IS〈インフィニット・ストラトス〉 守鉄の剣   作:刀馬鹿

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ストーカー疑惑

「んしょ……重い」

 

放課後。

私は溜まった書類の整備を行ってそれが終わり、古い書類を職員室から少し遠くの方にある、書類保管庫に運んでいた。

体の前で抱えた書類は膨大な量で、正直私の力ではつらい分量だったのだけれど、他の先生も仕事をしているのに手伝ってもらうのは心苦しかったので一人で運ぶ事にしたのだけれど。

元々あまり力のない私にはやっぱり荷が重かったみたいで、ふらふらと安定しない持ち方をしてしまっていた。

それでも頑張って私は書類保管庫へと向かっていく。

 

その時、私は眼前の荷物に気を取られて気づかなかった。

私のすぐ後ろに、ぴったりとつかず離れずについてきている人がいる事に……。

 

 

 

私、新聞部黛薫子は、生徒のみんなに新鮮なニュースをお届けするのを生き甲斐としている。

将来はISを用いての報道活動をしてみたいと夢見ているため、日夜情報収集を欠かさない。

そしてそんな中、私は余りにも驚くべき情報(うわさ)を入手し、その人たちと秘密裏に接触し、独自に情報を入手する事に成功した。

 

 

証言1 

なんか遠くて見えにくかったんですけど……少し遠くから本当につかず離れずでヤマピーの後をつけてました。

 

証言2 

そうそう。しかもヤマヤマ結構な荷物持っててつらそうだったのに持ってあげようともしてなかったよ。あれ絶対ストーカー行為だって!

 

証言3 

山田先生が資料室に入って、そのまま通り過ぎるのかと思ったけど、あの人少し先の廊下で待機してて、ヤマピーがまた外に出たらまた後をつけてて……

 

証言4 

うん、私も見た。しかも歩き方がなんていうの……足音なんてほとんどしなかったし、ヤマチャン全然気づいてなかった。あれはもう間違いなくプロだよ。ストーカーの

 

 

驚くべき証言が、情報提供者から寄せられてくる。

これはもはやストーカーは確定なのか!?

しかしこんな噂はまだ序の口だった。

次の証言でもはや確定してしまったと言っても過言ではないくらいに決定的な情報を私は入手した。

 

 

証言5 

私、その日別棟の上の階に用があって、階段を下っていたの。そうしたら山田先生の悲鳴が聞こえて、それから大きな音がしたから慌てて階段を下ったんだけど……そこには……階段の途中で……後ろから……

 

 

 

ピピピピ

 

う、うぅん……

 

起きる時間を告げる目覚ましが、部屋に鳴り響いて俺は眠気をどうにか吹き飛ばして、もそもそと動いて目覚ましを止めた。

 

「ふわぁ~~~あ。もう朝かぁ……」

 

誰もいない部屋で、俺は背伸びをして眠気を覚ます。

いつものように護は先に行ったみたいで、すでにベッドはもぬけの殻だった。

 

すごいな……護は

 

確かに俺よりも年上だけど、俺よりもずっと体力があるし毎日の朝の修行もこなして、しかも俺たちが普通の勉強をしているときは千冬姉の特訓。

はっきりってどうしてそこまで体が持つのか不思議でしょうがない。

 

俺も見習わないとな

 

とりあえず俺は寝間着から制服に着替える。

いつも通りの時間に起きたので慌てるような時間でも無いんだけれど、それでものんびりしているほど時間はない。

 

コンコン

 

「一夏? 起きているか?」

「お、箒か? 入っていいぜ」

 

ガチャ

 

俺の声に反応して入ってきたのは俺のファースト幼なじみ、篠ノ之箒だった。

今時の子にしては珍しく髪の色を全く染めていない黒髪を後ろで一つに束ねて姿勢もピンとしていた。

 

どうでもいいけど……髪の毛束ねてるのが箒で、束さんは全く束ねてないよな……

 

箒のトレードマークとも言えるその黒髪を頭の高い位置で束ねたポニーテール。

それに対して、束さんは髪型には無頓着(髪型だけじゃなく服装とかそう言うのほとんど気にしないひとだけど)でのばし放題のストレート。

うむ、これは改名をした方がいいかもしれない。

それなら髪型だけで見分ける事が出来る。

 

束さんが束ねて、箒は束ねない。うん、これで万事かいけ……

 

ボッ!!!

 

うぉっ!?

 

考え事をしていたら、問答無用の容赦なしで箒が突然俺に手刀を突き出してきた。

俺はそれをどうにかして回避する。

 

「な、なんだよ箒」

「いま、失礼な事を考えていただろう?」

 

うげッ!? なんでわかる!?

 

千冬姉もそうだけど、どうして俺の考える事がわかるんだ?

みんなしてエスパーにでもなったのか?

 

いやここは逆説的に俺がサトラレに……

 

スパン!

 

「馬鹿な事考えてないでさっさと食事に行くぞ」

「……はい」

 

箒の張り手を喰らって、俺はすごすごと部屋を出て食堂へと向かう。

それにしてもどうして俺の考える事はばれるんだろうか?

 

「一夏、おはよ」

「遅いぞ一夏」

「お、シャルにラウラ。お早う。早い……ってラウラ」

 

食堂へと向かうとすでにシャルとラウラがテーブルに座って食事をしていた。

それはいい。

朝食を食べないのはよくない。

朝飯は重要な食事といえる。

朝飯を食べなければ頭が起きないし体も活動を始めない。

だからご飯を食べるのはとてもいい事なんだけど……。

 

「朝からステーキ?」

「ん? 何だ一夏? 何か問題でもあるか? 朝に一番食べる方が体の稼働効率がいいんだぞ? それにこれを教えてくれたのはお前だろう?」

「いや、それは知ってるし、俺が教えたのも事実だけどさ……。もたれないのか?」

「一夏もそう思う? 僕も結構心配なんだけど……」

「問題ない。食事できるという事自体がありがたい話なんだぞ?」

 

その通りだ。

ラウラいい事言うな。

 

「一夏! 早く食べないと遅刻するぞ!」

「お、おぉ? そうだな」

 

何でか知らないが、怒り出した箒に賛同しつつ、俺は話の流れからラウラの隣に座り、朝飯のとろろ定食を口にする。

 

「号外! 号外!!!」

 

そうして朝飯を食して、トレーを下げた後に出口へと向かうと、なんかえらく興奮した口調で大声を上げて紙をばらまいている女子がいた。

 

「号外?」

「何だろうね?」

「騒々しいな」

「……何を配っているんだあれは?」

 

口々にそう自分の思った事を口にする。

少し距離があるためにばらまいている物の内容は見えないが、それを拾った女子生徒は驚愕の声を上げている。

 

何なんだろう?

 

「一夏さん!」

「ちょっと一夏!!!」

 

そうしていると、紙が舞っている辺りから、セシリアと鈴が俺に向かって走ってきた。

その手には拾ったと思われる紙が握られていた。

 

「ちょっと一夏!? これって本当!?」

「とんでもない事になってますわよ!?」

「な、何だよ二人とも? そんなにすごい事でも書いてあったのか?」

 

二人のあまりの慌てっぷりに俺は戸惑いを隠せない。

そして俺の言葉で二人はまだ俺が紙を読んでいない事を把握したのか、手に持った紙を広げて俺の眼前につきだした。

 

……近すぎて読めない

 

興奮の余り本当に目の前に差出されるから読めなかったので、俺は少し距離を離して紙面を見つめてみる。

すると、そこには大きな写真が二枚印刷……って!?

 

 

 

はぁ~……平和だ……

 

先日のクラス対抗戦が行われて数日過ぎた。

さすがにイベントがない日まで敵も行動を起こす事が出来ないのか、とても平和に俺は過ごしていた。

とりあえず朝練を終えていつも通りほとんど一番で朝食を済ますと、俺は教室に来てのんびりと空を眺めていた。

が、疲れが溜まっていたのか、うつらうつらと、船をこぎながらだが……。

 

そのため、いつも以上にクラスの女子からの視線がきつい事に俺は全く気付かなかった……。

 

「護!?」

 

バンッ!

 

っと、教室のドアを荒々しく開けて、一夏が俺の名前を叫びながら入ってきた。

しかし、先ほど同様、俺は半ば眠っているので反応を返す事もなく、まどろみの中にいた。

 

「おい護!? 寝てる場合じゃない!! 起きろ!!」

 

ガクガクガクガク

 

「おぉぉぉぉぉ?」

 

突然頭が前後に揺さぶられて、若干目眩を起こしてしまう俺。

しかしそんな俺の事など一切お構いなしで一夏が俺に言葉を投げかけてくる。

 

「これはどういうことだ!?」

「これ……って…………どれ?」

「これだよ!!!!」

 

そう言って一夏が俺の眼前に突き出したのは一枚の紙だった。

そしてそこには……。

 

「『年上転校生門国護。山田先生ストーカー疑惑!?』 …………何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 

あまりにも驚愕的なその見出しに俺は思わず悲鳴にも似た怒号を上げてしまい、一夏から新聞をひったくって見つめる。

 

紙面には大きく二つの写真が掲載されており、一つは山田先生と思しき女性が両手で何かを運んでいるその後ろを、俺らしき男が後ろからついて行っている写真。

そしてもう一枚は、山田先生と思しき女性を、俺らしき男が、階段の途中で後ろから抱きしめているかのような状況を、上から撮影された写真だった。

 

 


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