さて、医務室に到着した僕らがまず目にしたのは、薔薇の男の子に泣き縋る金髪縦ロールな女の子だった。
「……──っ! ギーシュ、ごめんなさい。私のせいで……!」
「あー、ミス・モンモランシや」
オスマン翁が話しかけると、その女の子──モンモランシーは目に涙を浮かべながらこちらを振り向いた。
「こ、校長先生……。ギーシュを! ミスタ・グラモンを治してください! お願いします……!」
「もとよりそのつもりじゃよ、ミス・モンモランシ。しかし治してくださるのはワシではなく、ミスタ・サカイじゃ」
「え……?」
「そういうことだよ、香水ちゃん。大丈夫、僕の二つ名は『奇跡』……世界の理だって捻じ曲げることができる。怪我を治すなんて簡単さ」
ただし、相応の対価が必要だけどね。と付け加える。
「そ、それなら、対価は私が払います! どんなことでもします! だから、ギーシュを……!」
「いやいや、その必要はないよ。対価は校長さんから貰うことになったからね。君は薔薇君の側にいてあげな」
「……はいっ! ありがとうございます、ミスタ・サカイ」
ということで、対価を貰うために宝物庫へ行きますか。
──第27話──
「アンロック」
オスマン翁が杖を構えてアンロックを唱えると、ガチャン、と鍵が開く音がした。
「ここが宝物庫じゃ。ミスタ・サカイの気に入るものがあると良いのじゃが」
「うーん、僕が気に入るとかじゃなくて『奇跡』と同価値のものを貰わないといけないから、必ずしも僕の欲しいものが対価になるというわけではないんだよ、校長さん。まあ、ある程度は僕が決めることはできるけどね」
「なるほどのぅ。では入るかの。宝物庫の中の物は全てに固定化がかけられているが、万が一破損などしないように注意しておくれ。特に小さなレディたち?」
オスマン翁はチラリとこちらを振り返り、なのは達3人にウインクした。
「は、はい! こ、転ばなければ大丈夫なの……」
「祐一さん、ご褒美は何なんですか?」
「私はお宝より珍しい食材とかが欲しいなぁ」
「……監督責任はミスタ・サカイが負うということで。では入るかの」
「うわー」
薄暗い宝物庫には、様々なものが保管されていた。
煌びやかな宝石。
屈強そうな鎧。
美しい宝剣。
そして何より目をひいたのは、
「し、師匠。これって、ロケットランチャー?」
「そうだねー。他にも色々と地球産の武器があるね」
「なんと! ミスタ・サカイたちはこれら『場違いな工芸品』が何だかわかるのかね?」
オスマン翁は目を見開いて驚いた。
「うん。これらは、僕たちの故郷の兵器だよ。とはいえ、一般市民は早々見ることはないけどね」
「そやなぁ。テレビや本で見ることはあっても、実物はなぁ」
「これが、質量兵器。初めて見ました、祐一さん」
はやてとフェイトも驚いていた。
まあ、はやては『ゼロの使い魔』を読んだことがあるため、そこまで驚きはしなかったが。
逆にフェイトは魔法世界では見ることのない質量兵器に興味があるようだ。
「成る程のぅ。では、ワシの命の恩人もミスタ・サカイらと同郷なのかもしれんな」
「命の、恩人?」
なのはがオスマン翁の呟きに反応した。
「ああ、あれはワシがまだ若造だった頃、凶暴なワイバーンに襲われての。もうダメかと思った時、爆音と閃光が走り、気がつくとそのワイバーンは死んでおった。そして、この『破壊の杖』を持った奇妙な服を着た男がいた。それがワシの命の恩人じゃ」
そう説明しながら、オスマン翁はロケランの前まで来た。
「彼は深い傷を負っていて、手厚く看病したがワシではどうにもならんかった。彼の最期を看取ったワシは、この『破壊の杖』を形見としてここに保管しているのじゃよ」
うん、知ってる。
長い説明あざっしたー。
「で、対価なんだけど」
「おっと、そうであったな。……彼と同郷のそなたたちならば、この『破壊の杖』を譲っても大丈夫であろう。これで対価になりうるかの?」
「んー、全然ならない」
「ほ?」
ポカンとするオスマン翁。
「この場合の対価の選別は僕に一任されるんだけど、これら『武器』は要らないよ。特に、僕らの故郷から流れ着いた『場違いな工芸品』系の武器はね」
「そ、それは、なぜかの?」
「だって、これらの武器って消耗品なんだよ。弾が無くなったらおしまい。将来性のない武器に魅力は感じられないな。その『破壊の杖』も単発式だしね」
それに対して魔法系の武器は整備さえキチンとすれば、動力源も弾も自分の魔力だからね。
みなさーん、魔法はクリーンでエコなエネルギーですよーww
「で、ではミスタ・サカイ。この宝物庫の中に対価になりうるものは無いのかの…?」
「ううん、それは早計というものだよ校長さん。僕が対価に決めたのは、これさ」
そこにあったものは──