影武者華琳様   作:柚子餅

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42.『曹操軍、洛陽を発ち進軍するのこと』

 

 

 曹操軍・劉備軍・馬超軍・公孫賛軍はあれからも共同で物資の配給を行い、何事もないまま日が過ぎていった。

 そうしているうちに糧食の余裕がなくなったとして、馬超軍と公孫賛軍が領地へと帰還を決めてつい先日に洛陽を発った。連合解散から五日も経てば、洛陽に滞在していた諸侯もあらかた帰還している。

 袁紹の援助により物資に余裕があり今も尚精力的に復興を行っている劉備軍と、洛陽から動くに動けず滞在する他にない曹操軍。それを除いてしまえば残るのは五つ程度といったところである。

 

 その内の拓実が率いる曹操軍は、以前に華琳が諸侯らの前で話したように農地が壊滅している洛陽に万に及ぶ民を自給自足させる能力はないとして、数日前から別の街に旅立つ者への支援へと切り替えている。

 ここで拓実たちが急場の支援を数日続けたとしても焼け石に水。それどころか民はいつしか毎日の食を諸侯の配給に頼りきりになるようになり、彼らの自立しようとする意思を挫いてしまう。いつまでも面倒を見ているわけにはいかない。このまま洛陽の民の暮らしを安定させてはいけない。ここにいてもどうにもならないということに、気づかせなければならないのだ。

 拓実が集めさせていた配給用の備蓄が数を減らしているぐらいなのだから、残る諸侯もほぼ底をついている頃だろう。その伝令が曹操軍の陣に飛び込んできたのは、遠くない未来に支援が打ち切られるだろう予感を感じさせる頃であった。

 

「曹操、さま。追撃部隊、曹仁さまより、伝書、を……!」

 

 兵士が曹操軍の陣へと辿り着いたのにたまたま居合わせたのは、洛陽視察の準備していた拓実とその護衛役の春蘭であった。

 曹操軍の鎧を纏った歳若い男はよろよろと近寄っては息も絶え絶えにそれだけを言うと、手にある書状を春蘭へと渡してそのまま糸が切れたかのように地面へ倒れ伏す。

 見れば顔色は青白くその額には流れ出ていただろう血が固まり、鎧の下に着込んでいた衣服も赤黒く染まっている。そして彼がうつぶせに倒れたことで、その肩に矢羽部分の折れた矢が突き刺さったままであったことに拓実と春蘭は遅れて気がついた。

 

「おい、曹仁の伝書はこの夏侯元譲が確かに受け取ったぞ! よくやった! 誰か! 誰かあるか! まだ息がある、この勇士に治療を急げ!」

 

 呼吸を確認した春蘭が、すぐに付近を警護していた親衛隊の兵に彼を運ばせて治療に当たらせるよう指示を出す。

 ばたばたと衛生兵たちが負傷した伝令を抱えて運んでいく。どうやら、状態を確認している衛生兵の様子を見る限りでは一命こそは取り留めそうであった。

 

「華琳さま、これは……」

 

 書状を手に、春蘭が困惑を隠せずに縋るような視線を送ってくる。手傷を負い、休む間も惜しんで単騎帰還した追撃部隊の伝令――まず、喜ばしい報告ではないだろう。

 

「春蘭。緊急に軍議を開くわ。すぐに秋蘭と桂花の二人に召集をかけなさい」

「……はっ!」

 

 

 

 

「『――――洛陽に居られる華琳さま。戦場にて、経過と用件のみ記すことをお許しください。洛陽を発って数日、長安への道中にて逃走する董卓軍を発見し、追いつくことに成功致しました。荀攸さまの指揮の下で交戦し一時優勢を保つも、しかし山腹に伏兵の計をこらした官軍の将、郭汜に李(カク)、また長安を先んじて制圧していた徐栄らにより挟撃に遭い、一刻に及ぶ奮戦も空しく我が方の被害は甚大でございます。今や兵も隊列を乱され離散を始め、壊滅は必至。前線の部隊は半壊し、指揮をなさっていた荀攸さまと曹洪は数十の護衛を連れて共に逃げ延びたご様子。お二人から目を逸らすために後続に配されていた私が残りを率いて百里(約40km)の撤退を行うも、未だ追撃の手が緩まぬ為に応戦し敵軍の足止めをしております。荀攸さまが今も洛陽へご帰還なさられてないならば、どうか早急に、落ち延びた荀攸さま捜索の部隊を遣わしていただくようお願い申し上げます――――曹子孝』」

 

 左手で曹仁からの書状を開き、読み上げる。拓実が言葉を発するたびに、軍議へと呼んだ三人の目が見開かれ、その瞳は大きくぶれていく。

 事情を知りながらも曹仁が華琳の名を荀攸と記載しているのは、伝令が志半ばで倒れてこの書状が敵の手に渡った時のことを考えてだろう。その文字も戦場で急ぎ書かれたものとわかるぐらいに崩れていた。

 

「これが、今しがた水夏より私宛に届いた伝書よ」

「か、壊滅……? そんなっ、華琳様が?」

「ぐうっ! おのれ、私が華琳さまのお傍を離れたばかりに! すぐに華琳さまの捜索に出るぞ! 私が陣頭指揮する、文句はないな!」

「待て、姉者! 捜索部隊の編成が先だ。私も出るぞ。兵たちにはすぐに準備をさせる!」

 

 その内容が浸透するなりに、人払いされた天幕の中で軍議に集められた三人は恐慌に陥った。

 桂花が震える両手を口元へとやって、膝から崩れ落ちてその場にへたり込む。呆然と宙を仰いだまま、視点は定まらない。春蘭は聞くが早いか、立掛けてあった大剣・七星餓狼を担いでは構え、身を乗り出し怒鳴り散らしている。それに制止の声をかけた秋蘭も、姉より早く天幕から駆け出そうとする。

 

「あなたたち、落ち着きなさい」

 

 この場で揺るがずにいられたのは唯一拓実だけであった。椅子に深く腰掛けたままで立ち上がる様子もなく、もう一度手元の書面を読み返してから三人に向けて落ち着き払った声を上げる。

 駆け出そうとしていた春蘭と秋蘭は主君と同じ声に足を止めては振り向き、しかし(まなじり)を吊り上げた。

 

「拓実! こうしている間にも華琳さまに危機が迫っているのだぞ! 落ち着いてなどいられるものか!」

 

 いきり立っている春蘭は一向に動く素振りを見せない拓実に苛立ったらしく、荒々しく歩み寄っては掴みかからんばかりである。声にこそ出さないが、同じく秋蘭も横目で睨みつけるようにして拓実を非難している。

 だが今この状況での振る舞いに対し、気に障っていたのは春蘭と秋蘭だけではない。静かに、しかし彼女たち二人よりも激しく心火を燃やしていたのは、一人動じる様子を見せなかった拓実であった。

 

「『拓実』ですって? 春蘭。あなたは、誰に口を聞いているのか理解しているのかしら」

「何だと!? 貴様こそ何をのんびりと悠長に構えている! そんな暇があるなら一刻も早く……!」

「これが最後よ。次はないわ。あなたの目の前にいる者が『この私』であると理解し、それでも尚『貴様』と呼びつけるのか。春蘭、答えなさい」

 

 華琳が全権を委ねたのは誰か。この姿の拓実が表に出る時に限り、拓実は『誰』であると華琳は明言したのか。それを違えて『華琳』に暴言を吐き、軽んじるというのであれば、例え最古参の忠臣であろうと『私が誰であるのか』をわかりやすいように思い知らせてやる。

 拓実は己に食って掛かろうとしている春蘭を見据える――――さあ、言ってみろ。

 

「なに、を、っ……!?」

 

 拓実が視界の中心に春蘭の姿を据えたのと同じくして、怒り昂っていた春蘭の肌は一斉に粟立っていた。反射的に一歩後ずさり、体を竦ませ上体を仰け反らせる。

 春蘭は目の前に座って無表情に己を値踏みしている存在を、否応もなしに再認識させられていた。向けられているのは、これまでのような感情の篭もった視線ではない。そこには、虫けらを踏み潰すように人命を刈り取る、冷徹な眼光があった。春蘭の主君が、賊徒や不正を働いた役人を斬刑する際に見せていた瞳そのものである。

 それが今、自身へと向けられているのだ。一つ返答を間違えればこの場で斬り捨てられるところに立っている――それを自覚してようやく、春蘭は己の過ちに気がついた。

 

「ぁ、う……! か、『華琳』さま……数々の無礼、申し訳ございません!」

 

 その姿、その声、その瞳。目の前に座っている者は『華琳』であると、鋭い殺意に慄いた春蘭のあらゆる感覚がそれを認めていた。

 春蘭はすぐさまに跪き、己の命である大剣を地に置いてその柄を拓実へと差し向ける。そして首を差し出すかのように、深く深く頭を垂れた。許されなければ、己の剣でこの首を刎ねてもらう。それは今この場で春蘭に表せる、最大限の謝意であった。

 

「……秋蘭。私は、一言でもあなたに捜索部隊の編成を命じたかしら?」

「い、いえ。此度のことは申し開きもございません。出過ぎた真似を致しました。どうかご寛恕をいただきたく……」

 

 頭を下げたままの春蘭に声をかけることもせず、次に秋蘭を睨みつける。秋蘭もまた春蘭の隣に跪き、深く頭を垂れて平伏した。

 秋蘭もまた、目の前にいる『華琳』に指示を仰がず独断で軍を動かそうとしていた。勿論、華琳がいれば絶対に起こり得ないことであり、そして秋蘭の目の前にこうして『華琳』が座っている以上は絶対にあってはならないことである。

 

「桂花、あなたもいつまでへたりこんでいるつもりなのかしら。見苦しい」

「は、はっ!」

 

 慌てて、桂花がよたよたと立ち上がった。しかしそれも未だにまともに働いていないだろう頭で、叱責の声に何とか返事をしただけだ。

 

「ふん、もういいわ。二人も顔を上げなさい」

 

 そんな三人を前に、拓実には苛立ちばかりがつのっていく。

 華琳がいないというだけでこの有様だ。あまりに脆弱すぎる。今この瞬間、精強と謳われる曹操軍などはどこにも存在しない。怒りを越えて、情けなさすら覚えている。

 今、拓実の顔には隠しきれない失望が広がっていることだろう。実際、拓実には目の前の三人が酷くちっぽけな、つまらない存在としか映らない。ここにいたのが華琳だとしてもきっと今の拓実と同じように感じたことだろう。

 

「う……っ!」

 

 許しを得たことで恐る恐る頭を上げた三人は拓実の表情を目の当たりにして顔を強張らせると、そのままに青ざめさせた。

 幾度か、その表情を見たことはあった。敬愛している主君と同じ顔の作りをしているから、どのような場面で見たものなのかはすぐに思い当たる。これまで春蘭たちには向けられることのなかったものであり、そして三人が三人共、よもや自身に向けられるとは思ってもみなかった表情であった。

 見下ろす瞳は何の感慨も浮かんでおらず、期待や興味による輝きが薄れた鈍色。ともすれば次の瞬間には視線を切られる、路傍の石ころを視界に入れた時のそれであるのだと気づいてしまったのだ。

 

「そもそも、捜索部隊の編成ですって? そんな必要はないわね。書かれたことを額面どおりに受け取りそのまま鵜呑みにするだなんて、揃いも揃って物を考えられなくなったのかしら」

「そ、それは、いったいどのような……」

「私は、あなたたちがそれすらわからないほどの蒙昧(もうまい)だとは思いたくないのだけれど」

 

 救助の必要がないとでも言うのか。そんな疑問から声を上げかけた桂花だが、割り込んだ拓実の声に言葉が続かなくなった。ちらと冷ややかに拓実に見られただけで、桂花の中で疑問よりも恐れが勝ってしまう。

 口を閉ざし目を伏せた桂花を一瞥だけすると、拓実はつまらなさそうに目線を切って鼻を鳴らす。

 

「……この伝書には水夏の主観が多分に入り混じっている。後続に配されていたというあの子には、正確な情報が伝わらなかったと見えるわね。おそらく、前線で戦っていただろう『私』や李冬には、違った事情があったことでしょう」

 

 言いながらも拓実が曹仁からの伝書を宙に滑らせると、図ったように伝書は三人の眼前、ちょうど中間にひらひらと落ちて動きを止めた。拓実は、伝書の行方を見届けるまでもなく椅子から立ち上がる。

 

「この『私』が兵を率いておいて、たとえ挟撃にあったとしても壊滅を覚悟せねばならない状態になるまで、ただ手をこまねいていたとは思えない」

 

 いくら華琳といえども、百戦して百勝とはいかない。強兵とはいえない黄巾党を相手に戦っていた時も、曹操軍は予想外の敵の援軍や開きすぎた兵数差の前に幾度となく退けられている。

 それでも兵の半数をも失うような大損失を被る失策をしたことはない。合理的な考えを根底に持つ華琳は滅多に熱くなる事がなく、用心深い。そして、敗戦であっても引き際を大きく見誤るということもなかった。それを、今回に限って誤ったとでもいうのか。

 ――そんな筈はない。元より兵数で劣っていたのは華琳とて知っていたことだ。不利であるからこそ、華琳はおいそれと軽挙に走るような人間ではない。

 

「おそらく『私』には幾度かあった退却の機を見過ごさねばならない……それこそ壊滅を覚悟してでも戦う必要があった。そうせざるを得ないだけの理由があった」

 

 戦況を読み違えたのではないとしたら、華琳の合理性をも覆し、その上で博打となる戦法を選ばせるような、『引くに引けぬ事情』があったに違いない。

 では、いったいそれは何なのか。部隊の壊滅――つまり、精鋭である数千もの兵を失ってでも華琳が欲するとなれば、考えられるものはそう多くない。

 

「『交戦し一時優勢を保つも――』ということは、追撃隊は帝を連れて逃亡中であった董卓軍に追いつき、一戦を交えていたということ。その後、挟撃を受け三方を囲まれながらも交戦。本来なら退いて体勢を立て直すべき劣勢の中、頑なに退却の命を出さなかった。そして、二人揃って兵力を残している後続の水夏とは合流せずに、野に落ち延び姿を隠した……」

 

 例えば、そう。今を逃してしまえば二度と手に入らぬ至宝が、手を伸ばしさえすれば届くところにあった。それぐらいの何かが。

 

「そして、その後に百里の距離を撤退しているということは、殿である曹仁と官軍は洛陽の勢力圏にまで迫ってきている。ほとんどが領地に帰還したとはいえ、未だ諸侯が残る洛陽に近づきながらも敵軍の追撃の手は緩む様子を見せない」

 

 官軍にしても、諸侯を打ち破るだけの自信と兵力を持っているなら洛陽を捨てる必要などはなかったはずだ。だが実際には官軍は洛陽を捨て、だというのに、諸侯と接触する危険を承知で追撃は止めなかった。

 つまり官軍側にもまた、結果として壊滅する危険があろうとも成し遂げなければならない『引くに引けぬ事情』があったに違いない。では、その事情とはいったい何なのか。

 

「追撃部隊が敵に囲まれながらも戦闘続行せざるを得なかった理由。敵軍がこちらの勢力圏に近づいても尚、執拗に追撃を緩めない理由。そして『我が追撃部隊は帝を連れて逃亡していた董卓軍に追いつき、有利に交戦していたこと』、そしてそれをしていた前線の『私』と曹洪が、揃って曹仁と合流していないという事実。ここまで情報が出揃っていたならこの程度、いつものあなたたちであれば言われずとも理解していたことでしょう」

「それは……!」

「――もしや!」

「ああ! 華琳様っ!」

「春蘭と秋蘭はともかく、少なくとも桂花には話したわね。『曹孟徳は、あなたたちの目の前にこうして立っている。そして追撃隊の方も、あちらの曹孟徳が指揮を執る以上は悪い結果は出さないでしょう』とね。『私』は隊を瓦解させながらも追撃部隊の目的を達したようよ。であるなら、その臣下であるあなたたちはどうやって『私』に報いるというのかしら?」

 

 拓実は膝を突いた三人の前にゆっくりと近寄り、見下ろすようにして立った。

 対して、三人は自然と見上げる形となる。重臣たちが慌てふためく中でも唯一人、自信と威厳を崩さない、主君と同じ影武者の姿を。

 

「秋蘭、今一度問いましょう。こうしてあなたたちの目の前に立っているのは誰なのかしら?」

「ははっ! 華琳様にございます!」

「では、春蘭。あなたたちは私の何?」

「華琳さまの臣下! 華琳さまの手足となる者にございます!」

「桂花。あなたたちが今すべきことは?」

「華琳様の目的を、完遂させることにございます!」

 

 三人より、打って変わって気のはいった声が返ってきた。表情からは不安が消えて華琳の麾下であるという自負が見える。

 やはりこうでなくてはいけない。拓実の口角が僅かばかり吊り上がる。ようやく、拓実の胸中に渦巻いていた不快感が薄れていく。

 

「官軍は官軍たる象徴を取り戻すまで退きはしないでしょう。それでは捜索隊など出したところで自由には動けない。ならばどうするか――――秋蘭、わかっているわね? 捜索隊などを編成する必要はないわ。これから我らが行うは、形振り構わずの行軍を続け疲弊しているだろう官軍を打ち倒す、曹操軍全兵力を投じた『討伐戦』よ」

「承知いたしましたっ! すぐに全軍に通達致します!」

「春蘭。戦においてあなたがすべきことは?」

「私は華琳さまの剣! 私がすべきは華琳さまの前に立ち塞がる敵の(ことごと)くを切り裂くことです! 先の失態、戦働きにて挽回させていただきたく!」

「よろしい。あなたには我が軍の先鋒を任せる。迅速に我らの敵を駆逐なさい」

「華琳さまのお心のままに!」

 

 拓実が自身に向けて置かれている大剣・七星餓狼の柄を跪いている春蘭へと向き返すと、春蘭はそれを持ち上げ、拓実へと向けて掲げた。その瞳に迷いはもう見えない。

 その様子に満足げに頷いて返すと、春蘭が掲げていた剣を納めて獰猛な笑みを浮かべる。

 

「桂花、糧食の補填は済んでいるわね。物資の荷造りは終えてあるのかしら?」

「はっ。万事、抜かりはありません」

「ふん。洛陽に滞在する諸侯のほとんどが昨日までに帰還していったのはむしろ幸いね。最早、何者にも気兼ねする必要はない。これより我らは洛陽の陣を引き払い、全軍で官軍の討伐へと向かう! 本隊の総指揮は私が執る! 半刻後には洛陽から出立するわよ!」

『はっ!』

 

 三人は揃って声を上げ、それぞれ拓実へと臣下の礼を取ると、為すべきことを為す為に一斉に天幕から辞していく。

 昂りは見えるが、先のような激情に支配されている訳ではない。華琳より与えられた使命をただ忠実に果たすべく、各自が出来うる限りの働きをしようと動き出した。

 

 

 

 三人の背を見送った拓実は深く息を吐き、呆れを残しながらも相好を崩した。

 こうなればもう心配はないだろう。いつも通りか、それ以上の働きを見せてくれる筈だ。

 

「せっかく混乱を起こさぬよう重臣以外には打ち明けなかったというのに、その三人からして世話を焼かせるのだから。これでは他の者に伝えることが出来るようになるのはいつになるのやら」

 

 先に拓実が発言していたように、この程度のことは春蘭はともかく常時の秋蘭と桂花であれば気づけたであろう。主君が敗走したという報せを受けただけで平静を失っては判断力を欠き、状況を考えることもできなくなってしまった。

 それほど華琳に対して心酔しているということの裏返しではあるのだが、そのフォローまで影武者である拓実が背負うべき仕事とは思えない。まったく、これから先が思いやられるというものである。

 

 

 

 

 曹孟徳の持つ名馬、絶影。拓実が華琳に仕えるようになった時にはもう、絶影は華琳の愛馬として陳留の城にある専用の厩舎にいた。

 牝馬でありながら牡馬に負けない体格と力強さを持ち、影も留めぬと云われた速度もさることながら持久力でも他の追随を許さない。その上で頭が良くまるで人間の言葉を理解しているかのようで、首を撫でて褒めてやれば目を細めて喜ぶ。その瞳には確かに、知性の色が見える。

 三国志での名馬といえば『人中に呂布あり、馬中に赤兎あり』の赤兎馬が有名ではあるが、速度においてならば絶影もひけを取りはしないだろう。そんな彼女を名馬と呼ばずして、何を指して名馬とするのか。

 

 そんな絶影だから、流石に拓実が華琳の姿をしているといえども乗り主を騙し切ることは出来なかった。洛陽で民の前に出る際に華琳の象徴たる彼女に乗馬したのだが、背に乗せて少し走り出したところで立ち止まってしまって、手綱を引こうと声を掛けようとまったく進まなくなったのだ。

 絶影は華琳以外をその背に乗せようとはしない。主君である華琳と瓜二つであったからか、他の者が跨ろうとした時のように振り落とされることは無かったが、体格から声、容姿に雰囲気、香水によって体臭までを同じくする拓実を己の主人ではないと見抜いたのである。

 梃子でも動かないといった様子のその時の絶影は、しかし不安げに主と瓜二つの拓実を見つめていた。

 

 それ以後、拓実は洛陽に滞在する間、許定が厩舎で寝泊りして馬たちと仲良くなった時に倣って、絶影を常に隣に置いていた。町の視察も、兵の調練も。政務の際も天幕の直ぐ傍に繋ぎ、いつでも姿が見えるようにした。寝る間際まで共にあり、朝起きてはまず彼女と顔を合わせた。背に跨ったりはせず、ただただ隣を歩かせた。

 言葉によって意思疎通できない馬は、何を以って人を信ずるのか。華琳がどのようにして絶影と信頼関係を築いたのか、そして華琳と同じことをして彼女と心を通わせられるかといえばわからない。拓実は共にいる以外に打ち解ける方法を知らない。

 

「……今、あなたの主人が大変なの。私はあの子を助けてあげたい。それはあなたもでしょう? 私もあなたも、同じ。だから私に、あなたの力を貸して頂戴」

 

 拓実は、華琳の愛馬である絶影の顔と真っ向から向き合い、話しかける。彼女が人の言葉を解すると疑わないように。

 そして絶影もまた、じっと語りかけてくる拓実を見据えている。立派な(たてがみ)を撫で擦ってやりながらも、覗き込んでくる絶影の瞳から確かな意思を感じ取り、拓実はうっすらと微笑んだ。

 

「ありがとう」

 

 そして今、華琳の危機に際して真摯に頼み込んだ拓実に、絶影はその背を許してくれたのだった。これまで梃子でも動かぬ様子だった絶影は、背に乗せた拓実の手綱の指示に従って歩いてくれている。

 ここで絶影が拓実を拒否していたのなら、行軍中拓実は他の馬に乗らねばならないところだった。愛馬がいながら別の馬に乗っていては、配下の者たちに疑問に思われていたことだろう。それによる安堵もあったが、なにより絶影が心を開いてくれたことが拓実は嬉しい。

 

「曹操さーん!」

 

 乗り手の意図を汲んで、人馬一体に走り回る絶影。よもやその背に乗るのが仮の主人だとは誰も思わないだろう。

 確かめるように絶影を走らせる拓実に、慌てた様子で駆けつけた劉備が声をかけてきた。今日も炊き出しを手伝っていたらしく、前掛けを外し忘れたそのままの格好で急いで走ってきたようである。遅れて、護衛役であろう関羽が慌ててついてきた。

 

「桃香さま! 護衛も傍につけずいきなりいなくなるのはおやめください!」

「ご、ごめんね愛紗ちゃん。えと、でも、どうしたんですか? いったい何が……」

 

 駆け回っていた絶影の手綱を引いて歩かせる拓実へと駆け寄ると、劉備はきょろきょろと物々しい様子にある曹操軍を見回している。

 それどころではなかったとはいえ、一週間ほど共に配給していた劉備に何も言わず出発するのもどうかと考えて拓実はその問いに答えることにした。

 

「偵察に出していた部隊が、長安から出兵した官軍から襲撃を受けたと報告があったわ。どうやらここ洛陽へと進軍を続けているようだから、調子に乗った官軍にこれから痛撃を与えてやるところよ」

「ここにですか!? そ、それじゃあ、私たちも出ます!」

 

 その申し出に、拓実はふむ、と唸って僅かばかり思案する。華琳率いる追撃部隊との交戦により数を減らしても尚、兵数では官軍が上回っていることであろう。劉備軍の一千が加わってくれれば楽にはなることは確か。

 だがそれは同時に、劉備軍にどこかに逃げ延びている『二人目の華琳』を発見させる機会を作ってしまうことにもなる。そこに思い当たれば、拓実の中で答えは決まっていた。

 

「気持ちはありがたいけれど、私にあなたたちの助力は必要ないわ。今、本当に劉備の助けを必要としているのは洛陽の民でしょう。官軍撃退の成否に関わらず、まず我らに復興を手伝う余裕はなくなる。戻ってこれたとしてもすぐに領地へと帰還することになるわ。……劉備、洛陽はあなたたちに任せるわよ」

「あ……は、はいっ!」

 

 ここで劉備に引き下がられ付いてこられても困る為、拓実は彼女の人情に訴えるように言葉をつなげる。

 劉備は曹操に対して返しきれないほどの恩がある。黄巾党討伐から世話になっており、今回の連合軍でも幾度か助力してもらっている。自身の勢力とは比べられないほどの力を持っていることもあり、いくら畏敬をしても足りない人物である。

 その曹操に頼られることになるとは思ってもみなかったようで劉備は一瞬呆けた様子だったが、すぐに真剣な顔つきで頷いて返した。

 

「華琳様、お待たせ致しました! 命あらばいつでも進軍可能にございます!」

 

 そこに、秋蘭が拓実の元へと馬を寄せてくる。秋蘭には珍しくも強い語調からわかるように気負った様子こそ見られるものの、それで判断を誤るほど深刻ではなさそうだ。

 

 春蘭たちの手前ああは言ったものの、拓実だって華琳の身を案じていないわけではない。彼女とて所詮はただの人間であり、失敗もすれば死ぬこともある。

 そして拓実もまたこれから自ら戦場へ向かうとなれば、いくら華琳に扮しているとはいえ不安の一つも覚えるというもの。だが『華琳』である今、その一切を表に出すことは許されない。

 華琳は、部下の命を己の指揮一つで左右する重責と不安とを抱えている。どれだけ有能であろうとも人である限りその重圧からは逃れることはできない。

 しかし、それでも尚、泰然と構え、かつ苛烈に攻め、しかし冷静に事を進められるのが曹孟徳という人間である。ならば、拓実は彼女の内心の不安も重圧も、それを取り繕える強さも全部、ひっくるめて真似てやるだけだ。

 

「本来であれば私から兵らに号令の一つでもかけるところだけれど、今はとにかく時間が惜しい。春蘭を先鋒として、全軍に進軍を開始させなさい!」

「御意に! ――夏侯惇将軍に伝令を出せ! 曹操様より、進軍許可が下ったぞ!」

 

 秋蘭が手早く手綱を手繰って馬頭を返すと、遠く声を張り上げる。その声を待っていたと言わんばかりに、伝令兵が前曲へ向かって駆けて行った。

 隊列を乱さぬまま曹操軍が動き出す。そうして拓実も馬を進めようとして、ふと、じっとこちらを見上げている劉備に気づいた。我が事のように心配そうにしている劉備に薄く微笑んで、口を開く。

 

「では、劉備。またいつか、どこかで会えることを願っているわ」

「はい! えっと、私も洛陽で曹操さんのご無事を祈ってますから! どうか怪我しないようにしてくださいね!」

「ふっ、忠告はありがたく頂いておくとしましょう」

 

 これより戦場に向かう者に武運を祈るわけでなく、怪我をするなと言ってのけるのがどうにも彼女らしくて拓実はつい笑みがこぼれてしまう。

 すぐに気持ちを切り替えると、徐々に上がり始めた行軍速度に遅れぬよう絶影の腹を蹴って加速させた。

 

 

 

 先頭で猛り突き進む春蘭に兵たちもつられて、曹操軍の士気はめっぽう高い。また、洛陽に滞在している間に充分な休息を取らせていた為に心身共に充実していた。

 この遠征において兵たちがこれ以上なく好調であると見た拓実は、昼夜を問わずの強行軍を決行した。

 

 夜間は気温が下がり体温が奪われやすく、目視範囲が狭まって周囲の状況もつかめないために兵の消耗が激しい。地形の把握や敵軍の察知など、情報収集目的に放つ細作も期待した成果は上げられないだろう。

 加えて五千もの大軍となれば松明を持たせることとなるが、それこそわざわざ敵に位置を知らせてやるようなもので索敵精度の差により奇襲も受け易い。夜駆け朝駆けなどの明確な目的がある場合を除いて、通常は敵軍が潜む戦場区域において夜間行軍は行うものではない。

 しかし、拓実が最も欲しているものは正確無比な情報でもなければ、兵たちを万全の状態に保っておくことでもない。それらいくらかを引き換えにしても、今はただただ『時間』が欲しいのである。

 

 拓実は進軍日数の短縮の他に、密かにある副次的効果がもたらされるのを期待していた。いや、これこそが拓実が夜間行軍を決行した目的とも言っていい。

 帝を保護し、曹仁を囮にして慎重に姿を隠した華琳を見つけだすのは、いくら思考傾向を同じくしている拓実とはいえ困難を極める。闇雲に探して回るぐらいなら、まだ洛陽に駐屯して華琳が自力で帰還するのを待ったほうが見込みがある。

 そうはせずに拓実が進軍中に落ち延びた華琳と合流するにはどうすればいいのか。もっとも安全なのは先に官軍を完全に撃退してしまうことである。そうすれば何も気にすることなく拓実たちは華琳の捜索に専念できる。華琳も危険がないと把握できれば表へと出てくることだろう。

 拓実が密かに狙っているのは、その次点。拓実たちが華琳を見つけられないのであれば、華琳に拓実たちを見つけてもらえばいいのである。

 

 曹仁率いる追撃部隊はきっと今も官軍を相手に撤退しつつ応戦を続けている。時間稼ぎを目的としているから、極力被害を抑えての長期戦を心がけているに違いない。

 目の前に瓦解せずに退却する曹操軍がいる為に、官軍はまだ華琳や帝が隊を離れて逃げ延びていることを知らずにいる可能性は高い。それはつまり、目の前の曹仁にかかりきりとなって、周辺をくまなく捜索してはいないということにもなる。万が一捜索していたとしても日が昇っている間の見通しがいい時間帯だけで、曹仁に追撃をしかけている官軍にはまず夜間にまで広範囲に斥候を動かす余裕は無い。

 華琳はそれを予期して日中は下手に動かず息を潜め、しかしその間も周囲の情報はつぶさに収集し続けていることだろう。そんな中で、夜間に見つけてくれと言わんばかりに松明を持たせ、長安へ向かってわき目も振らずにまっすぐ進む兵があれば、華琳なら正しくどこに所属している軍隊か理解してくれる。拓実にはその確信があった。

 

 

 

 日が頭上から西へと傾き始めた頃、曹操軍は本日幾度目かの休息が終わって陣の撤去を終えたところであった。

 出兵から三日目となるこの日。兵たちに合間合間の休憩で順繰りに仮眠を取らせていた拓実は引き続いて本日も夜間の行軍を敢行するつもりでいる。

 洛陽目指して退却している華琳の目に留まるのはおそらくこの日予定している道程までで、それより先に進むとどこかで擦れ違ってしまっている可能性が高くなる。また、普段よりこまめに休息を取らせているとはいえ、この方法で行軍させては兵たちも疲労と寝不足で使い物にならなくなるだろう。本日中に合流できない場合は華琳の保護を後回しにして足止めをしている曹仁隊に合流、追撃している官軍の撃破を優先させなければ立ち行かなくなる。

 だからこそ、何としても見つけておきたい。兵たちに負担を強いているこの強行軍は早く終えたいが、華琳が見つかるまでは今日という一日が終わらずに延々と続いていてくれないものか。

そんな有体も無いことを考える拓実が取った睡眠は兵たちより短く、日に二時間に満たない。薄い眠気と疲れの抜け切らない体で絶影に跨っている。

 

「……絶影?」

 

 絶影も拓実が疲労しているのに気づいているらしく、乗り手に負担が掛からないように足場を選んで走ってくれている。その絶影がやおら立ち止まり、首を左方の林へと向けた。

 じっと何かを見ている。つられて拓実もそちらを見やると、鳥が木々から離れて飛び立っていくのが確認できた。その意味に気づく前に、馬上の拓実に声が掛かる。

 

「華琳様、左前方三里の林の中に、官軍の部隊を発見致しました! 敵兵数、おおよそ五百から七百ほど! 細作によれば我が軍方向に――洛陽方面へと向かって何かを追跡している様子とのこと! この位置的に見ても、おそらくこの別動部隊は……!」

「秋蘭! 春蘭への伝令を!」

「はっ! 伝令兵、ここへ!」

 

 見つけた。未だ曹操軍の追撃部隊も見えぬこの位置まで追いすがり、足止めの部隊を素通りしてまで何かを追っている官軍。

 間違いない。追われている者――華琳は、この近くに潜んでいる。いきり立ちそうになる心を落ち着かせ、今すべきことを見据える。華琳であればどう考えるか。華琳であればどう動くか。

 

「……敵方は未だ我らに気づいてはいないようではあるが、彼我の位置関係から奇襲は困難と見る。であるならば、敢えてこちらから存在を知らせてやりなさい! 銅鑼を叩け! 戦鼓を打ち鳴らせ! 全軍、左方林地へ向け全速前進! これより我が軍は戦闘に入る!」

「ははっ! 曹操様より夏侯惇将軍へ伝令だ! これより我が軍は左前方の敵勢を駆逐する! 将軍への伝達を終えたら進軍の銅鑼を鳴らせ! 後続は前曲に遅れるなよ!」

 

 言うが早いか、伝令兵が駆けて行く。それを見届けるなり、秋蘭は拓実へと馬を寄せる。

 

「では華琳様、私も二陣の指揮へと参ります」

「ええ。戦闘指揮は春蘭に。官軍に追われている『何か』の捜索はあなたに一任しましょう。方々を探すには幾人か指揮官を必要とするでしょうから、流琉と沙和を連れて行きなさい。くれぐれも粗相のないように」

「承知致しました」

 

 言われずとも秋蘭は自身が置かれた配置からその役割を理解していただろう、心得ているとばかりに頷いて返した。

 

 

 

 官軍八百に曹操軍五千が殺到する。八百の兵を圧し包み飲み込むように五千が突撃していく。

 曹仁らはまだ数里先で官軍の本隊と戦闘していることだろう。当然、それを越えてきた官軍の別働隊は周辺に敵兵はいないものと高をくくっていたに違いない。その矢先に、六倍以上の兵による敵襲を受けたのである。

 

 ここで敵の油断を突けたのは、常道を無視した強行軍があってのことである。そしてこの異常な行軍速度を為せたのにも幾つか要因があった。

 討伐隊を差し向ける決定が曹仁からの伝書を受けたその場で行われた事。またその決定から時間をかけずに洛陽を発った事。更に加えて、これから戦場に向かうのに兵に負担を強いてまで強行軍を決行する無茶があってのことである。

 『巧遅は拙速に如かず』とはいうものの、拓実の指揮にそれが適用するのは討伐隊の編成を決定し、洛陽から出兵する為の準備を短縮させたところまで。信頼のおける情報は少なく、強行軍では索敵も充分ではない。兵を疲弊させた挙句に目指す戦場には曹操軍の五千を越えるだろう大軍がいるのは事前に予想できていたというのに、それを踏まえての決行。これで十全の力を発揮できなかったことが勝敗を左右でもしようものなら目も当てられない。

 

 官軍が帝が連れ出されていることに気づき捜索の為に別働隊を分けていなければ、逃げ隠れた華琳と行き違っていた可能性はあった。

 曹仁が既に打ち破られていたなら、疲弊した状態で寡兵を率いて官軍本隊と一戦せねばならなかったかもしれない。運悪く、逃げ延びていた華琳が既に捕縛されていたかもしれない。

 そうはならなかったからよかったものの、完全に出たとこ勝負の運否天賦に頼った方策である。これで失敗しようものなら、遥か後世にまで言い伝わる曹操痛恨の悪手とされただろう。

 だが、だからこそ敵の意表を突いた形となった。官軍は洛陽からの援軍があるとしても、少なくともあと二日程度の余裕があるものと見ていた筈だ。だから千に満たない少勢の別働隊なんてものを編成してしまったのだろう。

 

 ――――八百の官軍はその壁が迫りくるような五千の曹操軍に対して、碌な行動を取れずに為すがままとなった。

 あまりの兵数差に、剣を合わせる前から抗戦する士気を挫かれていたのだ。そこに、前曲を任されて戦意高揚した春蘭指揮による猛攻である。春蘭自身も先陣を切っては敵将の張済、張繍なる者たちの首級を次々と上げていく。それにより残された敵兵はまた混乱し、這う這うの体で敗走していった。碌な反撃も無く曹操軍の損害は軽微となる。正に、曹操軍の圧勝であった。

 

 

 そして戦闘が終わり、拓実が兵の再編を行う中、名目上周辺の偵察を主導させていた秋蘭から待ち望んでいた華琳ら発見の報が届く。

 最低限の護衛となる秋蘭と季衣の二人だけを連れて訪れたその先で彼女と数日振りの再会し、そして拓実は思いもよらぬ人物と邂逅することとなる。

 

 


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