真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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129話 中二男子憧れの職業

「今宵は私たちの番だ!」

 ばーんと勢いよく襖を開けて部屋に入ってくるなり、大声で宣言したのは華雄ちゃん。

 元々はもっと年上の女性なのだが、成現(リアライズ)のついでの設定改竄でろりぃな外見となっている。

 大江戸学園に通うためである。決して俺の趣味でここまで幼くしたのではない。と思う、たぶん。

 

「ウチは愛紗とがよかったんやけどなあ」

「オレももっとこう、ムッチリしたやつとの方がよかったんだけどなあ。……まさか華雄()()がそっちだったとは」

 俺が成現した魔法のアイテムを使って元の姿になった華雄を見て嘆く朱金。いやたしかに華雄は貧乳だけどさ。

 

「なんだ、私の姿に文句でもあるのか?」

「胸なんて飾りなのです。エッチな人にはそれがわからんのですよ」

 華雄とついでに真留ちゃんが怒りの表情を見せる。気にしてるのかな?

「だいじょうぶ、俺はちっぱいの方が好きだから!」

 なぜか殴られた。

 自分はちっぱいじゃないっていうことなんだろうか? 難しいなあ。

 

「なあ、華雄()()の方が煌一の好みなんやないか?」

「ふん、どの道両方の姿で交わるつもりだった。問題はない!」

 漢らしい発言をする華雄。いつも以上に力入ってない?

「ならウチは()()両方をやらせてもらおやないか」

「別の……って、両方同時?」

「せや!」

 慣れない内に両方同時なんて、つらいだけだと思うけど。

 霞を見てみればえっちいことに興味津々といった風でもなく。もしかしたら……。

 

「霞、華雄、もう1人の自分と合成するのを考えているのか?」

「もちろんや。けど、ちょい怖いのもあるんや。今のウチがいなくなったら……せやからウチを煌一が忘れへんようにしたいんや」

「私は別に怖くなどはないぞ。ほんの少し不安なだけだ」

 それって怖いってことじゃないの? 思ったけど言わなかった。朱金たちも空気を読んでくれているのか黙っている。

 

「無理して合成しなくてもいいでしょ。ぬいぐるみたちも疑似契約空間やセラヴィーんとこのぬいぐるみ部屋でなら動けるんだからさ」

「無理などしておらん! 孫策に差をつけられたままでいられるか!」

 ああ、合成後のニュー雪蓮と手合わせして、そのパワーアップに驚いてたな。オラタンでも負けてたし。

 

「ま、そんなワケやからな、今夜は寝かせへんで!」

 ええと、そういうことに免役無くてさ、甘い時間を、いい『雰囲気』を求めるんじゃなかったの?

 霞ってば漢ルートとはいえ、真・恋姫の霞だったよね?

 

「おいおい、なんか凄そうだな、真留」

「遠山様、興奮しすぎです。まったくそんなだから組み合わせを決めるのが難航してこんなに遅くなったんですよ。はじめてをいやらしい目で観察されるのは嫌だって」

「ケチケチしやがってなあ、減るもんじゃねえのにさ」

 いや、俺としてもそんな目で見られるのは勘弁してほしいんですが。冗談抜きに涎がすごくて真留ちゃんに拭いてもらってるのはさすがに……。

 真留ちゃんはいいのかな、朱金といっしょで。

 

 

 

 いくら体力自慢が揃ってても寝ずにっていうのは無理だったようだ。

 俺ってば使徒になったせいで経験が反映されてるからね。そっち方面の技術だけじゃなくて持久力や回復力も洒落にならないレベルになってるんだよ。

 嫁さん4人とも寝た用なので、こっそりと布団を抜け出し、ポータル、ゲートと移動して4面の訓練場である小学校へと1人でやってくる。

 最近この4面にもモブさんは導入されているけど、外見が小学校なだけで実際にモブ小学生が通っていることはないらしい。

 

 辺りに人影がないのを確認して着たばかりの寝間着がわりのスウェットを脱ぐ。……一応トランクスははいたままでいいか。体育館が無料で使えればなあ。

 ではさっそく。

「グオオオオオオオォォォォォォーーーーーーーーッ!」

 スキル・鬼制御による鬼モード全力解放。咆哮とともに俺の身体が変異していく。大きく、力強く。

 2メートル前後の剣士を軽く越えるその身長。腕も太く手も元の2倍近くになっている。

 

 周辺を再確認。訓練場は周辺とは空間的に隔離されてるっていうから、近所迷惑にはなってないはずだけど。

 うん、だいじょうぶのようだ。

 モブさんたちもそうだけど嫁さんにも見られたくはないからね。鏡で鬼モードの姿を観察したことあったんだけど映るのは異形の怪物、まさに鬼。最初の一度で嫁さんたちにも見られてるけどさ、完全に人外なのよ、これ。

 怖いって嫌われたくないから隠れて変身してるわけよ。

 

 そして破れたトランクス。

 今度は『鬼のパンツ』を成現(リアライズ)の方がいいかもしれない。

 それともフリーザ軍戦闘ジャケットにするか? あれなら伸びるし。でも服っていうよりプロテクターであれの下が裸だと余計に変態じみた気がする。

 今考えるとフレーザ軍は裸ジャケットの連中が多かったな。もしくはピッチリスーツの上にジャケットで。みんな身体に自信があったんだろうねえ。

 

 ドワーフたちが使う生産系スキルの自動サイズ変更の魔法が服に仕込めれば解決するんだけど。早めに教えてもらわなくちゃな。

 と、本題はこっちじゃない。スタッシュから剣を取り出す。愛用のGGKではなくこの姿の俺に合わせた剣を。

 

 ドラゴンころし。『ベルセルク』の鉄塊なアレである。猪々子の斬山刀も大きいけど、小柄な彼女が使うせいか、これの方がより大きい。猪々子に見せたら欲しがりそうだ。

 それを2本。もちろんムチャクチャ重いが、鬼モードにも慣れたので片手でも振るのに支障はない。

 

 軽く100回ほど素振りをしてから、型をいくつか試す。

 よし。問題はなさそうだ。今日こそはできるかな?

 2本のドラゴンころしを置いて、素手で構える。こんな感じだったっけ。

「フンッ!」

 そして力いっぱい腕を振ると、その動きによって衝撃波が発生、巻き上げられた砂埃が校庭を走っていく。

 

 ……バーチャロン見せた時に「飛ぶ斬撃なんて珍しくもない」なんて言っちゃったけど、実際やってみると難しいね、こりゃ。

 

 しばらく無心で練習してたら、いきなり声をかけられてかなりビビった。

「面白そうなことをしているな」

「秘密で特訓とは水くさいやないか」

 おそるおそる振り向けば、いたのは眠ったはずの嫁さん2人。華雄と霞だ。

 

「ド、ドウシテ……?」

 いまだにこの姿での会話は違和感が出てしまう。発声練習や早口言葉もするべきだろうか?

「ちょい休んだから続きしよ思たら、いないから探したんや。華琳とこにいるかと行ったら桂花とお楽しみ中で気まずかったわ」

 ああ、季衣ちゃんと流琉ちゃんのはじめてに繋がるあの拠点イベントに近い状況だったのかな。

 

「それで曹操から煌一はここにいるからと聞いてな」

「ゲッ……」

 ばれてたのか。いつから知ってたんだろう。

「真留は寝たままや。朱金は華琳たちを覗くって聞かなくてな、置いてきた」

 真留ちゃんは3人と比べたら体力低いもんなあ。朱金は……今頃引きずりこまれてなきゃいいけど。

 

 置いていた寝巻きを拾って、元の姿に戻ろうといたら止められた。

「そのままでええで」

「エ?」

「特訓してるのだろう? 付き合ってやろうではないか」

 げげ。俺がこの姿や特訓を見られたくなかったもう1つの理由がこれだ。

 脳き……戦闘狂気味な嫁さんたちなら、絶対にこうなるのがわかってたから。

 

 既に2人は寝巻きではなくジャージ姿。さらに得物まで手にしている。

「寝かさない言うたやろ。趣向は変わったけど、いっぺん鬼な煌一とやってみたかったんや!」

「その力、どれほどのものか見せてみるがいい!」

 いや、そういうけどさ、2人とも初体験したばっかりだよね。霞なんて両方同時もしたし、華雄はちっちゃい華雄ちゃんモードでもしちゃったよね。身体の方、だいじょうぶなの?

 

「ちょいツラいけどな、まあだいじょうぶや」

「この程度、怪我のうちにも入らん!」

 俺の視線に気づいたのか、2人は平気だと言う。……この姿は怖くないようでほっとした。あと、華雄それ死亡フラグっぽいんであとで注意してあげた方がいいかもしんない。

 

 

 

 2人の動きはちょっとツラそうな時もあったけど、それすらもハンデでバッチリとしごかれました。

 この身体だと体力や再生力も高いんで途中でダウンすることもできず、しんどかった。

 

「技術はともかく、力は許緒以上だな」

「図体でかい癖に速さもあるんやな。腕はまだまだやけど」

 つまり、性能はいいけど、能力が駄目ってことですね。

 そんなの、わかっていましたから!

 

「んで、さっきはなにやってたん?」

「素手で風をおこしていたようだが」

 元の姿に戻る。ああ、やっぱりトランクスのゴムが伸びちゃってる。鬼から戻ると全裸なのは某ライダーといっしょか。

 スタッシュから別のトランクスを出してはき、さらにスウェットも着る。ビニフォンのスワップアプリで一気に着替えるという手もないわけじゃないけど、スウェットは登録してないからね。

 

「衝撃波……って言うと卑弥呼(アルベルト)がきそうか。モーター・スキルっぽくできないかって練習してたんだよ」

 モーター・スキル。『ファイブスター物語』に登場する騎士の剣技だ。それを再現しようと練習していた。もちろんただの物真似ではあるが。

 でもさ、あっぱれのファンディスクで眠利シオンが真空斬り(ソニック・ブレード)みたいなことをしてるんだし、むこうなら使えるかなって。

 俺は武将嫁さんたちよりも弱いけど、鬼フルモードならできそうでしょ。筋力も凄くなってるんだしさ。

 

「そんな技があるんか」

「漫画の技だけどね。あとで見せてあげるよ」

 単行本だけじゃなくて設定本も持ってる。もちろんガレージキットもね。

 

 

 

 

 ファイブスター物語も嫁さんたちみんなが興味を示した。キャラが多くて難しい設定もあるんで解説するのが大変だったよ。

 そして、半ば恐れていたことが起きちゃった。

 

 春蘭がさ、ソニック・ブレードを再現してくれちゃったわけよ。いや、できるとは思ってたけど早すぎでしょ。

 悔しい! でもナマで見れて嬉しい!

 さらに騎士剣技スキルを入手しちゃってるなんて……俺にも教えて下さい。

 

 騎士剣技スキルは魔法ではなく、CPを消費する(アーツ)系のスキルだった。

 マスターする武将も増えていく。恋もちょっと見ただけでタイフォーン使ってちっちゃな竜巻を出す。明命なんて分身までするようになっちゃって対魔忍が呆れていた。……俺はまだだけどね!

 

 麗羽は当然、ナイト・オブ・ゴールドをほしがったけどファティマが必要と説明して諦めさせた。モーターヘッドなんて成現コストがバカ高そうだし。ゴシックメイド? アレはまだ慣れん。ダッカスよりバッシュの方が好きなんだけどなー。

 

 黒騎士かー。

 ライバルキャラポジションにして中二男子憧れの職業だよなー。

 

 黒騎士(バッシュ)成現しちゃうかなー。

 でもエストがいないと駄目だ……エストも好きだけどパートナーなんて成現したら嫁さんたちいい気分しないかもしれん。それに俺をマスターとは認めてくれない可能性しか思いうかばない。無理だな。

 ならエルガイムの方のバッシュにするか? うーん……。

 あ、黒騎士っぽいロボって華琳が気に入りそう。持ってかれちゃうか。

 

 まあ、今はバルキリーの方が先だ。

 ……YF-29のオズマ機も超合金は黒騎士っぽく見えないこともないんだよね。

 

「コスモクリーナーはできてるぞ」

「はやっ!」

 ヴェルンド工房につくなり、ドライツェンが完成したキットを見せてくれた。

 かなり作りこんである。ドワーフはプラモ製作でもプロ級ということか。

 

「うん。これならいけそうだ」

 さっそく成現するとできたコスモクリーナーの解析が始まった。

「動かすときは注意しろ。酸欠になるかもしれん」

「雪が死んじゃうのってそれだったっけ?」

 古い方のほ覚えてないなあ。たしか主人公のお兄さんがハーロックだったよな。

 

「これで融合炉の不安も減るな」

「ザクが近づいた!」

「とりあえずバルキリーを完成させて、それから他の形にすればいいでしょ」

 工房製作のオリジナルUHなんてもうATの面影がない機体が多い。

 ドワーフだけじゃなくてエルフのお年寄りも工房入りしたのが大きいのか、騎士の鎧や甲冑武者みたいになっちゃってる。

 懐古主義っぽくブリキのおもちゃみたいなデザインにならないだけマシか。

 

「じさまたちにまかせたら零戦みたいにされるわよ」

「なにその魔改造」

 逆に見てみたいな。魔改造の語源ってプラモ狂四郎の変形合体する零戦だしさ。……あれはインチキだったけどね。

 

「飛行場ももうすぐ完成するぞ」

「だから早すぎでしょ」

 ミシェルやクランにEP注意してもらって、シミュレータにバルキリーの操縦データも用意してるけどさ、教官の数が足りない気がする。

 ワルテナ、フォッカーさんを復活させてくれないかな。柿崎は美形じゃないから無理だろうけど。

 ……飲酒運転を雪蓮が真似しそうで怖いな。

 

「あ、グレムリン対策を相談したかったんだ」

 アメリアの状況を説明する。

「なるほど。たしかにグレムリンのようだな」

「対応した結界符を組んでみるわ。テストしてみて。上手くいくようなら部品にもプリントしましょう」

「いや待て、サイコフレームの技術を使えば部品にも魔法陣を内包できるぞ」

 極小の魔法陣がいくつも仕込まれるのかな?

 

「って、サイコフレーム完成したのか?」

「うむ。オリハルコンのサイコフレーム化も済んでいる」

 得意気にフライタークが金属片を渡してくれた。金色だけどちゃんとT型だ。

 

「これが……」

「ムウにも渡してある。FXギアの装甲を作ってくれるはずだ」

「ゴールドのFXギアか。GXギアってとこだな」

 また名前が……。GFXじゃ駄目なの?

 

「指輪のデザインはどうする?」

「それなんだけどさ、いろいろ機能つけようと思うから普段もつけていてほしいんだよね」

 結婚指輪だ。俺の嫁さんって証明でもあるしさ。

 

「そうなるとあまり派手なものではない方がいいかもしれんのう」

「そうなんだよねえ」

 調べたらさ、婚約指輪ってのは別にペアリングじゃなくてもよくて、いつもつけるもんでもないからゴージャスにして、逆にいつもつける結婚指輪の方は控えめなものにするらしい。

 俺が渡した婚約指輪は、普段使いできるようにシンプルなデザインなんだよねえ。

 

「地味なのが続いたんじゃ嫁さんにも悪いし、石も強いのを入れる予定だろ」

「難しい注文だな」

「だからさ、まずはコレを見てくれ」

 ビニフォンでとある動画を見せる。

 

「モビルスーツ? ……変形してガンダムになるのか」

 そう。見せたのはユニコーンガンダム。デストロイモードになるシーンだ。

「光ってるのはサイコフレームなんだけどさ、こんな感じで普段は地味な指輪で、必要な時に石を大きく見せるように変形する指輪ってできないかな?」

 スタッシュにしまってたら指輪の能力は働かないから装備してなくちゃあいけない。地味にしたいけど派手になる。なら変形させればいいじゃない!

 

「また無茶な注文を。指の肉を挟んで危なそうだぞ」

「強度も落ちるし、普段モードの時可動線が見えないようにできると思うのか?」

「それをオリハルコンのような超級の素材を使ってだと」

「だから気に入った」

 職人魂に火がついたのか、ドワーフたちの目が燃えていた。

 いや、ドワーフだけではない。

 

「いいわね、それ」

 エルフでも女性はやはり光り物が好きなのか、チックウィードたちも乗り気だ。

「隠し装備として売れそうね」

「隠しなら別にずっと地味なままでもいいんじゃ? 変形する必要はないような」

「使う時に目立つのが格好いいんじゃない」

 それもそうか。

 嫁さんたちは喜んでくれるかな?

 

 




本編嘘予告

「げぇっ、関羽!?」
 出席簿で自分を叩いた人物を織斑一夏はそう呼んだ。
 その人物は答える。
「いかにも」


 仲間たちとはぐれた愛紗が目覚めたのはISの世界だった。
「なんで私が教師などに……」
 モンド・グロッソで織斑千冬に勝って総合優勝してしまったからだ。

 悩む愛紗の前に一夏の他にもISを動かせる男子たちが現れる。
 北郷一刀。
 武藤カズキ。
 そして天井煌一。

 織斑一夏も合わせてその名前から彼らは『1S』と呼ばれた。





 最初のかけあいがやりたかっただけ。

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