そんなこんなでアルビオンに無事到着しました。
原作と時期が違うのでアンポンタン姫からの命は受けてないし、髭子爵もいないため、スムーズに移動できた。
「さて、ここからはこの馬車で隠れ家のある森まで向かうよ。御者はあたしがするから、あんたらは荷台に乗ってな」
「うん、案内よろしくね〜」
「ふん、対価の分は働くさ」
──第31話──
馬車に揺られる中、シエスタに膝枕させながら三人娘と戯れていると、
「おい、山賊だ! 囲まれてるぞ!」
とマチルダさんからお声がかかった。
「さ、ささ、山賊ですか!? ど、どうしましょうユウイチ様!?」
「も、もちつくんや、シエスタさん! こういう時は素数を数えるんや! あれ? 1って素数やったっけ……?」
慌てるシエスタとはやて。
対してなのはとフェイトは落ち着いている。
これが自分の力量を把握しているかいないかの違いかな?
「ということで、山賊の鎮圧はシエスタとはやてちゃんにやってもらうよー。何事も経験経験、行ってみよー」
「行ってみよー、やないわ! 山賊やで? 可愛い私なんか、捕まってとんでもないことされてまうんや。エロ同人誌みたいに。エロ同人誌みたいに!」
大事なことなので二回言ったんですね分かります。
「とは言っても、はやてちゃん。君はインテリジェントデバイスのバロンとジュエルリーフを装備してるんだぜ? 手加減を忘れて相手を殺してしまうことはあっても、負けてどうにかなる可能性は皆無だ。だから今のうちに、安全に戦えるうちに『経験』を積んでおかなければいけない。戦いとはどういうことなのか、相手の何かを奪うとはどういうことなのか、理解しなくちゃ」
とそれっぽいことを言って、二人を荷台からポイっと降ろした。
山賊の男たちは二人が獲物に見えるのか、ぐへへ、と下卑た笑いを浮かべている。
狩られるのは自分たちだとは知りもせず。
「……そうやな。私は今まで、ずっと誰かに守られてきた。でも今は自分の足で立って歩ける。自分の力で困難に立ち向かえる。だから、戦う為の
「All right. My master!」
「よっしゃ、行くで。バロン、セット・アーップ!!」
その言葉と同時に、はやては自らが思い描いたバリアジャケットを身に纏っていく。
黒地の長袖長ズボンに金色のラインが走っていて、所々に十字架のような金具が見てとれる。
一見地味な感じに見えるが、それで終わる
「バロン、『ヘカントケイル』展開!」
そう言うと、十字架の金具が光り、機械的な多関節の腕が伸びた。
その数は10本。
「まだまだ、これで終わらへんで。武装錬金!」
次いではやてはジュエルリーフを掲げ、発動した。
そこに現れたのは様々な形の刀剣の類い。
その数もまた10本。
「今は10個しか出さんかったけど、最大1000個の武器をイメージ通りに作り出せる『
多数の腕を持つバロンの『ヘカントケイル』と多数の武器を出せる『
「千手観音プラス阿修羅、って感じだね」
厨二臭ェ(ボソッ
「バロン、ジュエルリーフとリンクして非殺傷設定にできる?」
「Sure」
「よっしゃ。じゃあ、手加減とか考えずにいけるな。──山賊さん、武器の貯蔵は十分か?」
そしてそこからははやてによる武器の投擲の乱舞。
魔力ダメージのみで、しかし吹き飛んでいく山賊たち。
まあ、襲ってきたんだから返り討ちにあう覚悟があるのだろう。
むしろ命はあるんだからこちらに感謝すべきだ。
「きゃあっ!」
という短い悲鳴に振り向くと、なのはが山賊に捕まっていた。
前方ではやてが無双している時、後ろから1人の山賊が近づいてきていたようで、捕まったなのはは首元にナイフを突きつけられていた。
レイジングハートがバリアジャケットを展開すればすぐに無効化できるが、ここはシエスタに任せてみることにした。
「シエスタ、確かに戦うのは怖い。襲われるのは怖い。傷つくのは怖い。でも、本当に怖いのは、大事な人が傷つくことだ。そうならないために、僕は君にジュエルリーフを託したんだ。君は、大事な人のために他人を、そして自分を傷つける覚悟があるかい?」
「……ユウイチ様。私はユウイチ様の専属メイドです。これしきの事で挫けるわけには参りません。なのはちゃん、安心してください。すぐに助けますね。──武装錬金」
すっ、とシエスタの姿が見えなくなった。
いや、それどころか『シエスタという存在そのもの』が消失したかのように感じられた。
そして次の瞬間には山賊は気を失い、なのはは自由になっていた。
「アサシンナイフの武装錬金、『エニグマブレード』でございます」
「ありがとうなの、シエスタさん」
「いいえ、ご無事で何よりです」
それが最後の山賊だったようで、馬車の周囲には気絶した男たちが散らばっていた。
「……あんたらと敵対しなくて良かったと、心の底から思うよ」
マチルダさんはそう呟くと、再び馬車を走らせた。