真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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114話 マスターじゃない方の

 麗羽たちに捕まって、開発部でしてしまった。

 さすがに監視カメラなんてないだろうけど、やはりこんなとこでするのは落ち着かない。自宅(おうち)が一番だと思うのは、ヒキコモリ気味だった生活が身に染み付いているせいだろうか。

 以前に華琳が言っていた仮設ベッドルームがほしくなるなあ。

 

 

 

 翌日、学園島の屋敷(おうち)にて会議。

 授業は今日もサボりだ。あとで銀次にノート見せてもらうのが気が重い。

 だけど、クラスにノート借りれるほど仲がいいやつって他にいないし……。やはりボッチなのか。

 

 大江戸学園で友人って言えるのってラジオ体操で知り合った乙級の生徒だけってのはちょっと落ち込む……。いくら学園での今の外見がちっちゃいとはいえね。

 四六時中、嫁たちとばかり話してるのはマズイよなあ。そのせいでクラスでも浮いているのはわかってる。

 でも、せっかく他の教室にまできてくれた嫁さんをほっぽっておくわけにもいかん。ただでさえスキンシップが不足してる嫁さんもいるのだから。

 

 親戚となってしまった徳河吉彦も同じクラスだけど、彼も忙しい。身体はだいぶ復調してきたようだが、次の生徒大将軍(かいちょう)の選挙が近いからだ。まあ、ほとんど吉音に決まってるのだけど。

 それが終わったらもう少し話してみるか。

 

 別に学生の友達がほしいわけじゃない。嫁さんたちに「こいつ友達いない」って思われるのが嫌なんだよ。なんとかしないと……。

 

「結局、軍の暴走ってことで関係者が責任を取らされるみたいじゃな」

「まったく、なにが目的だったのやら」

 俺が友人関係で悩んでいる間に中国政府からの釈明を教えてくれる光姫ちゃん。

 被害はかなりのもので、回収できなかった死体のために森林火災時や農薬散布のようにヘリで聖水を散布したらしい。それでまた聖水を要求してる。

 みんなの巫女レベルが上がって必要GPが下がってるけどさ、ただじゃないのよ。それで、こっちも聖水を販売してるわけだ。

 

「こっちの現金を効率よくGPに換えられればいいんだけど」

「昨日、けっこー稼いだんだから、そんなに焦らなくてもいいんじゃないか?」

「翠、サーキットの設置が遅くなるけどいいかい?」

「ええっ?」

 そんなに驚いた顔をしなくても。

 あ、霞や白蓮も悲しそうな顔になっちゃってるね。

 

「昨日のマーケットでEXAT(ベルゼルガ)の評判がかなりよかったらしくてさ、受注を考えてるって言うからいくらぐらいで売るつもりか聞いたら、思ってた以上に高くて。……この世界で回収した自家用車を初物価格で売ったとしても4桁は売らなきゃってお値段」

「そ、そんなにするのか?」

「もちろん1機でね。一応俺たちも開発部のメンバーだから身内価格で売ってくれるとは思うけど、無駄使いはあまりできないわけなんだよ」

 これでもかなり安いらしい。材料費や技術料は別として、開発費がかなり抑えられているからだ。ベースが俺の成現(リアライズ)だから全くの新規開発ではないのが大きい。

 

「刑天みたいなのがこれからも出てくることを考えると、EXATはもっと必要でしょ」

「たしかにそうね。スキルレベルを上げて数人で当たれば生身でも勝てる気はするけど、鍛錬だけでそこに到達するのには時間がかかる。かといってGPで強化するのは、やはり高価」

 数人で勝てるの? ……華琳が言うんだからそうかもしれないけど、どんだけ強化するつもりなんだろう。

 

「こっちでも世知辛いねぇ」

「いつの世も戦というのはお金がかかるものなんです」

 桃香と朱里がため息。恋姫でも蜀はいつも軍資金で苦労してたイメージがある。

 俺もため息をつきたくなったが、甲斐性なしの夫ではいけない、と両頬を叩いて気合を入れる。

 

「だから、EXATはしばらく俺のスキルで作ったので我慢してくれ」

「いいのですか?」

「MPは足りるの? それに、EPが減ると大変なのよね?」

 心配そうに俺を見る愛紗と蓮華。彼女たちは自身の武器の準備のためにEP籠めをしたことがあるから、EP低下時の状態も知っている。

 

「MPはまあ、まだ増えてるからなんとかなる。EPの回復方法はわかった。それにEP注入は俺だけがしなくてもいい」

 昨日のぬいぐるみ復活で俺の固有スキルのレベルも上がっている。MPでやるより、GPで成現した方が熟練度の上がりがいいようだ。

 レベルアップのおかげで必要MP(コスト)も多少は改善されているはず。

 そう何年ももつほど成現時間を長くしなければ、数も揃えられるだろう。

 

 EPが歌で回復できるのは確認した。そして、各人の専用機は自分でイメージを籠めてくれればいい。あとでボトムズを観てもらわないと。……いや、それだとATが弱いって思っちゃうかもしれないな。EPを籠めてくれるなら強いイメージの方がいい。

 爆発しやすいのとキリコが強すぎるのにも困ったもんだ。難しいね。

 

 撮影や昨日の戦闘でEXATがどれぐらい強いかはみんなわかってるだろうから、宣伝映像や昨日の戦闘映像を観てもらうことにしよう。

 

「で、でも、そんなにプラモデルを作ってる時間あるんですか?」

「だいじょうぶだよ雛里ちゃん。ATは人気があるからね、塗装済完成品も結構あるんだ」

 あのへん、中国で塗装されてたのが多かったから中国で戦うにはいいんじゃない?

 オークションサイトを漁ることになるだろうけどさ。

 

「それ、ちっとくらいイジってもええよな?」

「もちろん。その方がEPもたまるはずだ」

 改造したいという真桜に賛成する。想い(EP)は楽しんでいる方が籠めやすい上に、本人のEPは下がりにくい。……楽しんでるとこを人に見られると羞恥心で下がるけど、真桜なら平気そう。

 

「綺麗なのがいいの!」

 なんか沙和はデコレーションATにしそうで怖い。

 ん? デコATだとデコトラみたいに電飾や絵が描かれてそう。……于禁的に絵付は不吉なんじゃ?

 考えすぎかな。それ用のビーズを渡しておけばいいか。

 

 

「ウチのは愛紗のと(おんな)じでええ。んで、サーキットはできるんやな?」

 霞的には自分の使い勝手よりもお揃いの方が重要なのか。

「マニュアル調べたけど、訓練場扱いだけど作れる。ただ、場所をかなり取るからGPも作成期間もそれなりにかかる」

「そうだな。あんまり狭くてもつまらないもんな」

「同じ訓練場なら戦闘訓練用のがよくはないか?」

 春蘭の意見に鈴々ちゃんや季衣ちゃんがうんうんと頷いてる。焔耶や雪蓮もか。

 

「そんなの基礎訓練した学校でいいだろ」

 マニュアル見てわかったんだけど、あの学校も訓練場らしい。手続きして開放するまでは使用料(GP)を取られるけど、死ぬことはなく保健室に転送される。

「あんな狭いとこでは、えーてーで戦えないだろう!」

 そこまで狭くはないと思う。

 でも開放にもGPを取られるから、それならもっと大きな訓練場を設置した方がいいってのもわかるんだよなあ。

 

「両方を用意ってのは?」

「無理。他にも買うものあるし」

 蒲公英ちゃんの意見に顔の前で手刀を左右にふる俺。

 

「他? ……ああ、璃々のゲート承認アイテムね」

「うん。あとオリハルコン。結婚指輪(マリッジリング)も作りたいし、EXギアの装甲にも使いたい」

 オリハルコンはミスリル以上に魔力と気を使いやすくなるらしい。EXATでも(アーツ)練気(チャージ)が早くなるのなら、なんとしても用意したい。

 

「結婚指輪……」

 嫁さんたちの多くが自分の左手薬指にはめられた婚約指輪(エンゲージリング)を見つめる。

「本当は結婚式で渡したいんだけど、もう結婚しちゃってるから……」

 そしてこの婚約指輪以上の機能を持ったアイテムを渡しておきたい。干吉たちが健在な以上、いつまた俺がさらわれた時のように離れ離れになるかわからないのだから。

 

「そう言われると、サーキットをって強く言えないじゃないか」

 顔が赤い梓はサーキットの方か。……まさか自分の足で走りたいのか?

 

「すぐに決めることもないだろう。高速移動なら航空機を利用すればいいからそこまでサーキットでの訓練はいらんし、ATでの訓練はしばらく、2面の訓練場を借りればいい」

「そうね。まだ蚩尤も確認していない。貯めておいた方がいいかもしれないわね」

 クランの意見に華琳が賛成する。

 蚩尤か。カードの方の孫策の話だと、刑天よりもでかそうなんだよな。中国政府はこいつがいるって知ってるのか?

 

「んじゃ、次の相談いいか? EXATの数を増やすとしてさ、そろそろ母艦用意したい」

「母艦?」

「もしくは移動可能な作戦指令室(オペレーションルーム)。ようは指揮設備のある乗り物」

「それはたしかにほしいですねー」

 俺の説明で軍師たちはわかったらしい。

 

「ビニフォンで戦闘中の通信が可能なのだから、ちょっと離れたとこからでもリアルタイムに指示ができるでしょ。軍師たちが最前線に出なくても済む」

 昨日の映像を見てると、戦闘力の低い娘たちはちょっと不安になったし。武将たちがちゃんと守っていたけどさ。

 

「別に移動可能じゃなくて屋敷(ここ)に設置してもいいんだけど、どうせなら俺のスキルで用意しようかなって。だからあまり大きなのは無理かもしれないけどね」

「そうですねー、あまり大きいと保管場所にも困ります」

 穏、そう言いつつなんで胸の谷間を見るの? そこになにか保管してるの?

 

「そうだな。スタッシュに入るか、拠点に置いておけるぐらいのサイズがいいか」

「それなら! 列車で! 決まりッスよ!!」

 自分の趣味全開に挙手しながら叫ぶ柔志郎。

 ……列車か。線路の状態に左右されるけど、たしかに移動可能だし拠点は駅だから置いておけるか。

 

「車両を改造すればATの運搬もできそうだねえ」

 眼鏡を光らせる輝。

「サクラ大戦でそんな機関車あったなあ」

「機関車ッスか! おススメがあるッスよ!」

 嬉しそうに柔志郎がビニフォンを操作し、車両の映像を空中に投影させる。新型ビニフォンで撮影したものではないらしく平面の映像ではあったが。

 

「中国で使うなら、コレ! 『あじあ』ッス!」

「……機関車、なのか?」

 俺のイメージする機関車とはちょっと違う、ちょっと顔が付きそうにない流線形の車両。

「パシナ形ッス。工場は現地ッスけど、日本の設計ッスよ! 南満州鉄道の超特急ッス!」

 満州だから中国で使うなら、か。

 んん? 記憶のどこかにひっかかるものが……。

 

「あ!」

 そうだよ。列車でロボ輸送ったら機神兵団じゃないか! あれの機関車『機神号』ってこんなのじゃなかったかな。

 アニメの機神兵団、話はともかく発進シーンはよかったよなぁ。

「どうしたッスか?」

「わかった、これでいこう。模型はあるか? なければ通販で頼んでくれ」

 さすがに鉄道模型は詳しくないんで柔志郎頼みになる。この世界の通販でも買えるかな?

 

「持ってるッス! 最終型のヘルメットでいいッスか?」

「ヘルメット? よくわからないけどそれでいい。あとは通信設備や内装か……それっぽいプラモってあったかなあ?」

 両さんにも相談した方がよさそうだ。Nゲージにも詳しかったはずだし。

 

 

「次は……」

「煌一の武器よ」

「俺の?」

 予想外の議題に華琳を見る。……相変わらず最っ高に可愛い。

 

「北郷一刀が使っていた剣、あれはいい剣だったわ」

「そうね、あの剣は北郷の腕以上によく斬れてたわね」

「彼へのあどばいすも的確だった」

 雪蓮と愛紗も認めるほどってのはすごいな。戦闘中なのにそこまで見ている方もすごいけど。

 

「ゲキリュウケン、か」

「ええ。魔弾龍、あれの他にもあると言っていたわ。それも煌一用のが」

「俺じゃなくて、同じ名前のやつ用ね」

 いったいどんなやつなんだろう? 「こういち」って名前のキャラは多いから慣れてるけどやはり気になる。

 

「弓にもなる斧言うとったな。どんなんやろー? 見てみたいわ」

 カリスアローかゴーガンソードみたいなのかな。真桜にライダーの武器見せたら作ろうとするかもしれない。いや、戦隊のドリル武器の方か。

 

「ワルテナや剣士にも頼まれてるから、準備しないといけないか。わかった、今日はみんなで鑑賞会だ」

 スタッシュから借りていたリュウケンドーのDVDを取り出す。

 授業サボってまでやることか、ってのは気にしない。だって使徒としての仕事に必要なことだからね。

 

 

 

「本拠地まだグレードアップ終わらないのか?」

 2枚ほどDVDを見た俺の口から出たのはそんな言葉だ。

 早く魔弾龍や獣王を成現したい!

 そんな気持ちでいっぱいだった。

 

 そのためにはベースとなるTOYが必要だ。

 俺の生まれた世界のネット通販で買うにしても、俺の部屋のネット回線からじゃないと繋げられない。こんなことならビニフォンで繋がるインターネットのその世界のものだけじゃなくしておけばよかった。

 

 マサムネたちにメールして回収した物の中にリュウケンドーのTOYがあるか確認しておいてもらわないと。

 む? 回収した中にあるのなら、この世界のネット通販でも探せるか。

 ビニフォンで……っと、3枚目が始まってしまった。探すのに集中できん。あとにしよう。

 

 リュウケンドーおもしろい!

 もっと早く観ておけば……。

 今回観ることができてよかった。ワルテナに感謝だ。

 

 


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