はやてが緊急入院しました。
──第8話──
まあ、当然といえば当然のことだ。
今まで謎の脚の麻痺だったのがいきなり謎の回復を見せたのだ。定期検診に来た石田先生……だったかな? に見つかって即病院行きになりました。
「あかんっ、私がいな皆の食事がっ」
とか言ってたけど問答無用でした。
ちなみにはやてがいない間は僕だけ普通の食事で、ヴォルケンズは嗜好品──例えばヴィータのアイス──のみ許可しました。
だって5人分も作るなんてめんどくさいじゃん。
守護騎士たちに作らせたらどんな創作料理が出るか分かったもんじゃないからってのもあるけど。
「というわけで、はりきって蒐集にいきますか」
今回は、場合によっては僕も直接出向く必要があるからね。
一応の為にシャマルからジュエルリーフを返してもらっておく。
使う機会がないのが一番なんだけど。
【祐一、例の黒い奴が来たぜ。今から戦闘に入る!】
おっと念話だ。
【了解、今からそっちに行くから合図したら僕のところに来てね】
んじゃシャマル、飛行魔法よろしく。
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フェイト・テスタロッサside
97管理外世界、現地名『地球』でのジュエルシード蒐集。
それが母さんに頼まれたこと。
始めは順調に進むかと思っていたが、予想外にも他の蒐集者が現れた。
その数は2人。
1人はいかにも初心者で脅威には思えなかった白い魔導師。
そしてもう1人は──
「うらあぁぁぁぁっ!」
「くっ!」
──私の目の前で鎚型デバイスを振り回す赤い魔導師だ。
こっちは玄人どころではない。
自分より格上だとはっきり分かる。今も避けるだけで精いっぱいだ。
でも、それでも負けられない。
母さんの為に。
母さんの願いが何なのかは分からないけど、それにジュエルシードが必要なんだったら──
「負けないっ!」
「はっ、上等!」
sideout
坂井祐一side
「おぉー、白熱してるねぇ」
「ですが圧倒的にヴィータちゃんの方が有利です。武装錬金を使うまでもないですね」
冷静な分析のシャマル。
確かに無印初期のフェイトのレベルではどう頑張ってもヴィータには勝てないかな。
さて、そろそろ介入しますか。
【ヴィータちゃん、近くまで来たからこっち来てー】
【分かった!】
ヴィータがいきなり後退したので不審がっているが、フェイトも続いてついて来た。
「っ! さらに2人も」
敵が増えたことで苦い顔をしながらも、しっかりとバルディッシュを構えるフェイト。
「いやいや待ってくれよお嬢ちゃん。僕らは別に戦いに来たわけじゃないのさ。まあ、ヴィータちゃんには足止めしてもらっていたけど」
両手を上げて敵意がないことをアピールする。
「なら、なにが目的なんですか。ジュエルシードが欲しいなら戦うしかありません」
「そうでもないさ。僕らと君らの目的は、似ているようで根本のところでは違っている」
「え?」
「君らはジュエルシードを使ってしたいことがあるだけで、ジュエルシード自体は別の物でも構わない。対して僕らはジュエルシード自体を目的としている。ほら違うじゃないか」
「…………あなたが何故こちらの目的を知っているんですか」
「目的以外も知ってるよ、フェイト・テスタロッサちゃん」
「っ! どうして私の名前を」
だから目的以外も知ってるって言ったじゃないか。
「プレシア・テスタロッサに伝言があるから、伝えてね。『彼女の蘇生という願いを叶えたかったら僕のところに来てね』」
「蘇生? いったい何のことを」
「ああ、これは伝言のお駄賃だよ」
そう言いながらヴィータが回収したジュエルシードを投げ渡す。
「え? あっ」
「それじゃ伝言よろしくね~」
そう言い残して、シャマルの転移魔法で坂井邸に飛んだ。