心残りと遭遇することになるだろう。
絆を確かめることになるだろう。
3つの神託を残して
心残り? 絆? 方舟?
いったいなんのことだろう。
心残りといえば……俺の人生、未練なんて山ほどあるな。積みプラモの製作や録り溜めた深夜アニメの鑑賞その他。
一番は、むこうに残してきた家族や友達に結婚できたことを知らせたいことか。俺が結婚できたなんて信じてくれるまで時間がかかりそうだけど。
遭遇するってのなら、会うことができるのだろうか?
それならその時に結婚式をしたいんだが。
でも、3つの神託の全てに「君たちは」と
この君たちって範囲がわからないな。俺と嫁さんたち? それとも4面の全員?
……たいした違いはないような気もする。
嫁さんたちの心残りってなんだ?
俺と結婚なんてしなければよかった、っていう後悔じゃないと信じたい。
絆の確認は……それこそ結婚式でもしろというのか?
マーケットでドワーフたちに頼んでいたオリハルコンも入手できたようだし、サイコフレームもできるはずだ。
石は
最後は方舟か。
これが謎すぎる。
だいたい、ノアの方舟はギリシア神話じゃなかったはずだ。
気になったのでノートパソコンを立ち上げてネット検索してみる。
うん、この部屋はちゃんと、俺が生まれた世界とまだ繋がっているみたいだ。
お、DXザンリュウジン、新品で売ってるな。元の値段よりも割高になってるけどかまわないか。注文しとこ。
ザらス限定のクリスタルレッドバージョンDXマグナゴウリュウガンもあるか。迷わずポチっとこ。ゴッドゲキリュウケンは……。
ふう、リュウケンドー関係のアイテム、一通り注文できた。かなり高くなったけど、むこうの俺の口座には剣士がとんでもない額を入金してくれてるし問題はない。
……変身リュックまで買っちゃったけど使い道あるかな?
子供用だからどう考えても剣士にはちっちゃいよなあ。サイズは成現でなんとかなるとしても学ランには似合いそうにない。
あとは超合金の新作を確認して……っと、方舟調べてたんだっけ。
方舟方舟……ふむ。ギリシア神話でも大洪水はあったのか。
デウカリオーンの洪水、ね。
ゼウスが大洪水を起こして、プロメーテウスに警告を受けていたデウカリオーンが方舟を作ったのか。
プロメテウスって、マクロスの左腕の空母だよね。劇場版ではその役をアームド級に取り戻された上に地球で朽ち果ててたなあ。
そのプロメーテウスのかわりに
やっぱり大洪水があるんだろうか。
……どこで?
この4面ではないだろう。
この面の天上に位置する3面みたいに海の面になるってのもありえなくはないけど、剣士がそんな風に変更するとは思えない。
ならば担当世界?
それとも方舟は別の意味?
わっかんないなあ。
悩んでいたらかなりの時間が経っていたようで、璃々ちゃんと紫苑が俺を呼びに部屋に入ってきた。
同人誌やエロゲ等のやばいブツを以前にディスクロン部隊にしまってもらっておいて、本当によかった。
「まだかたづいてないの? お父さん、ごはんができてるよー」
「あれ、早くない? 梓や流琉ちゃんたち、そんなに早く部屋の準備とかおわったの?」
「今日は、ここの従業員たちが用意してくれたそうですわ」
ああ、以前のボロアパートと違って豪華旅館仕様なこの新本拠地にはモブの従業員さんがいるんだった。
「食堂でいいのかな?」
「天空の間、だそうですわ」
鳥とか花の名前じゃないんだ……。
まさか他に大洋の間や冥界の間があるんじゃないだろうな?
天空の間に並べられた料理は豪勢でまさに旅館の料理といった感じだった。
「今日は本拠地完成のお祝いぜよ! 奮発したんじゃ」
満面の笑顔で得意気な剣士。
だから奮発してくれたのは嬉しいけど、GPたくさん使う時はもうちょい相談をね……。先に説教しておくべきだったか。
「もちろんお酒もありよね!」
「刺身にはやっぱ日本酒やな」
酒飲みたちも嬉しそうだ。昨日、マーケットの打ち上げでさんざん飲んでなかったっけ?
「板長だったかしら? ここの料理長には少し指導が必要みたいね」
刺身の切り方が気に食わないと不満気な華琳。さっきの霞といい、日本食に馴染みすぎでしょ。
「煌一さん、どう?」
「桃香さまはなにを着たって似合うに決まっています!」
桃香たちももう入浴をすませたようで浴衣姿だった。焔耶もそうだけど、もしかして下着をつけてない? もう着崩れて今にも見えそうなんですが。巨乳の人は和服を着こなすのが大変だっていうけど、誰か教えてやってほしい。
……ポロりん、なんか言ってほしそうにチラチラこっちを見てるけど、君の浴衣に対する感想は一切ありませんから。
それともさっきの予言の謎解きをしてくれるの?
「お風呂、すごかったのだ!」
鈴々ちゃんはおかわりを重ねながらも、大浴場の素晴らしさを語る。どうやら風呂で泳いで愛紗に叱られたらしい。
「あの大きさじゃ掃除は大変そうね」
「それは
そこまで頼んだら月ちゃんや詠が倒れそうだ。
「従業員ももっと若い娘を増やすべきね。美しい娘を!」
今度は従業員にダメ出しか華琳。
たしかに従業員モブはおばさんが多いみたいだ。ワルテナが連れてきた一刀君が嬉しそうに鼻の下を伸ばしている。そういや彼を熟女属性に設定改竄してたっけ。
……ミシェルも
従業員はもしかして剣士の趣味か?
「いや、若くて美人じゃと給料が高くてのう」
そんな理由か。モブさんも維持費がかかるのか。
「そ、それならお猫様を参加させてほしいのです!」
明命ちゃんがモブ猫を要求する。
ファミリアである
「猫?」
「お猫様です! お猫様がいないのはいけません!」
いつも元気だけど、それ以上に力が入っているな明命ちゃん。あっぱれ世界でも学園島は動物禁制だから、欠乏症になっているのかもしれい。
子住姉妹の剣魂をなでさせてもらってるだけじゃ足りなかったか。
「そうだな。モブ猫も導入できないか?」
「そう言われてものう。猫なんて必要ないじゃろ?」
ライオン獣王はほしがったくせに、猫がいらないだと。
こういうやつに限って、実際に飼ってみるとあっさりとその魅力にはまったりするんだよなあ。
よし! 無駄使いを戒めさせようと思ったけど、これは別だ。
「モブ猫を入れてくれ」
「じゃけど……」
「あー、そうそう。さっきゴッドゲキリュウケンの玩具をネット通販で注文したからあとでむこうの世界に取りに行ってくれ」
「ラジャーぜよ! 猫も買うぜよ!」
チョロすぎる。ゲキリュウケン、教育係になってくれるといいなぁ……。
「馬も頼みたくなるな」
「いや、翠たちにはバイクがあるじゃん」
「そうなんだけどさあ。やっぱり馬もいいんだよ」
そう言われてもねえ。猫なら野良や半野良でもいいけど、馬はそういうわけにいかないでしょ。牧場用意しないとさ。
サーキットだってほしがってるのに。
「馬なら1面にいる」
「エルフの森か」
恋は1面のエルフの長老たちに気に入られて、よく遊びにいってるみたいなんだよな。そうじゃなきゃ動物園を要求されていたかもしれない。
「エルフやドワーフたちはトップの修行神と会ったことないから呼ばなかったのか?」
「ちゃんと招待したぜよ。やつらは昨日の客の意見をまとめてからくるって言うとったんじゃ」
商売熱心、いや、開発欲のかたまりだな、あの連中は。
「こなかったらあとで差し入れもってくか」
「それなら俺たちが持っていくぜ」
むう。カミナが温泉宿にいるのは死亡フラグのスタートな気もするけど、すでにその死から復活したんだからいいか。
……あの話では女湯をのぞこうとしてた。まさか、そんなことしてやしないだろうな。
「女湯はのぞかないでくれよ」
「あんなん、のぞけるかよ!」
あんなの? どういう意味さ。
「ふふ。設計段階から私が参加したのだ。風呂の防御は鉄壁だ!」
レーティアがドヤ顔になると、いつも以上にキラキラが眩しい。
「以前、ゲームコーナーに敵が現れたからな、新しい本拠地はセキュリティにも力を入れているのだぞ」
クランまで。いったいどんなセキュリティなんだろう?
俺ものぞくのは諦めた方がよさそうだ。
「おかげでここにくるのに手間取ったぞ」
「すごいじゃろう、ドンさん」
またしても上機嫌な剣士。いや今の、ドンさん褒めてるのと違わない?
ドンさんは
やはり女癖がよろしくないんだけど、俺の関係者には絶対に手を出さないと誓ってくれたのでフレンド登録したから、この4面にもこれるようになっている。
「豪華なエビでゲソ!」
伊勢海老にイカちゃんも喜んでいた。
他のファミリアはついてきてないのかとドンさんに聞いたら、どうやら陸上が苦手な子が多いらしい。
「口元が汚れとる」
「ちょっとぐらいいいじゃなイカ」
イカちゃんの相手をしているのは智子。
中の人的にいえばどっちもプリキュアで、しかも新旧マーキュリーだったりする。これはイカちゃんにも変身アイテム渡しておかないといけないな。
「姉です」
「サー・イエッサー!!」
あっちではマインがコンバットさんをロム兄さんに紹介しているようだ。……俺の部屋から連れ出していたのか。どうりで部屋で見ないと思った。新本拠地になる時に迷子になってしまって電池切れになったんじゃないかと心配してたんだ。
しかし、家族に紹介とか、いつの間にロム兄さんとの仲がそんなに進展してたんだ。
……うわっ、宴会場となったこの大部屋の壁際になぜか携帯ゲーム機が落ちている。誰も気にしてなくてポツンと寂しそうに。
あれってマサムネだよね。任務中はこんな感じなのか。もしかしてコンバットさんのことを見ているの?
ロム兄さんに紹介されちゃって気が気じゃないのかもしれん。彼の性格、俺にちょっと似ているみたいだから。あとでフォローしないといかんな。
「そうだドンさん、ちょっと気になることがあるんだけど」
「なんだ?」
せっかく海神がいるので方舟のことを聞いてみた。
「よりにもよって、こいつの予言か」
なんか嫌そうにポロりんを指差している。もしかして仲悪いの?
揚げ物を頬張り、ビールのグラスを一気に煽ってからドンさんが続ける。
「こいつの予言は確実に当たる。どんな意味かはわからんがな。方舟も絶対に必要になるだろう」
「やっぱり大洪水?」
「そこまではわからん。もしそうなったら、救助要請をよこせ。手助けぐらいはしてやる」
頼りになるなあ。剣士が尊敬してるのも頷ける。これで女癖が悪くなければ……。
「方舟? 水軍なら儂らも詳しいのじゃぞ」
祭がエプロンをしているところを見ると、調理場にヘルプしにいってたのかな。モブ従業員は食欲三魔神のことを知らなかったみたいだから。
梓と流琉ちゃんも手伝いにいっているみたいだ。
華琳がここに残っているのは、手伝いだけじゃすまないからなのかもしれない。
「方舟ってのは箱の船。人間とたくさんの動物を乗せて、大洪水をしのいだっていう伝説の船」
「そんな船を私たちが用意しなければいけないのか」
「んー、冥琳ならわかるわよね。この予言、3つとも繋がっているみたいよ」
えっ、雪蓮の勘? 予言レベルなの?
華琳もわかっているようで、他の君主に質問する。
「蓮華、桃香、私たちの心残りといったらなにかしら?」
彼女たちの心残りか。
2人とも食事の手を止めて考え出した。
「もしかして……」
「やっぱり、そうなの?」
どうやらどっちともわかったみたい。
「その未練をなんとかするために、絆の確認と方舟が必要だというのか、雪蓮?」
「たぶんね」
なんか楽しげに遠い目をしている雪蓮。そのくせ、飲酒のペースは早い。
「はわわわ……も、もしそうなら、何万人も乗れる船を用意しなければいけません」
「あわわわ……それも、水に浮くだけではない船がひちゅようなのかも……」
朱里ちゃんと雛里ちゃんもわかったようで急に慌てだしちゃった。
「はははは。そんな大きい船などあるわけがないではないか。しかも水に浮くだけでない船など」
冗談だと思いたいのか、かわいた笑いをする華雄。彼女も幼い姿で飲酒中。酔っているのか、霞の膝の上に座っていたりする。
「あることはあるわ。とても巨大だけど」
「うむ。私たちの世界ならそれがあったのだ」
ヨーコとクランが頷きあう。
「超弩級スペースダイガン『アークグレン』。ロシウもこれで何万もの住人と脱出しようと計画したわ」
「いや、方舟というならやはりマクロスだろう。新マクロス級なら生活空間も確保されているのだぞ」
そりゃそうなんだけどさあ。俺だって真っ先にマクロスが思い浮かんだよ。
でもね……。
「どうやって、それを用意するのさ……」
いくらなんでも巨大すぎる。
4月1日から3年目
早く本編にたどり着きたい
本編が気になる方は活動報告を参照して下さい