IS〈インフィニット・ストラトス〉 守鉄の剣   作:刀馬鹿

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衝撃の誕生日会

「一夏! 誕生日」

 

「「「「「おめでとう!」」」」」

 

「あ、あぁ。ありがとう」

 

タッグマッチより三日後。

休日である織斑家には朝からこの家の住人よりも多くの人が、リビングに集まっていた。

一夏のハーレム軍団こと、箒、鈴、セシリア、シャルにラウラ。

中学時代の友人からは、五反田兄妹と御手洗数馬。

さらには新聞部の黛薫子も存在しており、一般家庭よりも大きな家である織斑家のリビングも、さすがにすこし窮屈な状況になっていたが、それでも皆が一夏の誕生日を祝うということで集まっていた。

それに純粋に喜びながらも、皆……特にIS学園関係者の表情は少しだけ暗かった。

 

(護……)

 

未だにタッグマッチの時に誘拐された、門国護の行方が不明だったからだ。

最初こそ誕生日会を中止になるはずだったが、それでも千冬の言葉で開催することになったのだ。

 

『あいつの誕生日プレゼントを誕生日会に会わせて、家に届けるとヤツはいっていたらしい。荷物を受け取る以上どうせ家にいるのだから誕生日会も開催しておけ。やつがいないのに不謹慎だと思うかもしれないが、それをあいつも望まないだろう』

 

そのためこうして誕生日会を開催したのだ。

先日の事件が解決しきっていないために、元々出席するつもりだった生徒会のメンバー、途中参加予定だったが真耶と千冬の姿はない。

 

そして門国護は当然のようにいなかった……。

 

タッグマッチ前まで、どうやって一夏の誕生日を祝おうか悩んでいた少女や友人達にはそれは吉報といっても良かったが、それでもやはり憎らからず思っていた人間が、未だ行方不明というのは心から楽しむことの出来ない要因としては十分だった。

 

(結局……あいつらは何がしたいんだ?)

 

亡国企業(ファントム・タスク)の目的が未だわからないのが、一夏としては気がかりだった。

てっきり情報収集が目的でちょっかいをかけてきているのかと思えば、今回は完全に今までと行為が逸脱している。

確かに世界で今現在確認できるのは二人のみであるために、その片割れというのは十分に危険を冒してでも手に入れる価値はあるかもしれない。

だがそれでも……どこか腑に落ちない点があるためにそれが気になってしまう。

しかしこの一夏の予想は当然のように大外れなので、たいした意味はないのだが……。

 

「い、一夏さん!」

「ん?」

「け、ケーキどうぞ!」

 

ケーキがのった皿を、真っ赤になった顔と共に五反田弾の妹、蘭が手作りのケーキを差し出した。

学園が違う……というよりも学年が違うのだが……ために、普段アピールする機会が少ないために今日で挽回するために頑張ろうとしているのだ。

しかしそれと同じくらいに、少し暗い表情をしている一夏を元気づけようとしているのだ。

それがわかったからこそ一夏も無理にとは言わないまでも、元気に振る舞おうと思った。

 

それ以前にわからなければならない重要なことがいくらでもあるのだが……それには気づかない男だった。

 

「お、うまいな!」

「ほ、ほんとですか!?」

「うまいなぁ。これ蘭が一人で作ったのか?」

「は、はい!!」

「すごいなぁ。蘭はいいお嫁さんになるぞ」

「!?」

 

いつも通りの何気ない一言で、一夏は女子の心を籠絡させていく。

それを更に他の女子達が妨害したり、アピールしたりと非常におもしろい状況になっている。

そして他の男はというと……。

 

「……くそう一夏め。一人だけモテやがって」

「……俺らこなかった方が良かったのか? 完全に蚊帳の外だし……。でもそうすると蘭がうるさいし」

「おにい!? 何か言った!?」

「!? いえなんでもないです」

 

弾と数馬だった。

二人とも非常に居心地の悪そうにしていた。

一夏としても中学時代に親しかった友人達と交友を深めたかったのだが……女子からの猛烈なアタックでそれどころではなかった。

 

ピンポーン

 

そんな和気藹々というべきか……少し気落ちしながらも楽しくお祝いをしていたリビングに、来客を告げるインターホンの音が鳴り響く。

それを無視するわけにも行かないので、唯一のこの家の住人である、主役の一夏がそれを見に行った。

 

「宅急便?」

「そうです。判子ください」

 

表に出てみればそれば宅急便の来訪だった。

それを受け取り判子を押して玄関に入って、差出人を確認して……一夏は驚愕した。

 

(護から!?)

 

現時点で行方不明となっている己の友人からのプレゼントであった。

一夏はそれが護自身が誘拐されてしまう前に宅配を頼んだ物だと頭でわかっていながらも、それでも護から何か連絡があったのかと思って、行儀が悪いと思いつつも、それを開封した。

その中には……

 

「……整備道具一式?」

 

豪華にも、アルミのハードケースに収められた工具セットだ。

それはIS整備に使用される最高級クラスの整備道具一式だった。

値段としては6桁は余裕でするという、かなり高めの品物である。

そしてそれと共に、手紙も同封されていた……。

それを見て、一夏は焦りながらも綺麗に封を切って、中を見た。

 

 

 

友である一夏へ

IS学園にて、いつもいろいろと気を遣ってくれて感謝している。

お前がいなければ俺は間違いなく、教官と死闘を行ってでも、俺にとっての魔窟である学園から逃げ出していただろう。

そんなお前に感謝しているため、もっと何かお前が喜びそうな物を送ろうかとも思ったのだが……元整備兵士としてどうしても我慢ならなかったので、これを送る。

これは俺も愛用している軍隊御用達のIS専用の整備工具一式だ。

自動調整機能があるため、あまり整備の必要性はないかもしれないが……それでも自分で手入れを行うことが大切だと、俺は思うから。

もう少し整備のことも勉強した方がいい。

整備関係のことに関してならば俺も少しは力になれるはずだ。

篠ノ之さん達に悪いと思って誕生日会の場に俺がいないかもしれないが、後日にでも俺に話してくれれば、整備関係の事を教えよう。

専用機となると少し勝手も違うのでどこまで力になれるかわからないが……それでもよければだが……。

 

っと、すまない。まず最初に言うべきことがあったな。

 

誕生日おめでとう……一夏

 

 

門国護より

 

 

 

(護っ……)

 

一夏はその文面を読んで思わず歯がみした。

この場にいないかもしれないという理由が、あまりにも護らしくて……。

そしてそれとは違う……理不尽といってもいいほどの理由でこの場に護がいないことが、一夏にとっては悲しかった。

 

「一夏?」

 

そうしていると、戻ってこない一夏のことを心配して箒、鈴、セシリア、シャルにラウラが様子を見に来た。

事情のわかっている五人が来るのはある意味で自然と言えた。

 

「すまんみんな。護からのプレゼントが届いてさ」

「ほぉ? 何のだ?」

 

無駄に対抗心を燃やしているラウラが、半ば挑発的とも取れるような態度でそう問うた。

ここで悲しみに浸っても仕方がないということで率先してそんな態度を取ったのだ。

それに内心で苦笑しながらも、一夏は送られてきた物をみんなに見せた。

 

「整備セット……か……」

「あの人整備兵だったんでしょ? これ、かなりいいヤツじゃないの?」

「そうかもしれませんわね。道具の種類もかなりありますし」

「かなり、というか最高級品だよこれ? 本社でも使っている人いたし」

「私の隊の整備兵にも使っているのがいたな。これ以外に道具は考えられないと絶賛していた」

 

皆が皆、少し複雑な顔をしたがそれも一瞬で口々に自分が思ったことを述べていた。

ここで悲しんでも仕方がない。

きっと楯無や、千冬、真耶が見つけてくれる。

皆がそう信じていた。

 

 

 

 

 

 

そのとき……

 

 

 

 

 

 

ピンポーン♪

 

 

 

再度来客を告げるベルが鳴った。

それに一瞬だけ首を傾げた一夏だったが、それでも千冬からの贈り物も宅急便にしたのかもしれないと思い、しめた扉を開けると……。

 

 

 

デン!

 

 

 

と言うほど大きな段ボールがおかれていた。

 

 

 

「こんにちは織斑さん宅でよろしいですよね?」

「は、はい」

「申し訳ありません判子をお願いします」

「えっと……これは?」

「冷蔵庫じゃないんですかね?」

 

確かに外から見たダンボールには中に入っているであろう冷蔵庫の絵がプリントされていた。

しかし……

 

(……冷蔵庫なんて買ってないんだけど)

 

織斑家の冷蔵庫はまだ新しい方であり、けっして古くはない。

誕生日に千冬が冷蔵庫なんぞ買うわけもなく、その必要性もないためにどうした物かと悩んだのだが……宛先が一夏だったので受け取るわけにも行かなかったのでとりあえず判子を押して玄関の中に入れてもらった。

差出人が不明なのが少し不気味に思えなくもなかった。

 

「……どうするかなこれ?」

 

それが正直な一夏の感想だった。

何せ冷蔵庫だ。

当然のように場所を取る。

織斑家は確かにかなり大きな家だが……たった二人しか住人がいないのに大型の冷蔵庫二つは必要ない。

しかし……それを鋭い目で見つめる一人の少女がいた。

 

「一夏下がれ!」

「? ラウラ?」

「敵の罠かもしれない」

「「「「!?」」」」

 

その言葉に一瞬にして緊張が走った。

確かに不自然と言えなくもない物だった。

全員が一瞬その物体に距離を取ったそのとき……それは起こった。

 

バシュ

 

まるで圧縮された空気が抜けるかのような音が発生し、外装であったダンボールが折りたたまれていく。

その音にとっさに身構える一同。

いつでもISを展開できるようにしていたが……それは杞憂であった。

折りたたまれたことで、姿を現したそれは……

 

「……カプセル?」

 

巨大なカプセルだった。

一夏の背よりも少し高めのカプセルで鉄製の物であり、のぞき窓とでも言うのか……ちょうど顔があるだろう場所に中を見るための窓があった。

だが、内部が真っ暗なために中をうかがい見ることは出来なかった。

 

何が入っているのか?

 

誰もがそんな疑問を抱いたそのとき……それが再生された。

 

『はろはろ~♪』

「え? 束さん!?」

「ね、姉さん!?」

「「「「篠ノ之博士!?」」」」

 

そのカプセルの機械部分から立体映像が映し出された。

その映し出された人物は……篠ノ之束だった。

 

『いっくん、お誕生日おめでとう~。束お姉さんだよ~。元気にしてるかな?』

 

以前臨海学校に紛れ込んだときと同じような恰好をしていた。

そんな再生されている束を見る目は、それぞれが違った。

一夏は純粋に驚き、箒は複雑そうに目を細めていた。

他の女子は少し警戒した目線を、その立体映像へと向けていた。

 

『こーんなにちっさかったいっくんももう16歳かぁ……。時が経つのは速いもんだねぇ』

 

小さかったのと頃で、親指と人差し指で本当に小さな間を作って力説している。

そんな小さいわけがあるか、とお約束のつっこみが入る前に、束は更に話を続けた。

 

『私もいっくんの誕生日会に行きたかったんだけど、ごめんね~。お姉さんは追われる者の身なので、とてもではないけどそう簡単にはいくことができないのだ!』

 

追われる身でありながら未だその居場所の手がかりすらつかまれていない稀代の発明家がそう笑った。

世界中の国家、組織が合法、非合法とわず追っているにも関わらずだ。

それがどれだけ異常なことなのか?

 

『という訳でプレゼントだけ送っておくね!』

 

その言葉と共に、映像が消えのぞき窓の内部が急に明るくなった。

内部のライトが点灯したのだ。

急に明るくなったことで一瞬目を細めた。

その光の先には……人が入っていた

 

……人間?

 

一体誰が入っているのか、と顔をしかめた一夏だったが……次の瞬間には目を見開いていた。

 

 

 

「……って、護!?」

 

 

 

そう……内部にいたのは未だ絶賛行方不明の一夏のIS学園の友人、門国護だったのだ。

酸素吸入のためなのか、顔の大部分をマスクのような者で覆われている上に、それからはみ出して見ることの出来るほどに大きな傷跡が左頬に走っていたが……それは紛れもなく護本人だった。

一夏達には見ることは出来ないが、左手の手の甲には守鉄がきちんと装備されている。

 

『いっくんがいま欲しいのは間違いなくこの人だと思うから私がつてを使って探して返してもらったよ~。感謝したまえ! そして今度おねーさんに何かおごるように! それじゃね~』

 

返してもらうも何も、無人機達は束が送り込んだ者なのだから、返すという方が正しいのだが、それでもまだ無人機の関係を公然と話すわけにはいかないために、嘘を吐いたのだ。

しかし……今の一夏達はそれどころではなかった。

 

「ってことはこの人本当に護なのか!?」

「姉さんは一体何を考えて!?」

「というかこれどうすんのよ!?」

「落ち着いてくださいな鈴さん! きゅ、救急車かしら?」

「救急車にどう説明するのさ!? 織斑先生じゃないの!?」

「そ、そうだ、まずは教官に!!!!」

 

どっすんばったんと、六人で玄関で暴れ始めた。

 

「あの、一夏さん? どうしたんですか?」

「なんだよ一夏? 何か嫌なもんでも送られてきたのか?」

「少しは落ち着け。はしたない」

「織斑君~。お姉さんが持ってきた衣装来て写真取らせてよ~」

 

それぞれがそれぞれの言葉を言いながら玄関へとやってきて合計で10人もの人間が玄関へと集う。

さらには護が入っている生態カプセルまであるので非常に窮屈な状況へとなっていた。

そして……

 

「それ何ですか?」

「って、人間っぽいのが入ってないか?」

「ホルマリン漬けか? 趣味が悪いな」

「……って門国さんじゃん!?」

 

様子を見に来た他の人間もそのカプセルに驚いてしまって、更に場は混迷を極めていた。

結局、何とか冷静さを取り戻した一夏が千冬へと連絡し、とりあえずということでIS学園の機密室へと運ばれていった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

『君が設計したこの右腕に内蔵されたパーツは、公表するとちょっと面倒なことになりそうだから、これに関しては公表しないこと』

 

[心得ています]

 

 

 

……ぅ…?

 

 

 

『パーツの新造と組み立ての代償として必ず定期的にデータを送ること。おまけとしてこの人の治療はしといてあげたから』

 

[はい]

 

 

 

……なんだ…?

 

 

 

『送ってこなかった保険のために爆弾でも体の中に埋め込んでやろうと思ったけど、そんなことはしないであろうと思ったからそれはやめてあげたからね♪ おねーさんの優しさに感謝するんだぞ? 門国君』

 

 

 

……何を……言って?

 

 

 

―――ん!

 

 

 

『それにしても格闘の間合いね~。それに関してはちょっと考えなかったなぁ……。だからいろんな意味で楽しみにしているよ? 君の今後に期待だ!』

 

 

 

――さん!

 

 

 

聞き覚えがあるような声がしていて……

 

その人物と話しているであろう人物の声が聞こえないのは何故だ……?

 

 

 

『いっくんの白式のデータ、さらには箒ちゃんのとれたてほやほやのデータも反映して作ったから、純粋な性能だけで考えれば守鉄君は第四世代になったから、紅椿に肉薄しているよん。うまく使いこなせるかな?』

 

 

 

守鉄が第四世代機?

 

 

 

そんな馬鹿な、守鉄に使用されているのは第二世代のラファールリバイブのはずで……

 

 

 

「門国さん!」

 

 

 

……山田先生?

 

 

 

『しかしここまで私が開発した物のコンセプトを覆す物を開発するなんてね~。楯に関しては苦労したんだからそれも忘れないように』

 

 

 

[はい]

 

 

 

「起きてください!」

 

 

 

『さて? 門国さん? あなたはこの機体で……何をするのかな?』

 

 

 

揺れる意識の中で、二つの声が重なり合っていて……でも俺を呼ぶ声がだんだんと大きくなった。

その声は……俺を救おうとしてくれた人の声で……。

 

……俺は?

 

 

 

「門国さん! 起きてください!」

 

 

 

はっきりと、山田先生の声が聞こえた。

声の感じでなんとなくわかる。

 

……泣いている?

 

声が少し涙ぐんでいる感じがした。

何か、悲しいことでもあったのかもしれない。

 

 

 

……泣いちゃダメですよ。先生が

 

 

 

そう言ってあげたかった……。

だがそれでも俺の声が上がることはなかった。

 

……けだるい

 

これ以上ないほどに、意識がまどろんでいた。

だが、以前山田先生の胸で泣いてしまった時とは違い、安らかさはみじんもなく、ただただ、体が気だるかった。

口を動かすのも億劫だった。

 

まるで、死にかけたとでも言うかのように……

 

 

 

「起きてください……お願いだから……」

 

 

 

懇願にも似た……響きだった……。

ただただ、俺を心配してくれただけの言葉で……。

その言葉を聞いて……俺は何故かすごく嬉しく、そして思ってしまった。

 

山田先生……

 

ただ……この人を泣かせたくないと思った。

しかしそれと同時に……

 

 

 

この人にとって、俺は大事な人でありたい……と。

 

 

 

そう思った。

他人に対して、更に言えば女性に対して……こんな事を思ったことは一度たりともない。

だがそれでもふっと、自然に……そう思ったのだ。

だから……俺は気力を絞って、言葉をはき出した。

 

 

 

「起きて……くだ……」

「……はい」

「!? 門国さん!?」

 

山田先生の驚く声が聞こえた。

何故泣いているのか?

何故驚いているのか?

それらがわからないが、かといってそれで起きないわけにも行かない。

一度声を出すと体に活力が戻ってきたのを感じて、俺はゆっくりと目を開けた。

何故かけだるい体で首を動かして、周囲を見渡す。

ここはどうやら以前に教官に連れてこられた機密区画の一部のようだった。

そのベッドへと横たわっているらしく、ベッドの横には山田先生と織斑先生がいた。

 

「起きたか、門国」

「無事だったんですね! よかった……」

 

厳しい表情でありながらも、それでもどこか優しい表情を浮かべた教官と、涙で真っ赤になった目をした山田先生がそれぞれ俺にそんな言葉を向けてくれる。

 

……俺は

 

どうなったのか?

どうも記憶があまりにも曖昧すぎてぼんやりとしている。

それでもなんとか記憶を掘り起こそうとしながら身を起こす。

否、正しくは起こそうとした。

右腕を使って。

だが……。

 

……なんだこの違和感は?

 

動かすことは出来る。

だがその動きがかなり曖昧だった。

反応が遅いと言うべきなのか……。

何か……別の何かを動かしている感覚だった。

 

それになんだか……

 

感覚が希薄だった。

触れている物の触感などがほとんど感じられない。

動かした感覚はあるものの、どこか違和感を感じる物で……。

 

「門国、落ち着いて聞け……」

「……はい」

 

まだぼんやりとしている頭で考えようとしていて……。

触感がないと思いながらもやはり寝ぼけていたのか……。

その感覚の気迫な右腕を、俺は寝ころんだまま見えるように布団から出して、眼前へと……やった。

 

そしてそれを目にした……。

 

 

 

……なんで手が真っ黒?

 

 

 

まだ目覚めたばかりの頭だからなのか……手が真っ黒だった。

それに驚きつつその真っ黒……というよりも黒に近い灰色へと目をやった。

その視線の先にあったのは……完全なロボットアームだった……。

五指もあるし、かなり人体に近い形をしているが……それでも生身の腕ではない。

そう認識した瞬間に……

 

 

 

 

 

 

「……なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

 

俺の驚愕の声が、機密区画を木霊していた……。

 




……最後の方が微妙かも

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