戦場のヴァルキュリア 蒼騎士物語   作:masasan

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お久しぶりでございます。masasanです。

およそ一年ぶりの投稿となりました。
とりあえず、言い訳というか、釈明は、あとがきにて行います。

短い上に、相変わらずの駄文ですが、お慰みとなれば幸いです。


第三十三話

「やれやれ、相変わらずやることが乱暴だな、皇子殿は」

 

ガリアで唯一、草木一本生えていない不毛地帯であるバリアス砂漠。

 

その中心部にある遺跡―――正確には、遺跡だったものを見上げながら、ルイアは口角を吊り上げた。

 

数時間前に行われたガリア軍と帝国軍の遭遇戦―――マクシミリアン皇子率いる新型巨大戦車マーモットの試験運用と言う名目の、ヴァルキュリア遺跡の調査での、突発的戦闘――で破壊された遺跡は、元の姿がどうであったか分からない程に粉々にされていた。

 

内部に描かれていた壁画、文字は解読不可能であり、遺跡に宿っていたラグナイトの光はその輝きを失い、ただの石へと変じていた。

 

輝きを失い、ただの岩へと変じた遺跡の中をルイアは進んでいく。その足取りは明確で、まっすぐに遺跡の中心部分へと向かっていた。

 

やがて遺跡の中心部分だった場所に辿り着くと、ルイアは一層笑みを深くし、懐に入れていたキューブ状の何かを取り出した。

 

「さて・・・ご対面と行こうか」

 

ルイアの言葉と共に、それは輝きを放ち、そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「超巨大戦車?本当にそんなのが確認されたのか?」

 

執務室にある自分のデスクで備品リストを確認していたヴァリウスは、仕事の休憩中にセルベリアから語られた帝国軍のものと思われる超巨大戦車という言葉に、眉をしかめながら湯気を立たせるティーカップを手にする。

 

「ああ。義勇軍からの報告だと、バリアス砂漠にて、未確認の超巨大戦車と交戦。戦車は遺跡を完全に破壊、そのまま義勇軍部隊を殲滅せずに消えていったそうだ」

 

ヴァリウスと同じ柄のティーカップに口をつけ、かすかに口元を綻ばせる。それを見て、今回の紅茶はあたりだったかと考えながら、その巨大戦車の不可解な行動に頭を捻った。

 

「義勇軍には目もくれずに、ねぇ・・・その遺跡って、何か特別なモノだったのか?」

 

「さぁな。不毛地帯だからか、あまり調査の手も入っていなかったそうだが、なんでも古代ヴァルキュリア人が残した遺跡として一時期注目を浴びていた遺跡ではあったらしい」

 

「おいおい、ヴァルキュリア人が残した遺跡ってことは、かなりの重要物件だったんじゃないのか?」

 

自分たちにも無関係ではないワードに目を険しくさせるヴァリウス。しかし、応接用のソファーに座るセルベリアはヴァリウスへと最後まで聞けとカップから口を離した。

 

「目されていた、と言っただろ。壁画に残されていた文字や絵は確かに古代ヴァルキュリア人についての物だったらしいんだが、その内容は他の遺跡ですでに発見されていたものと大差なかったらしい。その上、それ以外の目ぼしい学術的な発見も無かったことから、この遺跡に関しての調査はすでに終了して久しかったそうだ」

 

「なるほど。ありふれたものだったってわけだ」

 

「裏に何が隠されていたかは分からんがな」

 

「跡形も無く破壊されたんだろ?いくらなんでも、それじゃ調査しようがないだろ」

 

いくつかの戦場で目撃されている、常識外の巨体を誇る戦車。その戦闘力は街一つを壊滅させるだけのものであったと、運良く交戦して生きて帰った者達は語っているらしい。

 

そんな化物と交戦し、無事に帰ってくるなんて、余程運のいい奴らなのだなと、話している間にだいぶ冷めてしまい、仄かに温かみを残しているカップに口をつけながら頭の片隅で感想を述べる。

 

同時に、思いの外いい香りと味のそれに、補給部隊のゴトウから購入したそれに、案外いい買い物だったなと、あの気の抜けた顔を脳裏に浮かべる。

 

戦時下であるため、こうした嗜好品の値段も上がってはいるが、息抜きには丁度いい。

 

「まぁ、損害が調べつくされた遺跡一つだったのは運が良かったとしてだ」

 

「歴史学者や宗教家が騒ぐだろうけどな」

 

「茶化すな。遺跡とは言え、古代からある遺跡をものの数分で廃墟と化した攻撃力は、脅威だ」

 

紅目を険しくさせながら、口元を歪めるヴァリウス咎めるセルベリア。その言葉に肩をすくめながら、表情を改めたヴァリウス

 

「だな。ところで、その生き残った義勇軍部隊の面々ってのは、誰なんだ?できれば生の声を聞いてみたいんだが」

 

「そう言うだろうと思っていた。丁度いいことに、今度その面々と直に会える機会がある」

 

「ん?」

 

今度の晩餐会、という言葉に苦い顔をするヴァリウス。そんな彼の様子に、微かな笑みを浮かべ、セルベリアは懐かしい面子だろ?とからかうような口調で続けた。

 

「あのブルールの戦闘からそう経っていないはずだが、大した戦果だそうだぞ。あのダモン将軍閣下が大層ご立腹らしいからな」

 

「ハッ、まともな作戦一つ立てられないような奴のくせに、そういうところは人一倍だよな」

 

「まぁ、奴だけではないらしいがな。正規軍内でも、義勇軍の活躍を面白く思ってない者は多い」

 

「ったく、国家存亡の危機だってのに、相変わらず悠長な奴が多すぎないか、この国は」

 

「正規軍には、貴族出身者が多数いるからな。彼らにとっては、平民の活躍など、面白いわけもないさ。それに、大事なご当主様や、跡取り息子やらが戦死するのは、彼らの望むところではないのだろう」

 

「ったく、ノブレス・オブリージュはどこに行ったのやら」

 

あまりにも、自軍の程度の低さ、意識の低さに呆れしか出てこない。そう言いたげな顔のヴァリウスに、同感だとばかりに、頷くセルベリア。

 

正規軍の振るわない戦果の原因の一つと一部の者たちの間で囁かれている、貴族出身者の戦死回避政策。これが、数値上義勇軍に勝る戦力を誇っているはずの正規軍が、義勇軍に劣る戦果しか出せていない現実を作り上げていたのだ。

 

平民出身者への高級職解放や、貴族特権の一部撤廃など、階級主義が少しづつなくなっているガリアではあるが、いまだに貴族優位の政策は根深く残っている。

 

その一例として、正規軍の貴族出身者がいる部隊が、一部の上層部から、命令という形で、前線から遠い、後方任務への配置換え、それでいて優先的な装備、食料の配給などの、特別待遇が平然と横行していた。

 

一部の上級幹部は、公然の秘密として知っているこの横行は、しかし上級幹部たちの多くが、貴族出身者で占められていることから、厳密な処罰や、調査が行われないまま、現在にまで至っていた。

 

「だからこそ、今回の授与なのだろうな。いい加減、正規軍の平民出身者、そして義勇軍内でも、不満の声が高くなっているらしいからな。ガス抜きも兼ねているんだろう」

 

「上の連中としちゃ、苦肉の策ってわけだ」

 

いやだねぇ、貴族ってのはと、吐き捨てるヴァリウスに、苦笑するセルベリア。自分たちも、その貴族の一員であるはずなのだが、そういった輩とは一緒にされたくないのは、彼女も同じだ。

 

「とにかく、そう言うわけで晩餐会には参加しなければならないわけだ」

 

「あー・・・分かったよ。これも、お仕事ってやつだな」

 

茶番であろうとも、招待されたからには貴族の末席に名を連ねるものとして、そして一軍人として出なけでばならない。しぶしぶとだが、ようやく承諾したヴァリウスに、薄い笑みを浮かべるセルベリア。とりあえず、ドレスのほうをどうにかしなければな、と顎に手を当て思考の海に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「晩餐会、ですか・・・?」

 

「ああ。近々ガリアの公太女であるコーデリア姫主催の晩餐会が、7月の22日に開かれるらしい。それに、イェーガーと共に潜入せよ」

 

ギルランダイオ要塞のマクシミリアンの執務室にて、マリーダは、主人であるマクシミリアンから、奇妙な命を下されていた。

 

帝国に届いた晩餐会の招待状。それを用いて、架空の伯爵夫人として、パーティーに参加せよという命だ。

 

現在、戦況は停滞状態にある。ガリア側からの予想外ともいえる反撃により、当初占領していたガリアの首都、ランドグリーズまで目と鼻の先であったヴァーゼル橋が奪還され、クローデンの森に極秘裏に建設されていた補給基地までもが、撃破され、ガリア中央における、戦略ルートは、大きく後退することとなった。

 

さらに、北部でも抵抗の兆しが見え始めている現状で、茶番ともいえる晩餐会などに参加する意義が、マリーダには見えなかったのだ。

 

「しかし、殿下。今の戦況で、私が戦場を離れるのは・・・」

 

「イェーガーからの要請でな。直に、ランドグリーズを見ておきたいらしい。それには、奴単独よりも、貴様と共に赴くほうが、偽装が容易なのだそうだ」

 

「それは・・・」

 

「・・・余の命に、従えぬのか?」

 

「っ申訳ございません。出過ぎたことを・・・!」

 

寒気さえ感じられそうな目で見つめられたマリーダは、即座に頭を垂れた。主人であるマクシミリアンの命は、絶対。それは、|あ≪・≫|の≪・≫|場≪・≫|所≪・≫|で≪・≫彼に拾われたときからの、マリーダにとって唯一絶対のルールだった。

 

「では、命に従い、ランドグリーズに赴け。その間は、イェーガーの言葉を、余の言葉と同義に思え」

 

「はい、マスター」

 

再び頭を下げ、そのまま退出すつマリーダ。そんな彼女の後姿を、マクシミリアンは、変わらぬ冷酷な瞳で見続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・準備のほうは、出来ていますかな?』

 

「これはこれは、閣下自らご連絡いただけるとは。光栄の至りですな」

 

『世辞は結構。それよりも、注文したモノは出来ているでしょうな?』

 

「ええ、出来ていますよ。ご注文いただいた、|モ≪・≫|ド≪・≫|キ≪・≫が6体。二個小隊以上の働きをする人形が、ね」

 

『結構。それでは、手筈通りに、22日に、城のほうへ届けておいてください。報酬は、その際にお渡しいたしましょう』

 

「ええ、それでは22日に・・・ボルグ侯爵閣下」

 

 




え~、言い訳となりますが、今まで投稿できなかったのは、仕事が、精神的、肉体的にかなりきつかったためです。

不規則な職場でして、その上、かなり精神的にくる仕事なんで、帰ったらすぐに寝てるなんでのはざらだったもので、中々投稿できませんでした。

とりあえず、一段落着き、ちまちまとですが、書き続けていますので、どうか、これからも駄文となりますが、よろしくお願いします。

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