IS〈インフィニット・ストラトス〉 守鉄の剣   作:刀馬鹿

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タッグマッチ開幕

『行くぞ簪! 準備はいいか?』

『う、うん。大丈夫』

『あっちは準備万端みたいよ? 箒ちゃんもいけるわよね?』

『はい、問題ありません』

 

……白熱しているなぁ

 

タッグマッチ当日の第四アリーナ。

そして一回戦が始まる直前だ。

当事者だけでなく、観客達も白熱するのは当然のように当然だが……それを差し引いても俺が警護を務めることになった、第四アリーナの「更識、篠ノ之タッグ」VS「一夏、簪ちゃん」当事者達はより白熱しているように思える。

 

まぁそれぞれ思惑があるのだからしょうがないかもしれないが……

 

簪ちゃんが更識を……楯無を超えようとし、更識はその簪ちゃんと仲直りしたいがために、今日の日まで手を打ってきた。

一夏は持ち前のその優しさから簪ちゃんをフォローする。

撫子ポニーは、一夏の気を引こうとしているのだろう。

だが先日までと違って身にまとっている覇気がまるで違った。

 

……なにかをつかんだのか?

 

自分なりに答えを得たのかはわからない。

だがその気迫の原因が、どうか変な方向へと行かないことを俺は祈った。

 

まぁあまり人のことを考えている余裕は俺にはないのだが……

 

撫子ポニーから視線を外し、俺は更識へと視線を投じた。

 

……何かをねらった訳ではないのだろうな

 

さすがにそれはないだろう。

あのときのあいつの表情は真剣そのものだったから。

だが、だからこそ……俺はそれを受け止めることができなかった。

あいつがどういった思いでそれを言葉にしたのかはわからない。

はっきり言ってしまえば、わかるわけがなかった。

 

俺がわかるわけがないのだ……

 

「門国さん?」

 

押し黙ってしまった俺を心配してか、すぐそばに居る山田先生から声をかけられた。

それで俺はいろんな意味で思考を停止せざるを得なかった。

一つは、その声が通信によって届いたために、今俺はISという兵器を身につけていると言うことを再認識させられた。

次に、声をかけてきたのが山田先生であったために……

 

 

 

……今思い出してどうする

 

 

 

先日の屋上での件を思い出してしまった。

特に後者によって強烈に思考が停止させられるのだが、いつまでも停止しているわけにはいかないので、俺はすぐに山田先生へと返事をする。

 

「はっ、なにか?」

「いえ、固まっていたので……大丈夫ですか?」

「はっ! 申し訳ありません」

 

極力通信ウィンドウは見ないようにして、俺は通話を終える。

 

……どんな顔をすればいいのかわからん

 

先日の一件以来、どうにも山田先生とうまく接触できない。

あれほどの恥辱を見られてしまうとは……正直一生の不覚と言っても過言ではない。

だが今はそんな場合ではない。

ここはアリーナ内部であり、今まさに試合が始まろうとしているのだ。

そしてここは一夏がいる試合会場。

四月からの確率から鑑みて……

 

絶対に何かが起こる……

 

と考えて差し支えないだろう。

だからこそ、俺と山田先生がこうして試合会場にいくら同じISとはいえ、護衛という形で存在しているのだから。

 

ISか……

 

俺は自身が身につけているIS、守鉄R2をまとっている右腕を見つめた。

女性にしか使えないはずのマルチパワードスーツ。

それをひょんなことから使えてしまってから早数ヶ月。

こうして俺は自分の(かたき)ともいえた存在を身につけている。

 

先日の試合にて吐露した自分の思い。

 

あれは紛れもなく本心だった。

 

 

 

そしてだからこそ不思議だった……

 

 

 

ここまで存在を嫌っている俺に……どうして守鉄が使えるんだ?

 

 

 

男である上に、ISそのものを嫌っている、憎んでいる……。

そういっても過言でない俺がどうして守鉄を使用できるのか?

それが不思議でならなかった。

 

そんな俺の思考を遮るかのように……

 

 

 

守鉄のレーダーが、複数の不審な飛行物体をとらえていた……。

 

 

 

 

 

 

ズドォォォン!!!!

 

 

 

そんな轟音が鳴り響いて、各アリーナに鉄の敵機が舞い降りた。

数は六機。

以前一夏と鈴との試合に襲撃してきた機体の発展機。

名称を「ゴーレムⅢ」といった。

鉄の巨人と言うべきシルエットをしていた「ゴーレムⅠ」に対して、|五〈・〉機の機体は鋼の乙女と称していい姿をしていた。

装甲はより精緻に設計されており、それがより女性らしいラインを醸し出している。

バイザー型のラインアイを搭載している頭部には、巻き角のようなハイパーセンサーが搭載されている。

両腕はそれぞれが格闘、射撃と明確に位置づけされているのは、それぞれの腕を見れば一目瞭然だった。

右腕は肘より先がブレードとなっており、左腕は前回ほど大きくない物の、右腕よりも一回りは大きな超高密度圧縮の熱線を放つ砲口が複数備え付けられていた。

 

「このぉぉぉぉ!!!!」

 

ブォン!

 

唸りを上げる双天牙月の一撃を回避する鋼の乙女。

それに追随し、鈴は蹴りで動きを停止させると同時に、衝撃砲「龍咆」が火を吹いた。

先日の襲撃事件と同様の相手だとわかっているのか、まるでそのときの仕返しといわんばかりに興奮し、奮闘する鈴だったが……物言わぬ相手は、当然のように何も言わなかった。

 

「喰らいなさいよ!」

 

連続の龍砲の射撃。

それは敵に相当のダメージを与えることが可能な攻撃だった。

だが敵は自分の周りに浮遊する球状の物体が円を描いて並び、そこから強力なエネルギーシールドを展開し、攻撃を完璧に防いだ。

 

「!? こいつ、以前とは違って防御型だっての!?」

「鈴さん下がって!」

 

その声に逆らわずに、鈴は身を伏せた。

その上を飛翔したのはBT(ブルー・ティアーズ)を身にまとったセシリアだった。

手にした得物のスターライトMK-Ⅲを連射したが、それらはすべて敵のシールドに防がれた。

 

「堅いシールドですわね!? でも……」

 

高速で敵機を周回しながらの連続射撃。

だがBT(ブルー・ティアーズ)の射撃武器だけはそれだけではない。

六機のビットを敵機へと躍り込ませて、セシリアはそれを斉射した。

だがそれを、敵機は空中で踊るようにして身をくねらせて回避した。

その動きは当然のように人間の動きではなかった。

 

「なっ!?」

 

無人機だからこそ出来る、人体の構造を無視した体の動かしかた、そして機動。

知能も当然のように高性能のなのか、完璧ともいえるそのスラスターの制御で、敵機は完全にセシリアの攻撃をかわしていた。

 

「な、なんて機体。防御力に機動力が桁外れですわ! それに……」

 

防御と機動が問題ないのならば次は当然のように攻撃ということになる。

そしてそれを推論する前に自ら証明しようとでも言うのか、セシリアと鈴、二人に向けてゴーレムⅢがその巨大な砲口の吐いた左腕を突き出した。

 

「攻撃力もありそうよね……」

 

ゴワッ!

 

爆音が、アリーナの空間を揺るがした……。

 

 

 

 

 

 

「こいつらはいったい!?」

 

突如として乱入してきたゴーレムⅢにいらだちめいた言葉をはきつつも、軍人であるラウラは動揺することなく、相手への対処を行っていた。

奇襲されたが、そこは腐っても現役の軍人たるラウラが、それに対処するのは造作もないことだった。

単機できた相手へと己の愛機シュヴァルツェア・レーゲンの右肩に装備されたレールカノンを発射する。

だが敵はそれをその無人機特有のあり得ない動きで回避する。

 

「なにっ!?」

 

射撃を回避されて驚くラウラの元に敵機が急接近し、その右腕の剣を振るおうとするが……。

 

「ラウラっ!」

 

名前を呼んだと同時に、指示を込めたその声を聞いて、ラウラはその指示に違わぬ行動を……左へと体を動かした。

直前までラウラの体があったところより飛来した五十一口径アサルトライフル『レッドバレット』の銃弾がゴーレムⅢへと飛来した。

それを急制動で上空へと回避すると同時に、右腕を引っ込めて左腕を突き出していた。

それを見たシャルロットは、本能的に得意の「高速切替(ラピッド・スイッチ)」で、物理シールドを三枚呼び出していた。

それを焼き貫いた、熱線がシャルロットの右腕を焼いた。

 

「っ!」

「シャルロット!?」

「大丈夫……少しかすっただけ」

 

その苦痛にゆがんだ友の表情が、ラウラの中の怒りを爆発させた。

左目の眼帯をむしり、そのオッドアイを出現させてそれを解放した。

反射速度を数倍に跳ね上げる補助ハイパーセンサー「ヴォーダン・オージェ」は、AIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)を敵へと使用した。

それと同時に呼び出した大口径のハンドキャノンを右腕に装備し、それを信じられないような速度で連射する。

それがぶつかり合うことで相当の衝撃が起こり、

 

「あぁぁぁぁ!」

「だめラウラ! さが――」

 

相手に不吉な予感を覚えたシャルロットがラウラを止めようとするが、その前に敵が瞬時加速(イグニッション・ブースト)で接近していた。

 

「なっ!? この速さは」

 

速すぎる。

そう言葉を口にする前に、ラウラの体をブレードが引き裂いていた。

 

「ラウラッ!?」

 

 

 

 

 

 

こうして各所にて鉄の乙女のゴーレムⅢが次々にISへと襲いかかっていた。

 

だがしかし、護と一夏の居るアリーナだけは、未だ現在戦闘音がしていなかった。

 

それだけではなく、一機だけほかの機体と全くシルエットの違う機体が、第四アリーナに存在していた。

 

 

 

 

 

 

……こいつらはいったい?

 

突如として舞い降りてきた招かれざる客人。

あまりにも生気の感じさせないその動きは、それらが無人機であることを物語っていた。

だが出現した三体の機体の内の一体。

それがあまりにも異様な雰囲気を醸し出している。

 

……前回の機体の改良(・・)機体か?

 

以前教官に見せてもらった一夏とツインテールのまな板娘こと凰鈴音の試合に乱入したという、巨躯のIS。

それをさらに巨大化したような機体だった。

 

巨大な四肢を装備している、そういってもよかったその機体の体躯部分……つまりは胴体と頭……も巨大化しており、純粋に大きな機体になっている。

むろん巨大化しただけではなく、腹部に巨大な……それこそ腹部の七割近い大きさの口径となる砲門を装備し、頭部にも小型の銃口が見つけられるので、仮に鈍重だったとしてもそれを補うほどの高火力であることは易々と想像できる。

特に近接武器が見あたらなかったが、その巨大な腕を使用すればそれで十分事足りるだろう。

 

こいつのほかに、女性型の機体の計三機か……

 

それとは対照的なシルエットの機体が横におり、合計で三機が俺たちがいるアリーナへと突入してきていた。

 

「織斑先生! 聞こえますか織斑先生!」

 

隣に居る山田先生が必死になって上官であり、突発的な緊急事態の総責任者である教官へとコンタクトをとろうと通信を行っているが……つながる気配はなかった。

 

ぼうが――

 

『妨害電波は、当然のように発しているみたいだね』

 

俺の思考に被さるように、簪が周囲に通信を行う。

さすがにこれだけ大事の自体を行っているのだ。

その程度の工作は行っていない方がおかしい。

ほかにも観客席などの扉がロックされているのか、観客達は脱出したくても出来ない状況になっているようだ。

 

「山田先生。おそらく通信は無駄です。それよりも六機で連携してこのISに対処しましょう」

「は、はい!」

 

戦闘体制(軍人)へと移行した俺は山田先生のカバーを行いつつ、通信をいったん終わらせる。

更識はすでに敵へと意識を向けながら、下級生達へと矢継ぎ早に指示を出していた。

 

『織斑君に箒ちゃん。この三機がどんな性能かわからないけどあなたたち二人が最大の攻撃能力を持っているから、エネルギー分配には気をつけて。特に箒ちゃん、単一能力を過信しすぎると危ないからそこは留意して! 単一能力は確かに強力だけど、それに頼り切らないこと!』

『『はい!』』

『……簪ちゃんは二人のフォローをしつつ遠距離攻撃』

『……はい』

 

裏の名家の当主として……そういうかのように、更識から簪ちゃんへと発せられた声はとても事務的な声色だった。

それを感じ取ったのか、簪ちゃんの返答もそれに近かった。

互いに確執があると言ってもいいが、今の状況下でそんなことは言ってられない。

それは俺も同じこと。

二人の間を何とかしたいということをひとまず封印し、敵を観察しようとしたが……

 

ボッ!

 

当然と言うべきか、敵が行動を開始する。

互いに装備されたその腕からレーザーを吐き出して、俺たち全員に銃火の雨を降らせた。

 

考えをまとめる暇は与えてくれないか!?

 

奇襲を仕掛けてきたのならば先手必勝は当たり前と言っていい。

むしろ奇襲と同時に仕掛けてこなかったことの方がおかしいと言っていい。

そうなると考えられるのは……殲滅ないし殺害(・・)が目的ではなく、データの収集となる可能性(・・・)が高い。

それを持ち帰らせて何がおこるかわからない以上、こいつらはここで葬り去るのが無難である。

 

『散開と同時に各自兵装使用を開始! 織斑君と箒ちゃんは敵へと突貫して近接攻撃! ほかは各自二人のバックアップ!』

『『『『『了解!』』』』』

 

生徒会長としてなのかわからないが、更識が指揮官となって敵機への攻撃を指示する。

それに反論する者はおらず、それぞれがそれぞれの装備を呼び出して攻撃を開始する。

俺も守鉄R2に後付装備された五十一口径アサルトライフル『レッドバレット』を呼び出して構えた。

 

格闘の方が得意だが、銃器が使えないわけではない!

 

腐っても俺は自衛官。

その職務上、ISの整備兵として日々仕事をしていたが、最低限の訓練は行っている。

といってもそれは当然生身で、人間用のライフルであるので不安はあったがそうも言ってられない。

初めてISで銃器を使用するのがこんな状況になるとは思わなかったが、そんなことは関係なかった。

 

ボボボボボ!

 

引き金を引いた瞬間に、今まで感じたこともないような恐ろしい(・・・・)反動が俺の体を襲った。

それを……その恐怖を……うまく体で吸収し、俺は女性型のISへと射撃を見舞う。

だがそれをただ突っ立って喰らうようなことは、相手もしない。

 

フワッ

 

そんな感じに、女性型のISは、信じられないような軌道を描きながら、宙へと浮かび上がり各々が行った攻撃を回避した。

大型の方も、その巨躯に見合わぬような機動性とホバー移動で、攻撃を回避する。

だがそれだけでこちらも攻撃の手をゆるめるような愚か者はいない。

一夏と撫子ポニーは長年剣道の経験者であり、実際に実戦も経験している。

更識は代表候補になるほどの実力者だし、山田先生もそれは同様だ。

唯一簪ちゃんが心配だったが……。

 

「……ふっ!」

 

恐怖を必死に押し殺しながらも、攻撃を行っている今の様子を見れば、そこまでの心配はない。

 

といっても……追い込まれた場合はどうなるかわからないが……

 

余裕がある、といえば語弊があるが、少なくとも追い込まれては居ないこの状況。

果たして追い込まれてしまった場合……命の危機に瀕した場合……平静でいられるかどうかはわからない。

 

護衛対象が二名か……

 

一夏に簪ちゃん。

俺一人では決してどうにも出来ない状況だろうが、6人いればどうにか出来る。

 

……してみせる!!!

 

その意気込みとともに、戦闘が開始される。

まず俺たちは瞬時に話し合い、戦力をちょうど二つへと分断した。

一夏と簪ちゃんに篠ノ之さん。

山田先生と簪と俺。

一夏班が鋼の乙女巨躯のゴーレムを相手し、俺たちが、巨躯のISの相手をした。

手強そうという意味では、鋼の乙女という感じの機体がそういえたが、それでも巨躯のゴーレムは巨大故により強大だと判断し、さきに鉄の乙女を撃破することにしたのだ。

一夏には極力零落白夜を使用しないように念を押しておいた。

ちなみに一時的に巨躯の方をゴーレム、鋼の乙女をフレイヤ1、2と仮称した。

 

『この機動性は……やっかいだね!』

「同意だ!」

『でもだいたいパターンが読めてきました!』

 

さすがというべきなのか……山田先生は敵の機動性をある程度見破っているようだった。

普段のぽわぽわな雰囲気はどこに行っているのか、きりっと表情を引き締めて、トリガーを引いていた。

 

腐ってもIS学園の教師ということだ!

 

それに感心しつつ、俺はさらにレッドバレットの引き金を引く。

ビットから放出される透明なシールドの出力は相当であり、IS用のアサルトライフルのレッドバレットでも大して効果があるように見えなかったが、エネルギーが有限である以上、無駄なことにはならない。

だが、俺はあまり効果を上げていなかった。

 

当たらない!

 

銃器の扱い自体は得意といわないまでも最低限の腕を有していたのだが……ISの銃器を一度も使っていないのが災いしていた。

 

速すぎる!

 

いくらISを装着しているとはいえ、それを使っているのは生身の人間()なので、慣熟という物が必要だ。

それを全くしていない俺は、はっきり言ってたいした役にやっていない。

山田先生は相手の機動を読んでいることも相まってかほとんど当てており、更識は俺と山田先生の銃撃を正確に予測し、それをよけながら相手へとミステリアス・レイディのランスで敵へと攻撃を加えている。

だが敵はその三つの攻撃……俺の攻撃はそこまでだが……を、人間には決して出来ないような機動ですべてを躱していた。

 

 

 

そこへと響く……一夏の悲鳴

 

 

 

「ガァァァッァア!?」

 

 

 

巨躯のISより繰り出された打撃をもろに受けたのか、一夏が後方へと吹っ飛んでいった。

だが驚くべきはそこではなく、一夏がかなりのダメージを被っていることだった。

 

ISを装着していてあのダメージはどういうことだ!?

 

絶対防御という究極といって差し支えないほどの防御力を有しているISを装着しながらあの痛がり方は異様だ。

そう思っていると当の本人からその事実を教えられた。

 

『みんな、気を……つけろ! こいつ、シールドエネルギーを阻害する能力がある!』

『『『『『『!?』』』』』』

 

シールドエネルギーの阻害。

それはあまりにも危険な能力だ。

 

ISの攻撃を生身で受けてしまう可能性があると言うことか!?

 

ISのアーマーは堅固だが、それを体全体に装着しているわけではない。

機動性や動きやすさを考えて要所要所に装甲は展開される。

それでもISが絶対の地位を有しているのはその機動力と攻撃力のほかに、防御力が秀でているからだ。

荷電粒子砲の一撃すらも耐え切れてしまう堅固なその防御力は主に見えない壁のような(・・・・・・・・)防御壁を展開していることで成り立っている。

それを阻害されてしまえば、いかなISといえどもただではすまない。

 

否……正しく言えばそれを装着した人間が……

 

アーマーは堅固でも、それをまとっているのはあくまでも人間だ。

人一人を殺すのにたいした物が亡くてもことが足りる。

生身で人を殺すことだって簡単なのだ。

ならば無人機(・・・)とはいえ、出力そのものがISである敵の攻撃をもらえばただではすまない。

 

どうする!?

 

攻撃に当たらなければいいと簡単にいえるかもしれないが、それが出来れば苦労はしない。

敵の攻撃に今のところミサイルといった追尾するような武器がないのは幸いだが、それでも元々が超速度を有したISだ。

普通の攻撃もかなりの速度を有しているのだ。

 

『そ、そんな……』

 

その事実に一番衝撃を受けていたのは、やはりというべきなのか簪ちゃんだった。

更識と山田先生は代表候補であり、どちらも覚悟という物がすでにできあがっている。

一夏や篠ノ之は一般学生だが、二人には実戦の経験がある。

だが、彼女だけは唯一実戦を経験していない。

戦闘に対する覚悟は備わっていなくても不思議はない。

それに、強がっていても簪ちゃんはあまり気が強い方ではない。

そんな彼女がこの事実に耐えられるわけがない!

そしてそれを明確に察したのか、フレイヤが簪ちゃんへと砲口を向ける。

 

『簪! 動け!』

 

一夏が体を起こしながら懸命に声を張り上げるが、その程度で動けたら苦労はしない。

その姿を見た瞬間に……俺は動いていた。

 

させん!

 

己の体に宿った恐怖を押さえつけ、感情の手綱を必死になってたぐり寄せて、俺は簪ちゃんの前へと躍り出た。

 

『おにいちゃん!?』

『門国さん!?』

 

シールドエネルギーが満足に展開できないこの状況下で、放火に身をさらしたことで更識が声を上げた。

山田先生も同様に声を上げている。

だがそれでも、俺は簪ちゃんを捨て置くわけにはいかなかった。

 

うまく前腕部分に当てれば!

 

アーマーが強固な前腕部分でそれを受け止めようとする。

そして敵から放たれる、極熱の光。

どうなるかわからなかったが、それでも俺はいつものように構えてそれを迎撃する。

すると……

 

 

 

!!!!

 

 

 

!?

 

なんと敵のレーザーは俺の迎撃によって完全にはじかれていた。

当然のことだが、いくらISのアーマーとて、ここまで強固ではない。

対人、対戦車程度の攻撃ならばそれこそ問題なくはじけるだろうが、いま被弾したのはIS用に作られたレーザーだ。

それをはじくと言うことは普通ではあり得ない。

 

これは……

 

そんな疑問が脳裏をよぎったとき……回答が守鉄より示された。

 

 

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)、前羽命守発動]

 

 

 

前羽命守? 守鉄の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)は確か封印されたはず……

 

臨海学校の『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』事件にて発動した、シールドエネルギーの積層展開。

これによってISの究極の防御がさらに強固へとなった能力だったが、体全身に展開しているシールドエネルギーを前腕部のみに展開するというあまりにも無謀な能力だったために、国際IS機関において封印処理が施されたはずなのだが……

 

 

 

いや、今はそんなことなどどうでもいい!

 

 

 

どうやら敵の阻害能力はあくまでも普通のシールドエネルギーの妨害のみで、単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)には通用しないみたいだ。

この状況下にて……敵の攻撃が防げるというのは非常にありがたい。

おそらくだが、この場にてシールドエネルギーを無事展開できるのは俺のみだ。

ならば、俺が皆を護ればいい……。

 

俺にとって……これほどふさわしい役回りは存在しない!!!!

 

一夏。

篠ノ之さん。

簪ちゃん。

山田先生。

 

 

そして……俺が俺自身に誓いを立てた更識……。

 

 

 

この五人を……護ってみせる!!!!

 

 

 

 

 

 

己が信念と誇りに掛けて!!!!

 

 

 

 

 

 

あれは!?

 

敵から放たれたレーザーが簪ちゃんへと当たる直前に、簪ちゃんの前へと躍り出たお兄ちゃんが、敵の攻撃を物の見事にはじいていた。

敵にはシールドエネルギーを阻害する装置があると、織斑君が言っていた。

織斑君の白式だけがその妨害を受けているとは思えない。

そうなるとお兄ちゃんが敵の攻撃を防げたのは……

 

単一使用能力(ワンオフ・アビリティー)!? でもあれは……

 

お兄ちゃんのあまりにも無謀な単一使用能力(ワンオフ・アビリティー)

それは臨海学校の時に発動し、そしてその後初期化を受け付けなくて、封印処理を施されたはず。

なのにそれが発動していた。

 

『無事か!? 護!』

『あぁ、大事ない。簪ちゃんは大丈夫か?』

『は、はい……』

 

そう話している時も、敵は再度レーザーを使用するが、それもお兄ちゃんがはじき落とした。

それが意外だったのか、敵がわずかにも動揺したような気配を見せる。

 

『けど、護。どうして……』

『封印処理を施したはずなのに……どうして!?』

 

山田先生も、私と同様に驚きの声を上げている。

私は家の力を使って調べたから知っているけど、織斑君と箒ちゃん、簪ちゃんは知らないために、純粋に敵の攻撃を防いで驚いているみたいだった。

だけど私はそれどころじゃなかった。

 

このままじゃ!?

 

敵の妨害によってシールドエネルギーが正常に作動しないこの状況下で、お兄ちゃんだけは単一使用能力(ワンオフ・アビリティー)のおかげで唯一敵の攻撃を防御できる。

けどそれは綱渡りといえるほど危うい物で……。

無理をしないでって言った。

けどこの状況下でお兄ちゃんは絶対に……

 

「おにい――」

『どうやら、俺の単一使用能力(ワンオフ・アビリティー)なら敵の妨害は関係がないようだ』

 

私の言葉を遮るように、お兄ちゃんが口を紡ぐ。

そこから次に出てくる言葉は……考えるまでもなくって……。

 

 

 

『敵の攻撃は俺が防ぐ! 一夏、お前はその力のすべてを剣に注いで単一使用能力(ワンオフ・アビリティー)の零落白夜で敵を倒せ!』

 

 

 

『だ、だけど!?』

 

箒ちゃん達からその単一使用能力(ワンオフ・アビリティー)の能力を伝え聞いているのか、織斑君がお兄ちゃんの決断を渋っていた。

だけどお兄ちゃんはそれを一喝する。

 

『さっさと倒さねばどうなるかわからない! 仲間の死が見たいのか!?』

『!?』

 

死人が出るかもしれない。

確かにシールドエネルギーを妨害されてしまうというのは脅威だ。

完全に妨害されているわけではない見たいけど、高出力の攻撃が喰らってしまった場合はどうなるかわからない。

それは敵の攻撃を喰らった織斑君が一番わかっていた。

 

『臆するな! 敵の攻撃はすべて俺が防ぐ! だから一夏! お前は俺と己の剣となって敵を討て!』

『……わかった!』

 

お兄ちゃんの言葉に深くうなずく織斑君。

そのとき……ちらりとお兄ちゃんが私の方を向いたのがわかった。

そして何を言っているのかも……。

 

 

 

……すまない

 

 

 

何を謝っているのかわかった。

だけどそれを責めたくても……責められなかった。

だって……それが一番正しい選択だから。

 

この状況では……!!!!

 

ギリッと歯を食いしばる。

最大の攻撃をもって数を減らすというのは、戦闘では当然だといっていい。

特に今の状況ならなおさらだ。

防御を防がれてしまっては、どうしても回避を優先せざるを得ない。

そうなると攻撃がどうしても薄くなってしまう。

けどそれは相手にとっては思うつぼで……。

時間を稼いで援軍を期待するのも……却下だった。

いつくるかわからないし、長時間の戦闘ともなると集中力が続かないかもしれない。

そのときに敵の攻撃が直撃してしまうと……。

 

……どうしてこんな!?

 

私個人としては無理をしてほしくない。

だけど、生徒会長としてはそれを言うわけにはいかなくって……。

 

シールドエネルギーさえ展開できれば圧倒的に有利な状況だというのに……

 

たったその一つの事実で、私は歯がみするほどの悔しさをかみしめた……

 

 

 

 

 




敵の攻撃は俺が防ぐ! 一夏、お前はその力のすべてを剣に注いで単一使用能力(ワンオフ・アビリティー)の零落白夜で敵を倒せ!

↓Before

俺がお前の楯となる! 一夏、お前は俺の剣となって敵を倒せ!


↑完全に闇のイージスだよwww


はいどうも~刀馬鹿であります~
いやぁ休日って良いね~
朝寝坊は最高だわ……
だが本棚をどうにかしないといけないんだよね~
主にもう本つ~か漫画とラノベの置き場所がないんだよ~汗汗
部屋に置き場所もないし……
ロフトベッドをどうするか検討中……

もしもお使いの方は使い心地を教えてくれたらうれしいです……
主に寝っ転がったときの天井までの高さとか、背丈にもよるだろうけど起き上がっても頭打たないとか……
あ、あとぎしぎしいう言わないとか!

よろしくお願いします!



ちなみに一応来週にもあげる予定です
月夜~は……ごめん、もうちょっとまって!!!

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