途中まで書き上げてて(9割ぐらい)放置くらってたやつをやっとこさ完成させて投稿。
プロットは、前のPCと逝緒。
「ふむ。なんとも珍しい戦いだのう」
セイバーとキャスターの戦いはあまりにも裏を知る人間にとっては目立つものだった。
聖杯戦争、この冬木の地で行われる魔術儀式を知るものたちには一目瞭然。人外の戦いを眺めようとするものも少なくはない。しかしながら聖杯戦争には観覧者にすら危険が及ぶ。守秘義務というやつだ。
一言でいうと関係ないやつは殺すということ、故に一部の例外を除いて除く輩はいない。
つまりはそれでもなおこの戦に首を突っ込む輩は関係者にほかならない。
冬木にかかる大橋から眺めるは2つの影。
口を開いたのはそのうちの大柄な方だった。
「正面からセイバーに相対するキャスターだろ。あんなの見たことない。ていうかありえない」
「しかしなぁ、現にああやっているではないか。それにもしかしたら他にも適正があって今回たまたまキャスターとして呼ばれただけやもしれん」
もう一人の小柄な少年――ウェイバーは大柄の方の言葉を否定しようとする。しかし大柄の方――ライダーはウェイバーの言葉を更に否定する。
世の中には弓兵なのに槍兵や剣兵と平気で打ち合う例外も存在するのだ、何ら不思議ではない。
そうこう二人で話しているうちに戦況は大きく傾く。キャスターが召喚する海魔によってセイバーは消耗戦を強いられ、キャスターの策によって傷を負った。
十全な力を振るえぬセイバー、攻勢に出るキャスター。この戦いの形勢は誰が見ても明らかだった。
「さて、向かうか坊主。このままでは不味い」
「何が不味いってんだよライダー?」
ウェイバーは疑問を発する。
何が不味いというのか。このまま勝敗が決まればライバルが一人減るということだ。この戦いの本質は生存、つまり最後の一組になれば勝利なのだ。
この自分のパートナーは一体何がやりたいというのか。
ウェイバーの顔色を読み取ってか、ライダーは神妙な顔つきで口を開く。
「このままではこの戦いが終わってしまう。それは阻止せねばならん。
・・・・・・つまらんではないか」
「何神妙な顔で言ってやがりますかこの馬鹿は!!」
「ほら、そうと決まれば往くぞ坊主。善は急げだ」
「え、ちょ・・・・・・」
ウェイバーの苦労は耐えない。
*
「Ia! Cthulhu!」
一面を埋め尽くす海魔、その全てが鋭い捕食器をセイバーに向ける。
その数は不明。最優といわれるセイバーでさえこれならば葬れるだろう。
大勢は決していた。誰がどう見てもこの戦いはキャスターの勝利。戦いを知らぬ素人が見てもそう思うことだろう。
それほどまでにセイバーは劣勢だった。
片腕を負傷し、剣は満足に振るえない。元々が両手用として設計してあるためか、片手では十全にその力を発揮できなかった。
だがそれでもなおこのサーヴァントは剣の英霊。生前にこのような状況は嫌というほど味わっていた。
故に対処法も知っており、セイバーは行動に反映させる。
「舐めるな!!」
まず第一波。先頭の海魔に向けて素早く剣を薙ぐ。負傷してもなお強力な一撃によって海魔は一瞬で物言わぬ肉塊に変貌を遂げる。そしてその肉塊を緩衝とするとセイバーは素早く後退する。
そして剣を降り終わったあとの体勢――残身――を利用して瞬時に次の攻撃を行う。
斬り上げ、横薙ぎ、斬り下ろし。大振りで隙も大きい攻撃であるが、知能の低い相手ならこれで十分であった。
「流石はセイバーといったところか。人でないのがもどかしいな」
キャスターは笑う。危機的状況を神がかり的な挙動で打破しようとしているセイバーではあるが、依然として有利なのは明白。
距離さえ詰められなければキャスターに死角はないのだ。如何に対魔力の高いセイバーであっても物理的なものは防げぬし、負傷すらしている。
キャスターの攻撃手段は依然として海魔の召喚、使役のみ。まだまだ隠し玉はあるかもしれぬし、その数は知られていない。
だが現状、硬直状態といっても過言ではなかった。
キャスターの海魔のみだと如何せん決定力に欠け、セイバーは負傷故に満足に剣を振るえず距離を詰められない。
お互いに千日手の状況だ。
「貴公こそ、その手腕恐れ入る」
セイバーも笑う。このような戦いなど久方ぶりであった。残念ながら相手は騎士ではないが、将を錯覚させるような戦いを仕掛けてくる。
「だがこのままでは埒があかぬ。私としては早々に退場していただきたいのだが」
「無茶を言う。私もまだ戦える。貴公こそ、座に帰っても構わないが?」
「ハッ。その体で何を言う。せめて私に一太刀浴びせてから言うのだな!!・・・・・・ならば少しサービスしてやろう!!」
キャスターの周りの空気が歪む。セイバーは確信した。キャスターは奥の手、もしくはそれに類ずるものを使ってくると。
「Ia! Ia!」
高らかに響き渡るはキャスターの詠唱。世界を歪ませる程の
その声は女か男か。性別すら感じさせない荘厳な響き。
魔本が邪悪な光を放つ。まるで持ち主に応えるかの如く胎動する。
本は持ち主の魔力を吸い、大気の
「R'lyeh Cthul――チッ!!」
しかしキャスターは不意に詠唱をやめる。そして放たれるは罵倒。
魔本を閉じ、強制的にその昨日を停止させる。そして疑問符を浮かべながらも此方を睨みつけるセイバーに注意を払いながらも空を見上げた。
直にセイバーも気付く。この戦いに介入しようとする存在を。
「――――AAAALaLaLaLaLaie!」
鬨が響き渡る。この状況で介入するとは酔狂な存在なのだろう。
本来ならば、これから切り札の一つを切るキャスターを止める必要なない。情報は何よりも変えがたいアドヴァンテージとなるからだ。
なぜそれを知りながらもとめようと乱入してくるのか。考えたセイバーだが一瞬で放棄した。
もし乱入者がキャスターの味方をしようものならばセイバーに勝ち目は薄い。
ではどのような行動が最適か。逃走か、迎撃か。はたまた交渉か。だがそれを考えるのは
「この状況で邪魔に入るか、サーヴァント」
「このまま終わってしまってはつまらぬではないか。そうは思わぬかの?」
「そう思うのは貴様だけだ。理由がつまらぬとは、呆れるしかないがな」
現れたのは二頭の雄牛を率いる
「まぁそう言うな、我が名は征服王イスカンダル。此度の聖杯戦争ではライダーのクラスを得て現界した。この戦い、調停させてもらうぞ」
*
「征服王? 貴様がかのマケドニアの覇王か。なるほど、それならこの威圧感も納得できる。
しかしながら征服王、何故止める。これは戦争だ。共に疲弊したところを狙うのが定石ではないか? 調停なぞ、気でも狂ったか?」
「気など狂っておらぬわ、キャスターよ。一つ提案をするために余は来たのだ」
「提案だと?」
キャスターは訝しそうにライダーを睨みつける。警戒は解かず、何時でも攻撃を行える体制で問う。ライダーは「うむ」と頷く。
「うぬらとは、聖杯を求めて相争う巡り合わせだが、まずは問うておくことがある――うぬら、ひとつ我が軍門に下り、聖杯を余に譲る気はないか。さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を征する快悦を共に分かち合う所存である」
大真面目な顔で問いかけるライダー、しかし戦場は静寂で満たされる。
「貴様は私を嘗めているのか、征服王。私は確固たる願いをもってこの戦いに身を投じたのだ――やっと機会を得たのだ。私はこの機を逃す積もりはない。それに……貴様は尋常な戦いに横やりを入れたのだ。無事で帰られると思うなよ。我が神は生贄を求めている。そう、生贄だ。上等な魂だ。」
「まぁそう急くな。そこな騎士の答えを聞いてからでも遅くはない。それに……」
「どうも余以外にもこの戦いを眺めていた者がいるようだしの」
風切り音が響き渡る。飛んでくる――いや、伸びてくるのは銀色の槍。征服王は腰から剣を引き抜き何事もないかのように打ち払った。
「問うぞセイバー。貴様は余に下るつもりはあるか?」
「私は騎士だ、二君に仕えるつもりはない。それに、私も聖杯を欲してこの闘争に参加したのだ。諦めるつもりは毛頭ない。ただ――」
「まずは、この何かを投げてきた糞野郎を殺すべきだろう。ああ、好い。今宵は生贄にあふれている」
言葉を被せてきたのはキャスターであった。その眼はただ何かの投擲元を見据えている。海魔を生成し、本体を守るように布陣させている。
「ああ、臭うぞ。神の臭いだ。この私から聖処女を奪ったゴミカスと同じ臭いだ。
――姿を現せ。その忌々しい存在を混沌におくってくれる」
「ゴミとは失礼だなキャスター。私は神でも貴様から女を奪った忌々しい何かでもない。私は――」
暗がりから出てくるのは一人の男。群青のコートを翻し、こちらに姿を現す。堂々としたその姿はどこか気品を漂わして。
「私の名はケイネス、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。とある人物から貧者の金と名付けられた――ただの魔術師だ」
ISの方は原作ごとどっかいったので、この作品を完結させたらプロットから書き直そうと思う今日この頃である