真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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15話 マサムネ

 その日は、俺以外のみんなもMP強化を行った。

 クランは固有スキル巨大化で一気に消費し、華琳ちゃんも炎骨刃で、ヨーコにはMP消費で攻撃できる銃を用意することにした。

 

 魔法銃か。マジカルマスケット銃あたりかな。古式銃(キャスター)呪唱銃(スペルガン)も捨てがたい。

 魔弾銃は魔法の弾丸を用意してヨーコのライフルで撃てばいいのかな。

 とはいえ、今から作るんじゃ時間がない。

 手近なところでと、壊れた電動ドリルをスタッシュから取り出す。ガングリップなので、銃だと思うことにする。

 そのままではさすがにアレなので、先端にドリルのかわりに銃口っぽいパーツを固定した。

 

「ヨーコ、これを銃、魔法の銃だと思ってしばらくEPを籠めてくれないか?」

「え?」

「魔力で弾を……魔法の弾丸を発射する銃をイメージしてさ」

「どういうことよ?」

 俺がEPを籠めなくてもできるかの実験。

 華琳は俺が籠めたEPじゃなくて、自身の魂があるから成現できてるようだ。

 だからもしかしたら、想いが籠っていれば俺以外のEPでも成現できるんじゃないかな。

 

「……こっち見るな!」

 渋々ながらも電ドリを構えてくれるヨーコ。その頬は赤い。

 やっぱり恥ずかしいよね。よくわかる。

「あんまりにも精神的にキツくなったらベッドで回復してね」

 俺みたいに、素材にEPを注入してよりは羞恥心でEPを消耗してそう。

 

 俺の方は、今朝方に用意したコンカもどきにEPを注入。

 もどきといっても、コンカと同じ大きさ、形に切っただけの紙だ。

 それを10枚セットで、これはコンビニエンスカードだ、と思い込むようにしている。

 

 ……虚しい。

 神のアイテムなんだからコピーできるわけないじゃん。なにしてんの?

 コンカよりも女の子増やした方が……。

 イカン! 集中しないと。これはコンカ、これはコンカ……。

 EP籠めにつきものの、EP減少によるネガティブ思考。それを回復ベッドの力で乗り切る。

 基礎講習終わったら、このベッド無料で使えなくなるんだよなあ。EP注入、できなくなるなあ……。

 

 

「これでどう?」

 見た目はまったく変わらない電ドリを受け取る。けれど鑑定スキルを使うと、ちゃんとEPが籠ってるのがわかる。

「成現には足りないみたいだけど基本イメージは出来上がってるっぽいから、後のEPは俺が追加すればなんとかなりそうだ。ありがとう」

 成現や鑑定のスキルレベルが上がったせいか、俺は籠められているEPや、その内容までわかるようになっていた。

 アパートに戻ってる時は手当たり次第に鑑定して、熟練度を貯めた甲斐があったってもんだ。

 

「魔力を弾丸にして撃つわけね」

「弾丸をどこから入れるのか、わからないでしょ? 魔力ってのがよくわからないけど、エネルギーを弾丸状にして撃つしかないじゃない」

 なるほど。外形から逆算したか。ならやっぱりもっと銃らしいのを用意すればよかったな。

「とりあえず、MP強化の練習用の銃だから強くなくてもいいんだよ。魔力はこれが上手くできれば、MPを消費できるからわかるようになるはず」

 MPを使うだけなら炎骨刃でもいいんだけど、ついでに関連スキルの熟練度も上げたいわけで。

 俺やクランのように固有スキルで一気に全MPを消費できればそれが一番なんだけどね。

 ……ヨーコの固有スキル『キス・オブ・クライマックス』を試すわけにはいかないもんなあ。

 死にそうってのもあるけど、発動条件がたぶんキスなわけなんだろうし。

 俺、ファーストキスもまだだし……。

 

 またEP消耗で落ち込んでしまった。まあ、そのおかげで成現できるまで貯まったんで早速実行。

「どう?」

 成現されたのは、電ドリの面影は残っているけど、より銃らしいデザインになっていた。スイッチ部もちゃんとトリガーになっている。

 意外とカッコいい。どんな構造になっているんだろう? 後でバラしてみたい。

「うん。あたしのイメージ通りね」

 やはり俺以外のEPでも成現できるのか。これは大きな収穫だ。

 鑑定してみると、MP訓練用魔法銃というそのまんまな名前だった。

 

 俺の身体も歩けるぐらいに回復したので屋上で試し撃ち。

「いい? 撃つわよ」

「どうぞ」

 元が電ドリだからかな、銃口が回転しだす。それに合わせるようにヨーコから魔力がMP訓練用魔法銃に移っていくのがわかる。銃口回転はそのMP注入時のアクションのようだ。

 引き金にかけたヨーコの指が動く。

 かなりの速度が出ていたため、見えるはずなどなかったが魔力の塊が銃口から射出されていったのがわかった。

「成功かな。ヨーコ、調子はどう?」

「反動が全然ないのね。……なに、それ?」

 俺を見て驚くヨーコ。魔力感知のスキルがレベル1になったのだろう。

 訓練銃の成現で全消費したとはいえ、回復量も相当な俺のMP。回復中のそれを感じて驚いたのだと思う。

 

 

 夕方まで各人のMP強化を行う。

 MP全消費自体はすぐに済むので、空いた時間は、彼女たちは読み書きの勉強。

 MP回復もしなければいけないので、片方のベッドに華琳とヨーコが座り、もう片方のベッドに向き合うようにクランが座って教えている。座っているだけでもちゃんと回復するようだ。

 俺の方は、EP注入作業。最大EPも増えてはいるけど、あまり打たれ強くなった気がしない。元が低いせいだろう。

 基礎講習が修了して、回復ベッドが使えなくなったら成現の準備が大変になるな。俺以外が籠めたEPでもできるのは助かるけど……。

 

 EPは感情値。快感やリラックスで回復するらしい。

 快感……俺がEP消耗で落ち込んだら気持ちイイことして、って頼むか。

 無理でしょ!

 使徒にされる前は勝手に想いが籠って落ち込むなんてことはなかったのに……あれか? スキルのせいじゃなくて、趣味と仕事の差みたいなもの?

 前はそれこそ楽しんでいたけど、今はEPを籠めるために妄想している。その違いだろう。

 

 なら、楽しくEP注入すればいい。

 どうすればいいかな。

 煙草? あんなものでリラックスなんてしない。臭いし、身体に悪い。

 なによりも、プラモやフィギュアがヤニで汚れる。それが許せない! だから俺は嫌煙家である。

 やっぱりリラックスといったら音楽か。アロマはよくわからんし。

 歌手スキルってのはEP回復できるかもしれないな。数え役萬☆姉妹(シスターズ)を早めに救出した方がいいのかもしれない。

 ……まあ、クレーンゲーム内の配置次第か。

 

 

 俺のHPがフル回復したので強化のためにMP訓練用魔法銃の的になったけど、足を鉛筆の太さぐらいの穴が貫通した。元がドリルだから貫通力が強いのかもしれない。

 まだMPがあまり増えてないヨーコの魔力でこの威力ですか。……籠めるMPが増えたら威力も上がるはず。訓練用じゃないなあ。ヨーコに支えられて病室へと戻りながら思った。

 ……華琳が倒れた俺に手を貸してくれなかったのはショックだった。

 

 スタッシュ強化も忘れずに行った。

 MP消費のために屋上や病院の外に出た際に空気を満タンに入れておく。

 クランが巨大化してもスタッシュの容量は変わってなかったのは残念だった。

 小隊の共有スタッシュは隊員数によって収納量が変わった。やはりこれもスキルと熟練度があるので空気挿入。スキルレベルは小隊長が担当するようだ。

 

 夕方、そろそろ帰ろうかと迷った時、メールが届いた。

「チャット起動するから見ててね。参加はまだいいから」

 成現したダミーコンカの動作確認。既に3人には渡してあり、名前を書いて各人のものになっている。

 便利なことに記名した人物の使用する文字で表示されるようだった。

 メールやステータス、マップの表示まではできたので、チャットを見るだけもできるはず。

 

 

第49初期本拠地荘会議室を起動します

煌一さんが入室しました。

剣士さんが入室しました。

柔志郎さんが入室しました。

 

 こんばんはにはまだ早いか。

 

煌一>こんにちは

柔志郎>こんにちは

剣士>押忍

 

 涼酒君、それ昼の挨拶なの?

 おはようございますの短縮形じゃなかったっけ。

 

煌一>2人とも無事?

剣士>無事ぜよ

柔志郎>はい。今日は敵ファミリアに遭遇しないですんでます

剣士>ワシらのファミリアも、早く復活させたいぜよ

 

 ファミリアも死んでも復活できるけど、プレイヤーとはシステムが違う。

 死亡してカードに戻ったファミリアは、契約したプレイヤーの元に自動的に戻り、一定時間を置いてから復活させることができるらしい。

 クールタイム。ゾンビアタック防止のためかな? でもきっとこれもGMで短縮できたりするんだろうな。

 復活は本拠地や拠点じゃないとできず、GPを消費する。だからファミリアを使い捨てにするような戦い方はオススメできない。……華琳たちを使い捨てになんてできないでしょ!

 

煌一>綾瀬駅にはついた?

柔志郎>つくにはつきました

剣士>拠点じゃなかったんぜよ

 

 え?

 田斉君担当の世界の拠点は駅じゃなかったの?

 

煌一>拠点じゃないってすぐにわかるの?

剣士>拠点だったらすぐにわかるぜよ。使徒が辿りついた瞬間に拠点として起動するんじゃ

柔志郎>どうやら、この世界の拠点が駅ってわけではないようです

 

 じゃあどうやって次の拠点を探せばいいんだろう?

 

煌一>他に拠点の情報ってないの?

柔志郎>ありません

剣士>普通は最初の拠点と同じ宗派や同じ一族の建物じゃったりするんじゃがのう

煌一>それじゃ、北綾瀬と路線が違うとか?

柔志郎>同じ東京地下鉄の駅です。JR東日本の公称駅数にも含まれていますが

 

 違ったか。そもそも隣の駅なんだから路線が違うわかないか。

 

煌一>北綾瀬駅と同じ条件の駅なら拠点の可能性もあると思ったんだけど

柔志郎>同じ条件?

煌一>東京には駅が多いからさ、全部が拠点じゃないとしても、条件が合って拠点になる駅があるのかもしれないかなって

剣士>なるほど。たしかに、そんなにたくさんは拠点ないのかもしれんのう

柔志郎>北綾瀬駅と同じ条件ですか。路線は綾瀬駅も同じですし、地下鉄なのに地上駅という点も同じ

煌一>そうなの?

 

 地上にあったから、敵の攻撃の目標にされやすかったのかな。

 

柔志郎>ならば考えられるのは終端駅であるということです

煌一>終点ってわけね

柔志郎>この付近だと、隣の北千住駅が日比谷線の終点になっています

剣士>そこへ向かうぜよ

柔志郎>焦るな、北千住は他の路線も多く乗り入れている。単独終端駅の北綾瀬とそこが違う

 

 スタッシュに入れておいた東京のミニマップを取り出し、路線図を確認するとたしかに北千住は乗り換えできる線が多い。

 では近場の終点な駅はどこだろう?

 

柔志郎>京成電鉄金町線の終着駅、京成金町駅に向かおうと思います

煌一>あれ、金町ってJR常磐線と乗り換えできるんじゃない?

柔志郎>京成金町駅とJR金町駅は乗り換えはできますが、同じ構内ではありません。別の建物、別の駅です

剣士>ほいじゃそこへ行くか。遠いんか?

柔志郎>そんなに遠くはない。JRの金町は綾瀬から2つ隣だ

 

 やっぱり田斉君は詳しい。鉄ちゃん確定かな。

 でも、駅2つとなると今日も帰ってこれないのか。

 不安だけど、路線図を見て俺はもう一つのことに気づいていた。今日の実験の結果なら使えるかもしれない。

 やはり、俺も田斉君の世界に行かねばならないようだ。

 

煌一>次こそ拠点だといいね

剣士>きっとだいじょうぶぜよ

柔志郎>アドバイスありがとうございました

煌一>気をつけてね

剣士>心配いらんわい。柔志郎もだいぶ強くなったしのう

柔志郎>またバンシーがきた時のために弾を温存しているので拳銃は使えませんが、もうゾンビ相手なら剣だけでもなんとかなります

煌一>それは凄い

剣士>ワシなんて元からゾンビ余裕ぜよ

煌一>そうだったんだ。頼りにしてるよ

 

 褒められたそうにでしゃばってきた涼酒君にもフォローを入れておいた。

 

煌一>俺の方もそろそろ基礎講習を受けるつもり

剣士>なら、もうすぐいっしょに戦えるぜよ

柔志郎>がんばって下さい

剣士>ほいじゃ、今日はそろそろ寝る場所を探さんといかんぜよ

柔志郎>おやすみなさい

柔志郎さんが退室しました。

剣士>おやすみぜよ

剣士さんが退室しました。

 

 この時間でもおやすみでいいのか迷っている内に2人とも退室してしまった。

 チャットルームを閉じよう。

 

 

「どうだった? ちゃんと見れた?」

「ええ。むこうも大変みたいね」

「ゾンビって、……あのゾンビなのか?」

 クラン、震えているの?

「もしかして、怖い?」

「こ、怖くなどないぞ! ゾンビくらい余裕なのだ」

「そう? 俺は怖い。死体なんて葬式でしか見たことないし、それが腐っているのに動くなんて想像するのも嫌だ」

 ゾンビものも、わざわざ映画館にまで行って観る気にならない。

 

「臆病者め」

「実戦なんてしたことないし、たぶん足手まといにしかならないからフォローよろしく」

「情けないやつなのだ!」

 これでクランは自分がしっかりしなきゃって思ってくれるかな?

 戦闘種族だし、戦いとなればスイッチ切り替わって大丈夫だとは思うけどね。

 

「さて、もう暗くなっちゃったけど帰ろうか」

「寝るところはあるのでしょうね?」

 なんか久しぶりに華琳が俺と口を利いてくれた気がする。

 そういえば、ぬいぐるみに戻っちゃって結局、俺のとこで寝たことなかったんだっけ。

「朝、掃除してきたから大丈夫。布団もあるし」

 薄い本や抱き枕等の見られたくない物の類は、隠蔽できているはず。

 たまに親が来襲するので来客用の布団もある。

 

「まさか、同じ部屋で寝るのか?」

「いや、それはまずいでしょ。なんだったら俺が1階の大部屋で寝ればいいし」

 3人分の布団敷くのに邪魔なソファーベッドをどかすついでに持っていって寝ればいい。

 

「ならば問題はない」

 クランも安心したようなので、アパートに帰った。

 ……4人で歩いて帰る途中も華琳が俺と距離をとっている。

 クレーンゲームをするために百貨店に寄ろうか迷ったがもう遅い時間なので諦めた。病院と同じく24時間営業かもしれないけど、明日にしよう。

 

 

 帰っていきなり困った。人数分のスリッパがなかったことを思い出した。

 アパートの玄関にあったのを借りることにする。

「ずいぶんと古臭い建物なのだな」

「俺もそう思う。トイレはアパートのよりも俺のとこのを使った方がいいと思う。ここのは和式だから」

 俺もまだここのトイレは使ったことない。

 

 自宅に戻り、コンバットさんにただいま。

 彼女はいまだに稼働中。GPによる成現の効果は永続のようだ。鑑定しても残りタイムが出てこない。

 コンバットさんの報告によれば最初にしとめて以来、ゴキブリは出てないようなので一安心。

「留守番ご苦労様」

「サー・イエッサー!!」

 

 俺の部屋を物珍しそうに物色するヨーコとクラン。フィギュアの時とは視点が違うのだろう。

 危険物は……うん。上手く隠れているようだ。

「これが一人暮らしの男の家か。もっと散らかっているかと思ったぞ」

「まあ、それなりに家事はできるしね」

 実際にキャラシートで確認すれば家事の関係のスキルレベルはそこそこ持っているのがわかる。戦闘の役には立たないけどね。

 

 俺が食事の準備をしてる間、華琳たちが入浴することになった。

 昨日はりきった料理の残りもあるので、食事の用意は楽だ。

 料理が冷めないスタッシュに感謝。

 ……華琳たち、3人いっしょに風呂に入るみたいだった。うちの風呂狭いけど大丈夫かな?

 着替えは、さすがに全員裸Yシャツというワケにもいかないか。今の華琳だと、1人でも着てくれなさそうだし。

 どうやって機嫌を直してもらえばいいんだろう?

 

 それにしても、隠形のスキルがあったら覗きにいったのかな?

 すぐに見つかりそうだなあ。

 まあ、覗く手段がないワケではない。嫌われたくないからしないけどね。

 ……見たいなあ。

 

 大部屋キッチンの冷蔵庫の中身はいまだに減った感じがしない。どれぐらい入っているんだろう?

 まさか、自動補充されているわけじゃないよね?

 鑑定したら『業務用大型冷蔵庫(改)+7』というよくわからない補正がついたマジックアイテムだった。

 家電でもプラスのついたアイテムってあるのか。

 テレビ+3だったらチャンネルが増えるんだろうか。ちょっと気になる。

 

 

「ごちそうさま」

「お粗末様」

 ヨーコもクランも箸はちゃんと使えた。料理の味にも不満はなかったようだ。

 俺の方は、湯上りの美少女3人の香りやほんのり色づいた肌にドキドキしっぱなしで味なんかわからなかった。

 

「マニュアル、借りていい?」

「いいよ。勉強するの?」

「ええ。予習は大事よ」

 さすがヨマコ先生だと感心しながらプレイヤーの書を渡した。

 一冊しかないのは不便だな。コンカでマニュアルの内容確認できないか、後で試してみよう。

 

 大部屋から自宅に戻って布団を敷く。邪魔なソファーはスタッシュに入れる。空気は先に外で放出しておいた。寝る前に再充填しておこう。

「それじゃ、おやすみ」

 美少女3人と敷かれた布団という状況にまた動悸が激しくなってしまったので慌てて大部屋へと戻った。

 

 大部屋に出したソファーベットで寝ながら3人のことを考える。

 ヨーコはMP訓練用魔法銃のおかげで魔銃のスキルを入手していた。俺の魔法使いのようにヨーコにはスナイパーやガンマンといった隠しスキルがあって銃関係のスキル習得や上昇が早いのかもしれない。

 ヨーコに必要なのは訓練よりも武器弾薬の調達だと思う。

 

 クランは固有スキルの巨大化を訓練中。やっと10秒くらいアーマードクランでいられるようになった。最大MPが初期の倍になったと思えばかなりの上昇だが、10秒だとここぞという時にしか使えないな。

 ロリ状態でも戦闘力はあるはずだけど、武器はやはり銃だろうか?

 

 華琳は炎骨刃の扱いが上達しすぎ。的である俺が死んじゃうから使ってないけど、必殺技とか使えるかもしれない。

 ただ、……冷たい。避けられてる気がする。

 やっと俺と普通に話してくれる女の子と会えたと思ったのに……。

 

「ドウナサレマシタ?」

 急にエフェクトのかかった声がして、びっくりする。

「ああ、おまえか」

 声の発生源を確認してほっとしてから、慌てて周辺を見回す。

「大丈夫デス。彼女タチニハ見張リヲツケテイマス」

「そうか」

「泣イテイタノデスカ?」

 彼に言われて自分が泣いていたのに気づいた。そんなに華琳のことで落ち込んでいたのか。

 

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、マサムネ」

 彼の頭を人差し指で撫でる。

「ソウデスカ」

 青いボディの彼の名はマサムネ。今朝、病院へ行く前の実験で成現した小型のロボットである。

 

「身体の調子はどうだ? 不具合はないか?」

「問題アリマセン」

 彼の身体は、クランのニコイチ成現のために実験として2つの素材から成現されている。

 1つは携帯ゲーム機。1つはカセットプレイヤーから変形するロボットの玩具。

 うん、音波さん。

 音波さん単体だと、彼はロボットモードで巨大化してしまうから、MP消費が半端ないはず。なので音波さんをモデルに独自設定で携帯ゲーム機から変形してサイズは小さいままのロボットを妄想した。

 携帯ゲーム機の方は一つ前の型だけど、こっちの方がディスク式なので都合がいい。カセットテープなんて今時見ないし、俺も持ってないけど、ゲーム機のソフトは多く持っているから素材にも不足しない。

 ディスクロン部隊の隊長にして情報参謀、それが彼、マサムネである。

 

「頼んでいた任務も完璧だった。助かったよ」

 撫でながらお礼を追加。

 薄い本や抱き枕を隠すのはマサムネたちにやってもらったのだ。

「彼女タチノ会話ヲ傍受シマスカ?」

「いや、それはいいよ」

 華琳が俺のこと嫌っているって確認できたら落ち込んじゃう。

「次の任務はこの世界の情報収集。誰にも見つからないでね」

「了解」

 やっぱりスパイってのは味方にも秘密の方がカッコいいよね!

 もしも、俺が我慢できなくなった時は盗撮を頼むかもしれないしさ。

 

「成現が切れそうな時間はわかるよね。その時までに俺の家に戻っていてね」

「了解」

 うーん。クールだなあ。

 ただ、予想外の性格も持っているけどね。

 

「任務の合間にコンバットさんとデートしてもいいからね」

「カ、彼女ノ任務ヲ邪魔スルワケニハイキマセン!」

 どうやらマサムネはコンバットさんに一目惚れしたらしい。

 コンバットさんを見て「可憐ダ」と言ったのが彼の初台詞だった。

 

 俺が華琳に避けられてる分までうまくいってほしい。

 コンバットさんにも心、精神を追加した方がいいのかな?

 ……余計なお世話かもしれないか。

 

 


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