翌日。
「というわけでテスタロッサちゃん、高町ちゃんとのガチバトルだけど大丈夫かい?」
「はい。母さんのためにも、祐一さんのためにも絶対に勝ちます」
なんで僕のためにが入ってるのかは謎だけど、とりあえずモチベーションは高いみたいでなによりだ。
「さてと、それじゃそろそろ時間だし行こうか」
「はい」
フェイト・テスタロッサside
約束の場所にはすでに彼女がいた。
「フェイトちゃん……」
「賭けるのは互いの持つジュエルシード全て。異論はある?」
「……ううん、ないよ。じゃあ始めよっか、最初で最後の、本気の勝負」
【カウントダウンは僕がするね】
祐一さんの念話。
ここに来る途中で別れた海辺の公園から見てくれているんだろう。
私とアルフを家族みたいに迎えてくれた、私の大事なひと。
【3】
彼が見ていてくれるというだけで気持ちが昂る。
【2】
きっと私は、彼の事が好きなのだろう。
【1】
この戦いが終わったら伝えられるかな、私の気持ち。
【0】
sideout
──第13話──
坂井祐一side
うーん、管理局に見つからない様に飛行魔法は使わずに海辺から見ているけど、びゅんびゅん飛んでばしばし撃っているようにしか見えない。
やっぱりアニメみたいにアングルが良くないとイマイチだな。
まあ、見た限りではフェイトの方が優勢かな。
逃げるなのはと離れる事なく近接攻撃を繰り出し、なのははシールドでなんとかしのいでディバインシューターで反撃している感じ。
でも近距離すぎてタメの必要なディバインバスターとかは撃てないでいる。
逆にフェイトは得意の近接戦闘で優位に立っていてダメージもまだない。このまま押し通せばフェイトの勝ちだが、そう簡単にはいかないのが人生です。
「さあ、見せてあげな高町ちゃん。君の新しい力を」
sideout
高町なのはside
戦いが始まって、フェイトちゃんは私から離れる事なく金色の魔力刃を振るっている。私はなんとか防いでいるけど、もうそれも限界に近いの。
「師匠、使わせてもらいます」
ディバインシューターでわずかな隙を作り、懐から核鉄を取り出す。
「それは!」
驚愕するフェイトちゃん。それが私にこの言葉を叫ぶ時間をくれた。
「武装錬金!」
レイジングハートに青い核鉄が重なり新たな姿になる。
隙間の開いた大きな槍状の刀身が形成され、その上下の桜色の刃の間から銃口が覗いている。
「
未だに驚いているフェイトちゃんにスターライトハートで切り込む。
さすがに反応してバルディッシュで防ぐが、今までにない力によって大きく距離が空く。
これは、私の距離なの。
「ディバインバスター!」
スターライトハートになったことで今まで必要だったタメが大幅に短縮されたの。だから──
「3連、ディバインバスター!」
「くっ!」
フェイトちゃんは持ち前のスピードで避けているが、連続のディバインバスターによって再び距離を詰められないでいる。
「このまま撃ち落と──えっ!?」
突然空中でバインドによって拘束された。
「私は別に遠距離が苦手なわけじゃないよ。フォトンランサー・ファランクスシフト」
フェイトちゃんの周りには数えきれないほどの光球が浮いている。
「撃ち砕け、ファイア!」
光球から雷の槍がこちらに向かって撃ち込まれる。
「防げるかどうか分からないけど、やってみるの。連続、ディバインバスター!」
金色の槍と桜色の砲撃がぶつかり合うが、あちらの方が数が多いため撃ち漏らしが私の体に直撃する。
「ああああっ! ディバインバスター!!」
次第に被弾数が増えていき、ついには金色の弾幕に飲み込まれていった。
sideout
フェイト・テスタロッサside
残りの魔力のほとんどを使ったフォトンランサー・ファランクスシフト。
「これでダメなら後は……」
大量の魔力弾で巻き起こった煙が晴れると、そこにはまだ彼女がいた。
バリアジャケットはぼろぼろで満身創痍な様子だが、それでもまだこちらをまっすぐ見ている。
「なら、こうするしかないね。武装──なに!?」
ジュエルリーフを取り出そうとした左手がピンクのバインドによって止められた。
さっき私がした様に。
「使わせないよフェイトちゃん。今度は、私の番なの」
彼女のデバイスの先に魔力が集まっていく。
あれは──
「集束魔法!?」
高難易度の技術を魔法に触れて数ヶ月でモノにするなんて。
などと考えている余裕はない。早くバインドを解除しないと。
しかし──
「なっ!」
残りの四肢もバインドで拘束されてしまった。
「行くよ、フェイトちゃん。スターライトハート、ランスモード」
先が開いていた槍が閉じられ、鋭い先端になる。
「この集めた魔力全部を推進力にするの。エネルギー全・力・全・開!!」
集めた魔力が彼女の全身を包む。
「スターライトォォォ、スマッシャァァァ!!!」
ドンッ!という音と共に彼女は凄まじい速度で私に突っ込んできた。
こんな攻撃、当たれば間違いなく負ける。
でも、バインドで拘束されている私に回避は不可能。
(ごめんなさい母さん、祐一さん)
ガキン、と金属どうしがぶつかる音がした。
自分の胸元を見ると、しまっていたはずのジュエルリーフが彼女の突撃と拮抗していた。
戦え。
そう言われている気がした。
戦え。
ううん、気のせいじゃない。
戦え。
「うん、戦う! 武装錬金!!」
彼女と拮抗していたジュエルリーフがその姿を変える。