「ゆ、祐一さん祐一さん! 祐一さぁぁん!!」
と言って抱きついてくるフェイトをあやしながら、はやてとなのはに現状を説明中。
どうも、奇跡遣いの坂井祐一です。
はやては「ここゼロ魔の世界」と言うと、「おk、把握」と返してきた。適応力の高い奴だ。
持ってきている荷物も、一日で用意したとは思えないほどの量である。着替えや食料をこれでもかと言うほどリュックに詰め込んでいるらしく、その外側は鍋やお玉などの調理器具でジャラジャラしている。
なんでもはやては僕が通った鏡から、おそらくゼロ魔の世界であろうと予想して必要そうな物を大量に買い込んで持ってきたらしい。
一方なのははと言うと、背中に少し大きめのリュックと胸元のレイジングハート、そして肩にユーノを乗せている。
その表情は、最初の驚き以外は暗く、彼女らしくない感じである。
「どうしたのさ、高町ちゃん。そんな暗い顔して。何かあったなら僕に相談してごらん?」
そう言うと、なのはは堰を切ったように泣き出して、途切れ途切れながらも身の上を話してくれた。
話を統合すると、なのはの兄、恭也が魔法について問い詰めてきたので、さすがに隠し切れないと思い、ユーノとともに粗方のことを家族に話したそうだ。
これが二次創作の小説とかならオリ主くんがとりなして家族の絆がより深まる、みたいなことが起きたかもしれないが、現実は甘くはなかった。父や兄からは、そんな危ないことをしていたのかと怒られ、母や姉からはレイジングハートを取られそうになったらしい。
そこでユーノが念話で呼んでおいた管理局の方々が乱入し、とりあえず明日ゆっくり話しましょう、ということになった。しかし、このままでは魔法の力が取られてしまうと焦ったなのはは、荷物をまとめて家をこっそり抜け出した。
つまりは家出である。
そして、当てもなく彷徨っていたところ、目の前に光る鏡が突然現れ、勢いのまま中に入ってしまったとのことだ。
「そうかそうか、頑張ったんだね、高町ちゃん」
「し、師匠ぉー!!」
フェイトに並んで僕にしがみついてくるなのは。
うんまあ、とりあえず。
「三人とも、僕とキスしようか」
──第24話──
あ、コントラクト・サーヴァントは無事終わったよ。
ルーンが刻まれる時の痛みは僕の能力で快感に変換したのだが、三人とも小学生とは思えない喘ぎ声をあげていた。
まったく、僕がもしロリコンだったらその場で襲っていたところだよ。
そんな場面を赤面しながら見ていたルイズとシエスタには、僕の故郷の知り合いでメイジだと説明しておいた。完全には納得していなかったが、それぞれに浮かび上がったルーンを見て、とりあえず僕の使い魔であることは分かってもらえた。
ちなみにルーンは、フェイトがガンダールヴ、はやてがミョズニトニルン、なのはがヴィンダールヴだった。
とりあえず朝食にしよう、ということで食堂に向かうことにした。
道すがら三人にはこっそり念話で元の世界の魔法は極力使わないように、と伝えた。下手すると異端認定されちゃうからね。
■■■■■■
食堂に着いた僕らは、席につく前に教師たちが食事をとっているテーブルまで行き、オスマン翁に3人が僕の使い魔だということと召喚までの経緯を軽く説明した。
「ほう、なるほどのぅ。ミス・ヴァリエールの使い魔であるミスタ・サカイが使い魔を召喚したのも驚きじゃが、それがまた人であったことも驚きじゃわい。して、ワシらはこの3人の少女にどのように接すれば良いのかの?」
「あ、この子たちはメイジだけど貴族じゃないから、僕のお付きだと思ってくれていいよ。部屋は僕が使っている部屋で十分だと思うから特別用意しなくても大丈夫さ」
「そうかそうか、ではそのように取り計らおう。ではさっそく朝食だがの、このアルヴィーズの食堂は貴族たちの場所じゃ。なので申し訳ないが、その少女たちは厨房の賄いで済ましてもらえるかのぉ」
「いいよ。でも次からは部屋に持ってきてもらうようにしてもらえるかな?」
「あい分かった。そのように手配しよう」
というわけで、三人娘はシエスタに連れられて厨房へと向かった。
「ごちそうさまでした」
食堂で朝食を済ませた僕とルイズは、厨房に行った三人娘を迎えに行くことにした。
その途中、薔薇がどうのこうのと言っている男子のポケットから小瓶が落ちたのを見かけたが、とりあえず無視してみた。
おそらくあれがギーシュとかいう主人公の踏み台だろう。
僕は主人公じゃないのでパスするけど。
と、そこへ配膳をしていたシエスタが通りかかった。
落ちている小瓶を見つけてギーシュに渡そうとしたが、彼は拒否した。そこに二人の女子が来て、何か喚きながらギーシュにビンタと小瓶の中身をぶちまけるという暴挙に出た。
二股かぁ。うーん、青春だねぇ。僕は経験したことないけど。
そんなことを思っていると、ギーシュは小瓶を拾ったシエスタに罪をなすりつけてきた。
うーん、僕の専属メイドにあまり傷をつけてほしくないのだが。
「シエスタさんになにしてるの!」
「そうやで、二股かけた自分が悪いんやろ!」
「あ、祐一さん!」
と、そこへ三人娘が登場。約1名を除いてギーシュを責めている。
というかフェイト、君には協調性がないのかい?
まあ、依存させて狂わせた僕が言うセリフじゃないけど。
そしてまたギーシュが薔薇がどうのこうのと言っているが、なのはとはやては更に罵倒し続けた。そのうち周りもギーシュが悪いと言い出したので、彼は怒り心頭だ。
「い、いいだろう。そこまで言うなら決闘だ! 君らの主人とね!」
………ん? 僕?