海に落とされたなのはを回収したフェイトがこっちに飛んできた。
「テスタロッサちゃん、ヴィクター化を解除しないとせっかく回収してきた高町ちゃんが虫の息だよ」
間近で魔力を吸われてるなのははぐったりしていてそろそろ限界みたいだ。
僕? 僕はまだ魔力がジュエルシード8つ分くらいあるからこの程度の吸収は全然平気さ。
「あ、はい」
闘争心を抑えてヴィクター化を解除するフェイト。
「さて、レイジングハート、でよかったかな? 約束通り残りのジュエルシードを出してもらうよ」
「………put out」
レイジングハートから4つのジュエルシードが出てきた。
「じゃあテスタロッサちゃん、それらとジュエルリーフを回収してお母さんと一緒にウチに来てね。僕は先に帰ってるから」
「はい、分かりました」
では管理局が来る前に撤収しますか。
──第15話──
フェイト・テスタロッサside
今私は回収したジュエルシードを持って母さんのいる時の庭園にいます。
これで母さんの願いが叶う。
嬉しいことのはずなのに、なぜか私の心は沈んでいる。
何か嫌な事が起こる。
そんな予感がする。
「どうしたんだいフェイト。どこか調子でも悪いのかい?」
「大丈夫だよ、アルフ」
そう、きっと気のせい。
そう自分に言い聞かせて母さんの所まで向かった。
■■■■■
「母さん、ジュエルシードを回収して来ました」
これで祐一さんが持っているもの以外のジュエルシードが集まった。
「バルディッシュ」
「put out」
バルディッシュから取り出したジュエルシードは母さんの方へ飛んで行き、周りを囲むように公転している。
16個のジュエルシードと1個のジュエルリーフ。
「これで全ての対価が集まったわ。ようやく、ようやく願いが叶う」
母さんの願いが何なのか、私は知らない。
だから……
「……母さんの願いって、何?」
「ああ、あなたは知らなかったわね。いいわ、教えてあげる。私の願いは、アリシアの蘇生よ」
アリ、シア……?
「そうよ、あなたのような出来損ないのお人形さんじゃない、完全なアリシアを取り戻せるのよ」
出来損ない?
人形?
「いい事を教えてあげるわ。フェイト、あなたはねアリシアを元に作られた人造魔導師なのよ」
人造、魔導師?
「アリシアの蘇生の対価が手に入った今、あなたは用済みなの。ああ、そうそう言い忘れてたわ。フェイト、私はあなたがずっと大っ嫌いだったのよ!」
母さんが私を見る目は、何の興味のない無機質なものだった。
ああ、母さんは本当に私が嫌いなんだ。
アルフが母さんに向かって行ったが、私は動くことができなかった。
もう何もかもがどうでもよくなってしまった。
sideout
坂井祐一side
【もしもしテスタロッサさん、準備はOK?】
【ええ、今から転移するわ】
部屋ではアリシアの生体ポットを置く場所が無いので庭に転移してもらう。
お、フェイトがいい感じに壊されてる。
「では対価を払ってもらおうか、テスタロッサさん」
「ええ、受け取りなさい」
そう言うとプレシアの周りを回っていたジュエルシードとジュエルリーフがこちらに来る。
続いて僕とプレシアの間に魔力のパスが繋がり、こちらに魔力が流れてくる。
「くっ、さすがに全魔力の譲渡はキツイわね。あとは、フェイト」
「……はい」
虚ろな目をしたフェイトが返事をする。
「対価にはあなたも入っているわ。せいぜい奇跡遣いに可愛がってもらうのね」
フェイトがおぼつかない足どりでこちらへやって来る。
「……祐一さん」
「うんうん、分かってるよ。お母さんに捨てられちゃったんだよね。大丈夫、僕は『フェイトちゃん』を捨てたりしないよ。目一杯愛でてあげる。いくらでも依存させてあげる。だから僕のものになってよ」
僕はフェイトを抱き寄せた。
フェイトは僕の目を見て、
「……はい」
とはっきり応えた。
「……茶番はもういいかしら。対価は払ったんだから早くアリシアを蘇生しなさい!」
「まあそう興奮しないで。対価を払ったのなら願いは叶っているはずだよ」
そう言うとプレシアは生体ポットを開け、アリシアのバイタルを確認した。
「アリシア!」
ふぅん、どうやら生き返ったようだね。
「これはサービスだよ。時の庭園まで送ってあげよう。魔力が無いんじゃ帰れないだろう?」
「ええ、お願いするわ」
んじゃ能力で転移、と。
「奇跡遣い、最後に礼を言っておくわ」
ありがとう。
そう言い残してプレシアとアリシアは転移して行った。
「そういえばフェイトちゃん、使い魔ちゃんはどうしたの?」
「……分からないです。母さ……あの人に向かって行って、その後どこかに行っちゃいました」
原作みたいにプレシアにつっかかって返り討ちにあってどこかに転移したのかな?
「それじゃあ能力で使い魔ちゃんを召喚しちゃおう」
というわけで、適当な魔法陣で召喚~。
すると傷だらけのアルフ(犬形態)が出てきました。
「使い魔ちゃん、大丈夫?」
「ユーイチ! フェイトが大変なんだ! ってフェイト!? 大丈夫なのかい!?」
「うん、祐一さんがいるから大丈夫だよ」
「フェイト?」
「祐一さんは私を捨てない祐一さんは私を見てくれる祐一さんは私を愛してくれる祐一さんは────」
「ゆ、ユーイチ、フェイトはどうしちゃったんだい?」
「フェイトちゃんはね、今まで心の支えだったテスタロッサさんに捨てられて心が壊れちゃったんだ。だから僕が新しい支えになってあげたんだよ」
まあお膳立てをしたのは僕なんだけどね。
「そうだったのかい。クソッ、あのババアめ! ……ありがとよユーイチ、これからもフェイトを支えてやっておくれ。もちろんあたしも支えるけど、あたしだけじゃできないことだからさ」
「もちろんさ、だってフェイトは──」
──僕の
「だってフェイトは、何なんだい?」
「いや、なんでもないよ。それよりその傷をシャマルに治してもらわないとね」
僕らは家の中に入って行った。