魔法とかなんとか   作:四季式

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第35話

タバサside

 

 

 今日は虚無の曜日。

 普段なら部屋に篭ってずっと読書をするが、今日は予定がある。

 

「さあタバサ。お買い物に行きましょ♪」

 

 友達のキュルケと買い物のために王都へ行く。

 キュルケとの外出自体は初めてではないが、私のための、しかもおしゃれについての物の購入が目的となるのは初めての事だ。

 

「……今呼ぶ」

 

 使い魔との繋がりを利用して、音による伝達よりも素早くシルフィードを呼びつける。

 

「改めて見ても、あなたの風竜は立派ねぇ」

 

 感想を述べるキュルケと共にシルフィードの背に移る。

 

「……あっち、大きい人の街」

 

 手短に目的地を伝え、私は今日の分の本を開いた。

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 ─第35話─

 

 

 

 

 

 

 

祐一side

 

 

 〜ルールル♪ルルルラーララ♪〜

 今日のゲストは坂井祐一さんです。皆様盛大な拍手を。

 〜パチパチパチパチパチパチ〜

 

 閑話休題。

 

 デルフリンガー購入後、大通りにある貴族御用達の喫茶店に入ってお茶してます。僕とルイズ以外もきちんとした服装だから止められることなく入店できた。

 

「うーん、まあまあやな」

 

「家の紅茶の方がもっと美味しいの」

 

 異世界現代組が容赦なく批評する。

 そりゃ淹れ方云々だけじゃなくて茶葉の質の限界もあるだろうね。魔法以外の文明は中世ヨーロッパ程度だし。

 

「なのはちゃんのご両親は喫茶店を経営されているんですか?」

 

 シエスタが僕たちに給仕をしながら問いかける。

 ちなみに「専属メイドである私以外にユウイチ様のお世話は任せられません」とのことで配膳などは店員から品物を受け取ったシエスタがやっている。

 

「あ……う、うん。そうなの」

 

 話題が自分の家族の事に移ると、とたんになのはの口は重くなる。

 異世界にまで家出した手前、後ろ暗い気持ちがあるようだ。

 まあ、異世界に来ちゃったのは僕のせいだが。

 

「せや、この後魔法の道具のお店行かへん? この世界の魔法も使うてみたいわ」

 

 なのはの様子から気を遣って、はやてが話題を変えた。

 

「杖や書物を売ってる店はあるけど、魔法は貴族の血筋じゃないと使えないと思うわよ。まあ、先生や貴方達はここの常識に当てはまらないから分からないけどね」

 

 見事な所作で優雅に紅茶を飲むルイズはそう言うが、僕にこの世界の魔法の適性があったように、リンカーコアを持つこの三人娘なら問題なく使えるはずだ。

 

「まあ、他に目的があるわけでもないし、行ってみようか」

 

 もうちょっとくつろいでからねー。

 

 

 

 

 

   ■■■■■■

 

 

 

 

 その後1時間ほど優雅に駄弁ったから、颯爽と重い腰を上げて、一直線に寄り道しながら、目的の魔法道具店に到着した。

 店の入り口は大通りから少し奥まった所にあり、そうと知らなければ素通りしてしまいそうな店構えだ。

 

「いかにも魔法使いの怪しいお店やな。ノク◯ーン横丁的な」

 

「知ってる! ハ◯ポタなの!」

 

 現代っ娘2人は分かりやすい異世界感にwktkしてるが、他はそこまで盛り上がることかと変な人を見る目をしていた。

 ちなみにフェイトはいつも通り右腕装備品になっている。

 

 店内に入ると他にもお客がいたが、案外と広い作りなのか狭苦しい感じはしない。

 僕ら以外には、金髪ショートカットに眼鏡をかけた少女と、見覚えのある気がする赤毛に褐色のグラマー。

 

「ん?」

 

「げ、キュルケ」

 

 あからさまに嫌そうな声をあげたルイズ。

 それとは対照的に「あらあらあら」とこちらに寄ってきたキュルケはこちらのメンバーを見回し「強敵揃いね」と謎の呟きをした。

 

「あらルイズ。素敵なミスタとお仲間を連れてどうしたの?」

 

「あんたには関係ないわ。用が済んでるならさっさと帰りなさいよ」

 

「そんなことより、ミスタ・サカイ♪ この子のことなんだけど、どう思われまして?」

 

 ルイズの挑発を華麗にスルーしたキュルケは、隣にいた金髪の子を僕の正面に立たせて、何やら紹介を始めた。

 

「この子はタバサ。ちょっと無愛想だけど、慣れれば微かな違いを見分けるのが楽しくなるわ。身体付きはそこのルイズよりも小柄だけど今後に期待ね。あと魔法は『雪風』の二つ名を持つ風のトライアングルでかなり優秀よ。よろしくしてあげてね」

 

 本人をぐいぐいと押し付けられながら色々言われたが、右腕のフェイトシールドがオートガードしていた。

 話し終えると同時に押し付けも終わり、本人が「……タバサ」とひと言呟き、ぺこりとお辞儀をした。

 後方で「お辞儀は大事やな」とハ◯ポタネタを引っ張る約2名は無視するとして、僕は左手をタバサに差し出した。

 

「………」

 

 タバサは右腕のフェイトをちらりと見てから、おもむろに僕の左腕に同じように引っ付いた。

 

 右腕のフェイトの力が少し強くなったり、キュルケがキャーキャー、ルイズがギャーギャーと喚いていたが、うん。問題ないな。

 

「ほら2人とも、お店で騒ぐと迷惑だよ。静かに」

 

 当たり前の注意をすると、キュルケは素直に、ルイズは悔しげに従って黙った。

 

 

 

 

 

   ■■■■■■

 

 

 

 

 

「しかし両腕に金髪少女をくっつけてると、まるで僕が金髪フェチみたいに見えるね」

 

 魔法道具店を出てそろそろ帰るかな〜、とみんなで思案している中、ふと思ったことを口に出してみた。

 

 一瞬、左腕にくっついているタバサがピクリと反応し、「……違うの?」と聞いてきたので「違うよ」と返しておいた。

 すると少しだけ目が見開かれ、「……そう」とだけ小さく言った。

 よく分からないが、これがキュルケの言う『微かな違い』なのだろう。分かっても別に楽しいことはなかったな。

 

「んじゃあリィン。帰りもよろしくー」

 

 そんなこんなで休日を過ごした。

 やっぱ遠出は性に合わないなぁ。


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