IS〈インフィニット・ストラトス〉 守鉄の剣   作:刀馬鹿

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我が剣、その名は……

「じょ、冗談……ですよね?」

「ほう、門国。おまえは私が冗談を言うような人間だと思っていたのか?」

「い……いえ全く」

 

つまり本当に俺は織斑教官の鬼のような訓練を受けなければいけないのだろう……。

蘇る自衛隊での特別教科訓練……。

しかも今回はそれのISヴゥワァージョン。

より恐ろしい訓練に違いない。

 

あ~退学しようかしら……

 

そんなこと出来るわけがないんだけど……思わず本気で考えてしまう。

 

「何を呆けている。専用機組はさっさとISを装着して、訓練を行え。グループは以前分けたときと同じグループでだ。門国は……織斑の班に入れ」

「はっ。了解いたしました」

 

男がいるという事で気を使ってくれたのか、織斑教官は一夏君と同じ班に俺を入れてくれる。

しかし、量産型とはいえ専用機をもらい、挙げ句の果てに織斑教官とのマンツーマン特訓(地獄)と来てはさすがにいい感情は湧かないらしい。

女子生徒からの視線が痛い。

だけどもまだ測り切れていないからか、露骨に邪険にする事も出来ないようで、すごくぎくしゃくした雰囲気になってしまう。

 

「えっと……とりあえず順番に訓練機に搭乗して、前と同じように搭乗、歩行、そして飛行訓練をやっていこう」

 

さすがに気づいたらしく織斑君も苦笑いしながらそう述べてくる。

女子達も俺の事は気にせずに練習する事にしたようだ。

 

イケメン恐るべし

 

そんなくだらない感想は置いておくとして……。

他のグループも訓練機に搭乗して訓練を開始し始めた。

俺も遊んでいる訳にもいかないし、早速先ほど渡された俺専用になったIS、打鉄を起動する事にした。

 

……名前でも決めるか

 

俺はそんな事を考え始めた。

貸し出し品と言ってもいいISに名前を勝手につけるのもあれかもしれないが、少なくとも当分は俺専用機なのだ。

愛称の一つくらいあっても罰は当たらないだろう。

 

…………守鉄(もりがね)ってのはどうかな?

 

俺の信念、打鉄の名前を一次ずつ取った名前。

適当というかだいぶ簡単に考えてみたが、気に入ったのでこれからはこのISを勝手に守鉄と呼ぶ事にしよう。

 

よろしくな、守鉄

 

呼ぶと言っても心の中だけだが。

勝手に名前をつけて怒られてもかなわないし。

 

スパーン

 

「何をぼさっとしている。ここが戦場なら今のでお前は死亡だぞ?」

「申し訳ありませんでした織斑先生」

「時間は限られているんだ、さっさと訓練を行え。歩行は……お前は問題ないだろうからすぐに飛行に移れ」

「はっ!」

 

俺は返事をするとすぐさま守鉄を展開する。

いや正確にはしようとした。

 

む、むずかしい……

 

あの時のように展開しようとするのだがうまくいかず、だいぶ展開に時間がかかってしまった。

しかしどうにか展開出来て俺は思わず安堵の吐息を漏らす。

 

展開しなかったらどうしようかと思ったよ

 

これでもしもISが展開しなかったら俺はただの笑いものである。

せっかく転入手続きに奔走してくれた上官や国の方々に顔向けができないところだった。

 

「遅いぞ。不慣れとはいえもっと速く展開できるようにしろ」

「はっ。了解しました」

「よし。では飛べ!」

 

織斑教官の言葉通り、俺は空を飛ぼうとした。

しかし……。

 

「う……うぉぉぉ?」

 

フラフラフラ

 

正直全くうまく飛べない。

というよりも飛べていない。

地面から数メートル上の地点で危なげにふらふらしながら滞空している。

 

「どうした? 飛ぶどころか滞空しかしていないぞ?」

「す、すいません」

 

どうにかして他の人がしているように空へと舞い上がろうとするのだが、如何せんうまくいかない。

 

「謝る暇があるならさっさと慣れろ」

 

ごもってもな意見をいただくが、どうにもうまくいかない。

出力が安定しないのか、それとも俺が単にうまくできていないのか。

モニターから見える守鉄のステータスに異常は見られないのでおそらく後者だろう。

 

くそ。うまくできない

 

というかまずこの生身に近い(感覚的に)状況での飛行というのがうまくイメージできない。

人は空を飛べないのに、道具を使っているとはいえ、こんな限りなく自分の体に近い状態で飛行する事になるとは……。

その不安定かつ空を飛ぶという事に対する否定的感覚がいけないのかもしれない。

 

「はぁ!」

 

俺は呼気を一息吐くと、気合いを込めて出力を上げて上空へと舞い上がった。

……正確には回り上がった……だろうか?

 

グルグルグルグル

 

「う、うわゎゎゎ」

 

ヒュルルルルル

ドーン

 

結局俺は回転しながら上昇し、そして回転しながら地面に落ちた。

守鉄の絶対防御が働いてくれたおかげで俺は無傷だが……あまりにも情けないに飛行だっただろう。

 

ちなみに絶対防御とはISに備わっている能力で、操縦者が絶対に死なないようにするためのシールドだ。

シールドエネルギーというISのエネルギーを用いて使用されるものであり……まぁ要するに死なないための安全装置だ。

しかしこの機能はISのエネルギーを大幅に持っていくので戦闘中は注意しなければならない。

 

「ぷっ、何あれ?」

「いくらなんでもあれはちょっと」

「自衛隊出身だって聞いたから強いのかと思ったけど……そうでもない?」

 

女子高生の遠慮のない罵倒が、俺の耳に入ってくる。

彼女たちは内緒話のつもりだろうが、ISを着ているせいでばっちり聞こえていたりする。

 

な、情けない

 

言い返すつもりはないが、確かにその通りなので俺は心の中で落ち込んでしまう。

 

あの時は無我夢中で操縦していただけなのでどうやって動かしたのかも覚えていないくらいだし……。

そうして落ち込んでいると、そばにいる織斑教官がため息を漏らした。

 

「やれやれ。どうやらこれからのお前の訓練には苦労させられそうだな」

 

キーンコーンカーンコーン

 

そんな言葉を織斑教官の言葉とほぼ同時に、授業終了のチャイムが鳴り響く。

 

どうでもいい事なんだけど、この特殊な学校でも、チャイムって普通なんだな……

 

 




護のだめっぷり再来wwww

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