真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

59 / 137
58話 プロジェクトイックス

I(インターセプト)D(ドール)? ……このサイズでハードディスクが1T(テラ)だと!?」

 ペストXさんを走査(スキャン)魔法で解析したドワーフが唸る。

「ちょっと! CPUが500GHzってマジ?」

 チックウィード(ロリエルフ)も驚いてるな。

 まあ、ペストXさんのスペック設定はすごいもんなあ。

 それぐらいないと自律行動や素早いGへの対応なんてできないのかもしれないけどさ。

 ホイホイさんが133GHzの350GBだから、かなりのハイスペックなのはたしかか。

 

「ビニフォンと関係ないもん出してとか思っちゃったけど、こいつの技術は応用が利きそうだ」

「だろ? オボロの合体機構やミクスドフレームもさ、あとで巨大ロボ作る時に役立ちそうな気がしね?」

 まあ、サイズが変われば要求されるものも変わるだろうけどさ、無駄にはならないと思う。

 だからこそ、ペストXさんを開発部(ここ)に持ってきたんだし。

 

「ただね、今のままだとコンバットさんを襲うんだよ、この子は」

「襲う?」

「ライバルメーカーの商品だからね。それで、ソフトは改修してほしい」

 コンバットさんといっしょに置かなければいいだけなんだけど、万が一ということもある。

 俺のコンバットさんには愛着があるから破壊されたくないし。

 

「ふむ」

 レーティアがスタッシュから1体のフィギュアを取り出した。

 いや、これはコンバットさん? ……微妙に違うな。金髪だし。

「コンバットさんを解析して私が作ったカンプさんだ」

「ヤー!」

 ビシッと敬礼するカンプさん。ドイツ語仕様なのかな?

 

「いつの間にこんなものを」

「スキャンの魔法を教えてもらったのでな、試しに煌一のコンバットさんを解析したんだ。そうしたらできそうだったから作った。部品はここで入手可能なものを使ったから性能は劣っているが」

 さすが天才。

 レーティアに相談してよかったよ。

 

「……いい? ペストXさん起動させるよ。やばそうだったら、すぐにカンプさんを避難させて」

「わかった」

 ペストXさんの電源を入れ、カンプさんと同じテーブルに置くと、いきなり2体が戦闘態勢に入る。

「緊急事態発生。12時の方角に敵兵侵入! 直ちに迎撃・排除します!」

 攻撃を宣言し手持ちの銃を向ける金髪のI・D(カンプさん)

 無言で後腰に差した2本の飛燕ナイフを抜く赤髪ポニテのI・D(ペストXさん)

 

「止めるよ」

 俺は慌てて2体を離し、電源を切る。

 ペストXさんはナイフを抜いてたんで、掴むのがちょっと怖かった。

 

「もう止めるのか?」

「あのままだとカンプさんが破壊されちゃったからね」

 コンバットさんよりも性能が低いというカンプさんなら敗北は必至だろう。ペストXさんにはオボロもあるし。

「そうか。結果がわかってるなら、無理にテストする必要もないな」

 カンプさんをスタッシュにしまうレーティア。

 もうちょっと見せてほしかったな。

 

「スキャン魔法か。いいなあ」

復号(デコード)魔法も覚えたぞ」

 ビニフォンでレーティアのファミリアシートを確認してみる……本当だった。他に水系の魔法も増えている。

 さすが天才か。

「いいなあ。俺も教えてほしい」

「煌一ならすぐだろう。ドライツェン、煌一をスキャンしてやってくれないか?」

「煌一をか? よくわからんが……」

 言いつつも俺をスキャンする律儀な十三。

 なるほど、これがスキャンか。構成材質や構造を分析するのか。……自分の細胞、いや原子レベルにまで調べられているような感覚がする。それほどまでに十三のスキャンのレベルが高いのかもしれない。

 

「どうだ?」

「ふむ。変身魔法を使っているせいか、別段普通の人間と変わらん。……女神の加護は強力で、スキャンはできんかった」

 そこまでわかっちゃうのか。

 でも、神憑きのエロ神のことは言わなかったな?

「煌一は?」

「うん。ちゃんと習得(ラーニング)できたみたい」

 ビニフォンで俺のプレイヤーシート(キャラシー)を呼び出しながら返答する。

 相変わらず俺の魔法使いのスキルは便利だ。

 便利ゆえに捨てられないのが問題なんだけどさ。

 

「なんと。そんなあっさり覚えられる魔法ではないのだぞ」

 驚く十三。

 そんな高難易度の魔法なのか。フォロー入れとこう。

「十三のスキルレベルが高いおかげだよ」

「そんなものなのか?」

 おかげでちゃんと1レベルでマスターしてるからね。

 後で使いまくろう。

 

「次はデコードだな。チックウィード、頼めるか?」

「ふふん。ドワーフの簡単魔法のように上手くはいかないと思うけどね」

 差し入れのお菓子の包みを剥きながら頷くチ子。

 ヘンビット(アゴルフ)ではなくロリエルフに頼んだのは、そっちの方がレベルが高いだろうか?

 

「いい、いふはよ」

 ……とりあえず頷いとくけど、お菓子を咥えたまま試さないでほしい。俺の頭に触れる小さな手がお菓子のカスだらけなんだけど。

 あっ、キタ。なんか脳を調べられているようなそんな感じ。

 ってことはさ。

「もしかして俺の考えとかばれちゃったの?」

 魔法を終え、右手で菓子を口に押し込んで一気に飲み込んでから、チ子が答える。

「ん、精神防壁持ってるでしょ? なら読めないと思うよ」

「そんなもんなの?」

「うん。脳ってのはワンオフなOSみたいなもんだからデコードできても解析も面倒だし」

 ああ、復号はできても、そのソースプログラムを読み解くのはまた別の問題なのか。

 

「で、どうよ?」

 手をパンパンとはたいてカスを落としながら聞くロリエルフ。

「ありがとう。バッチリ覚えたよ」

「げっ。なんなのよアンタ」

 なにその反応。あんまりじゃないさ。

 なんなのって言われても説明したくないスキルだから教えないよ。

 

「そんなことより、ビニフォン量産型は進んだ?」

「まあね。もうすぐ雛形が完成するわ」

「もう? 早すぎない?」

 見せてくれた試作機はまだ少し分厚いものの、ちゃんとスマホっぽくなっていた。

 ガワは木か。これはこれで味があるな。

 

「ふん。見本があるんじゃ。しかも劣化コピーでかまわんのなら、なんとかなるわい」

「……CPUやメモリの性能が低いんで、処理速度はどうしょうもないけどね」

 ああ、そっちの課題もあるのか。バブル期だとペンティアムもまだだっけ。386か486あたりか。

 魔法や謎生物のパーツでは解決できないのかな?

「それもレーティアの嬢ちゃんが工作機械の設計図を書いてくれたから、解決は時間の問題なんだろ?」

 ヘンビットの発言に頷くドワーフたち。

 あれ? ドワーフの人数が増えてるな。この計画の賛同者なのかな。

 

「ああ、精度の高い工作機械を用意したかったからな。いきなりは無理だから出来た機械で次の機械を作って、徐々に精密作業ができるようにしてるんだ」

「おかげで超精密作業スキルで作らずに済むわい」

 レーティアもすごいけど、なんですかそのスキル?

 聞いてみたら髪の毛より細い半田付けすら余裕になるらしい。物作りスキルなのでGPもかかるから多用できないのが難点とのこと。

 にしてもスゲェ。俺も覚えたい。

 

「だがそれでもペストXさんのCPUはキツいな」

 500GHzだもんなあ。ホイホイさんも用意した方がいいのかな?

「多少スペックは落ちてもかまわないから」

「そうか」

 あっぱれ世界でもオーバーテクノロジーになるだろうし。

 ……剣魂とかあるからそんなに気にすることないのかな?

 

 

 休憩後、すぐにノートパソコンを操作するレーティア。

 あれはあっぱれ世界から持ってったものだね。

 ペストXさんの図面でも書いているのだろうか?

「ペストX(イックス)さんだな」

 またドイツ語?

 なんかカッコいいな。

 

「そうだ、あれのテストは終わったのか?」

「あれって、あれか?」

 レーティアの質問に表情を曇らせる2面の連中。

「あれって?」

「私が開発した直腸洗浄機能付き便座だ」

 ……マジで開発してたんですか。

 というか、もう完成しちゃってたんですか。

 だから水系の魔法が増えていたのか。

 

「ありゃ、スッキリすんだが、なんかこう何度も使うとやばそうでいけねえ」

 カミナも試したのか。

「まあね。A感覚に目覚めそうで怖いよ。ああ、性能自体には全く問題なかったよ」

「初めて使った時はビックリした。麗羽たちなら喜ぶんじゃないか?」

 ミシェルと一刀君も経験済みと。

 大変だったんだねえ。

 

「そうか。こっちが一段落したら量産するから本拠地と屋敷に設置してくれ」

「わ、わかった」

 またトイレ工事のスキルレベルが上がりそうだ。

「あれも、売れますわ! ってワルテナが喜んでたぜ」

 売るってどこにだろ?

 あっぱれ世界で売るわけにはいかないだろうなあ。

「うん。そのことで今日、運営の人がくるってワルテナが言ってたんだけど」

 運営の人って瀬良さん?

 

「お待たせしましたー!」

 タイミングがいいのか、それとも休憩終わった後にきて悪いのか、ともかく瀬良さんがワルテナとともに現れた。

「おお、天井さんもいますね。ちょうどよかったー!」

 妙にテンション高くない?

 この人も徹夜明けなんだろうか。

「俺が小さくなったことには驚かないの?」

「ワルテナさんに写真見せてもらってますから!」

 ……こないだ会った時にビニフォンで写真とられたっけ。

 

「瀬良さん、昇進おめでとうございます」

「あ、ありがとうございます! これ新しい名刺です!」

 貰った名刺を見ると役職が支部長代理になっている。

 そんな人が直接きちゃっていいのかな?

「階級は上がっても、人手が増えたわけじゃないんですよ。役立たずというか邪魔者がいなくなって減った仕事はありますけど、かわりに増えた仕事も多くて」

「た、大変そうですね」

 業務用のコーヒーメーカーで淹れたコーヒーを差し出すと、ブラックのまま一気飲みする瀬良さん。

 うわ、相当しんどそうだ。

 

「ビニフォンが完成したら、さらに仕事増えちゃうんじゃないですか?」

 納入先や納期とかで。

「いえ、そこらへんは大丈夫です。あ、コンビニエンスカード機能の使用許可も貰ってきちゃいました!」

 レディース向けっぽい光沢のあるビジネスバッグからピラっと1枚の紙を取り出す瀬良さん。スタッシュ使えばいいのに。

 ……知らない文字で書かれてるんで読めないけど、きっと使用許可なんだろう。

 

「さすがね。仕事が速くて助かるわ。以前だったら半年ぐらい待たされたんじゃないかしら?」

「1年以上だろ」

 チ子たちの発言で今までの運営の酷さがわかった。全部瀬良さんの元上司のせいかどうかはわからないけど、いなくなってくれてよかった。

 

「それでですね、どんな進捗状況ですか?」

「取りあえずは動く試作機が完成してる。まだ遅すぎて電話以外は使い物にならないけど」

 さっきの試作機を渡すチ子。

 彼女が開発部長っぽいポジションなんだろうか。

 そういやダイ子見てないな。自分の仕事してるのかな。

 

「すごいじゃないですか!」

「それと、直腸洗浄機能付き便座も完成した」

「ワルテナさんから伺っています。完成品を頂いてもいいですか? GPはお支払いしますので」

 むう。そんなに欲しがるような物なんだろうか?

 俺としては怖くて使えない気がするんだけど。

 

「うん。これが説明書だ。洗浄には魔力を使うから時々補充してやってくれ」

 電気じゃなくてMP式か。まさかマジックアイテムをトイレに置くことになろうとはね。

 ……もしかしてそれがこの開発部の商品第1号?

「評判が良いようでしたら、追加注文をすることになると思いますけどよろしいですか?」

「あまり大量は無理だ。それにまだ使用実績が少ない」

「ドワーフに人間、エルフだけだ。他の種族には責任はもてんぞ。耐久度に関してはドワーフ製の部品が多いから心配はいらんが」

 ドワーフとエルフも試していたのか。

 チ子も? ……いかん、妄想しちゃ駄目だ。

 

「それでかまいません。こちらでも試して問題があれば報告します」

 名も知らないドワーフから大きなビニール袋に入れられた便座セットを受け取り、スタッシュにしまう瀬良さん。

 ついでなので、俺も瀬良さんにビニフォンを渡すことにする。忙しいようなので、MP補充して成現(リアライズ)時間を延ばしておくか。

「はい、瀬良さんの分。半年ぐらいは持つから」

「いいんですか!」

聖鐘(ホーリーベル)が入荷したらすぐに連絡してほしいからね」

 ゾンビタウンとなってしまったトウキョウ解放のために必要なアイテムが入荷待ちって状況で、担当の人が忙しくて連絡できないってのは困るからね。

 

 なかなか繋がらないってのは、通販サイトで秒殺だった人気商品の予約を思い出す。

 せっかくあの超合金の予約に成功したのに、サイコロ世界に呼ばれちゃったんだもんなあ。支払いはカードだからキャンセルされないでそろそろ届いてるはずだけど、どうなったかな?

 部屋ごと俺がいなくなってるのがわかって大騒ぎになってたりして。

 電話はまだ通じてるみたいだから、実家に連絡入れといた方がいいかなあ?。

 あ、俺今若くなっちゃってて、声も変わってるんだっけ。

 どうしたもんかな。弟にメールだけでも出しておくか……。

 

「わかりました。涼酒さんだけじゃなくて天井さんにも連絡した方がいいんですね」

 ……あの駄神、瀬良さんにも信用ないみたいだ。

「よろしくお願いします。あと、小隊の人数枠が増えてたんだけど、剣士が増やしたの?」

 気になっていたことを聞いてみた。

 剣士も増えたんならすぐに教えてくれればいいのに。そんな連絡すら怠るから信用されないんだよ。

「いえ、それは運営からのお詫びです。普通なら無料券あたりをお渡しするのですが、今回の元上司の不始末はその程度ではすまないだろう、との上からの判断です」

「お詫びでそこまでするなんて破格すぎない?」

 ソシャゲのお詫びだって回復アイテムぐらいしかくれないのに。

 

「運営の上層部も師匠たちに期待してるのですわ」

 ワルテナ、この前のメールは本気だったのね。まさかマジで師匠と呼ばれるとは思ってなかったよ。

 その原因となる英霊はもう復活させたのかな? 会ってみたいんだけどな。

「はい。みなさんも救済があるとは思いますが、がんばってくださいね」

 本当に忙しいのだろう。瀬良さんはビニフォンの使い方を一通り聞いたら、すぐに開発部を去っていった。

 受け取った便座のGPはワルテナに渡して配分を決めてもらうか。

 

「あなたたちは諸葛亮さんと鳳統さんですわね? 私はワルテナ。この2面の修行神の分霊(わけみたま)ですわ」

「は、はい」

「よ、よろしくおねがいします」

 いきなり戦女神に自己紹介されて少し緊張してるロリ軍師2人。

「そうかたくならないでもよろしいですわ。私、あなたたちとお話したいだけなんですの。師匠、お2人をちょっとお借りしてもよろしいかしら?」

「……腐教はほどほどにしてね」

 恋姫シリーズの情報を持っているワルテナがあの2人をってことは目的はそれしかないだろう。

 趣味の話は楽しいから少しはしてもいいと思うので、止めはしないけどさ。

 

「それじゃ、帰る時に連絡入れるからね」

「ふふ。悪いようにはいたしませんわ」

 ポータルで2人が連れてかれちゃった。

 オタ話だけなら俺もついていったんだけどなあ。

 

「いいのか?」

「うん。ワルテナとちょっと濃い話してくるだけのはずだから。……美羽ちゃんたち遅いな。迷子になってるのかな?」

 食堂にいったはずなのに帰ってこない美羽ちゃんと七乃をマップ表示。

 ああ、やっぱり迷子になってるっぽい。

 ビニフォンで連絡する。

 

『煌一、ここはどこなのじゃ?』

「ええと……冷蔵庫? なんでそんなとこにいるの?」

『迷ったのじゃ! ここは寒いのじゃ!』

 美羽の声が聞こえたのか、レーティアはノートパソコンでの作業を中止。

 俺からビニフォンをひったくって通話先の美羽に告げる。

「待ってろ、お姉ちゃんがすぐに行く!」

 

 廊下にとび出したレーティアを追う俺たち。

「なんだ、みんなきたのか」

「そりゃね。俺たちだけじゃあそこにいてもやることない」

 開発部で仕事できるのって、今のとこレーティアだけだもんなあ。

 俺は見本品の準備だけ。クランとヨーコはミシェルとカミナに会いたいだけなんだろうし。

 

「うう、寒かったのじゃ……」

「遅いですよ、もう。風邪ひくとこだったじゃないですか」

 愚痴りながらも美羽ちゃんと温めあっていた七乃の顔は食堂についても緩みっぱなし。

 クシュンと可愛いクシャミをした美羽ちゃんにジンジャーハニーティーを渡すレーティア。

「ほら、温まるぞ」

「……ハチミツの味がするのに辛いのじゃ」

 ふうと一息ついてからの美羽ちゃんの感想だった。

 生姜入りだからね。それで余計に温まる。

 

「あの巨大な魚が今朝のサメ肉ですか」

「鮮やかな色でしたねー」

 あの後またドンさんがきたのか、巨大ザメが増えていた。その増えたサメも収納できるほど冷蔵庫も巨大だった。

 稟と風の感想に冥琳も頷いている。

「あれほど異様な魚は知らない。異世界の魚といわれれば、なるほどと頷くしかあるまいよ」

 

「あの魚、おいしかった」

「恋殿、ねねのすたっしゅにも保存したのでまた食べられますぞ!」

 冷蔵庫に行ったついでにまたサメ肉を貰った。

 4面本拠地(アパート)大部屋の冷蔵庫と同じく保存の魔法も機能しているようで、状態も悪くない。凍ってるわけでもないので切るのにも苦労しなかったし。

 俺のスタッシュだけじゃなくて、スタッシュスキルの使い方を覚えるついでとして恋姫のみんなにも収納してもらった。

 あ、凍えていた美羽ちゃんと七乃は先に冷蔵庫から出てもらったからね。

 

「勝手にもらってだいじょうぶなんでしょうか?」

 不安そうな亞莎ちゃん。

「だいじょうぶだよ。使わないからあそこに置いているんだ。それにね、駄目だったらスタッシュには入れられないから」

 スタッシュの仕様を説明する。他人の物は収納できない等。

 昨日、華琳の七星剣を春蘭がスタッシュに入れていたから、借りた物は仕舞えるみたいだな。

 

「本が入るのはいいですねー。たくさんの本をいつでも好きな時に出せますー」

 うっとりしてるのは穏。

「本で興奮するのを抑えるのは試してみた?」

「はい。えむぴいが減りましたけど、最大えむぴいは増えましたー。えむぴいは時間によって回復するみたいですねー」

 さすが軍師、説明しなくてももうそこまでわかったのか。

 

「稟は?」

「そうそう興奮など」

「華琳さまがいなければ稟ちゃんの妄想の発生率はぐっと下がるのですよー」

 稟の言葉を遮って風が事情を教えてくれた。

 なるほど。なら、実験してみるかな。

「稟、これを見てくれるかな?」

 俺が見せたのはビニフォンに保存されている華琳の写真。

 別にセクシーショットというわけではない。浴衣の写真である。

 

「こ、これは!」

「浴衣っていうんだ。……浴衣の時は下着はつけないらしい」

 嫁さんたちはつけてたけどね。それは教えない。

「な!」

 咄嗟に鼻を押さえる稟。

「稟、魔力で鼻血を堪えるって強く思うんだ」

「は、はい……あれ?」

 押さえていた手を離しても、その手は綺麗なままだった。

 

「おお、上手くいったようですねー」

「あ、ありがとうございます!」

 ビニフォンで確認すると稟のMPがかなり減っていた。鼻血を堪えるだけでこんなに減るの?

 今の量だと3回連続で堪えたらMPが尽きるほどだ。

 ……いや、これは最大MPを上昇させやすいってことでもあるか。

 

「稟、ビニフォンで自分のファミシーを呼び出してMPを確認してね」

「……けっこう減ってますね」

「うん。零になると堪えることはできなくなるから、今のままだとそんなに鼻血には耐えられない」

「そんな!」

 泣きそうな顔しなくても。

 可哀想に思ったのか、風もフォローしてくれる。

「だいじょぶなのですよ。えむぴいは使えば使うほど最大値が増えるのですよね?」

「うん。MPだけじゃなくて、他の能力も使うほどに鍛錬度や熟練度が貯まって、それが一定以上になると能力が上がる」

「ならば、いずれは華琳さまの閨へも!」

 あ、またMPが減った。

 稟は鍛えがいがありそうだ。

 

 




イクスなのかイックスなのか迷いましたがイックスにしました

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。