真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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128話 ドルドレイが$奴隷と変換されて苦笑

 雪蓮と孫策の対戦のために筐体を用意する。

 さすがに専用の大型筐体は無理だったが、往年の名機アストロシティ筐体のプラモデルが発売されていたのでこれとツインステッィク、それにゲームソフトを使用して成現(リアライズ)する。

 大戦格闘でよく見た筐体を対面に並べたあれだ。バーチャロンでもあったんだよね。

 

「M.S.B.S.Ver.5.66。電脳戦機バーチャロン、オラトリオ・タングラムのアーケード版最終バージョンだ」

「これで勝負するんじゃなかったの?」

 棺桶シミュレータを指差す雪蓮。

「だってわたしのそれ、ないじゃない」

 雪蓮が取り出していたFXギアを指差す孫策。

 

 本拠地のゲームコーナーに設置したシミュレータは使用するためにFXギアが必要な仕様になっている。専用となっているFXギアに各人の操縦データの蓄積を行わせるためだ。

 

「でも、まぁずじゃないの?」

「マーズはアーケード版がないし、フォースは機体の種類が多すぎる。セーブデータもあった方がいいしね。オラタンならスピードも速いし第2世代VR(バーチャロイド)にはVアーマーもあるから対戦も楽しいよ」

 第2世代VRって第3世代VRよりも強いこともあるんだよね。孫策に頼まれているマイザーにもVアーマーつけちゃおうかな。いっそのこと薔薇の三姉妹仕様に拘らなくてイータやガンマの装備をくっつるのもアリかもしれない。

 あ、リバース・コンバート前提として、Vコンバータとそれに直結されたコクピットブロックからなる電脳虚数空間突入艇を基本の待機状態とすれば、スタッシュにしまう時もスペースが確保できるな。

 破損しても起動時にリバース・コンバートするから完全修復ってことにしよう。リバース・コンバートでエネルギーやMP消費しそうだけどまあいいか。

 

「わざわざこれで雪蓮たちに対戦させることに意味があるのか?」

「うーん、孫策が満足できるかわからないけど、意味はあるよ」

「それは雪蓮たちに、ではないわね?」

 冥琳と華琳の質問を受け、みんなに聞こえるように回答する。

「うん。みんなに、かな。ちゃんと2人の戦いとこのゲームのロボを見てほしい。特に武装を」

「武装?」

 そう。みんなにイメージを籠めてもらったUHでは速度やパワー、硬さ、そもそも素材がとんでもなかったりしたけど、武装に関してはATの延長線上や自分たちが使っている格闘武器の大型化に留まっていたんだよね。

 マクロスシリーズは観てもらっているから、ミサイルやビームはあってもリアル系っぽい。グレンラガンも観てるんだからもっと必殺技系もあっていいと思うわけよ。火炎放射器はちょっと、ね。

 

「自由なイメージの妨げになるかもしれないけど、こんな武装もあるんだってことを見てほしいかな」

 バーチャロンって一見、リアル系のロボゲーに見えるけど実はそうでもないんだよね。エンジェランなんて召喚魔法使うしさ。

「設定まわりはあとで軍師たちにも教えるけど、ややこしいからまずは見て感じてくれればいいと思う」

「考えるな、感じろってやつだなアニキ!」

「くっ、猪々子に先に言われてしまうとは!」

 

 実際、設定はともかくとして体感してもらうことは大事だと思う。高速UHのイメージを注入してくれた嫁の多くが実際にバイクで速度が出せるって経験してる。

 直感型というんだろうか、どんな理屈でタイヤが回るかはわからなくても、高速で走れるというイメージがあればいいみたい。……俺の場合には理屈(せってい)が必要なのにさ。

 だから自分なりの武装イメージのためにも色々見てもらおうかな、ってわけだ。

 

「そっちのわたし、少し練習しなさい。でないと勝負にならないわ」

「たしかにUHとは操作が違うから、いきなり勝負はできないね」

「その間にわたしはお風呂入ってくるわ、大きいのあるのよね? 大喬ちゃん、いっしょに入りましょ!」

 孫策は大喬ちゃんをつれて大浴場にむかってしまった。疑似契約空間にも仮設のシャワーを持っていってはあるけどやはり温泉の方がいいよね。

 ……お風呂で大喬ちゃんとしてくるつもりじゃなきゃいいけど。彼女のアレがなくなってること、どういいわけしたもんかね?

 

「どうせ、ついでにお酒も飲んでくる気よ、あれ」

「さすがだな雪蓮、自分のことはよくわかっている」

 そりゃある意味同一人物だからなあ。雪蓮は誤魔化すように筐体の前の椅子に座った。

「で、これ、どーやるのよ」

「お金かからない様に成現したから、そのままプレイできるよ。一応攻略本もあるけど、見る?」

「まずは試してみましょ」

 説明書(インスト)を軽く見て適当に動かし始める雪蓮。選んだのはテムジンか。……選べるのがわからなかったのかな?

 

「へえ、UHよりも簡単じゃない」

「雪蓮、左右の引き金を同時に引くことで別の武器も使えるようだ」

 ボムとビームを使い分けながら戦う雪蓮に攻略本を見ていた冥琳がアドバイス。即座にそれを行うと、ギャラリーに大きな反応が。

 

「斬撃が飛んだ!?」

「飛ぶ斬撃なんて珍しくもないんじゃ? 武将たちならできるでしょ」

 凪だって気弾飛ばすし。

「うむ。昔はともかくファミリアになった今ならできるぞ」

「そりゃ春蘭ならできそうだけど……ああ、(アーツ)ならできるか」

 翠も試すように、って、ここで槍を振り回すのは止めて!

 

「ロボットがまさか斬撃を飛ばすなんて……」

「あれ、ああ見えて光波(ビーム)だから」

 ステージが進むごとに今度は敵の攻撃でまたみんなが騒ぐ。

 

「なんか肩からごんぶとのビームが出た!」

「うん。ライデンのレーザー『バイナリー・ロータス』だね。火力と装甲がある分、ライデンはちょっと遅いんだ」

「ロータスって蓮だよね? バイ蓮?」

「私の紛い物みたいに言うな!」

 よく知ってたね桃香。でも両刀使いな白蓮みたいな言い方は止めようね。

 

「金色になって速くなった?」

「フェイ-イェン・ザ・ナイトのハイパーモードだね。体力のあのゲージが半分以下になると発動するんだ」

 俺の説明に鈴々ちゃんが目を輝かせる。

 

「鈴々はこのフェイ-イェンってのが気に入ったのだ!」

 蛇矛っぽい武器じゃないけどいいのかな?

「名前がいいのだ!」

「名前?」

「飛燕だなんて鈴々のためみたいなのだ!」

 ああ、鈴々ちゃんは()人張()って名乗る時もあったっけ。

 となると、第3世代フェイ-イェンのツインテールを外して鈴々ちゃんっぽくしたタイガーハートでも作ろうかな。

 あ、寅年の年賀イラストからキット化された寅型飛燕ってのもあったなあ。虎と燕どっちなんだっていう。

 バーチャロイドはけっこう立体化されてるから素材に困らないですむかもしれない。

 

「ドリルが飛んできよった!」

「やっぱりドルドレイが気になるか」

 2P側にまわって対戦しないようにしてドルドレイを選んで真桜にプレイさせる。タイミングを見計らって横からスタートボタンを押すと、真桜機が巨大化を始めた。

 

「でっかくなった!」

「そう。なんでもアリでしょ」

 1プレイに1回しか使えないんだけどね。

 

 

 

「はわわ、ロボットの武器というのはいろいろあるんですね……」

 朱里ちゃん疲れた感じだなあ。

「まあ、リアリティばかり求めてもゲームにならないからね」

「でも煌一はその架空(フィクション)現実化(リアライズ)できる。このロボットの武装も再現できるのよね?」

 華琳の質問に頷いておく。

 

「だからみんなに武装も考えてほしくてこのゲームを見せたんだ」

 嫁さんたちにも俺の好きなゲームを楽しんでもらいたいってのも当然あるけどね。

「剣や槍、それに本体にも火器を内蔵させることもできますね」

「ウチのドリルもまだまだ改良の余地があるっちゅうわけやな」

「光線が派手派手で綺麗なの!」

 俺の護衛でもある三羽烏の意見はそんな感じ。本人が武器を使わない凪の意見が一番まともなのがちょっとあれさ。

 

「さっき第2世代なんとかって言ってたわね。第3世代以降もあるの?」

「うん。第2世代はマーズクリスタルの干渉で機能不全になっちゃうから、その対応済みなのが第3世代。かわりにVアーマーがなくなっちゃったけどね」

「マーズクリスタル?」

「バーチャロイドを実体化させたり動かす動力となるVコンバータの模倣元(オリジナル)がVクリスタル。最初のは月の遺跡で見つかったんだけど火星や木星でも発見されてね、火星のやつがマーズクリスタル」

 バーチャロン世界の固有原理はたぶんこのVクリスタル周りだろうな。

 宝石っぽい外見なら結婚指輪の石に……しても意味ないか。指輪じゃリバースコンバートしにくそうだし。

 

「火星ね。煌一の担当世界の拠点が火星ということもあるのかしら?」

「月か火星というのはあるかも」

 あ、重力を測定してくればどの星かわかるかもしれない。レーティアに測定器用意してもらえばいいか。

 

「火星って人が住めるのかしら?」

「拠点があるなら住めるのではないか? 火星と決まったわけではないが」

「そう。火星に新たな呉を作るのも面白そうね、名前は……ネオ呉ってとこかしら?」

「語呂が悪いだろう、雪蓮」

 たしかに語感が微妙だ。ネオなんとかってGガンダムみたいだし。……ネオサイタマだとニンジャが出てきそう。

 

 雪蓮のこの発言がまさか本気のものとは、この時誰も思ってなかっただろう。

 ……いや、もしかしたら冥琳はわかっていて大きなため息をついたのかな?

 

 

 

 雪蓮の予想通り、風呂上りに一杯ひっかけてきた孫策。大喬ちゃんと腕を組みながら上機嫌で戻ってくる。

「いっちょもんでやりますか」

「酔っ払いの癖に言うじゃない」

 アーケード筐体は初めてとはいえ、バーチャロンの操作には慣れている孫策、雪蓮との戦いは圧勝だった。

 

「やっぱり、えすえるしーだいぶが決まると最高よね!」

「初心者相手にえげつない……」

「自分自身に遠慮する必要ないじゃない。むこうだって変な動きし始めたし」

 勘で操作をマスターしたのか、たしかに雪蓮も変態機動の片鱗を見せ始めていたけどさ……。

 

「このままならすぐにわたしと互角に戦えるようになるわよ。だから、さっさと合体しましょ」

「なに、勝ち逃げする気!?」

 孫策を睨む雪蓮。よっぽどSLCダイブでトドメをさされたのが悔しかったんだろうねえ。

「そうよ、あんたの方がふぁみりあが長い分、わたしより強いじゃない。それに合体しないとわたしが昂った時に誰が慰めてくれるのよ」

「大喬ちゃんも冥琳も煌一もわたしの……わたしたちのよ」

「譲る気がないなら合体するしかないでしょ。蚩尤は強いわよ」

 蚩尤ってどんだけ強いんだろう。巨大ロボで戦うほどの……あれ? 蚩尤と戦った巨大ロボってどっかであったな。なんだっけ?

 

 真面目な顔の孫策に雪蓮も折れ、彼女たちも合成することに。

 おっとその前に、合成しても戻せるように俺の固有スキルで設定改竄しておかないと。

 雪蓮には空きスロットに。孫策は初の成現なので、その他にも色々追加して……。

「ねえ、煌一。こんなに抱きしめてくれないとできないの?」

 場所変えてからすればよかった。みんなの前で孫策にEPを籠めているんだけど、正確には抱きしめて、ではなく孫策に俺が捕獲され抱きしめられている状態なのよ。軽く接触するだけのつもりだったのに、周瑜の時のことをしっかり見られていたようだ。

 なんか嫁さんたちの視線が痛い。籠めている分以外にもEPがゴリゴリ削られている。

 

「も、もういいから」

 EP注入終了を宣言してやっと解放され、俺たちは再び高天屋(デパート)へと移動する。といってもポータルだからすぐだけどね。

 

 

「ワタシハ、ソンサク。コンゴトモ、ヨロシク……」

「そんなのわかるの、俺だけだから!」

 合成されたばかりの雪蓮がいきなりネタをかましてくれる。

 まったく……。ほら、わからなかったみんなが不安そうな顔をしてるじゃないか。

 

 心配になった蓮華とシャオちゃん、冥琳と祭が立て続けに質問していたが、合成雪蓮にも異常らしい異常はなく、そのまま合成を続けることになった。

 合成後もやはり彼女はマイザーを、それも3機も要求しているので素材を用意しなければいけない。ハセガワのマイザーって可変もするいいキットなんだけど手間がかかるんだよなあ。それも3機……大変だぁ。

 

 

 残念ながらあっぱれ対魔忍世界にはバーチャロンは存在しなかった。

 ふと気づいて念のためにむこうのインターネットでも調べたがバルジャーノンもない。本当によかった。

 

 ……いや待て。オルタの世界にはバルジャーノンなんてなかったのだから安心するのはまだ早いのか?

 柔志郎担当世界を構成している『あっぱれ! 天下御免』と『対魔忍シリーズ』はどちらも18禁ゲームでしかもメーカーも違う。ないとは言い切れないだろう。

 

 まあ、将軍も違うからだいじょうぶかな。

 BETAが現れてから慌てても遅いんで今のうちからロボの妄想(せってい)をしておいた方がいいか。もしかしたら俺の担当世界にやつらみたいのがいるかもしれないし。

 

 アメリカの異世界魔族対策もしなくちゃいけない。

 軽く検索したけど、航空機が使えないってのは、グレムリンの可能性が高そう。

 機械に悪戯をする妖精だそうで、バルキリーが完成してもこいつらが邪魔だ。結界符で防げないかな? 

 それともこれから造ったり成現するロボには最初から防御策を仕込んでおくか。

 それこそマーズクリスタルの干渉を受けない第3世代VRのようにね。

 

 




本編嘘予告

 仲間たちとはぐれた雪蓮が降り立った地、そこはBETAに蹂躙された懐かしき大陸だった。
 雪蓮がもたらしたテクノロジーによりバルジャーノン化した新型機で白銀武の変態起動にさらに磨きがかかる……。




これ以上書くと嘘予告の方に力入りそうなのでこの辺で。
本編に関しては活動報告を参照下さい

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