「なあ、祐一さん。ホンマにこれがつり合う対価なん?」
宝物庫で薔薇君の治療の対価をもらって、僕らは途中で合流したシエスタの案内で充てがわれた部屋に戻るところだ。
「先生、私も分かりません。この煤けた指輪がそんなに価値のあるものなんですか?」
はやてとルイズが頭に疑問符を浮かべながら質問してきた。
「そうだよ。これは一見何の変哲もない指輪だけど、ヴァリエールちゃんやメイドちゃんにも分かるように言うと、これは『場違いな工芸品』かつ『インテリジェントアイテム』なんだよね」
「という事は、師匠。まさかこれって……」
「デバイス?」
うん、さすがはデバイスを持っているなのはとフェイトだね。
「その通り。これはおそらく地球からではなく、ミッドチルダから流れ着いた『場違いな工芸品』だよ」
──第28話──
部屋に到着し、シエスタは隣の待機するための部屋に入ろうとしたが、一緒に部屋に入ってもらうことにした。
今後シエスタが今回のような騒ぎに巻き込まれないとも限らない。
だから、平民である彼女にもある程度の抵抗ができるようにしようと思ってね。
「というわけで、第1回ユウイチ先生の魔法講座〜」
パチパチパチ〜と拍手を受けながら、僕は先程の指輪を取り出した。
「それではいきなりだけど、第1問! このデバイス──ああ、東方ではインテリジェントアイテムのことを『デバイス』と呼ぶんだよ──はなぜ喋らないのでしょうか?」
「はい!」
「はい高町ちゃん」
「無口なデバイスさんだからなの!」
ブー、ハズレ〜。
「は、はい!」
「はいヴァリエールちゃん」
「『固定化』のせいですか?」
ピンポーン! 正解!
「正解したヴァリエールちゃんには、祐一くん人形をあげよう」
僕はどこからともなく手のひらサイズの人形を取り出し、ルイズに渡した。
周りの女性陣は『いいなー』とか『ズルいー』とか言ってるが気にしない。
「では第2問! 固定化とはそもそもどういう魔法でしょうか? あ、最初に解答できるのはヴァリエールちゃんね」
「え!? えーと、固定化をかけたモノが壊れないようにする魔法、だと思います」
んー、半分の半分くらい正解かな?
「ほい」
「はい八神ちゃん」
「たぶんやけど、物理的・魔法的に動かなくする魔法やないかな?」
おお、ほぼ正解!
「正確には『その状態を物理的・魔法的に維持する魔法』だね。だからこのデバイスは変形も喋ることもできないのさ」
「ほんなら、どうすれば動けるようになるん?」
「それなら簡単だよ。『ディスペル』をかけてあげればいいのさ」
なるほど〜、と納得するのははやてのみで、後はちんぷんかんぷんのようだ。
「まあ簡単に言うと、僕ならこれを動けるようにできる、ということさ」
「あ、あの、発言してよろしいでしょうか」
一旦休憩するため、人数分のお茶を入れたシエスタがおずおずと手を挙げた。
「なんだい? メイドちゃん」
「は、はい。あの、違ったら大変失礼なことなのですが、もしかしてミスタ・サカイの系統は失われたとされている──虚無、ではないですか?」
ほう?
「なぜそう思ったんだい? メイドちゃん」
「ええと、貴族様と接する機会が多い仕事をしているいとこから聞いたのですが、固定化を施したものを破壊するには、その固定化の術者の力量を超えた力でないと無理なのだそうです。そしてその指輪に固定化を施したのは、オールド・オスマン。あの方を超えるメイジは伝説の虚無くらいしかいないとされています。ので、えと、申し訳ありません。私の勝手な想像ですので的はずれですよね……」
んー、合格だ。
「メイドちゃん──いや、シエスタ。君は素晴らしいね」
「ふえ?」
「君の洞察力と思考力、判断力は賞賛に値するよ。はい、ゴールデン祐一くん人形を進呈するよ」
僕はどこからともなく金色に輝く祐一くん人形を取り出し、シエスタに渡した。
「更にこれを渡そう。これは、そうだね。僕からの親愛の証みたいなものさ」
僕はデュランダルからジュエルリーフをひとつ取り出した。
「師匠……」
「祐一さん……」
「先生……」
……ん?
「なにかな? 高町ちゃん、八神ちゃん、ヴァリエールちゃん」
「フェイトちゃんとシエスタさんだけズルいの!」
「一番付き合いが長いのは私やで!」
「私を差し置いてメイドが先なんて! おっぱいですか? そんなにおっぱいがいいんですか!?」
こらこら、年頃の女の子がおっぱいなんて連呼しないで。
シエスタが赤くなって縮こまってるじゃないか。
「一体どうしたんだい? 3人とも。まるで僕がフェイトちゃんとシエスタを贔屓してるみたいじゃないか」
『してます!!』
えー。
協議の結果、なのは・はやて・ルイズを名前呼び(ちゃん付け)することになった。
呼び方なんてどーでもいーのにね!