IS〈インフィニット・ストラトス〉 守鉄の剣   作:刀馬鹿

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演劇

生徒会出し物

場所 第四アリーナ

観客参加型演劇

演目「シンデレラ」

 

「という訳なの」

「何がというわけなの、ですかぁ!」

 

目の前でそう言ってくる先輩……更識先輩に俺は抗議の悲鳴を上げる。

が、すでにこの第四アリーナ更衣室で、ISスーツではなく舞台の衣装である、童話の王子様が着ているような服装に着替えさせられた時点で無駄なあがきでしかない。

普段なら止めてくれるみんなも、何故かドレスが着れるという言葉につられて別の更衣室で着替え中である。

 

なんでいつもこんな……

 

「ま~ま~。そういきり立たないで。とりあえずはいこれ」

「……なんですかこれ」

「何って……王冠?」

「そんなの見ればわかりますよ! っていうか最後疑問系でしたけど王冠ですよね!?」

「うん多分」

 

たぶんって何!?

 

そう叫びたかったけど、叫んだところで意味はないので俺は仕方なくそれを受け取った。

 

「嬉しそうじゃないわね。シンデレラの方が良かった?」

「いやですよ!」

 

この人は……全く……。

 

「さて、そろそろ始まるから舞台袖に移動してね」

 

笑顔でそう言いながら、俺の背中をぐいぐいと押してくる。

しかしこのまま舞台に出ても何をしていいのかわからないので俺は必死に抵抗する。

 

「ちょ、ちょっと! 脚本とか台本とか何も知らないんですけど!?」

「大丈夫大丈夫。基本的にこっちからナレーションでアナウンスするから。その通りにお話進めてね。あ、台詞はアドリブでよろしく♪」

 

笑顔でそう言われ、もう溜息しか出てこない。

まぁ取って食われる訳じゃないだろうから、そういう意味では安心しているのだが……。

 

……喰われないよね?

 

だが完璧に安心できないのが……会長らしいと言えば会長らしかった。

 

「失礼なこと考えているでしょ?」

「そんなこと無いですよ!」

 

正確に心を読まれて、慌てて否定するが……信じてもらえたかどうか。

 

「はい! とりあえず行ってみよう!」

「……はい」

 

もはや逆らってもどうしようもないので……俺は素直にうなずいて……舞台裏へと移動した。

 

 

 

……始まったか

 

俺は携帯端末に送られてくる、一夏が出ている舞台……生徒会主催、「灰被り姫(シンデレラ)」……という名の一夏争奪合戦を見ていた。

 

えげつないな……って飛刀とかスナイパーライフル使うとか容赦ないな……

 

一夏を追い詰めるために、参加した女子達が使用する武器を見て……俺は同情と供に、乙女の本気というか……恐ろしい執念を見て驚きしか出てこない。

 

 

 

絶句といっても……いいかもしれない……

 

 

 

敵が行動を起こしやすくするために、生徒会、というか更識が立案したこの企画。

それは一夏と同じ部屋……正しく言えば俺もいるが……その部屋に入居できるという餌を使用しての劇だった。

景品が景品だからか、参加する乙女達が後を絶たず、さらに武装もある程度は許可されているので、もう……なかば戦場と化している。

さらにこの演劇には仕掛けがあり、一夏に関する問題も同時に解決するためでもあるらしい。

一石二鳥の作戦と言うことだ。

 

やることにそつがないな……。いや抜け目がないというべきか……

 

俺は更識の指示で、敵が使用すると思われる逃走ルートに先回りして、こうして待機していた。

状況を知るために、こうして端末でリアルタイムの映像を眺めているのだが……。

 

……悲惨すぎる

 

ちょうど今、一夏が王冠を一夏軍団の一員、金髪ボーイッシュことシャルロットさんに渡そうとしたら体中に電撃を流されて全身を痺れさせていた。

しかも結構な出力なのか、衣服が所々焦げている……。

ちなみに、一夏と同じ部屋になるためには、一夏が今頭に乗せている王冠をゲットしなければならない。

 

……本当に取られないんだろうな?

 

一夏の部屋に女子が流れ込んでくると言うことは……俺もその部屋で生活しているわけで……。

更識は絶対に取られないように細工をしているし、また最悪自分が入手すると豪語していたが……こう数が多いと不安になってくる。

もしくは俺がどこかの部屋に追い出されるのかもしれない。

 

その場合は……可能であれば一人部屋がいいが……。というか一夏すごいな……

 

相当の数の女子が参加していて、しかもその女子は全員IS学園で軍事訓練も行っている人間で……当然全員それなりの身体能力を有している。

であるにも関わらず、一夏は今のところ掴まる様子がない。

一夏本人も訓練を受けていて、さらに男であるということを考慮に入れてもなかなかのハイスペックだった。

とそうしていると再び一夏軍団の一員の二人が、一夏へと文字通りそのままの意味で攻撃(アタック)を仕掛けている。

片方は銀髪ちびっ子のラウラ。

タクティカルナイフを両手に装備して、一夏へと攻撃を仕掛ける。

だが一夏も早々簡単にはやられず、さすが剣道をしていただけ合って間合いのはかり方はなかなかのもので、そう簡単には負けそうにない。

だが、その剣道で腕を確実に上回っている存在が……一夏へと襲いかかる。

中学剣道全国大会覇者……撫子ポニーの篠ノ之箒……。

得物はもちろん日本刀。

何というか、ドレスに刀とか……何を狙っているのかと言いたい気分だ。

そう思っていると、撫子ポニーは一夏へと斬りかかって……。

 

……いや本気で斬りにいってないか?

 

凄まじい勢いで振り下ろされる刀。

もはや一夏を殺しにかかっているのではないかと思わず本気でそう思ってしまうほどの斬撃だった。

辛くも避けた一夏はさらに逃げ回る……。

 

 

 

何というか……軽いなぁ……

 

 

 

刀の扱いが……。

 

 

 

そしてここで、ついに敵が動いた。

 

 

 

……ん? この顔は

 

俺は一夏を連れ去っていくドレスを着ていない女の顔に、見覚えがあった。

 

……以前の襲撃の時に俺が捕らえ損ねた女か

 

その顔は以前クラス対抗で一夏の事を撮影しようとしていた敵と同じ顔だった。

どうやら今回動いたのもまた同じ組織のようだった。

すでに面が割れている人間を再び送り込んでくると言うのは……正直予想外だった。

 

いや逆にか?

 

すでに顔がわかっている相手だから逆に行動を起こした時に発見しやすいからあえて懐に飛び込ませたのか? もしくは純粋に見逃したのか? それとも……

 

改竄されたか?

 

データを改竄されて、警告などが出ないようにされたのか。

様々な憶測が俺の脳裏をよぎるが……今は詮無きことだった。

 

『お兄ちゃん』

「更識か?」

 

そうして俺が考え事をしていると、通信が来る。

俺は直ぐに思考を切り替えてその通信へと反応する。

 

『うんそうだよ。わかっていると思うけど敵が行動を開始したから準備をお願い』

「了解した……。待機からいつでも出撃が出来――」

 

出来るようにしておく。

そう返そうとした俺の背筋に……悪寒が走った。

その瞬間には俺はすでに回避行動を行っていた。

 

ピュン!

 

大気の灼ける音が俺の耳に届き……手にしていた通信をかねていた携帯端末を貫き……それをスクラップへと変化させる。

だがそれに気を取られているわけにも行かない。

俺はすぐさま俺の専属IS、ラファール・リヴァイブである守鉄を展開し、辺りを見渡す。

 

……目に見える範囲ではいないか

 

守鉄のセンサーをフル稼働させるが、少なくとも至近距離には敵の存在は発見されなかった。

だが相手はだれかわかりきっていた……。

一夏と今いるであろう人物……前回もあの女が俺に掴まりそうになったときに俺へと向けて発射されたレーザー兵器。

今回俺を狙った攻撃もレーザー兵器だった。

 

それに何より容赦なく急所を……殺しに来た攻撃……

 

となると自ずと答えはわかる。

 

……この間俺を攻撃した。狙撃のISか

 

そして程なくして……その答えが出た。

 

スゥ

 

電子迷彩を解除し、敵の機体が顕わとなった……。

濃い群青の機体色が目を引く。

バイザータイプというか……顔も完全に隠れるタイプなのでその下に隠れた表情をうかがい知ることは出来ない。

 

見た目が完全にブルーティアーズだな……

 

完全に一致しているわけではないが、類似点が非常に多い。

手にした武装も。

その特殊な武器とも言える、ビットも。

仮に金髪ロングの娘のISの姉妹機ないし後継機だとしたら、金髪ロング娘のISのデータを使用している可能性が非常に高いので、より改良されている可能性があり、それは見た目に顕著に表れていた。

 

……強奪でもされたのか?

 

ニュースなどでイギリスから専用機ないし第三世代機が強奪されたというのは報道されていないが……。

といっても国家機密レベルの物体を強奪されてそれを馬鹿正直に報道するような国はないだろうが。

俺は静かに両手を前に突き出して構えながら思案していると……相手が笑った。

 

ニタァ

 

と実にいやらしく。

その瞬間に背筋に悪寒が走る……。

そして再び空気の灼ける音を耳が捉える。

それを感じたときにはすでに俺は動いていた。

 

ピュン

 

ついさっきまで俺がいたその場所に、熱線が走った。

その方向へと意識を向けると、発射の熱で電磁迷彩が歪んでいた、砲台……ビットの姿があった。

しかし敵の体にはビットは四機装備されたままだ。

となると俺と接触する前に機体から切り離していたと言うことなのか……。

奇襲が通じないと見たのか、敵がビットを己の機体に呼び戻す。

 

……数は、六か

 

これだけで確実にブルーティアーズよりも高性能であることがはっきりとわかる。

そして、眼前の敵の雰囲気から、生半可な相手ではないということは十二分伝わってきている。

 

ガチャン

 

ビットを装着し、長大なライフルを構える敵。

俺はそれを確認して再度構えを取った。

 

 

 

 

 

 

!? 通信が!?

 

外で待機してもらっているお兄ちゃんとの通信が途絶えた。

ブツッと、千切れるように通信が途絶えたことから、お兄ちゃんに不意の事態が起こったと見て間違いない。

 

……一体何が?

 

今すぐ救援に駆けつけたい……。

だけどそれをすることは絶対に出来なくて……。

今こうして思案しながらも、私は織斑君がいる場所……更衣室へと向かっている。

どんな状況になっているのかは、すでに設置したカメラとマイクで確認済みだ。

 

ISの強制解除? また厄介な物を……

 

コアネットワークがあるため、そこまで効率のいい物であるとは思わない。

だけど何でも最初にそれをするというのはそれ相応に効果的なのだ。

初めて実現と、二番目に実現では、雲泥の差がある。

それにコアネットワークといっても万能じゃない。

強制解除を行ったISと全く接点のないISにそれを使用すればいいだけの話だ。

もしくはIS自身が対策を行ってコアネットワークにそれを報告する前に使用してもいい。

いずれにしても織斑君のISが奪われてしまった以上、優先度は確実に織斑君の方が上だ。

 

……信じてるよ。お兄ちゃん

 

信じている。

その都合がいいとも取れるその言葉で、自分にとって大切な人のことを見捨てなくてはならない己の未熟さが、歯がゆかった。

 

 

 

 

 

……始まったか

 

私は職員室で秘密裏に、それが始まったことを空気で感じ取った。

少し距離が離れるが、明らかに今の学園祭によるお祭りムードとは一転した、鋭く張り詰めた糸のような物を感じたのだ。

そしてそのすぐ後に、手元の携帯端末が鳴り響く。

 

『織斑先生! 今――』

「わかっている。教職員各員は第二種警戒態勢。ISを直ぐにでも発動できるようにセッティングしておき、生徒の護衛と、可能ならば敵の補足、捕縛を行うように指示を出す。……山田君は裏口に向かってくれ」

『裏口……ですか?』

 

会議で決まった持ち場と違う場所を指示されて、山田先生が戸惑いながら返事をする。

説明する時間も惜しかったので、山田先生には申し訳なかったが、簡潔に説明した。

 

「あのバカが向かった先だ。見に行ってくれ」

『!? わかりました!』

 

直ぐに通話を切ると、私は矢継ぎ早に指示を出す。

弟のことを心配したが……更識が動くことはすでに決まっていたので心配はしていなかった。

 

……いや心配ではあるか

 

実に手のかかる弟である。

だが、それでも……。

 

私にとっては大切な……

 

家族だった。

 

 

 

 

 

 

……所詮この程度か?

 

私は眼前で戦う相手……ラファール・リヴァイブを身に纏った男の動きを見て、そう結論づけた。

殺気をほぼ完全に消した私の射撃を三度も避けた。

とくについさっきの射撃……姿を表してからのビットによる攻撃はほぼ完璧だった。

だがそれを完全に察知して避けた。

三度も続けばもはや偶然と言うことはあり得ない。

今も私の攻撃……ビットと私自身が持つライフル、スターブレイカーでの同時攻撃を、空中に浮いての二次元軌道という……あまり意味のない軌道で完璧に躱していた。

無論私も本気を出しているわけではない。

だがそれでもこの男の二次元軌道は異常だった……。

だが攻撃してこない以上、私が負けるはずもなかった。

 

ねえさんが突破出来なかったというのは本当みたいだが……それだけだな……

 

世界大会を制覇した織斑千冬が自衛隊での格闘訓練で、ただ一人勝利出来なかった男。

確かにそれなりの力を持っているようだが……。

本当にそれだけだ。

ならさっさと終わらせてしまおう。

 

姉さんの顔に泥を塗ったことを……地獄で悔いるがいい!

 

スターブレイカーの出力を最大にし、構えようとしたそのときだった。

 

「……埒が明かないか」

 

ぼそりとそう呟いて、相手が動きを止めたのだ。

ビットの絶え間ない攻撃の僅かな間隙に。

その事に驚いて私は一瞬だけ油断した。

 

そう一瞬だ。

 

一秒にも満たない僅かなその時間をもって……

 

相手が変わった。

 

 

 

 

 

 

ドンッ

 

「なっ!?」

 

敵の不快な蜘蛛型のISを吹き飛ばして、私はゆっくりと更衣室へと降り立った。

蜘蛛の足を背中からはやしている、敵のIS。

はっきり言って醜悪とも取れる姿だった。

 

まぁ機能性というか、機能面で見れば有能だけどね

 

腕もあるので同時に十の攻撃を行うことが出来る。

しかも脚にはそれぞれに砲門が装備されている。

その十の攻撃を、私は徐々に下がりつつ捌いていた。

自身のIS、『ミステリアス・レイディ』のランスと水のマントで防いでいる。

だけどそれをみて、私はまだまだお兄ちゃんの力量に至っていないことが自分でよくわかった。

 

お兄ちゃんならきっと……両手だけで捌いてる……

 

防御すること限定で考えれば、間違いなくお兄ちゃんはあの若さではトップクラスの腕前を有している。

だから大丈夫だって信じたいんだけど……。

 

心配だよね……

 

「どうした!? 押される一方で!? IS学園の長とか言っておきながらその程度か!?」

 

私が自分の未熟さと、お兄ちゃんのことを考えていると、突っ込んできているだけの敵が、やかましくも私にそう挑発してくる。

その表情は、余りにも醜悪な醜い笑みが刻まれていて……。

腕前はそこそこ。

しかもISも多機能というか様々な機能を有しているし、機動性もある。

優秀なのだけど……

 

私好みじゃないわね

 

「更識さん!」

 

織斑君が心配して私に声を掛けてくる。

そんな織斑君に向かって、私は振り向いて笑顔を向けた。

 

「大丈夫よ織斑君」

「よそ見かよ!!!!」

 

敵が脚の半分を格闘に回して猛攻を仕掛けてくる。

私はそれを冷静に捌く。

 

「織斑君は休んでて。ここはおねーさんにまかせて。知っている? この学園の生徒会長というのは最強の称号だということを」

 

後半の言葉は相手にも意識して聞かせた。

だけど相手はそれを一蹴して、さらに突っ込んでくる。

その仕草は本当に呆れるくらいに……。

 

「戦闘中に考え事とは余裕だなぁ!?」

「私はあなたと違って常に思考しているの。猪突猛進なお馬鹿さんと違ってね」

「誰がバカだって!?」

「違って? 猪さん? 何せこの部屋の暑さにも気づかないんだもの」

「暑さ? 何言って……!?」

 

私の言葉で、相手はようやくこの状況に気づいたようだった。

 

部屋一面に漂う、霧に。

 

半ば呆然とする相手に、私はそれとなく生身の織斑君を背後に隠しつつ、距離を取った。

 

「その顔が見たかったの。己の失策を知った、その顔をね」

「て、てめぇ」

「ミステリアス・レイディ……『霧纏の淑女』を意味するこの機体は、水を自在に操るの。エネルギーを伝達するナノマシンによってね」

「し、しまっ!?」

 

パチン

 

私が指を鳴らすと、敵の体が爆発に飲み込まれる。

ISから伝達されたエネルギーを霧に構成するナノマシンが一斉に熱に転換し、対象物を爆破する能力『清き熱情(クリア・パッション)』。

限定空間でしか効果は望めないけど、全ての行動と同時に使用できるこの技は、非常に有効な武器の一つだった。

背後の織斑君が無事であることを確認しつつ、私はさらに言葉を続けた。

 

「ただ攻めることしかしないような人には熱かったかしら? でもこの程度ではまだ生ぬるいわよ?」

「さ、更識……さん」

 

背後の織斑君の声が震えている。

怒気を発している私の雰囲気に気圧されたのかもしれない。

だけど今の私にそれはどうでも良かった。

以前の襲撃で、お兄ちゃんを危ない目に遭わせ、あげく今回もお兄ちゃんを苦しめようとしている相手を、そう簡単に許すつもりはなかった。

 

「二度と織斑君やお兄ちゃんに手を出すことを考えないようにして上げるわ」

 

威圧を込めて、私はそう口にした。

 

 

 

この時、私は少なくとも冷静ではなかった。

お兄ちゃんと織斑君の安全を確保しようと、ある程度痛めつけることを選んでしまったのだ。

痛めつけると行っても殺すつもりはないし、あまりひどいことをするつもりはない。

だけど、それでも少しは痛めつけないと意味がなさそうだったから……。

二人の安全を確保し……これ以上お兄ちゃんに傷を造らせないために。

だけどこの選択のせいで……さっさとこの時織斑君のISを回収しておくべきだったと……私は後に非常に後悔することになってしまう……。

 

 

 

その威圧におそれをなしたのか、相手が装甲の一部を引きちぎって放り投げて爆破して、撤退した。

 

織斑君の『白式』のISコアを持ったまま。

 

「!? 待ちやがれ!!!!」

「はいストップ」

 

無謀にも、敵が逃げたことに気づいた織斑君が敵を追いかけようとしたので、私は忍ばせておいて扇子を取り出してそれで織斑君の進路を塞いだ。

 

「!? 更識さん!!!!」

「行ってどうするの? ISもなしでISの相手をするつもり?」

「!? だけど!!!!」

「少し落ち着いて。よく考えて? 私たちには何がいるかしら?」

「? 何って……」

「うふふ。答えは簡単よ」

 

突然の事と、自分のISを奪われてしまった事から焦っている織斑君は直ぐに答えることは出来なかった。

そんな織斑君に微笑しつつ、私は答えを行った(・・・)

 

パンッ!

 

小気味いい音を立てながら、自慢の扇子を開く。

その扇には『仲間』と描かれている。

 

「仲間がいるでしょ♪」

 

 

 

「ったく。なんなんだ!?」

 

私は辛うじて逃げ出すことが出来たことに安堵し、そして安堵してしまった自身に腹を立てて、怒鳴っていた。

完全に敗北してしまった。

敵の裏の手を読むことも出来ず、いいようにあしらわれてしまった。

あんなくそ学園にいるくそガキに……。

だが試合には負けたが勝負には勝ったのだ。

 

……世界でも珍しい男のIS専用機を……手に入れたのだ

 

とりあえず目的を達したことで何とか溜飲を下げた。

 

「ようやくガキくせえ空間から抜け出せた」

 

私はクソガキの巣窟といえたIS学園から脱出して胸の内に溜まっていた鬱憤が、少しでも消えるように、言葉を吐き捨てた。

兵器であるISをファッション感覚で遊んでいる、あの空間は私から言わせれば腐っていた。

可能ならば今すぐにでも核ミサイルをぶっ放したいくらいだ。

だがとりあえず任務は達した。

くそうざいことに生徒会長のくされガキから逃げるときに、アラクネを一部切り離しての自爆で逃げ出したために、手負いだが……。

 

まぁいい。目的の品は手には入った

 

手に持つそれを、見る。

世界でも希少な、男のIS操者、織斑一夏の専用機を。

 

逃げるときのあのくそガキの絶望に染まった顔。思い出しただけでもゾクゾクす――

 

その時、アラクネのセンサーが、私を追撃している機影を捉えた。

すぐに意識を変えるとその相手を視認する。

 

データ照合……ラファール・リヴァイブ。だが機体色が……

 

機体色が違う。

そこまで考えて一つの事実に行き当たる。

学園を監視している時に見た、もう一人の男が駆る、漆黒のラファール・リヴァイブ。

負ってくる敵機と同じカラーリングと機体。

そして顔を見ると、そこには以前私を追いつめようとした顔があった……。

 

もう一人の男のIS操縦者、門国護!!!!

 

足止めに失敗したのか?

 

手筈ではあのいけ好かない奴が、こいつを足止めするはずだが……。

だが特に連絡もない。

足止めすらもしなかったのだろうか? と考えたその時すぐにそれを見つけた。

 

肩の装甲と足の装甲が一部破損し、さらには所々、機体にダメージを負っている。

さらに一部の装甲が赤く染まっている。

多くはないが、決して少なくない量の出血をしている。

 

恨みある男。

現在、世界に二人しかいない男のIS操縦者。

手負い。

さらに私の手元には剥離機(リムーバー)が存在している。

互いに手負いだが、ISだけでなくさらに体も負傷している相手の方が、より深いダメージを負っている。

それに何より……専守防衛というぬるいことをいうような組織の傀儡になんぞに……

 

「負けるわけがないよなぁ!」

 

挑発気味に、私は前に進みながら後ろ向きに振り返り、アラクネの武装を展開した。

いや正確にはしようとした。

だが私は出来なかった。

何故か?

振り返ったその後ろ……目と鼻の先に近接ブレードを振りかぶった敵の姿が目に写ったからだ。

 

「なっ!?」

「ずぁっ!」

 

確かに一瞬前まで私の遙か後方にいた敵が、私の真後ろに移動していたその事実に、一瞬体が硬直しそうになる。

だがそれでも敵がその総身から凄まじい殺気を噴出させながらブレードを振り下ろしてきたので、体が反射的に動いていた。

辛くもそれを横に軌道を変更することで避ける。

 

なんだ今のは!?

 

余りにもあり得ない先ほどの状況に私は内心で驚愕していた。

確かに私が振り返る一瞬前までは敵は私の少し後ろにいたのだ。

瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使用すれば確かに真後ろにはこれただろう。

だがそれにしてもそんな気配を全く見せなかったのだ。

気づいたら後ろにいた。

そんな感じだった。

まるで私の真後ろに、瞬間移動したかのように……。

 

「おぉぉぉ!」

 

敵の怒声が私の鼓膜を振るわせる。

それに意識を取り戻して再度敵へと目を向けた。

そしてその瞬間には敵は私の上で剣を振り下ろした後だった……。

 

「ひっ!?」

 

それも何とか避けた。

瞬間移動と見紛うほどの速度で接近し、さらにはその身から放たれる気配が尋常じゃなかったために、私の口から悲鳴にも似た何かがあふれ出てしまった。

それを聞いた瞬間に、私は自身に憤った。

 

男に恐れを抱くだと!?

 

「ふざけるな!!!!」

 

私はアラクネの脚の武器を展開し、敵へと向けて一斉に砲門を発射した。

だがそれにすらも構わず……砲門の中突進してきて……。

訓練で見たその動きとは余りにもかけ離れたその行動……。

一切の防御を行わず、さらには頑なに行おうとしていなかった三次元軌道を行っている事……それは驚くには十分だった。

そしてその驚きが今度こそ致命的な隙を生じさせた。

 

ブォン!

 

振り抜かれる、敵のブレード。

そして振り抜かれたことによって、私のアラクネの手が、手首から先が斬られてしまった。

 

 

 

持っていたISのコアと一緒に、宙を飛んだ……

 

 

 

「しまっ!?」

 

気づいたときには遅かった。

敵はブレードを投げ捨ててそのコアを……『白式』のコアを大事そうに宙で掴み取った。

それに一瞬気を取られた私だったが、しかしまだチャンスはあった。

何せ敵は今体勢を崩している。

さらには腕を破壊されたとはいえ……。

 

こっちにはまだまだ剥離剤(リムーバー)があるんだからな!

 

直ぐに剥離剤(リムーバー)を展開。

敵へと向けて瞬時加速(イグニッション・ブースト)を行って接敵し、それを宙で逆さまになっている敵の胸部へと取り付けた。

 

もらった!

 

取り付けに問題はなかった。

これは確実だ。

ラファール・リヴァイブを強制解除された生身の相手を、半壊しているとはいえISで相手するのは容易だ。

そのため、二つの男のコアが労せずして手に入る……はずだった。

勝ったと思った私の目に飛び込んできたのは……

 

 

 

敵が……門国護が握りしめた『白式』のISコアと、敵のラファール・リヴァイブのコアがまるで共鳴しているかのように、淡く発光し、点滅している光景だった。

 

 

 

バチッ!

 

剥離剤(リムーバー)から発せられた電流が敵の体を灼いた。

それと同時に、私の手中に二つのコアが握られる……。

そう思っていた。

 

だが……

 

 

 

「以前と同じ電撃攻撃か?」

 

 

 

はっきりとしたその声の方へと振り向くと……私を凄まじく睨みつけている、未だにISを……ラファール・リヴァイブを……纏ったままの男がいた。

 

「なっ!?」

「そんな物……」

「バカ――」

 

 

 

「効かん!!!!」

 

 

 

凄まじい空気の唸り声を上げて、敵の拳が私へと放たれた。

それを装甲部とはいえもろに受けてしまい、衝撃が私の体を叩いた。

さらにそれで吹き飛ばされていると、敵がさらに何か武器を展開しようとしていて……。

 

冗談じゃねぇ!!!!

 

あまりにも不確定要素が多すぎる敵に、私は心の中で呪詛を吐いた。

剥離剤(リムーバー)は確かにIS自身に耐性を造らせてしまう。

だがそれはあくまでも剥離剤(リムーバー)を使用されたISのみである。

そのISがコアネットワークに情報を流し、そのISに近しいISが情報を共有することは可能だが……。

だがそのデータは瞬時に送れる物ではないのだ。

そしてそれをコアネットワーク上のデータを解析し、それを自分の物にするのも時間がかかるはずだ。

 

そうであるはずにも関わらず効果がなかったのだ。

 

 

もう一人の男、門国護が駆るISには……

 

 

何なんだ!? てめぇはよぉ!!!!

 

効かなかった剥離剤(リムーバー)を敵へと投げ捨てて、私はもはやぼろぼろで使い物にならなくなってしまったアラクネを解除し、コアを抜き取った後。敵へと向かって突進させた。

そしてタイマーした時間に爆発する。

それを見届けずに私は走った。

 

不気味な敵から……少しでも離れられるように……。

 

 

 

その後、生身で逃走していた敵を、ラウラ・ボーデヴィッヒとセシリア・オルコットが追撃を行うも、護を足止めしていたBT兵器搭載のIS二号機、サイレント・ゼフィルスの奇襲により捕獲することは出来なかった。

こうして、敵……亡国企業のIS学園第二襲撃は、辛くも引き分けに終わった……。

 

 

 

 

 

 

「ふ~んあの男のISに剥離剤(リムーバー)が効かなかったんだ」

 

薄暗い部屋の中で、手元にある空中投影型のディスプレイに映し出されている映像を見ながら、束はそう口にした。

束にとってISは子供同然である。

そのため、自分が製造したコアの状況を知ることなど造作もないことであり、またそれが見聞きした映像や音も、この場にいるだけで見ることが可能だった。

そのため、未だ表沙汰になっていない、二度目のIS学園襲撃事件も、ほぼリアルタイムで知っていた。

 

否、襲撃事件が起こる前から知っていた。

それが起こると言うことを……。

ISの状態を知ることの出来る束に取って、ISを使用したその時点で、どこで何を行っているのかわかってしまうのだ。

だから作戦が今日行われることも、学園側がどういった対応をするかも瞬時に知ることが出来た。

仮にその機能が無くても、束ならばハッキングで大体の情報は仕入れることが出来てしまう。

無論ISのデータもだ。

全てを知ることは出来ないが、それでもおおよそのことを掴むことは出来る。

自己進化するように設定したために束でさえ掴めない、もしくは知らない事はあっても『わからない』という事はほとんどあり得ないと言ってもいい。

 

 

 

だが、今そのあり得ない現象が……あの男……一夏ともう一人……世界で二人しかいないISを動かす事の出来る男が引き起こしていた。

 

 

 

自衛隊陸軍所属……門国護が……。

 

 

 

 

「……さすがにちょっと気になるな。この人」

 

 

 

 

 

 

 




ピンポンパンポーン

ネタですネタ。
本編とはこれっぽっちも関係がありません。
作者がくだらないことに気づいてくだらないことを妄想して書いただけです。
読む読まないはお任せしますw




敵が……姉さんに泥を塗った男が動きを止めたその瞬間、私は己の武器、銃杖を構えた。



BGM
~我が心明鏡止水されどこの掌は烈火の如く~

※ゴッ○ガンダムのテーマ曲



「受けてみるがいい。サイレントゼフィルスのバリエーション!」

上に掲げた得物に大気のエネルギーが収束していく。敵がそれを見て回避行動を取ろうとしたが、一足遅かった。

「こ、これはビットの電磁波を利用した拘束(バインド)!?」

ビットによる四肢の拘束。
それによって敵は宙に固定された。
それを舌なめずりしながら見下ろし、私は銃杖を振り下ろした。



「これが私の全力全壊!!!! スターラ○トブレイカー!!」



ほぼ全てのエネルギーを収束したその淡いピンクの光線が敵へと迫る。



「それ番組違――!!??」



ボシュウ!!



ああああああああああああああああああああああああ!!



~オータム~
「な、なんつーバカエネルギー」

~スコール~
「死んだわね。あれ」






ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



「……ながくね?」

【ふははははは!! 泣け!! 喚け!! そして死ね!!!!】

……時々、銃杖(サイレントゼフィルス)が暴走する

まぁ、止めるつもりもないが

「あはははははははは!!」

【あひゃひゃひゃひゃ!!】






「あぁ!! マヤさんが!」

「マヤマヤされてる!」

「なんでこんな役なんですかぁ!? 私この作品だとヒロインですよぉ!?」



マヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤ


「って!? ちょっ!? どこ触っひゃん!? も、揉まないでくださいよぉー!!」


マヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤマヤ


「も、もうだめです……」


ガクッ


「マヤさん~!」







「あはは、ほんとだ! その気になれば痛みなぞ完全に消せるんだな!」

「流石だ箒! 得物もそうだがキャラもなかなかに合って……って何故剣を俺に向ける?」

「一夏ぁ!!」



ぎゃああああああああぁ!!



「箒。一人ぼっちは寂しいのだろう。いいだろう。一緒にいてやろう。光栄に思うがいい」



「まどか……ハァハァ」

「ちょっシャルロット?」

「だって、黒髪ロングの子がやりたかったんだもん! そしたらこんな変態みたいなキャラで」

「あードンマイ」

「鈴だってツインテールってだけでその役になっただけでしょ?」

「言わないで、悲しくなるから」



「絶対に下手打ったりしないな」

「は、はい……」

「誰かの嘘に踊らされていないな」

「は、はい、もちろんです」

「よし……ならば行け――って何で私が母親役なんだ!!!!」

「ひぃぃぃ!? 千冬さんごめんなさい!!!!」



「俺がこんな見た目可愛いの演じ……あーわかったよ。あまたの世界の運命を束ね、因果の特異点となった君ならどんな途方もない願いでも叶えられるだろう」

「ほ、本当……?」

「さぁ、鹿目鈴。その魂を代価にして君は何を願う?」

「な、なら、私の願いは……一夏のお嫁さ――」

「「「「ちょっと待てーーー!!!!」」」」

「セリフが違うぞ! 鈴!」

「うるさいわね! いいじゃない別に! 私の願い事叶えてくれるなら他の魔法少女なんて知ったことじゃないわよ!」

「そんなこと許さんぞ! ちゃんと演じろ!」

「そうだよ! 僕だってあんなひどい役演じたのに!! そもそもあの演じ方、本編じゃなくて同人的な感じじゃない!」

「演じる役があるだけまだましですわ! 私なんて、語呂が悪いというだけでお払い箱ですわよ!? 金髪でカールしてて得物も長銃(ライフル)だというのに!?」

「演じなくてよかったと思いますよ、オルコットさん。マヤマヤ言われながら食べられるだけですし……。それにも……揉まれちゃいましたし。もうお嫁さんに行けません」






「やれやれ。訳がわからないよ人間(おんな)って」






ブチッ×5



「「「「「お前がいうなぁ! 一夏!!」」」」」



ぎゃあああああああああ!!









魔法少女リリカル マドカ☆まぎか!



放映日未定!

執筆もしないよ☆






~生徒会室~

「はぁ~平和ね。虚ちゃん」

「そうですね。お嬢様」

「お~。平和が一番だよ~」

ズズズズ

↑お茶をすする音






~ガノトウ in 刀馬鹿~

ノリだノリ
キャラが崩壊してるが、文句や誹謗中傷は受けつけないぜ♪




こっちが本当~ じかいよこく~~~




あ~久しぶりに書いたよ~
うまく書けているといいのですが……。
予告しておきますと、六巻での出来事、『キャノンボール・ファスト』の話はカットします!
といってもその大会だけを削除するので会ってそこに至るまでのプロセスである、シャルと一夏の買い物なんかのエピソードは書きます。

っていうか、シャルと一夏のデートの裏側! が書きたくてしょうがない!!!!!

会長! 会長!!!

おっぱい! おっぱ……失礼 マ・ヤ・タ・ン! マ・ヤ・タ・ン!!!!

あ~マヤマヤし――ゲフンゲフン!

他にも一夏ハーレム軍団と護とのやりとりなんかも書く予定です~
更新速度は遅いですが、暇な時間にでもチェックしていただけると嬉しいです!




ハーメルンにて


たとえ……感想で心がえぐれようとも、執筆だけは、必ず終わらせて……見せます……

きっとね……

きっと……


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