魔法とかなんとか   作:四季式

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第31話

 そんなこんなでアルビオンに無事到着しました。

 原作と時期が違うのでアンポンタン姫からの命は受けてないし、髭子爵もいないため、スムーズに移動できた。

 

「さて、ここからはこの馬車で隠れ家のある森まで向かうよ。御者はあたしがするから、あんたらは荷台に乗ってな」

 

「うん、案内よろしくね〜」

 

「ふん、対価の分は働くさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

──第31話──

 

 

 

 

 

 

 

 

 馬車に揺られる中、シエスタに膝枕させながら三人娘と戯れていると、

 

「おい、山賊だ! 囲まれてるぞ!」

 

 とマチルダさんからお声がかかった。

 

「さ、ささ、山賊ですか!? ど、どうしましょうユウイチ様!?」

 

「も、もちつくんや、シエスタさん! こういう時は素数を数えるんや! あれ? 1って素数やったっけ……?」

 

 慌てるシエスタとはやて。

 対してなのはとフェイトは落ち着いている。

 これが自分の力量を把握しているかいないかの違いかな?

 

「ということで、山賊の鎮圧はシエスタとはやてちゃんにやってもらうよー。何事も経験経験、行ってみよー」

 

「行ってみよー、やないわ! 山賊やで? 可愛い私なんか、捕まってとんでもないことされてまうんや。エロ同人誌みたいに。エロ同人誌みたいに!」

 

 大事なことなので二回言ったんですね分かります。

 

「とは言っても、はやてちゃん。君はインテリジェントデバイスのバロンとジュエルリーフを装備してるんだぜ? 手加減を忘れて相手を殺してしまうことはあっても、負けてどうにかなる可能性は皆無だ。だから今のうちに、安全に戦えるうちに『経験』を積んでおかなければいけない。戦いとはどういうことなのか、相手の何かを奪うとはどういうことなのか、理解しなくちゃ」

 

 とそれっぽいことを言って、二人を荷台からポイっと降ろした。

 山賊の男たちは二人が獲物に見えるのか、ぐへへ、と下卑た笑いを浮かべている。

 狩られるのは自分たちだとは知りもせず。

 

「……そうやな。私は今まで、ずっと誰かに守られてきた。でも今は自分の足で立って歩ける。自分の力で困難に立ち向かえる。だから、戦う為の武器(チカラ)を貸してくれへんか、バロン?」

 

「All right. My master!」

 

「よっしゃ、行くで。バロン、セット・アーップ!!」

 

 その言葉と同時に、はやては自らが思い描いたバリアジャケットを身に纏っていく。

 黒地の長袖長ズボンに金色のラインが走っていて、所々に十字架のような金具が見てとれる。

 一見地味な感じに見えるが、それで終わるはやて(オタク)ではない。

 

「バロン、『ヘカントケイル』展開!」

 

 そう言うと、十字架の金具が光り、機械的な多関節の腕が伸びた。

 その数は10本。

 

「まだまだ、これで終わらへんで。武装錬金!」

 

 次いではやてはジュエルリーフを掲げ、発動した。

 そこに現れたのは様々な形の刀剣の類い。

 その数もまた10本。

 

「今は10個しか出さんかったけど、最大1000個の武器をイメージ通りに作り出せる『千日手の英雄(センノツルギ)』が私の武装錬金!」

 

 多数の腕を持つバロンの『ヘカントケイル』と多数の武器を出せる『千日手の英雄(センノツルギ)』はまさに2つで1つ、同時使用が前提の武装。

 

「千手観音プラス阿修羅、って感じだね」

 

 厨二臭ェ(ボソッ

 

「バロン、ジュエルリーフとリンクして非殺傷設定にできる?」

 

「Sure」

 

「よっしゃ。じゃあ、手加減とか考えずにいけるな。──山賊さん、武器の貯蔵は十分か?」

 

 そしてそこからははやてによる武器の投擲の乱舞。

 魔力ダメージのみで、しかし吹き飛んでいく山賊たち。

 まあ、襲ってきたんだから返り討ちにあう覚悟があるのだろう。

 むしろ命はあるんだからこちらに感謝すべきだ。

 

「きゃあっ!」

 

 という短い悲鳴に振り向くと、なのはが山賊に捕まっていた。

 前方ではやてが無双している時、後ろから1人の山賊が近づいてきていたようで、捕まったなのはは首元にナイフを突きつけられていた。

 レイジングハートがバリアジャケットを展開すればすぐに無効化できるが、ここはシエスタに任せてみることにした。

 

「シエスタ、確かに戦うのは怖い。襲われるのは怖い。傷つくのは怖い。でも、本当に怖いのは、大事な人が傷つくことだ。そうならないために、僕は君にジュエルリーフを託したんだ。君は、大事な人のために他人を、そして自分を傷つける覚悟があるかい?」

 

「……ユウイチ様。私はユウイチ様の専属メイドです。これしきの事で挫けるわけには参りません。なのはちゃん、安心してください。すぐに助けますね。──武装錬金」

 

 すっ、とシエスタの姿が見えなくなった。

 いや、それどころか『シエスタという存在そのもの』が消失したかのように感じられた。

 そして次の瞬間には山賊は気を失い、なのはは自由になっていた。

 

「アサシンナイフの武装錬金、『エニグマブレード』でございます」

 

「ありがとうなの、シエスタさん」

 

「いいえ、ご無事で何よりです」

 

 それが最後の山賊だったようで、馬車の周囲には気絶した男たちが散らばっていた。

 

「……あんたらと敵対しなくて良かったと、心の底から思うよ」

 

 マチルダさんはそう呟くと、再び馬車を走らせた。

 


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