魔法とかなんとか   作:四季式

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第29話

「それで祐一さん、そのデバイスは誰が使うの?」

 

 ルイズ・なのは・はやてに何度も名前呼びをせがまれている中で、フェイトが尋ねてきた。

 

「ん? ああ、このデバイスははやてちゃんに使ってもらおうと思ってるよ。なのはちゃんにはレイジングハート、フェイトちゃんにはバルディッシュがあるけど、はやてちゃんはデバイスを持ってないからね」

 

「え、わ、私!?」

 

 驚くはやて。

 

「さて、もう固定化は解除したから喋れるはずだね。まずは自己紹介してよ、デバイス君」

 

『OK, meister. My name is ”Baron”』

 

 ふむ、バロンというのか。

 

「バロン……男爵いう意味やね。これからよろしゅうな、バロン」

 

『Nice to meet you too, master ”Hayate”』

 

 

 

 

 

 

 

──第29話──

 

 

 

 

 

 

 

「で、まずはどないしたらええんや?」

 

「えっと、まずはバリアジャケットを設定して──」

 

 デバイス初心者のはやてがなのはに色々教わっている間に、こっちではジュエルリーフ講座を開いていた。フェイトは僕の左腕に絡まっている。

 

「──という感じで、自分に相応しい武装になるのがこのジュエルリーフというものなのさ」

 

「み、ミスタ・サカイ。そんなすごいもの頂けません!」

 

 話を聞いたシエスタは、顔を青くしてジュエルリーフを僕に返そうとした。

 聡明な彼女には分かってしまったのだろう。

 ジュエルリーフが、平民が貴族と対等以上に戦うための武器になり得るということに。

 だがしかし、

 

「だからこそ、シエスタにはこれを持っておいてほしい。いつかこの力が必要な時が来るだろう。これは自分を、そして大切な人を守るための力だ」

 

「ミスタ・サカイ……」

 

「せ、先生!」

 

「ん? なんだい、ルイズちゃん」

 

「なんで先生はそんなにこのメイドを贔屓するんですか! 先生は、私の使い魔なのに……」

 

 そう言って悲しそうに顔を伏せるルイズ。

 

「ルイズちゃん」

 

 ルイズは肩をビクッと揺らす。

 

「シエスタは──平民は、魔法が使えない。そのことを誰よりも知っているのは、貴族であるルイズちゃんたちのはずだね。魔法を使える貴族は平民を守る義務があるんだ。大きな力を持つということは、相応の使命があるんだよ」

 

「使命?」

 

「そう。とはいえ、すべての平民を守りきるなんてことは到底できない。だから僕は手の届く範囲はせめて守り抜こうと思うんだ。……今回の決闘騒ぎで、僕はシエスタを守りきることができなかった。体は守れたけど、心までは守ることができなかった。だから、彼女にジュエルリーフを渡すのさ。貴族に怯えることなく、今まで通りの生活を守るために」

 

「ミスタ・サカイ……」

 

「もしここで働きづらくなったらいつでも言ってね、シエスタ。校長さんに話を通して僕が直接雇うことにするから。そうすれば、他の貴族も手を出せなくなるからね」

 

 この世界の常識に染まっているルイズとシエスタには、ちょっとずつ僕らの常識に同調してもらおうと思います。

 

 ルイズは真剣な顔で何かを考えているようだったが、覚悟が決まったのか、シエスタに真正面から向き合った。

 

「メイド──ううん、シエスタ。私は先生の言葉を全部理解できたわけではないわ。でも、先生が守ると言ったあなたを、私も守ることにするわ。だからシエスタ、私と友達になってくれないかしら」

 

「ミス・ヴァリエール……!」

 

「ルイズでいいわよ。友達は名前で呼び合うものよ」

 

 そう言ってルイズは、シエスタに右手を差し出した。

 

「ルイズさん、ありがとうございます。こんな私でよければ、友達になってください!」

 

 シエスタはその手を握り返し、二人は固い握手を交わした。

 

「ミスタ・サカイ──いえ、ユウイチ様。貴方様は私とルイズさんに平民と貴族の垣根を越えた繋がりを作ってくださいました。だから私はその恩に報いるために、そして何より私の意志で貴方様に仕えたいのです。もしご迷惑でなければ、貴方様のお側に居させてもらえないでしょうか」

 

 シエスタはルイズから僕に向き直り、臣下の礼をして跪いた。

 

「もちろんいいよ、シエスタ。今日から君は僕専属のメイドとして働いてね。他の貴族からの干渉は、校長さんに言ってさせないようにしてもらうよ」

 

「ありがとうございます、ユウイチ様」

 

 シエスタは立ち上がってスカートの端を摘み、見事なカーテシーをしてみせた。

 

「これからよろしくお願いします、マイ・マスター」

 

 にっこりと笑うシエスタを見て僕は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チョロ過ぎじゃねww? と思った。

 


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