魔法とかなんとか   作:四季式

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第23話

タバサside

 

 

「うん、僕の二つ名は『奇跡』……対価さえ払えばどんな願いも叶えるメイジさ」

 

 それを聞いた時、私は食べようとしたハシバミ草を取りこぼした。

 彼は今、何と言った?

 彼を視界に入れる。中肉中背の、至って普通な男。変わったマントを着ているが、それ以外に目立った特徴はない。

 二つ名は『奇跡』? 何でも願いを叶える?

 確かに彼女──ルイズは例の失敗魔法以外の、ちゃんとした魔法を今見せた。それは彼の能力が本物であることの証左だと言える。

 

 ならば、彼は本当にどんな願いも叶えることができるのではないか?

 

「どうしちゃったの? タバサ。異国のメイジをじっと見つめて」

 

 隣に座っている親友──キュルケが私に声をかける。

 

「はっ! まさか恋なの!? あの異国のメイジに恋してしまったのね!?」

 

「違う」

 

 親友を軽くあしらい、私はこの後どのように彼に接触するかを考えていた。

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

──第23話──

 

 

 

 

 

 

 

 

坂井祐一side

 

 

 あの後、オスマン翁から注意を受けた。

 とは言っても「今後はこういうことのないように」と軽く言われたくらいだ。そこへシエスタが料理を運んできてくれたので、僕とルイズはその料理に舌鼓を打った。

 うん、ちょっと油っこいものが多いけど、料理自体ははやてといい勝負だな。

 美味でした。

 

「さて、お腹も膨れたし、部屋に戻るか。メイドちゃん、案内お願いね」

 

「は、はい!」

 

「あの、ユウイチ先生。私も……」

 

「もう夜だし、続きは明日にしよう。それに寝不足はお肌に悪いよ?」

 

 と言ったら、ルイズは渋々と自分の部屋に戻って行った。

 

「じゃあメイドちゃん、改めて案内お願い」

 

「かしこまりました」

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

 部屋に戻ってベッドの上でくつろいでいると、本日三度目のノックが聞こえた。

 

「どうぞー」

 

「し、失礼します」

 

 ドアから現れたのは、シエスタ。

 けれどもそれはただのシエスタではなかった。

 薄手の生地で作られ、体のラインがはっきり見えるようなシースルーの服を着たシエスタだった。

 

「よ、夜伽に参りました。ミスタ・サカイ、ど、どうぞ私の身体を存分にご堪能ください」

 

 耳まで真っ赤にしながらシエスタはそうのたまった。

 いやいや。

 

「メイドちゃん、何の真似だい?」

 

「で、ですから夜伽を……」

 

 これは、アレだろうか。

 チップを多めにあげたことを夜のお世話もしろよ的な意味に捉えちゃったのかな。

 

「メイドちゃん。あのチップは『これからよろしく』という意味であげたのであって、こういうことをしろというような意味じゃなかったんだけど」

 

「え? あ………。し、ししし失礼しました!」

 

 真っ赤だった顔を、今度は真っ青にしながら急いで出て行こうとするシエスタだが、

 

「『ロック』」

 

 ガチャリ。

 

 と、ドアの鍵が閉まる。

 

「まあまあ、そう慌てなくても大丈夫だよ。勘違いは誰だってするものさ」

 

「み、ミスタ・サカイ……」

 

 僕はベッドから降り、シエスタのいる方へと向かっていく。

 シエスタは後ずさりするが、壁がありそれ以上後ろに進めない。

 僕とシエスタの距離が限りなくゼロになる。

 

 そして──

 

 

 

 

 

「なんてね」

 

 

 

 

 

「へ?」

 

「別にメイドちゃんを美味しくいただこうなんて思っちゃいないよ。まあ、君がどうしてもというなら考えないでもないけど」

 

「は、はぁ」

 

 よくわからない、というような表情で頷くシエスタ。

 

「じゃあ、ひとつお願いをしようかな。最近よく使ってた抱き枕がないから眠れるか不安なんだよね。だから今晩僕の抱き枕になってよ」

 

 抱き枕一号ははやて、二号はフェイトである。

 

「えっと、それは……」

 

「ああ、もちろんついでに夜伽もしろ、というような意味じゃないよ。純粋に抱き枕になってほしいというだけさ」

 

 ダメかな、と尋ねる。

 

「そ、そのくらいなら、はい。あ、で、では着替えてきます」

 

「いやいや、僕はもう眠いからそのままでお願いしたいな」

 

 ニヤニヤとプチセクハラをする僕。

 こういうキャラじゃないんだけどな。

 

「わ、分かりました、ミスタ・サカイ。えっと、存分にご堪能ください?」

 

「うん、堪能させてもらうよ」

 

 もちろんエロくない意味で。

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

「んあ?」

 

 目が覚めると、抱き枕にしていたシエスタがいなくなっていた。

 たぶん水くみに行ったのだろう。

 

「失礼します」

 

 小声でそう言いながら、洗面器のようなものを持ったシエスタが部屋に入ってきた。

 

「あ、ミスタ・サカイ。おはようございます」

 

「ああ、おはようメイドちゃん」

 

「顔を洗うための水をくんで参りました」

 

 そう言うとシエスタは洗面器を僕の顔に近づけて「顔を俯かせてください」と指示した。

 僕が指示通りにすると、シエスタは僕の顔を丁寧に洗った。

 洗面器を床に置くと、タオルで優しく顔を拭いてくれた。

 

「うん、ありがとうメイドちゃん。スッキリしたよ」

 

「はい! 他にご要望はありますか?」

 

「特にないかな。あ、着替えるからちょっと外に出ててくれる?」

 

「着替えでしたら私がお手伝いを」

 

「いや、僕の国では貴族でも着替えくらいは自分でするんだ。だから手伝わなくても大丈夫」

 

 着替えると言ってもバリアジャケット展開するだけだからね。

 

「かしこまりました。では失礼しました」

 

 そう言って、シエスタは退室した。

 

「よし、デュランダル、バリアジャケット展開」

 

「OK boss」

 

 例のマント風コートのバリアジャケットを展開した後、シエスタの待つ廊下に出た。

 

「では、食堂までご案内いたします」

 

「あ、その前にやりたいことがあるからヴァリエールちゃんを呼んできてもらえるかな?」

 

「は、はあ、かしこまりました」

 

 よく分からないといった風のシエスタだったが、とりあえず僕の指示通りにルイズを呼びに行った。

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

「何ですか? ユウイチ先生のやりたいことって」

 

「うん、僕もメイジだからね。使い魔を召喚しようと思うんだ」

 

 もちろん、ガンタールヴなどの虚無の使い魔『たち』である。

 

「ユウイチ先生の使い魔! どんなのが出るのか楽しみです!」

 

「うん、じゃあ召喚するね」

 

 すでに展開してあるデュランダルを振り上げる。呪文は適当。

 

「どこかの世界にいる僕の使い魔『たち』よ。呼びかけに応え、ここに参上せよ」

 

 すると、等身大の光る鏡のようなものが『3つ』現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっこいしょ、あ、祐一さんや」

 

 

 

 

「ゆ、祐一さん!!」

 

 

 

 

「ふぇ? なにこれ? あ、師匠!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ということで、僕の使い魔は『八神はやて』、『フェイト・テスタロッサ』、そして『高町なのは』の3人である。

 

 


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