やあやあやあ! 皆のアイドル、祐一さんだゾ☆
……うん、このキャラは封印だな。
というわけで、忠誠心高めなメイドさんを入手した後。
僕とルイズはシエスタが学院から僕に鞍替えしたことを報告するために校長室へ、シエスタはなのはとはやてをボディーガードとして連れてマルトーさんなどお世話になった人へあいさつのために厨房へとそれぞれ向かった。
え? フェイト? いつも通り僕の腕にひっついてるけど?
まあ、そんなことはどうでもいい。いつものことだ。
問題なのは、校長室に着いたはいいけど中からロングビルさんの怒鳴り声とオスマンさんのセクハラ発言の応酬がドア越しの廊下まで響いていることだ。
「失礼しまーす」
でもそんなことに臆しないのが祐一クオリティ。
ガチャリ、とドアを開ける。
「おお、これはミスタ・サカイ。何か用事かの?」
「あれ、校長さん。さっきまで秘書さんとお楽しみだったみたいなのに、どうしたの?」
「ギクッ! い、いや、何のことじゃろうな。ワシには何を言っているのか分からんよ」
「ふーん。あ、学院のメイドをひとり身受けしたから。事後報告になってごめんね」
「ひょっ? ……ああ、決闘騒ぎに巻き込まれたメイドかの? ワシもどうにかしてあげようと思っておったところじゃて。むしろこちらこそ、学院の生徒が迷惑をかけてしまって申し訳ない」
「うん、気にしてないから大丈夫だよ校長さん。じゃあこの話はもうお終い。で、今回訪ねたのはメイドの報告と、ひとつ頼みたいことがあるからなんだ」
「ふむ。内容によるが、大抵のことなら許可しよう。して、その頼みとは?」
「なーに、簡単なお願いさ。1週間ほど秘書さんを借りたいってだけだよ」
──第30話──
「……それで、私を借りたのは何のためなのでしょうか、ミスタ・サカイ?」
「そう身構えなくても大丈夫だよ、秘書さん。別に取って食いはしないさ」
ロングビルさんを借りて、僕らはシエスタの案内で僕の部屋に戻った。
「そう言われましても、『ロック』と『サイレント』をかけられた部屋では寛げませんわ」
そう言って警戒するロングビルさん。
ちなみに『ロック』と『サイレント』は修行の一環としてルイズにしてもらった。
「何分、他には聞かれたくない用事でね。こちらとしても、そちらとしても」
「……私にとっても、ですか」
「うん。まずは自己紹介といこうか、ロングビルさん。いやマチルダさんと呼んだ方がいいかな?」
「──ッ! 驚いたよ、まさか
「簡単な用事だよ。マチルダさんの妹分と会うために渡りをつけてほしいのさ」
そう言った瞬間、マチルダさんの杖が僕に向けられ──、ることなくフェイトに取り押さえられた。
さっきまで僕の腕に絡まってたのに素早い行動だ。
「くっ、どこから嗅ぎつけた! あの子に何をするつもりだ!」
「特に何かをするわけではないよ。ただ、少しお話とお願いがあってね。害意や敵意があるなら、わざわざマチルダさんに取り次がずにそのままアルビオンに直行すると思わない?」
「それは、確かに」
「だから早まった行動はやめてね。マチルダさんも首を切られたくないでしょ?」
仕事的にも、物理的にも。
「……はあ、分かったよ。あたしらの隠れ家に案内すりゃいいんだろ。で、いつ出発するんだい?」
「明日の朝一番に」
「はいよ、了解した。もう抵抗しないからこの嬢ちゃんを退けてくれないかね」
「フェイトちゃん、おいで」
「はい、祐一さん!」
マチルダさんから離れ、再び僕の腕に絡まるフェイト。
「まったく、とんだ災難だよ。この貸しは高く付くからね!」
「んじゃこれで支払っとくよ」
僕は懐から前の世界で購入しておいたブリリアントカットされたダイヤモンドを取り出し、マチルダさんに渡した。
「こ、これは、見事な水晶だねぇ」
「いや、これは水晶じゃなくダイヤモンド、金剛石さ」
「はあ!? 金剛石だって!? それをこんなに緻密な装飾にするなんて、あんた、何者なんだい…?」
「僕は坂井祐一。ただの奇跡遣いさ」
■■■■■■
そして翌朝。
「おはようございます、ミスタ・サカイ」
「おはよう、秘書さん」
誰が見てるか分からないからロングビルさんモードだ。
ちなみにこの旅行に着いてくるのは、なのは、フェイト、はやて、シエスタの4人で、ルイズは授業があるため居残りである。
むくれるルイズに「魔法が上手くなってたらご褒美あげるよ」と言ったら「頑張って授業を受けます!」と居残ることを快く了承してくれた。
「馬車は学園のものを借りておきました。港町まではこれで向かいます」
「んじゃしゅっぱーつ」