!! 死のうだなんて、悲しむ人の事も考えなさいよ!!」

 

「悲しむ……」

 

ギリギリで涙は零さず、再会出来たヒイロに激を飛ばす。

工作員として幼い頃から育てられてきたヒイロにかなめの感情をすぐには理解出来ないが、その温かい思いだけは心に伝わって来る。

必要以上に言葉を発しようとしない所は変わらないが、かなめが居る事で少しずつではあるが何かが変わり始めた。

 

「アタシだってそう。クラスのみんなだってアナタの事を待ってるんだから!! 死んだら何にもならないじゃない!!」

 

「この世界に俺とガンダムは必要ない」

 

「それもドクターJって人に聞いたわ。どうしてそこまで、あのガンダムを壊したいのかはわからない。でも、アナタは死ぬ必要なんてない!! 絶対に!!」

 

ガンダムの破壊任務と自分自身の抹殺。

それを1度決断したヒイロにもう迷いなど存在しなかったが、かなめの言葉にその決意が揺らぐ。

他人であるヒイロの事を一心に思い、死ぬかもしれない危険を犯してまでここまで来た。

そんな人間に今まで出会った事がない。

任務遂行中のイレギュラーにもすぐに対応出来るように訓練されているが、この時ばかりは思考も体もちゃんと動いてくれなかった。

ヒイロはかなめを視界に収め、その声を聞いている事しか出来ない。

 

「だからお願い。一緒に日本に帰ろ?」

 

必死に懇願するかなめの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。

目の前で、それも知っている人が死んでしまうかもしれないと考えるとこれ以上耐えるのはかなめには出来ない。

我慢していた決壊が崩落すると、もう涙は止めどなく溢れてくる。

静かに流れ落ちる涙とは対称的に、かなめの背後から重たい撃鉄を引く音が聞こえた。

振り返った先には拳銃を構えた宗介がそこに居る。

 

「宗介!? これは――」

 

「伏せるんだ千鳥!!」

 

「ダメェェッ!!」

 

銃を握った宗介から2人共逃げようとはせず、かなめはヒイロを守ろうと両手を広げて前に立つ。

両目をつむって恐怖を強引に押し込み、歯を食いしばってその瞬間が訪れるのを待った。

ヒイロも自らの最後を悟り、瞼を閉じて心の中で静かに呟く。

 

(俺もここまでか。これで何もかも終わる)

 

そして拳銃のトリガーが引かれ、銃口から弾丸が発射される。

甲高い銃声が響くのと同時に弾丸は空気を突き抜けながら、かなめとヒイロの横顔と通り過ぎた。

迷彩服を貫通し肉に風穴を開け鮮血が吹き出す。

銃声が灰色の空に消え、静寂が周囲を包み込む。

風の流れる音、自分の心臓の鼓動さえも鮮明に聞こえて来る。

 

(痛く……ない……)

 

固く閉じていた瞼から力を抜き、ゆっくりと目を見開き状況を確認した。

宗介はまだ銃を構えてこちらを狙っている。

けれどもすぐ後ろにはケガ1つしていないヒイロがまだ立っていた。

 

「えっ……と」

 

「ぐぅっ!?」

 

するとヒイロよりもさらに後ろから知らない男の呻き声が聞こえて来た。

迷彩服を身に纏いライフルを握っている兵士は首元に宗介が撃った銃弾が当たり、痛みと苦しみに悶えアスファルトへ倒れる。

兵士は動かなくなり、ドクドク流れ出る血から命の灯火はもう長くは保たない。

かなめはガチガチに固まった体から力を抜き、ゆっくりと呼吸し時間の経過を感じ取る。

 

「ケガはないか? 千鳥」

 

「うん、大丈夫……」

 

構えを解いた宗介は2人に向かって歩を進め、かなめの安否を確認する。

表情ひとつ変えないまま近づいて来る宗介はヒイロの正面に立ち、背の低い彼を見下ろす。

すぐに言葉を口にはせず、互いを見つめ合うだけ。

再び静寂が灰に塗れる空間を包み込み、重苦しい雰囲気が漂う。

時間にして1分も経過していないが、かなめの体感ではそうとう長く感じられる。

そして始めに声を発したのは宗介からだった。

 

「ヒイロ・ユイ、俺をお前を認めたつもりは一切ない。それでも、千鳥から見れば俺とお前は友達らしい。それだけだ」

 

素直な感情など言葉には出来ないし、自分の中ですら整理が付いていない宗介の不器用な言葉。

返事を返そうともしないヒイロだが宗介の言葉は少なからず伝わった。

会話を見ていたかなめは和解出来た事に笑みを浮かべて喜び、2人の間に立つと腕を掴んで引き寄せる。

 

「ほら、仲直りの握手。ね?」

 

近づく手と手。

かなめにより半ば強引に手を触れ合い握手しようとした時に、基地の地下から轟音が響き渡る。

 

「え!? 何なの?」

 

「これは動いている。千鳥、ここはもうダメだ。脱出するぞ」

 

かなめの手を取り待機させてあるヘリコプターに避難しようとする宗介。

急いで安全な場所に逃げようとする彼の目に映ったのは開放されていく地下シェルターと、そこから現れる巨大なミサイル発射台だった。

コンピューター制御で着弾地点を数センチ単位で調整出来るミサイルが向く先は、地上から90度に真っ直ぐと上空を向いている。

宗介にはすぐにミサイルの異変に気付く事が出来た。

 

「おかしい、射角が付いていない」

 

「ねぇ? つまりあのミサイルは何なの!!」

 

「アレはここへ落ちる。推測するに積まれている弾頭は核だ。発射されれば、大気圏外で破壊するしか方法はない」

 

「どうすれば出来るの!!」

 

「現状では不可能だ。今すぐダナンに連絡を送っても間に合うかどうかわからない」

 

「そんなのって!?」

 

対処は無理だと言う宗介の言葉に絶望するかなめ。

核兵器が使用されれば甚大に被害が及ぶ事くらい、素人の彼女でも容易に想像が付く。

ヒイロを止める事には成功したが、核による破壊は免れない。

知識があるせいで宗介は発射された核弾道ミサイルを止めるのがどれだけ難しいのかを知っており、

僅かに残されている可能性を消去法で切り捨ててしまう。

けれどもかなめだけは、成功率が最も高い方法を知っていた。

 

「ヒイロ君、行って!! あのガンダムなら間に合う!!」

 

彼女はウィスパードの囁きでガンダムの性能をある程度は把握している。

ビーム兵器に走行強度、推進力を生み出す両翼のメインスラスター出力に瞬間加速、全てが規格外のガンダムでなら可能性は充分にある筈だ。

発射寸前の核弾頭ミサイルの阻止をヒイロに託すかなめ、その瞬間は刻一刻と迫っている。

1秒の時間すら惜しい状況で、ヒイロは決断出来ないていた。

 

「俺は……俺は逃げない」

 

「早く!! アンタが止めなきゃ、アタシ達は死んじゃうのよ!!」

 

「了解した」

 

一言言うとヒイロは膝を付いて待機させてあるガンダムへ走る。

コクピットハッチから伸びているワイヤーに手を伸ばし、急いでコクピットへ戻ろうとするが、発射準備の整ったミサイルのエンジンに火が付く。

吹き出す炎は推進力となり重たいミサイルを宙に浮かせ、強烈な風と爆音を生み出し雲を作って地上から離れて行く。

襲い来る強風に宗介とかなめは足を地面へ踏ん張り腕で顔を守った。

 

「くっ!? エンジンが起動した」

 

「大丈夫!! ヒイロ君ならきっと!!」

 

コクピットへ乗り込んだヒイロはすぐにハッチを閉じ、操縦桿を握り締めガンダムを立ち上がらせる。

メインモニターに発射されたミサイルを映し出し新しい攻撃目標として捉えた。

 

「ターゲットロックオン。排除開始」

 

天井のレバーを押し倒し、バスターライフルをシールドへマウントさせバード形態へ変形させる。

肩や脚部を折りたたみ空気抵抗を減らし、両翼を広げガンダムは大空へ飛ぶ。

加速する機体はミサイルへ向かい見る見る内に近づいて行く。

モニターに表示される速度は一瞬で音速を超えた。

空気を切り裂き、重力を振り切り飛ぶガンダムは雲に差し掛かろうとするミサイルへ数秒で追い付いた。

ヒイロは右手を伸ばし変形を解除する為にもう1度レバーを手を伸ばす。

重たいレバーを片手を押し倒し、鳥の形をしていた機体が人型へ戻りシールドとバスターライフルを左右の腕に持たせる。

 

「破壊する」

 

必要のないバスターライフルを腰にマウントさせ、シールド裏からビームサーベルのグリップを掴んだ。

メインスラスターが火を噴き、ミサイルへさらに接近するガンダムの振り上げた右手にビームの剣が握られ、核弾頭とエンジン部分の繋ぎ目だけをピンポイントに狙う。

ビームサーベルでミサイルをなぎ払い、溶解した鉄が真っ赤に光り上下に分離して行く。

正確な攻撃は弾頭部分だけを切断し、空飛ぶ鉄の筒と化した砲身をさらに縦へ一閃する。

核弾頭は重力に引かれ海に落下して行きミサイルは真っ二つに切断されエンジンが誘爆を始めた。

コクピットでヒイロはペダルを踏み込み、ガンダムを加速させ現空域から離脱する。

次の瞬間には残されていたミサイルのエンジンが爆発し、大空に巨大な火の玉を作り出した。

炎が空を照らし、影になるガンダムのツインアイが緑色に怪しく光る。

 

「任務……完了」

 

空を颯爽と飛ぶガンダムはヒイロを待つかなめの所へ戻って来る。

その姿を見たかなめはミサイルの破壊が成功した事を安堵したと同時に、ヒイロが生きて無事に帰って来た事を喜んだ。

 

「帰ろ、宗介」

 

「肯定だ。味方の増援が向かって来ているがここは危険だ。すぐにヘリに戻るぞ」

 

「ヒイロ君、明日にはまた学校に来てくれるかな?」

 

「俺にはヤツの考えは理解出来ん。それでも生徒会治安維持係として、来ないのならそれだけ仕事が減る」

 

「アンタが勝手に勘違いして増やしてるだけでしょ?」

 

「千鳥、キミは工作員と言うモノをわかっていない。アイツは俺達が授業を受けている間にも――」

 

「ハイハイ、わかったから」

 

宗介の言葉を軽く遮り、戻って来た日常に笑みを浮かべる。

大きな傷跡の残る核貯蔵基地ではあるが、一刻の有余が訪れた。

待機させてあるヘリコプターへ行く宗介はドアに手を掛け、乗り込もうとした最中に再び空を見上げガンダムを視界に収める。

ガンダムもまた、意思が疎通しているかのように宗介の方向を見ていた。

 

(ヒイロ・ユイ。俺はお前を認めたつもりはない。それでも、千鳥を守ってくれた事は感謝する。だが次に戦場で会う事があれば――)

 

「何やってんの? 早く乗ってよ」

 

「スマン。すぐにここから離脱する」

 

2人が乗り込んだヘリコプターはエンジンの出力を上げ、プロペラの回転数が上昇する。

爆音と強風を纏い地上から離陸したヘリコプターは空で動きを止めているガンダムから距離を離して行く。

目の前を飛ぶ相手にヒイロは敵意を示さず、攻撃せずにただ見守るだけだった。

当初の目的であるガンダムの破壊は失敗したが、もはやそれを遂行するつもりはない。

心の中に僅かに出来た綻びが、ヒイロに帰れる場所を教えてくれる。

スゥっと静かに瞼を閉じ、基地から背を向けるとガンダムもこの場所から去って行く。

18メートルの巨大なボディーは水平線の彼方へと姿を消してしまう。

 

///

 

朝鮮半島の領海へ潜入したトゥアハー・デ・ダナン。

隠密性の高さからレイダー網を掻い潜ってここまで来るのは簡単ではあったが、その労力は無駄に終わってしまう。

シートに座っている艦長のテッサも顎に手を当てて少し考える。

 

「この一連の行動をマデューカスさんはどう思いますか?」

 

「不可解でなりませんな。セオリーを全く無視した攻略戦、それを可能にする程の性能があの機体には備わっているのでしょうが、それにしてもオカシイとしか言えません。我々はこれで3回、あの羽付きと遭遇しましたが、私には性能実験をしているようには見えませんでした。まるで自殺願望でもあるような」

 

「えぇ、私もそう思います。アレだけ高い攻撃力を持っている機体で、核貯蔵庫に攻め入るなんて常軌を逸しています。1つ間違えれば核が爆発してしまいます」

 

「それでも相手はここへやって来た。理由は定かでありませんが。そして、発射されたミサイルをわざわざ破壊して。自殺願望があるならあのまま突撃していた事でしょう」

 

「その辺りも、1度相良さんに聞いてみる必要がありますね。まだまだ情報が少ない今は、真正面から戦う事だけは避けなければなりません」

 

ブリッジには衛生カメラから観測される基地の様子が画像で映し出されている。

破壊しつくされたASは元が何だったのかもわからない程原型が崩れていた。

巨大な建造物をなぎ払い、跡形もなく消し去ったバスターライフルのビームが通過した2本の筋は、アスファルトごと地面を抉り取り巨大な溝になっている。

兵士の生存者も限りなく少ないだろうし、完全に作りなおさなければもう基地としての役割を持っていない。

 

「テンペスト。まさに嵐、災害と読んでも良いくらい。過ぎ去った後は不気味な程に静まり返る」

 

「次にヤツが現れる場所はどこでしょう?」

 

「どうしてもこちらが後手に回ってしまいます。あちらは機動力を駆使して奇襲攻撃で一気に敵戦力を壊滅。守りに廻った方の負け。けれども攻めこむ術を私達はまだわかりません」

 

「これからまた忙しくなります。我々の敵は羽付きだけではありません。これから世界がどのように変化して行くのか、それを見定めなければなりますまい」

 

「えぇ、そうですね。マデューカスさん、陸戦部隊を地上へ。負傷者の救護、並びに戦略兵器の安全性の確保を」

 

「イエス・マム!!」

 

マデューカスの復唱に合わせてトゥアハー・デ・ダナンが海を泳ぐ。

発射された核弾頭ミサイルはガンダムが阻止したが、まだまだ貯蔵されている核ミサイルは大量に残っている。

破壊された建造物などが崩落し、もしも影響を与えてしまっては取り返しの付かない事態に陥ってしまう。

そうならないようにテッサは壊滅状態の基地に部隊を送り込んだ。

 

(これは調査する必要がありますね。ウェーバーさんが言っていた、相良さんとかなめさんの同級生。名前はヒイロ・ユイ)

 

以前に1度だけ会った事があるテッサは、ヒイロを頭の視野に入れる。

尾行していたクルツの報告と、高校生らしからぬ行動がずっと何処かで引っ掛かっていた。

陣代高校への潜入、それがどのような結末を向かえるのかは今はまだ誰も知らない。

 

///

 

透き通った青空はどこまでも広がり太陽がさんさんと輝く。

心地よい風が髪を撫で、かなめの長髪を揺らしてくる。

朝に訪れた教室にはすでに生徒が来ており、グループで囲みあって和気あいあいと楽しく話をしていた。

自分の机へカバンを置き、すぐ後ろの席を見てみると姿は見当たらなかったが同じようにカバンと荷物が置かれている。

教室全体を見渡し本人が何処に居るのかを探すかなめは、窓際の隅で風間と話している人物を見つけた。

 

「すぐにカメラが買えないなら、しばらくは僕のデジカメを使ってもいいから。県大会の予選が始まる前に各部活の写真を撮って、それを来年の部活勧誘ポスターに使うんだ。練習が忙しくなってくると邪魔になっちゃうからその前にね」

 

「わかった」

 

「ならこれが部活を廻る予定表。あまり緊張しないで、失敗してもいいから」

 

風間が手渡すプリントを受け取り、すぐに目を通す。

それには様々な部活の練習時間がおおよそで印刷されていた。

運動部は毎日夕方遅くまで練習しているが、屋内で活動する部活は週に2、3しかしていないモノもあり、所属しているか担当の教師に聞かないとそれがいつなのかわからない。

事前に調査した風間は、わざわざ聞きに行ったり移動する手間を省けるようにと思い彼に渡した。

視界に入れた文字をすぐに脳へインプットし、時間効率を考えて訪問する順番を組み立てる。

 

「風間……」

 

「うん? わからない所でもあった?」

 

「今日中に終わらせても構わないな」

 

「えっ!? いいけど、全部を今日中には無理じゃないかな?」

 

「お前には出来ない。俺には出来る」

 

そう言い放つと彼は自分の席へと戻って来る。

驚く風間とは対称的に、当然だとばかりに堂々とした態度で高圧的に返事を返す。

強引に話を切り上げ戻って来た彼にかなめは声を掛けた。

 

「おはよう、ヒイロ君」




これでアニメの第1期とオリジナルパートは終了。
日常編をちょっとだけ進めて次からはTSR編の始まりです!!
ギスギスした戦闘とはしばらく離れてドタバタなコメディー……を上手く書けるかどうか。
まだまだ苦手な事が多い現状。

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