IS〈インフィニット・ストラトス〉 守鉄の剣   作:刀馬鹿

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ご感想にて、すげ~的確な指摘と批判を受けて

停止しようかな?

と思ったのですが、ここまで書いたし、なんだかんだで最後まで書きたいし、何人かお読みくださっている人にみていただければいいや!

という後ろ向きな者にもほどがあるスタンスで書いていきますが、それでもよければお読みください




特訓

「ねぇ!! 放課後の試合見た!?」

「見た見た! すごかったね……門国さん」

「最初は飛ぶ事すら出来ないくらいに下手だったのに……。やっぱり千冬様の特訓のおかげなのかな?」

「それもあるだろうけど、でもそれ以上にすごいのは一撃で織斑君を倒した事でしょ!?」

 

い、居づらい……

 

徐々に登校してくる女子生徒の声をBGMに、俺は普段とは違い寝たふりをしてHRを待っていた。

だが体に突き刺さる女子の好奇の目で若干落ち着かなかった。

昨日の一夏との試合。

古式空手と骨法の連携技による『徹し』で一夏を一撃で昏倒させて勝利してしまったおかげで、俺は今注目の的となってしまっていた。

昨日の試合はISが登場して以来の世紀の対決、男性同士の戦いとあって、学園中の生徒や教師が見守る中での試合だったのだ。

誰もが試合結果を知っている。

そのために今までストーカーとして注目されていたのが、「ISを一撃で無力化した男」という名目で再度注目を浴びる事になった。

 

まぁストーカーで目の敵にされるよりはましだが……

 

だがそれでもこれだけ注目されるとさすがに辛い。

そのために普段ならば空をぼけっと眺めているだけなのに、今日は寝たふりで話しかけづらい雰囲気を作っているのだ。

 

「護?」

 

だがそれも打ち砕かれる。

声と呼称からいって間違いなく一夏だろう。

 

「……なんだ? 一夏」

 

正直無視したい気持ちで一杯だったが、それでもシカトする勇気もなかったので俺は素直に返事をして起き上がった。

 

「珍しいな。護が寝ているなんて」

「……まぁな。それでどうしたんだ?」

「いや、どうしたって言うか……お願いがあるんだけど……」

「お願い?」

 

一夏にしては珍しく、俺に対してお願いというほど何かを頼んでくるのは珍しい。

俺は思わず聞き返してしまい、それに対して一夏は頷きつつこういった。

 

「あぁ。もしよかったら放課後の特訓、護も来てくれないか?」

「放課後の特訓?」

「ほら、昨日の夜に生徒会長が……」

「あぁ……」

 

俺はさも、『思い出したくない』と如実にわかるように顔をしかめた。

これは演技ではなく本音だ。

 

 

 

~昨夜~

 

コンコン

 

「? は~い」

 

俺はノックの音に気づいて声を上げてドアへと向かった。

ここで生活して結構立つが、俺がいる時間、すなわち早めの夕食……PM6時に食事をする……が終わっての勉強時間に来る人間は大体わかっていた。

俺が飯を食い終わり休憩してからの勉強時間は大体7時頃だ。

ちょうど飯の時間のために一夏ハーレムの連中が一夏をよく食事に誘いに来るのだ。

だから俺は今回のもそうだろうと思いドアを開ける。

ちなみに当の本人、一夏は夕方頃に目を覚まして、今食事に行っていた。

男VS男の試合で、昏倒した……っていうか俺がさせた……のだが特に異常はなかった。

そもそもノックしかしてこない事に疑問を抱かなかった事を……さらに言えばのぞき窓で相手を見るべきだったと……俺はその後激しく後悔した。

 

ガチャ

 

「こんばんは♪ お兄ちゃん♪」

「……更識」

「幼名で呼んで、って前に言ったでしょ? 入れてもらっていい?」

「……すでにドアの間に足を入れている人間の言う事ではないな」

 

ドアを閉めようとすると更識の足が引っかかり閉じられない状況……つまり最初から部屋に入る気満々なのだ。

何を言っても無駄だと悟った俺は、溜め息を吐きながら仕方なくドアを全開にして更識を部屋へと迎え入れた。

そして入って真っ先に我が物顔で俺のベッドへと腰掛ける……。

 

「いやぁ夜に男の人と部屋で二人きりって言うのは結構どきどきするね?」

「なら疑問系にするな」

 

大体にしてニマニマしながらそう言ってきても何の意味もないだろうに。

 

「興奮した?」

「誰がするか」

 

相手するのもあほらしくなった俺は、更識を放っておいて先ほどから行っている勉強を再開するためにイスへと座り、机に向かった。

だが、こいつが来た時点で勉強など出来るはずもないのだ。

 

「恋文でも書いてるの?」

「言い回しが古いな……。ISの勉強だ」

 

座ったばかりのベッドから立ち上がって、俺のそばへとやってきて後ろからのぞき込んできながらそう言う。

俺はそれを気にせず黙々とシャーペンを走らせる。

 

「それって整備課の教科書だよね?」

「あぁそうだ」

「編入するの?」

 

俺が今いるのはISを操縦する、つまりは操者の学科であり、他にも整備課、開発課がある。

整備課は文字通りISの整備を行う課。

開発課はISの武器等を開発する課である。

そして俺が今見ているのは操縦課ではなく整備課の教科書だ。

 

「いや……それはおそらく無理だろうが、興味がわいてな」

「ふぅん」

 

転属願いは確実に無理だろう。

俺は世界でも希少ともいえる男のIS操者なのだ。

データが欲しいためにこの学園へと編入したのに、そこから転属するなど無理に決まっている。

 

まぁ別にいいのだが……

 

「編入したいなら、生徒会長として私が人肌脱ごうか?」

 

ふにょん

 

背中を向けているためにわからないが、いかにも悪戯娘の笑みを浮かべながら俺にそれ(・・)を押しつけているのが、見ていなくてもわかった。

女子にしかない最強とも言える兵器だろう。

仮に他の女性、もしも山田先生にでも同じ事をされたら……あの人の性格上あり得ないだろうが……卒倒しているだろうが、相手が妹の更識では何の効果もなかった。

 

「男を勘違いさせるような行動は控えた方がいいぞ」

「……勘違いしないの?」

「するか。というかお前相手じゃ何とも思わん」

 

裏の名家の跡取りで幼少時より聡明とも言えた更識だったが、それでも玉に年相応にこけて怪我したのを治療したり、修行で泣いたりしていたのをあやした事のある俺だ。

冗談抜きでこいつ相手では、特に何とも思わない。

 

「……色仕掛けもだめか」

「? なんか言ったか?」

「何でもないよ」

「ただいま~」

 

そうしていると、部屋のドアが開き一夏が帰ってきた。

衣服に乱れや汚れがないところを見るとどうやら今日は平和に食事を終えたようだ。

一夏ハーレム軍団が暴走するとISを部分展開してまで一夏をぶっ飛ばそうとするから、もしもそういう事態になったら一夏の格好が大変な事になっているのだが……。

 

「お帰りなさい~」

 

一夏が帰ってきた瞬間に、俺から離れて更識は玄関の方へと向かう。

俺に対して悪戯できないと踏んで、直ぐに対象を変えたのだろう。

 

「なっ!? 何でここに!?」

 

そんな風に驚いては、相手の思うつぼだぞ……一夏……

 

まぁまだ付き合いの短い一夏に、この悪戯娘の正しい対応を要求するのは無理か……。

 

「何でって? 君に用事があったからだよ。織斑君」

「俺に……ですか?」

「そう。門国さんに負けたんだから私と一緒に特訓する約束でしょ?」

「……そうでしたね」

 

忘れていたのか、忘れていたかったのか……おそらく後者……一夏がうなった。

一夏は玄関で盛大に溜め息を吐いていた。

放課後いつものハーレム軍団にコーチをしてもらっている一夏としては、死活問題なのだろう。

何せ新しいコーチが自分たちの与り知らぬところで増えたのだ。

今から明日の事を考えて憂鬱になったのだろう。

 

哀れな……

 

「本当なら今日からやるつもりだったのに、織斑君がいつまで経っても起きないから」

「すいません」

 

もはやどうにも出来ない事をこの短期間でもう理解したのか、一夏は特に逆らうことなく従順としていた。

まぁ負けたら言う事を聞くと言っていたのだからそれに不満を言ってしまっては男が廃ると思ったのだろう。

 

「それじゃ、明日から早速特訓ね。君と仲良しの女の子にはちゃんと説明しておくように」

 

それがもっとも大変なんだけどな……

 

そう言い残すと、更識は面白おかしそうにからからと笑いながら、部屋を出ていった。

残された一夏は、最後の台詞……ハーレム軍団にどうやって説明した物かと、一晩中頭を悩ませる事になったのだった。

 

 

 

~現在~

 

昨夜の回想を終えて、俺はげんなりした。

特に昨日は疲れる事はなかったが、それでもあいつが絡むとろくな事がないのはもう統計的にわかっている事なのだ。

そして案の定、面倒な事になっている。

 

「頼む! 護も俺の特訓付き合ってくれ!!!」

 

パンッ!

 

もはや恥も外聞もなく、両手を合わせて拝んでまで……一夏が俺に懇願して来た。

本来ならばただのIS特訓のはずなのだが、そこに更識楯無というパーツが組み込まれただけで、場をしっちゃかめっちゃかかき回すのが一夏でも容易に想像できるのだろう。

だからそれのストッパーとして俺を指名してきた……そこまで考えているか不明だが……ということだろう。

 

頼ってくれるのはありがたいが……あれ(・・)を止めるのは俺でも難しいぞ……

 

自由奔放とも言える悪戯娘。

裏の組織の名家の当主として身につけた能力をフルに使い……それだけでなく女という武器も使ってこちらを攻撃(悪戯)してくるのだから質が悪い。

本当ならば嫌だが……俺も守鉄がラファール・リヴァイブと装甲を変えて守鉄R2となったために、再度機体と体をなじませなければならない。

しかも一夏ハーレム軍団には、ラファール・リヴァイブを開発した会社の娘である、シャルロット・デュノアがいる。

彼女の専用機はラファール・リヴァイブを彼女用にカスタム化された物だが、それでも元はラファール・リヴァイブと同じ機体だ。

何かしら得る物があるかもしれない。

 

まぁそれに友人を放って置くわけにも行かないしな……

 

仮にそう言ったメリットが無いにしても、友人の頼みを断るわけにはいかないだろう。

それに確かにあいつのストッパー役は必要だ。

 

「わかった。俺も付き合うよ」

「本当か!? すまん恩に着る!!!!」

 

朝から騒がしくも暑苦しい……男同士の友情を確かめ合う俺と一夏。

 

「騒ぐなバカ者供。もうHRが始まる時間だぞ」

 

スパパーン

 

ちなみにそれを行っているのがHR直前だったので……俺たち二人は仲良く教官による出席簿アタックの餌食となった。

 

 

 

「どういう事だ一夏!?」

「どういう事ですの!?」

「一夏! あんた、いったいどういう事よ!? 説明しなさいよ!!!」

「一夏!? いったいどういう事なの!?」

「これはいったいどういう事だ!?」

 

放課後の第一アリーナ。

予想通りと言うべきか……五人の一夏ハーレム軍団が突然の新任教官、生徒会長の更識楯無の姿を、遅れてやってきた一夏の後ろに発見し、さらにはその楯無が……。

 

「今日から私も織斑君の指導を行う事になったから……よろしくね♪」

 

と、ウィンクしながら言うのだから彼女たちにとっては青天の霹靂だろう。

ちなみにその隣には俺もいたのだが、一夏と同性と言う事で危険はないと見なされたのか、はたまたどうでもいいのか、俺の存在は特に何も言われなかった。

 

「いや、これはその……昨日の勝負の結果であってだな!」

「「「「「昨日の?」」」」」

 

一夏の言葉に、揃って全員が綺麗にハモって声を上げて……次に俺を見た。

さすがに彼女たちも昨日の試合は見ていたのか、その勝負の行方も知っているのだろう。

だがその勝負の結果が、どうして新しい女の新任教官となるのかまではわからないらしい。

 

というか一夏……気持ちはわかるけど説明しておけよ

 

こちらを若干睨んでくるハーレム軍団の目線に内心びくつきながら、俺が説明しようと口を開こうとしたが……。

 

「昨日の勝負は私がセッティングしてね」

「生徒会長が……ですか?」

「部活動強制入部のお詫びにおねーさんが、弱すぎる君のISの指導をして上げるって言ったのに断られちゃったから、門国さんに叩き潰されたら少しは自覚するかなって思って」

 

そう言いながらこいつのお気に入りの扇子を取り出してパン! と小気味いい音を響かせながら開いた。

それで多少の事情はわかったようだが、それでも納得は出来ていないようだった。

だが、一夏本人がそう言っている以上、信じるしかないのだろう。

納得はしていなかったが……その後に一夏が何とか説得をした。

ちなみに本日の達筆は『一撃必殺』だった。

 

「そうだ! 貴様、昨日私の嫁に行ったあの攻撃は何だ!? 軍隊格闘(マーシャルアーツ)では無いみたいだが……」

 

更識の扇子を見て思い出したらしく、銀髪ちびっ子が俺へと詰め寄ってくる。

だが、それを更識は開いた扇子を俺と銀髪ちびっ子の間に入れて、遮った。

 

「はいはい。疑問に思うのはわかるけど時間がもったいないからそれに関しては後にしてね。まずはそうだね……経験者のまねごとから始めよう。セシリアちゃんとシャルロットちゃん『シューター・フロー』で円上制御飛翔(サークル・ロンド)をやって見せて」

「え? 私たちがですか? しかもそれ……射撃型の戦闘動作ですよ?」

「やれと言われたらやりますが……一夏さんのお役に立ちますの?」

 

確かに円上制御飛翔(サークル・ロンド)は射撃型の戦闘方法だ。

射撃武器をほとんど持たない一夏にとっては無用の長物といってもいいかもしれない。

だが、おそらくこのひねくれ者の更識がわざわざ見せようとするのだから、それだけが狙いではないはずだ。

 

「第二形態で遠距離武器が追加されたからか?」

 

俺の昨日の戦闘方法を聞き出すという事を邪魔されたからか、銀髪ちびっ子が憮然としながらそう更識に問うた。

 

「うんそれもある。けどそれ以上に一夏君には課題があるからね」

「俺に課題……ですか?」

「そ。まぁでも実際に見た方が速いでしょ。二人とも準備は出来た?」

『はい。出来ました』

『行きますわよ、シャルロットさん』

 

アリーナ中央で自身のISを展開した二人が、更識に返事をして動き出した。

動きは互いに右方向へ互いに砲口を向けあったまま、円軌道を描いていく。

徐々に加速を行い……そして射撃を開始した。

円運動を続けつつ、不規則な加速で射撃を回避、それと同時に身近らも射撃を行いながら、減速することなく円軌道を続けている。

 

「……これは」

 

二人の動きに一夏が簡単の言葉を漏らした。

どうやら二人のすごさがわかったようだ。

 

「そう。君の課題って言うのは射撃の方じゃなくて、高度なマニュアル機体制御だよ。経験値も重要だけど、そう言った高度なマニュアル制御が必要なんだよ」

 

それに対して、更識が一夏に、一夏に取って何が必要かを、二人の動きを追いながらレクチャーしていく。

 

……予想に反して結構スムーズにっていうか……真面目に教官しているな更識。俺必要なかったなんじゃないか?

 

「門国。先ほどの話だが……」

「ん?」

 

置いてけぼりを喰らってしまった……俺と銀髪ちびっ子と撫子ポニーの三人。

その内の銀髪ちびっ子が、俺に対して先ほどしようとしていた質問を再度投げかけてきた。

今度はもう邪魔されたくないという気迫というか……なんか先ほどよりも若干不機嫌になっている。

 

「あれはどういった技術なのだ? 格闘術の一種なのだろうが、それでも一撃でISを装備した人間を昏倒させるというのは……」

「あれはですね……」

「古式空手の白刃流しですよね? 一撃で昏倒させたのは……流派まではわかりませんが、掌打の一種ですか?」

 

ほぉ。さすが……

 

銀髪ちびっ子の疑問に、撫子ポニーがそう言ってくる。

再度邪魔された事に腹を立てるかと思ったが、それ以上に撫子ポニーが知っていた事が純粋に驚きだったらしく、銀髪ちびっ子が詰め寄った。

 

「白刃流し?」

「えぇ。まぁ。簡単に説明しますと……いや実演した方が速いか。篠ノ之さん。解説を交えて実践しようと思いますので、お手伝い願えますか?」

「はい」

 

真剣でも稽古を行っているほどの腕前を持つ篠ノ之さんに手伝いをお願いして、俺は銀髪ちびっ子のラウラさんに、昨日の試合で一夏に行った一連の攻撃を再現する。

 

「つまりは一夏を気絶させて勝利したという事なのか?」

「はい。コアネットワークがある以上、おそらく同じ攻撃は通用しないでしょうが……」

「そうかもしれませんが……凄まじい腕をお持ちだったんですね門国さん。足運びや立ち振る舞いから相当出来るとお見受けしてましたが、それでもIS相手に素手のみで勝利するなんて……」

 

同じ武芸者の視点からか……撫子ポニーから惜しみない賞賛が送られてくる。

正直むずがゆくてしょうがない。

 

そんなこんなで……特に何事もなく真面目に訓練が終わった。

更衣室で一夏と着替えて更衣室から出ると、そこにはハーレム軍団と更識がいて……。

そのまま食事へと行く運びとなる。

一夏はいつものようにハーレム軍団にもみくちゃにされながら……だが……。

 

「今日はお疲れ様、門国さん」

 

そうしてそんな六人の微笑ましい光景を後ろで眺めていると、横に並んでいた更識がそう声を掛けてきた。

俺は一夏の無事を祈りながら更識へと目を向ける。

 

「まぁ俺はたいしたことはしていない。篠ノ之さんとちょっとした模擬戦を行っていただけだからな」

 

7人の中でもっとも経験値が低い……機体の慣熟訓練的な意味で……俺たちは軽く模擬戦を行って今日の訓練を終わらせたのだ。

その様子をたまに更識が眺めていたのはわかっていた。

 

「それにしてもどういう事だ? 一夏の訓練をするだなんて? 何か企んでいるのか?」

「う~ん。本当はいけないんだけど……門国さんならいいか。裏の事情だけど……以前に学校を襲ってきた謎の組織覚えてる?」

「あぁ」

 

声を潜めながら、かつ自然体で俺たちはひっそりと会話をする。

以前に学校を襲った組織というのはおそらく俺がモニュメントで発砲したときの事件だろう。

 

「あの時の組織が近々動くかもしれないって情報が入ってね。おそらく狙いは織斑君。護衛はもちろんするけど、彼本人にも強くなってもらおうと思ってね」

「……なるほど」

 

それだけで大体の事情はわかった。

ならばこれ以上聞く事はないだろう。

そう思って俺は露骨に話題を変える事にした。

 

「それにしても指導者として随分と様になっていたな」

「そう? 門国さんにそう言ってもらえると嬉しいな♪」

「俺はそんなに指導はうまくないぞ?」

「どの口が言うのかな? 私に何度も格闘術の指導してくれたじゃない」

「……あれは遙か昔の事だろう?」

 

食堂に着いて、二人とも同じメニューの日替わり定食を注文し……本日は肉じゃが定食……、そのまま会話の流れで隣の席に座り、昔話に花が咲いた。

そんな俺たちを、一夏とハーレム軍団が不思議そうに眺めていた。

 

「? どうした一夏? 食べないのか?」

「いや……どうしたっていうか……昨日から思っていたんだけど……二人って知り合いなのか?」

 

あぁ、そう言えば説明してなかったっけ?

 

昨日も今日も、特に説明していない事を思い出して俺はその一夏の疑問に答えようとした。

しかしその前に更識の目が光った。

もちろん本当に光ったわけではない。

ただ悪戯魂に火がついたというか光ったというか……それがわかった。

 

まずい!?

 

しかし俺が反応する前にすでに更識は反応を……箸を置いて何故か隣にいる俺の腕に体全体で抱きついてきて……。

 

 

 

「知り合いじゃなくて婚約者だよ♪★」

 

 

 

と、とんでもない事を言いやがった!?

 

 

「え?」

「「「「「え?」」」」」

 

「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」

 

うおっ!?

 

何故か一夏とそのハーレム軍団だけでなく、周りの女子生徒達も驚愕の声を上げて……。

 

 

訓練で特に何もしなかった鬱憤を晴らして嬉しいのか……俺を見上げてくるその更識は頬を赤らめて満面の笑みを浮かべていた……。

 

 




がんばる・・・・・・・


おらぁがんばるだよ・・・・・・・

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