真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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41話 赤子人形

 この契約空間もどきでも、女神の呪いは効果があるらしい。

 愛紗と蓮華はやはり、ぬいぐるみだから効果がなかったのだと確認できたのはまあいいとして、問題は袁紹だ。

 今の袁紹は蛇蝎のごとく俺を嫌っていることだろう。

 

「あれが、この前説明した俺の呪いを受けちゃった状態」

 袁紹を指差して、愛紗と蓮華に説明する。

「煌一殿の素顔を見てしまうと、女性は異常なまでに煌一殿を嫌いになるという呪いか」

「曹操たちはその呪いを避けるために煌一さんと結婚したんだったわね」

 ……うん。

 俺のことを好きでってのは梓だけかな。その梓も設定改変によるものなんだけどさ……。

 

「なんだと! 貴様が華琳さまと結婚しただと!?」

「だからそう言ってるじゃない! そんな理由だったのね!」

 眼帯と猫耳のぬいぐるみが俺につかみかかってくる。

 指の無いぬいぐるみだからそれはできないけど。

 

「い、言われる前に言っておくけど、華琳たちと別れるつもりは一切ないから!」

 ぬいぐるみの間に先に宣言しちゃった。

 元に戻してからだとビビって言えなくなるかもしれないからね。

「なんだと貴様!」

「そんなこと許されるわけないでしょ!」

 2人が抗議するけど、ぬいぐるみだからそんなに怖くない。

 

「そもそも、なんで華琳さまがその呪いを避けなくてはならないのです?」

「そですよー。嫌いなら嫌いのままでもかまわない、とするはずなのですよ」

 眼鏡のぬいぐるみと、頭にさらに小さなぬいぐるみをのせたぬいぐるみ。これは、郭嘉と程昱かな。

 

「ふん。恩人を嫌うわけにもいかぬというのがわからんのか」

「恩人だと?」

「貴様らも煌一殿が我らを救い出したのは覚えているだろうが!」

 愛紗が一喝する。

 恩を返すために華琳が俺のモノになってくれるってのが、嫁入りの始まりだったような気もするな。

 

「うん。真剣な顔で私たちを助け出してくれるのはかっこよかったよ!」

 これは、劉備のぬいぐるみか。

「たしかにこの人ならいいかなーって」

「ええっ! 顔はいいけれどおじさんじゃない」

「姉さん、華琳さまの夫よ」

 で、これが張三姉妹か。

 なんか照れるな。格好いいってのもいいけど、華琳の夫って言ってくれるのはもっと嬉しい。

 

「ありがとねっ、おじさん」

 えっと、このぬいぐるみでもわかる太眉の子は、馬……馬、馬……馬岱ちゃん?

 たしかそう。真名ならすぐに出てくるんだけどなあ。

 

「煌一さんはそれだけではないわ。人形にされた者を元に戻すことができるの。曹操は煌一さんの力で元に戻ったのよ」

 蓮華が俺をかばうように前に立ち、能力を説明する。

 ぬいぐるみだと国宝級という美尻もよくわからない。残念。

 

「煌一殿、桃香様を、皆を助け出していただきありがとうございます。約束通りこの身を差し出しますゆえ、なにとぞ、皆を元の姿に戻してください!」

 いや、あのね。誤解されそうなことを大声で言うのは止めてくれませんか。

 だいたい、そんな約束もしてないでしょ。

「あ、愛紗ちゃん?」

「私からもお願いする。嫁にでもなんでも、好きにしてくれてかまわない!」

「蓮華さままで!?」

 蓮華が俺に向き直って、以前のように2人して両手をついてお願いしてきた。ぬいぐるみなので、よつんばいになってるようにも見える。

 

「皆を人質に蓮華を嫁にとろうっていうの?」

 これは孫策か。ぬいぐるみでも華琳並みに強い殺気が怖い。

「そんな約束なんかしてないっての!」

「貴様ぁっ、蓮華さまを誑かし、弄んだというのか!」

 甘寧か。褌だけど、ぬいぐるみじゃ嬉しくないな。

 

「愛紗、ふられちゃったのだ?」

「なんでそうなる?」

 あれは張飛だな。猫の髪飾りが大きめにディフォルメされている。

 

「今はちょっと問題があってすぐには戻せないんだけど、全員ちゃんと元に戻すから安心して。華琳とそう約束したんだからさ」

 嫁入りうんぬんはスルーして、話を戻した方がよさそうだ。……戻そうとしたんだけど。

「約束……そう、わかったわ! 大切にしている私たちを人質にして華琳さまと結婚したのね、この外道!」

「ちが……」

 あれ? そうだったっけ?

 猫耳ぬいぐるみに言い返せなくなってしまう俺。

 

「図星なのね!」

「貴様! そんな結婚認められるか!」

 猫耳と蝶眼帯が再び俺に掴みかかってくる。

 もし、ぬいぐるみじゃなくて元に戻っていたら、俺は殺されていただろうな。

 

「でも春蘭さま、華琳さまは別に嫌そうじゃなかったですよ」

「なんだと?」

 左右に広がるピンクの大きな三つ編みを持つぬいぐるみ。これは許緒ちゃんか。

 早めに救出できただけあって、華琳の様子を知っているのだろう。

「はい。むしろその方の話をなさる時は楽しそうでした」

 傷痕まで再現されたぬいぐるみは楽進。

 彼女も2度目のクレーンゲームチャレンジで救出できた1人。

 ……嫌そうじゃないのか。楽しそうなのか。

 よかった。華琳は結婚に後悔してないんだね!

 

「そですねー。よく他の女性たちとお尻でのしかたについて楽しそうに話してるですよー」

 ぶっ。程昱、なんてこと言うのさ。

「あのね、璃々、おねえちゃんたちのお話、よくわからなくて気になってたの。おしりでするってなにをするの?」

 一際小さいこのぬいぐるみは璃々ちゃんか。

 華琳、こんな小さい子のぬいぐるみの前でなに話してるんだよぉ……。

 

「そ、それはね、君がもっと大きくなってからじゃないと……」

「なら、鈴々は大きいから教えてもらえるのだ!」

「お前は小さいだろ!」

「なんだと、ハルマキ!」

 ロリ武将2人がケンカを始めてしまった。

 まあ、ぬいぐるみなんで微笑ましいぐらいだけど。

 

「はいはい。君たちも大きくなってからね」

 2人のぬいぐるみを片手で1人ずつ持ち上げてケンカを止める。こら、暴れないの。

 

「あの、わたしたちをすぐに戻せない問題ってなんでしょうか?」

 このベレー帽は孔明ちゃんか。

「私たちで解決できることなら協力する」

 この褐色眼鏡は周瑜。ちゃんと臍出しのぬいぐるみになっている。

「軍師さんならいい考えが浮かぶかな? 住居と食料の問題なんだけど。今、君たちを戻しても住むところと食べるものが用意できない」

 食料は数日ならなんとかなるかもしれないけど、すごく食べる娘がいるでしょ。俺が今持ってる2人のことだけどさ。

 住むとこがないのはもっと問題だし。

 この面、モブがいないんだから、空き家が使用できればいいのに。

 

 俺が現状を詳しく説明すると、軍師ぬいぐるみたちが頷く。

「なるほど。そういうことですか」

「元の世界に返してあげられるかはわからない。干吉たちがきたことから考えると、君たちがいた世界はもうないのかもしれない」

「人形にされてからだいぶ時が経っている。もしも私たちがいた大陸が残っていても、今さら私たちを迎えてくれる場所はないかもしれないわね」

 孫策の言う可能性もあるのか。

「その、ふぁみりあつうのになって戦うのもおもろそうやないか」

 この妙な和服っぽいのは張遼。

 戦好きなんだよな。

「そっちの酒も飲んでみたいしな」

 酒好きでもあったっけ。

 

「ハチミツ! ハチミツはあるのかのう?」

「あるよ。甘いものは他にもあるし」

 袁術ちゃんはファミリアになっても役に立ちそうにないなあ。可愛いからいいけど。

「甘いもの?」

「気になりますねー」

 劉備と程昱が顔を寄せる。

 

「まあとにかく、元に戻すだけ戻して、いきなり放り出すわけにもいかないでしょ。身の振り方を決めるぐらいまではさ、面倒を見たいと思うから。俺を信じて待っていてくれとしか言えないよ」

「ほう。身の振り方とな。……仕官先かそれともまさか嫁入り先でもあてがうつもりか?」

 ぬいぐるみでもわかる爆乳の持ち主は源さん。……いや、厳顔か。大工になってどうするよ。

「嫁入りってのは待ってよ。相手にアテないから。できればファミリアになってくれるとGPを集めやすくて助かる。かな?」

「そちらの通貨、じいぴいですか。住居問題を解決させた後もまだ必要なのですか? い、いえ、資金が大切なのはわかりますが……」

 片眼鏡(モノクル)でキョンシーっぽい衣装なぬいぐるみは呂蒙だっけ?

 

「俺の固有スキルはね、GPを多量に消費するんだ。MPで代用してもいいんだけど、それだと時間制限がある。だから君たちを元に戻せても定期的にMPで固有スキルを使いなおさないといけないんだ」

 そのMPのために俺はまだ、魔法使いなわけなんだし。

 恋姫†無双ぬいぐるみを全員助け出せたけど、華琳はまだ本番許してくれないだろうなあ。はあ……。

「そんな大きなため息をつくほど大変なのか」

 俺のため息を勘違いして気遣ってくれたのは、公孫賛か。ぬいぐるみだと、どっかの若さまで通用しそうな髪型かもしれない。

 

「まあ、大変だよ。君たちを助け出すのに使ったメダルだって高価だったしさ、うちの神様は駄神だから……そんなのに仕えてもらうのも悪いか。ファミリアに誘いにくいなあ……」

 せめて剣士がもうちょい……もっともっと、しっかりしてくれればなあ。

 このぬいぐるみたちを元に戻したとして、どうしてもらうのが一番なんだろう?

 救出を優先して、先送りにした問題に俺たちは頭を悩ませるのだった。

 

 

「……何時だろ?」

 目が覚めたので時計を確認する。まだ外は暗いな。灯りは……いいか。俺の腕枕で寝ている華琳を起こしちゃいそうだ。

 ……半裸って言ってたよな。どんな格好なんだろう。すごく見たいけど、ぬいぐるみたちにも見られてるわけで。

 布団をめくって半裸の美少女を堪能なんてできやしない。

 

 意識したら朝の生理現象が悪化したような。

 仕方ない。トイレに行くことにしよう。

 華琳を起こさないように慎重に腕を抜いて、枕をあてがって……ぬいぐるみたちに起動状態のジュニアを見られないように暗いままで移動する。

 

 トイレでスッキリした俺は、台所に移動して水を1杯摂取。

「ふぅ」

 二日酔いの身体に染み渡る。

 寝なおすか。それともシャワー浴びるかな?

 

「起きたの?」

 華琳も台所へとやってきた。その姿はネグリジェ? いや、これはベビードールってやつか?

 シースルーな丈の短いワンピースで、とてもセクシーだ。

 こんな服持ってたの?

 

「気に入ったかしら?」

「う、うん。とても……魅力的だ」

 どうしよう。やっと待機状態になったジュニアが元気になりそう。

「1日遅れにされた分、期待してたのよ」

「ご、ごめん」

 華琳たちの夜のローテーションに1日休みをもらったばかりだった。

 頭を下げたままの俺の耳に囁くセクシー幼妻(おさなづま)

「まだ時間はあるわ。2日遅れの分、楽しませて」

「で、でもぬいぐるみたちに見られちゃ」

 言いかけた俺の唇を奪って、侵入してくる華琳の舌。

 ……再起動、完了しちゃいました。

 

「まだお酒臭いかしら?」

「ごめん」

 慌てて自分に消臭魔法をかける。便利な魔法だ。これで二日酔いも治ってくれればいいのに。

「たまにはベッドでなくてもいいでしょう?」

 ベビードールの裾をちらりとめくる華琳。目に映った黒いショーツはとても誘惑的で。

 もう俺は我慢などできるはずがない。

 

 結局、台所で立ったまま。

 その後、お風呂場でじっくりと。

 早く起きたはずなのに、いつもよりも朝食の準備開始が遅れてしまった。

 朝から疲労しているし。心地よい疲れだけどさ。

 ふあぁぁぁ。このまま華琳と寝なおしたいなあ。

 

 

 いつも通り1階大部屋で朝食後、そのまま皆で会議。

「交流戦の戦果を確認しよう」 

 メダルは使っちゃったけど、他にも景品とっているからね。

 

「これは割引券と無料(タダ)券か」

「参加賞でよく貰ったやつじゃな」

 病院や修復の割引券。数枚を重ねて丸めて輪ゴムでとめて、射的や輪投げの景品になっていた。

 当たりなのはこの『病院大部屋1人無料券(1日)』の束かな。これはありがたい。

 多少の怪我なら、俺の回復魔法でもうなんとかなっちゃうけど、EPやMP等の回復に使えるのはありがたい。

「講習の割引券もあるよ」

 技やCPのことって講習で教えてもらえるのかな? もしそうならこの割引券も役に立つだろう。

 ……人数分ないけど。1人にしか使えないって、ケチくさい割引券だ。

 

「マジックカードはポータルのッスね」

 まあ、あって困るもんでもないし。

 他の未修得の魔法のだったら、俺の魔法使いの効果で習得できたかもしれないけどさ。

 

「こっちのカードは?」

「強化カードぜよ。能力やアイテムを強化できるんじゃ。前の交流戦でも優勝賞品にされるほどの品ぜよ」

 ほう。そんなにすごいものなのか。

「これはアイテム用みたいやな」

 ここの冷蔵庫のプラスとか改って、これでつけたのかな?

 

「キャラメルっぽい箱のは薬か」

宝珠(オーブ)も回復系が多いようやな」

 ふむ。

 強化はカードで、ドーピング薬みたいのは無しか。

 

「この箱は?」

 ヨーコが持っているのは、洗剤?

 受け取って説明書きを読んでみる。

「衣類修復洗剤……すごいな。これを使って洗濯することで破れた服が直っちゃうらしい」

「あ、それ、コインランドリーで売ってるのと同じやつぜよ」

 ふむ。

 コインランドリーで服が直るのは洗濯機じゃなくて、洗剤のせいだったのか。

 まだ行ってなかったな。行ってれば、この洗剤に気づいたかもしれない。

 

「でもそうなると、これはコインランドリーで買える品なのか」

「それほど高くない品ッス」

「洗濯機で洗えるもんにしか使えんからのう」

 すごいけど、実はハズレの景品だったか。

「よく使うもんじゃから、無駄にはならんぜよ」

 それもそうか。服が無くなると困るし、担当世界によっては服の入手も大変なのだろう。必需品かもしれないな。

 

「洗濯機で洗えるってことは、毛布や靴にも効果があるかな?」

「靴も?」

「運動靴とかは洗濯ネットに入れれば洗えるよ。革靴やハイヒールは駄目そうだけど」

 あと剣士の下駄も無理か。

 

「ふむ。一番よかったのはやっぱりメダルか」

「そうね。おかげで皆を助け出せたわ。ありがとう」

「よかったな、華琳」

「これで目的が1つ達成できたな」

 みんなが華琳を祝福する。

 よかった。本当によかった。

 

「で、次にくるのが、助け出したぬいぐるみたちのことなんだけど」

 契約空間もどきでのことを話す。……もちろん、お尻のことは抜きで。

 あとで華琳に璃々ちゃんぬいぐるみの前では変なことを言わないようにって、教えておかないと。

 

「袁紹に呪いが発動したのね」

「どうしようか?」

「また嫁にすりゃええじゃろ?」

「簡単に言うなよ」

 駄神をジロリと睨む。

「そうだぞ。煌一には私たちという立派な妻たちがついているのだぞ」

 ぺったんな胸をはる超時空幼妻(ようさい)クラン。

 

「なら、柔志郎のように妹分にするか、智子のように娘にするか?」

「妹はちょっと」

「あれが娘というのはないわ」

 梓の言葉を即座に否定する俺と華琳。

 

「それならワルテナのところへ預ければいいんじゃない? ファミリアになった子も知り合いなんでしょ?」

 ああ。それがいいかもしれない。

 こっちにいても役に立たない、というか邪魔になりそうな人だもんな。

 

 

「左慈ってやつ、そんなに強いんスか?」

「こちらの攻撃が全く当たらなかったのだ!」

「正直、今のままでは勝ち目がないわね」

 恋姫†無双の時と違う気がする。なんであんなに強くなってるんだろう?

 

「私たちと同じ様になにかスキルを手に入れ、使っているのでしょうね」

 なるほど。

 使徒かファミリアになっていれば強くなっているのも当然、か。

「もしかしたら、技ってやつを使っているのかも」

「技?」

「CPってのを消費して使うスキルみたい」

 CPってなんの略なんだろ?

 

「え? みんな使えへんの?」

 驚いた顔を見せたのは我が愛娘。

「智子は使えるのか?」

「マーキュリーやムーンライトになれば使えるわ」

 ……なるほど。技ってやっぱり、必殺技も含むのか。

 

「じゃあ、ゆり子も使えるのだな?」

「私はまだこの身体やこの世界のシステムがよくわかってないんだ」

 そうか。

「ゆり子はまず基礎講習だな。1人で寂しいかもしれないけど、だいじょうぶ?」

「ば、馬鹿にするな。1人で大丈夫に決まっている!」

「お姉さんがいなくても頑張るんやで」

「ま、まかせろ」

 むう。智子に対する反応がだいぶ柔らかくなっているな。羨ましい。

 

 

 昨日教えてもらった番号で電話して、再び2面へ行く俺たち。フレンド登録してるおかげか、交流戦が終わってもゲートを使用して2面に移動することができた。

 剣士たちはサンダル世界へセラヴィーの様子を見るために、柔志郎たちはゆり子を残してゾンビ世界で情報収集のために別行動することになっている。

 

「おはようございます」

 女神ワルテナはビルのような本拠地の前で俺たちを出迎えてくれた。

「おはようございます。昨日はよく眠れたかしら?」

 その質問に答えるつもりはない。余計なことも考えないようにしないと。

 華琳との早朝のプレイを必死に隠そうとする。

 

「あらあら」

 だから覗かんで下さい。

 ワルテナに案内され、応接間のような場所へ。

 ……高そうなテーブルとソファーだな。

「ふふっ。もう開発を始めるつもりなのかしら。楽しみですわ」

「それもありますけど、まずは一刀君のお礼のことで」

 昨日もらってないしね。

 オゴリの寿司は美味しかったけど、アレは別でしょ。

 

「なにがよろしいかしら? やっぱり英霊召喚?」

「いえ、俺にかかっている呪い……『女神の加護』を解除してくれませんか?」

 袁紹だけじゃなくて、他のぬいぐるみたちも元に戻したら、俺の呪いがかかってしまう可能性がある。

 それなら、呪いの方をなくせばいい。

 剣士に頼んでいることだけど、あてになりそうにない。

 この女神ならきっと解けると思う。解けると信じたい!

 

「祝福はあなたのためなんですわ」

「そんな詐欺師みたいなこと言わずに」

 解けないとは言ってないから、できないんじゃなさそう。引き下がるワケにはいかない。

「それは、あなたが悪い女性に引っ掛からないための祝福なんですわ。その加護のおかげで、見た目に惑わされない素敵な奥さんを手に入れたんでしょう?」

 そう言われればそうなのかもしれないけど。

 その前に呪いのせいで、俺がどれほど辛い思いをして生きてきたのか説明したい。

「……その理屈ならもう結婚したんだから、いらないじゃないですか!」

「左慈君がかかってるのだから、解除するわけにはいきません」

 たしかに呪いのおかげで命拾いしたかもしれないけど。

 貞操はピンチになってるんだってば!

 

「そこをなんとか」

「駄目です。私、あの(ひと)と喧嘩するつもりはありませんわ」

 くそっ。……いいさ、今は折れよう。でも諦めないからな。

 

「なら、このぬいぐるみを元に戻すので、こちらで預かってくれませんか?」

 袁紹ぬいぐるみを取り出す。

 呪い解いてくれないなら、これぐらいいいでしょ?

 

「お断りしますわ」

「……やっぱり美少年じゃないといりませんか」

 逆ハーレムというか、BLハーレム作ってる腐女神にこの願いは無理か……。

「ええ……じゃなくて!」

「別の理由が?」

 いくら袁紹が浪費家でもここならなんとかなりそうだけど。

 

「彼女は私とキャラがカブりますもの」

「カブり?」

「ええ。一刀君が気になったので、恋姫†無双をプレイしたのですわ。ですから、その女性のことも知っていますわ」

 むう。そんな理由で拒否されるなんて。

「でも、それほど似てませんよ」

 金髪美女で爆乳でお金持ち、ぐらしか共通点ないような?

 だいたい、あんたのそれは仮面(フェイク)でしょ、作ってるキャラでしょ。

 

「な、なんと言われようと、受け取りを拒否させていただきますわ」

 むう。

 英霊召喚しか選択肢はないのか……。

 

 


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