早いもので俺がこのIS学園に編入して一週間くらいが経過した。
女子の好奇と嫉妬ともいえる目線にさらされ続け、一夏と親しくなったこともあり、ハーレム軍団からは目の敵にされ、新聞部のインタビュー。
そして忘れちゃいけない織斑教官との個人訓練。
たった一週間しか通っていないというのに随分とハードであった……
もうすでに七月も間近となっていて、季節は夏。
日々気温が上昇していき、日差しも強くなっていく。
そうして季節が移ろいゆく中、俺はどうにかここの生活に慣れ始めていた。
最初こそ女子の重圧に押しつぶされそうだったが、今はさすがに若干……あくまで若干である……慣れた。
一夏ともうまく友人関係を続ける事が出来、そして一夏ハーレム軍団もさすがに少ない男友達を邪険に扱うのは憚られたのか、最初よりは態度が柔らかくなった。
しかしこれも若干であり、やはりあまりにも長時間つるんでいると睨まれるのでそこら辺は要注意だ。
最初こそ男として少し騒がれていた俺だが、今では少し落ち着いていた。
一夏君ほど接しやい性格でもないし、俺自身そこまでおしゃべりが得意な方ではない。
何より
ので基本俺は一夏以外とはあまり絡む事がなかった。
まぁ年上だからなぁ
あちらとしても年上の人間がクラスメイトというのはやりにくいのだろう。
しかも俺はそれだけでなく訓練機の専用化、そしてみんなが憧れるお姉様、織斑千冬教官との個人訓練まで行っているのでいい気分には慣れないだろう。
その特訓を受けていても対して腕前が上がっていないのでさらに嫉妬と侮蔑に拍車を掛けている気がする。
個人的にそう言った類の感情を向けられているのは慣れているのでどうでもいいのだが。
本当の憎悪は……無理だが……
だが怖いので俺はもっぱら朝早くに起床し、ランニングや修行などを行って、早めに朝食を食べて、逃げるように教室へと向かう……というのが朝の過ごし方となっていた。
まぁ別に一人でいるのは慣れているので、俺はぼけ~と空を眺めるのが朝のHRが始まる前の日課となっている。
「皆さん、おはようございます」
「あ、ヤマピーおはよー!」
「ヤマヤマおっはー!」
「や、ヤマピー? ヤマヤマ? もう! 私の名前は山田です!」
朝から山田先生と女子生徒のまさに女子高生的な会話からHRが始まった。
親しみやすく、かわいいらしい山田先生は生徒からとても好かれているようだ。
「諸君、おはよう」
「「「「「お、おはようございます!」」」」」
そこに織斑教官が入ってくると弛緩ないし朗らかだった空気が一瞬で引き締まる。
さすが織斑教官……恐るべし鬼軍曹っぷりだ。
「門国」
「はっ!」
「……午後の訓練はかくごしておけ」
えぇぇぇぇぇぇぇ!! マジデ!?
どうやら今日も俺の午後は死に目にあうようだ……。
俺は思わずがっくりと肩を落とす。
そうしてHRが過ぎていき、今日の午前の授業は全てISに関する授業なので俺は机からノートと教科書を取り出し、勉強に励む。
まぁどうにかギリギリついて行けているレベルなんだけどね……
どうにか脳内がオーバーヒートしそうになりながら授業を終えた。
「クラス対抗戦?」
「そう。月末にあるんだ」
昼休み。
俺はいつものように一夏とハーレム軍団と一緒に食堂へと来ていた。
そして食事をしていた時に一夏がそんな事を言ったのだ。
「五月にクラス対抗があったんじゃないのか?」
俺は疑問に思った事を口にした。
五月末にクラス対抗戦。
この時に一夏とツインテール中国娘の試合に無人機が乱入。
そして六月中旬一歩手前にタッグ戦になった学年別トーナメント。
このときに一夏と金髪セミロングの僕っ子がタッグを組んで出場。
そして今月月末である六月末に再びクラス対抗戦。
いくら何でも積み込みすぎな気がする……。
「あれはクラス代表の生徒が戦うんだけど、今回は違ってクラスのIS操縦優秀者数名が選ばれてその子達が戦うんだ」
「ちなみに代表候補生とか専用機持ちは除外される仕組みです。前回の個別トーナメントがタッグ戦になってしまって個人戦を行っていないかららしいです」
「ほぉ~」
一夏の説明に、短めの金髪の女の子、シャルロットさんが補足説明してくれた。
この子は他の子達と比べると比較的……あくまで比較的だ……に普通に接してくれる数少ない女の子であった。
だからこの子はまだ普通にしゃべれるようになった。
「簡単に言いますと、クラスにいる優秀な人を選別するための模擬戦ですわね」
シャルロットさんの説明をさらに補足してくれたのは金髪ロングのセシリアさんだった。
この子は露骨に俺に対して嫉妬……一夏と一緒にいるため……の感情をぶつけてくるので苦手だ。
「なるほどね」
「だが、一夏。最後に目玉としてクラス代表のクラス対抗が行われる事を忘れているわけではないだろうな?」
「忘れてないよ箒。俺だって一応結構な訓練したから自信あるんだぜ?」
「あら? 強気じゃない一夏? また一夏と当たったら面白いのになぁ。今度こそ、私の甲龍でギッタギタにしてあげるわ」
「ほう? 強気だな鈴? 私の嫁で直々に私が鍛えている一夏に勝てると思っているのか?」
ツインテールの中国娘の鈴に銀髪ちび娘のラウラが突っかかった。
嫁ってどういう事だ? 普通婿じゃないのか?
まぁそこらは正直どうでもいい話だろう。
俺が声を大にして言いたいのはどうしてここまで露骨ともいえるアプローチに一夏が気づかないのかって事だ。
朴念仁で鈍感にもほどがある気がする。
「ちょっと? いつから一夏があんたの嫁になったのよ?」
「いつからも何からも最初からだ。こいつは私の嫁だ」
「それは聞き捨てなりませんわねラウラさん? 一夏さんにふさわしいのはこの私ですわ!」
「何を馬鹿な事を。一夏のパートナーは私をのぞいて他にいるまい」
「パートナーって事だったら僕の方が一枚上手だと思うな。一応リーグマッチでは一緒に戦ったんだし」
おぉ、女子の女子による女子のための戦が火花を散らしながら訪れた。
こうなると闘争になるのは時間の問題なので俺は意地汚くならないように注意しつつ、かつ迅速に食事を口の中に納めていく。
「うん? みんなどうしたんだ? 食事は楽しく食べようぜ?」
あ、爆弾投下……
明らかに今までの会話を聞いていなかった発言だ。
間に合ったようで、俺はこの言葉が言い終わる前にどうにか食事を終えてそっと静かに席を立っていた。
3、2、1……
「「「「「そもそも一夏が!」」」」」
敬称は人それぞれだが、五人はそんな言葉を吐きながら日頃の鬱憤(一夏の鈍感っぷり)をはらしていく。
ちなみに俺はその五人が切れる前に席から立っていたので鼓膜が壊れずにすんだ。
「ま、護!?」
そんな中唯一の同姓で仲間である俺に一夏は懇願の目を向けてくるが……俺の反応は少し離れたところから手を胸の前で合わせて……。
……南無
と黙祷を捧げるだけだった。
巻き込まれたくないし、恨まれたくないし……さらに言えばもてる男に手をさしのべるほど私は博愛主義者ではないのだよ……一夏君
無駄に変なキャラになっている気がするがそこらはどうでもいい。
黙礼が終わると俺は攻撃されている一夏を置いたまま、食堂を出て行く。
しかし……クラス対抗に代表者の対戦もありか……
俺は先ほどの会話で聞いた数週間後のクラス対抗の方に意識が向いていた。
専用機持ちが除外されるのならば俺にも出番はないだろう。
それに俺の出番などどうでもいい話だ。
クラス対抗戦として一夏がでるのならば、謎の組織がまた何かしてくる可能性がある。
……この程度の事は教官も承知のはずだから会場の警備体制と、選手個人の警護も問題ないはず……
「本当なの? 門国さんの噂って?」
「みたいだよ。何でも一年一組の子が千冬様と山田先生が話しているのを聞いたみたい」
「千冬様のクラスの? じゃあ本当に?」
そうして考え事をしながら歩いていると、俺の事を遠巻きに見ている女子が、俺の方を見てひそひそと何かを話していた。
? なんだ?
若干の距離があるので会話の内容が聞き取れないが、俺が女子達の方を見ると、慌ててどこかに逃げていってしまった。
……何かしたか俺?
特に怪しい行動もしていないのに悲鳴を上げながら逃げられて若干心が傷ついた。
まぁいい。今はそんな事もよりも……
敵の襲撃があるかもしれないクラス対抗戦。
学園側としても警戒はするだろうが、それだけでは不足するかもしれない。
相手だって再び行動を起こすならばそれなりに考えるだろう。
いかにして動いて一夏を守るべきなのか? 軍人としての俺が為すべき行動は……
ぶつぶつとあ~でもないこ~でもないと考えながら俺は歩く。
ちなみに余談だが……
余りにも熟考しすぎて、午後の訓練に遅刻して、教官の特訓で死にそうになったのはまた別の話であった……。
あ~どうしたものか……
今書いてる話がやはりあれすぎたから書き直さないといけないかも……