夜天のウルトラマンゼロ   作:滝川剛

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息抜き話です。サウンドステージのお話になります。





第41.5話 八神家の午後(前編)

 

 

 

「うわあ~っ、でっけえ車ぁ~」

 

「ほんまや、キャデラックのリムジンやね……」

 

 交差点で信号待ちをしていた私とヴィータは、目の前を横切る黒塗りの高級車を見て、思わず声を上げていました。

 車椅子を押していたゼロ兄は、とっさにシュバシュバッと変な格好で身構えたようです。あなたは鳳凰院〇真さんですか? 私の説明にヴィータは首を傾げ、

 

「キャデロンの…………理不尽?」

 

「あはっ、まあ、そんな感じや」

 

 上手く発音出来ないヴィータやけど、大体発音は合ってると思った私は頷いておきます。

 

 3人共海鳴大学病院の帰り道です。長い検査から解放されてお日様が眩しいです。改めて思いっきり伸びをしました。

 

 私八神はやては、つい1年半程前には脚が悪いのを除けば、ごく普通の女の子やったんですが…… とある事が切っ掛けで、並行世界から来た正義のヒーロー『ウルトラマンゼロ』ことゼロ兄と、異世界の魔導書『闇の書』の騎士達の家主兼マスターをやっとります。

 どちらか片方なら有るかもしれませんが、 (普通は両方共無いですが……)両方共いうんは中々無いと思っとります。

 

 話は戻りますが、ここ数日は気温もあんまり下がらず、昼間は比較的温かいです。それでも寒がりなので着込み気味なゼロ兄は、遠退くリムジンを睨み付け、

 

「あれだけデカイと、追い回された時やばそうだな……」

 

 真剣に対応策を考えているようで可笑しいです。先生にあたる『ウルトラマンレオ』さんの冗談を、まだ真に受けているのです。

 

「だから……車は人を追い回す為のものや無いんよ?」

 

 空かさず突っ込んでおきました。そんな事は無いと何度か説明したのですが、まだ納得しきっていないようです。意外と頑固なのです。するとヴィータが、ニンマリ人の悪い笑みを浮かべ、

 

「何だゼロ、あんなのにビビってんのか? だらしねえなあ~」

 

「俺はビビってる訳じゃねえ……何時襲われてもいいように気を配ってるだけだ。交通事故と言うものも有るからな……なあ? はやて……」

 

「はいはい、分かっとるって、そないな事より信号青やで」

 

 私はのん気でズレたやり取りに、吹き出しそうになりながらも2人を促しました。ゼロ兄とヴィータは苦笑し合って頭を掻くと、車椅子のグリップをそれぞれ持ち、

 

「OK、はやてホーク1号発進!!」

 

 景気よく声を上げて、めっちゃ凄い勢いで私を押して横断歩道を爆走し出しました。

 

「レッツゴーッ!」

 

 私もついノリノリで、はしゃいで声を上げてしまいます。渡りきった後迷惑行為に気付き、2人共々反省しておきました。

 

 しばらく歩いた後、白い制服を着た小学生らしい子供達が歩いているのを見掛けました。 何や楽しそうな元気な声が聞こえます。 ヴィータが煩そうに、そちらに視線を向け、

 

「ああ……小学校の下校時間なんだな……道理でうっせえと思った」

 

「みんな元気で何よりや……」

 

 いかにも年上ぶった感想を述べてます。見た目はヴィータも一緒ですから、ちょっと可笑しいです。と言いつつ私も小学生達を見て目を細め、分別くさい台詞を口にしていました。

 羨ましくないと言うたら嘘になるのかもしれないですが、物心付いた時にはもう歩けなかった私には、とても遠い光景に見えます。

 無いものをねだっても仕方無いと、私は浮かんだ感情を忘れる事にしました。

 ふと後ろを見上げると、ゼロ兄も釣られてそちらを見ています。何故か驚いたように固まってしまっていました。どうしたんやろ? と声を掛けようとする と、ヴィータが子供達の制服を見て、

 

「あの白い制服ってアレだよね……? えと…… はやてに見せて貰った……」

 

「うん、すずかちゃんの学校の制服やね」

 

 気付いたようやったので教えておきました。ヴィータは腑に落ちた顔をします。聖祥大付属小学校の制服。白地に赤のリボンが可愛いです。

 あれからすずかちゃんとはすっかり打ち解け て、ちょくちょく図書館で会ったりもしています。今度家にも招待されとりますので、わが家にも是非来てもらわんといけません。ちょっと緊張してまいます。

 

 ヴィータが学校に興味が有るように見えたので、行きたいのか聞くとそれは無いそうです。 それでもヴィータが制服を着たらめっちゃ可愛いのにと言うと、

 

「うっ……可愛いのは苦手なんだよなあ……」

 

 ヴィータは困ったような顔をして、慌ててゼロ兄を振り返りました。話を逸らそうというのでしょう。可愛いのになと残念に思っとると、

 

「お~い、ゼロ?」

 

「…………」

 

 ヴィータが呼び掛けてもゼロ兄は返事をしません。目を見張って何かを凝視しているようです。

 

「ゼロ兄どないしたんや? ボーッとして……」

 

「あっ……? 悪い何だって?」

 

 声を掛けると、やっとゼロ兄は我に還りました。何を見ていたのか聞こうとすると、視界に買い物カートを持ってやって来る、シグナムの姿が映りました。

 

 病院に行く道すがら、セールをやっとるお店を見付けたので、帰りに買い物をしようと家に連絡を入れておいたのです。

 家計を預かる身としては見逃せません。いくら余裕があっても、締める所は締めんといけませんので。

 

「シグナム、わざわざ買い物カート持って来てくれて、おおきにな」

 

「いえ……」

 

 シグナムは礼儀正しく応えます。何や時代劇に出て来るお侍さんのようです。此方は小さな妹のようなヴィータはキラキラした目で、

 

「帰りに買い物してくんだよね? はやてはや てぇ~、今日アイス買っていい?」

 

「ええけど……Lサイズはあかんで? ヴィータこないだみたいに食べ過ぎて、お腹痛くしたらアカンしな」

 

 可愛くてつい全部許しそうになってまいますが、締める所は締めとかんとヴィータがお腹壊してまいます。 好き過ぎるのも考えもんです。

 

「うう……人の過去の汚点を……」

 

 お腹を壊した時の事を思い出して、ちょうブルー入っとるヴィータに、ゼロ兄がしたり顔で、

 

「ヴィータは欲張るからああなるんだよ……気を付けとけ……」

 

 ビュンビュン兄貴風を吹かしますが、ヴィータはまたしてもニンマリと悪い笑みを浮かべました。

 

「ゼロこそ、此処に来たばっかの頃楽勝とか言って、店の大食いにチャレンジしてひっくり返った挙げ句、一晩中苦しくて唸ってたらしいじゃん?」

 

「なっ、何故それを!? はやてぇ!?」

 

 ゼロ兄が目を丸くして私を見ます。堪忍やゼロ兄。私は両手を合わせて謝っておきました。

 バケツサイズの豚骨ラーメン6杯に挑戦し完食したものの、苦しくてゴロゴロ転がる様子があまりに面白過ぎてバラしてしもた。堪忍な。

 

 何や収拾が着かなくなって来たのを察し、シグナムが口を開きました。ゼロ兄がゴロゴロ転がるのを想像したらしく、口許が少々怪しいですが、

 

「コホン……そう言えば、先程何かのお話し中だったのではありませんか……?」

 

「ああ……学校と、ゼロ兄がボーッとしてた言う話やったね」

 

「いわゆる世間話ってやつだな……」

 

 私とヴィータの少し気取った返答に、シグナムは意外そうな顔をしました。少し思案顔をした後に、

 

「石田先生が仰ってましたね……主の脚がもう少し良くなったら、きっと学校にも行けると……」

 

 気持ちは嬉しいんやけど……私はつい苦笑いしてまいました。

 治療に頑張ってくれとる先生やゼロ兄、みんなには悪いんやけど、正直諦めていると言うのが本心です。 仕方無いやないですか……治らんもんは治らんのです……

 

「あは……石田先生らしい励ましやなあ……私は別に学校には行かんでもええけど……」

 

「そうなの……?」

 

 冗談めかして言うとヴィータが、不思議そうに私を覗き込んで来ます。するとゼロ兄が私の頭をポンと軽く叩き、

 

「そんな訳に行くかよ……良くなったら、ちゃんと学校へ行け……」

 

 少し憮然としてたしなめて来ました。見透かされた気がして、ついムキになった私は、

 

「でも、私が家に居らんかったら、みんなのお世話が出来ひんよ?」

 

 シグナムとヴィータは、神妙な顔で頭を下げて来ます。

 

「済みませんお世話になってばかりで……」

 

「感謝しております……」

 

 お世辞にも家事が得意とは言えない2人は、必要以上に感謝して来ました。戦いのプロですが、そっちは苦手なようです。

 実際ザフィーラも似たようなもんやし、シャマルは料理が……とてもや無いですが、マスターとしては放っておけません。

 

「あははっ、ヴォルケンリッターの主としては、当然の務めや」

 

 などと少し偉そうに、胸を張ってみたのですが、

 

「はやて……飯は俺がやるから、治った時はちゃんと学校に行けよ……大丈夫だ……」

 

 気負っている所も含めて心配しての言葉でした。普段鈍い所があるのに、こう言う所は鋭いです。

 そう言えば家事で思い出しましたが、ゼロ兄はシグナムとヴィータに家事をしろなどとは言いません。やれる人がやればいいという考えのようです。

 どうやら故郷の『光の国』には男尊女卑が無いようです。 話を聞くと、並の男性戦士より遥かに強い女戦士が居るそうですから。

 何でもバリバリ前線に出るお姫様とか、凶悪な必殺技デルタアローとか言う技を使うお転婆な人とか、頼もしい限りです。

 話は戻って、私は見透かされた事の照れ隠し半分で、おちゃらけて、

 

「あははっ、冗談やて、せやけど学校サボってたクチのゼロ兄が言うと、何や可笑しいなあ」

 

「確かに……名の通り説得力ゼロですね……」

 

「残念ってやつだな……」

 

 シグナムとヴィータが納得顔で同意しました。自分で振っておいて何ですが、大概な言われようです。

 ヴィータはゼロ兄と何時もこんな感じですが、シグナムも親しい人だと、意外に冗談を言ってからかう一面があります。ゼロ兄は言い返すと思いましたが、

 

「似合わなくて悪かったな……」

 

 照れ隠しなのが分かっとるのか、苦笑しただけで済ませました。ごめんなゼロ兄……

 

 その話はそこで終わりましたが、ヴィータがゼロ兄を見上げ、

 

「そう言えば……もう1つの話だけど、ゼロ何でさっきボーッとしてたんだ?」

 

 小学生達を見て固まっていた件です。とてもビックリしていたようでした。何にそんなに驚いたんでしょう。

 

「あ……ああ……大した事じゃ……」

 

 隠すのが下手なゼロ兄は、耳まで赤くしてとても照れ臭そうです。すごく嬉しいのを我慢しとる感じでした。何がそんなに嬉しいんでしょう?

 

「何やのゼロ兄? 今のは私らが悪かったから、教えてえな?」

 

「そ……それはだな……」

 

 ゼロ兄が言うか言うまいか口ごもっていると、また近くを別の小学生の一団が通りました。するとゼロ兄は、

 

「あっ!」

 

 小さく声を漏らしました。視線の先を私らも見てみると、小学生達が背負っとる鞄に、良く見慣れた姿を模したストラップが付いています。

 

「あっ、あれってゼロ兄の……?」

 

 私は通り過ぎる小学生達を見て納得しました。彼ら彼女らが鞄に付けとるんは、明らかに『ウルトラマンゼロ』を模した二等身人形のストラップでした。

 

 実は今海鳴市では、ウルトラマンゼロが謎の正義のヒーローとして人気が高まって来とるんです。ご当地ヒーローみたいなもんかもしれませんが、実際に現れて人を救ったとなれば当然でしょう。

 

 別に名乗った訳でも無いのに、謎の超人ウルトラマンと言う呼び方が何時の間にか広まっとりました。どうやら海鳴市の何処かの、商魂逞しいお店がストラップやらを売り始めたようです。

 

 私達は、自分のグッズがあって嬉しくて仕方無いんだなと察する事が出来ました。ゼロ兄の居た世界やと、地球で活躍したウルトラマンは玩具になったりしとるそうですが、 地球に一度も行っとらんゼロ兄は当然有りません。

 初グッズと言う訳です。誰も見とらんかったら、多分跳び跳ねて喜んでいたと思いますが、素直でないゼロ兄は私らが言っても絶対認めないでしょう。

 その辺りはシグナムもヴィータも承知しとります。私達は温かい眼差しで、小学生達に手を振りそうになっとるゼロ兄を黙って見守るのでした。

 

 

 

 

 そんなこんなで買い物を終え、皆でお喋りしながら賑やかに家に戻って来ました。

 

「お帰りなさいはやてちゃん、みんな」

 

 シャマルと、ワンコや無く……狼ザフィーラが、玄関で出迎えてくれます。

 

「シャマル、ザフィーラ、ただいまや」

 

 やっぱり家で誰かが待ってくれとる言うんは良いもんです。家に上がったみんなは早速色々と始めました。 ゼロ兄は買い物カートから、買った物を取り出 しとります。

 

「シャマル、買い物分はキッチンに持って行くぞ?」

 

「うん、ありがとうゼロ君、そっちは私が持つわ」

 

 2人でえっちらおっちら食材の袋を抱えて歩き出します。6人分、しかも大食漢も居りますから結構な量になります。腕の奮い甲斐がある言うもんです。

 

「主はやて……それでは失礼します……」

 

 シグナムは私を軽々と車椅子から抱き上げます。並の男の人より力持ちです。安心感も有りますが何より……

 

「やっぱりシグナムの抱っこは、何ともええ感じやなあ~」

 

 おっぱいが大きくてポヨンポヨンなので、上等のクッションに乗っとるような気分になれます。Gカップはかたい思てますよ。

 

「そうですか……?」

 

 シグナムはピンと来とらんようです。勿体無い。自分の素晴らしい武器を分かっとらんのです。そこでふと悪戯心を出した私は、

 

「ゼロ兄も一度シグナムに抱っこされとるんやけど、ええ感じやったろ?」

 

「あっ、主ぃっ!?」

 

 案の定ビクンッとして顔が真っ赤になりまし た。ヴォルケンリッターのリーダーは、普段はキリッとしたお姉さんですが、とても恥ずかしがり屋さんです。

 

「えっ、そうなのか? 全然覚えてないぞ……」

 

 ゼロ兄は首を傾げています。あの時は完全に気絶してましたから、全く覚えとらんようです。

 

「それは残念や……」

 

「あ、主はやて……お戯れを……」

 

 シグナムは焦りまくりです。ちょっとからかい過ぎてしもたようです。キョトンとしとるゼロ兄を窺い凄く焦っています。するとシャマルが、

 

「はやてちゃん……私の抱っこはイマイチなんですか……?」

 

 目をうるうるさせて、何処かの悲劇のヒロイン張りにヨヨヨ~とばかりに訴えて来ました。アカン、誤解させてしまったようです。 私は評論家よろしくチッチッと人指し指を振って見せ、

 

「甘いでぇシャマル……シャマルの抱っこは、 そう……素敵な感じやね……」

 

 おっぱいに貴賤無し。それぞれに良い所があるんですよ。

 

「わあいっ♪」

 

 素直に喜ぶシャマルです。扱い易いなあ…… しかし勿論抱っこはそれだけや無いんです。奥が深いのです。

 

「ちなみに補足として……ゼロ兄の抱っこは、 ムフフな感じやね、シャマルなら分かるやろ?」

 

『ガルベロス』を倒した後、ゼロ兄におぶられたシャマルなら分かってくれる筈。家に帰った辺りは、お姫様抱っこで下ろしてもらってましたし。

 

「成る程……ムフフな感じですね……」

 

 ニッコリと同意してくれました。笑うシャマルを見て、シグナムの目付きが険しく なっとります。羨ましいのかもしれません。

 ほんならシグナムも、抱っこしてもろたらと思いましたが、男前の性格やから絶対言えへんやろうなあ。これは私が何とかせんと♪ ヴィータは興味が湧いたらしく、

 

「それは、どっちが上なの?」

 

「さて……どっちやろね……?」

 

 私は澄まし顔でのたまっておきました。するとゼロ兄が何や呟いとります。後で聞いたら、日本語は難しいとつくづく思ったそうです。

 

 さて……帰ってからの軽いジャブが済んだ所で、平静を取り戻したシグナムが、

 

「行き先はリビングで、よろしいでしょうか……?」

 

「ふむ、よろしいよ」

 

 あくまで敬語のヴォルケンリッターの将に、私もふざけて付き合っときます。かしずかれる趣味は無いんやけど、シグナムはこう言う質なんで諦めました。

 ちょっとお父さんっぽい面があり、下手な男の人より頼りになる、守護騎士みんなのリーダーです。

 揃ってリビングに向かう途中ヴィータが、

 

「苺のアイスはアタシんだからな、手え出すなよ?」

 

「私は苺よりバニラ派だもん」

 

「名前でも書いておけ……まったく……」

 

 アイス大好きなので釘を刺し、シャマルとシグナムが返しとります。ここまでは良かったんですが、そこでゼロ兄が憮然として、

 

「ちゃんと書いたのに何度か食われたぞ……誰の仕業だ?」

 

「あんな変な文字で書かれてたって読めねえよ」

 

「ウルトラサインだ! お前かヴィータ~ッ」

 

「やべっ」

 

「あのミミズが這い回ったようなものは、文字だったのか……?」

 

「シグナム、お前もかよ!?」

 

 みんな凄い人らの筈なのに、買って来たアイスについて、しょうもない話をしとります。って、シグナムまで、ゼロ兄のアイス食べてしまっとるやないですか。私は思わず声を立てて笑ってしまいました。

 

 ザフィーラはやれやれとばかりに首を竦めとります。何時も渋いザフィーラは落ち着いとって、あんまり喋る方ではありません。

 最近人間の姿をサッパリ見とらんです。やっぱり本来の姿が1番落ち着くらしいんで、あのまんまです。まあええですか。可愛いし。

 

「ヴィータちゃん、車椅子のタイヤ拭きお願いね」

 

 おっとりぽわぽわのシャマルは、細かい気配りが出来る、優しいお姉さんみたいです。たまに色々かましてしまいますが……

 

「はいよっ!」

 

「ヴィータ、何時もありがとうな」

 

 即答して玄関に走って行こうとするヴィータに、私はお礼を言います。小さな騎士は任せなさいとばかりに腕捲して、

 

「直ぐピカピカにして持って来るかんね」

 

 笑顔を向けてくれます。ホンマにええ子です。実の妹みたいで可愛くて仕方ありません。

 

 キッチンではゼロ兄がお米などの重い物を棚に入れたりし、シャマルは買い物袋から材料を取り出しチェックを始めとりました。

 

「竹輪に大根、昆布につみれ……今夜はおでんですか?」

 

「当たり!」

 

 シャマルの読みに私は感心しました。ええ勘しとります。とても此方の世界に来て、1年も経っとらんとは思えません。せやけど、何で料理だけアカンのやろ? まあそれはさて置き、

 

「いいですね……」

 

「おでん……寒い時ははやての美味いおでん、最高だな!」

 

 和食大好きなシグナムは微笑しとります。寒いのが苦手なゼロ兄は小躍りせんばかりです。

 ホンマに寒いんが苦手なんやなあ…… 案外冬山で遭難したら、私より先に凍死してしまうかもしれません。 しかしそこまで言われたら、私も作り甲斐がある言うもんです。

 

「じっくりコトコト煮込んで美味しく作るから、みんな楽しみにしといてな?」

 

「材料斬るのは任しとけ」

 

「私も微力ながら、お手伝いします」

 

 ゼロ兄とシャマルが名乗りを上げました。ゼロ兄切るの字が間違っとりますけど。

 さてと……と腕捲りする私でしたが、みんなでおでんを食べるには、まだ紆余曲折あるのですが、それは次回の後編で……

 

 

 えっ? ゼロ兄への私の感想だけ言うとらんて? 恥ずかしいんで言えません。

 

 

 

つづく

 

 




ゼロ、大きなお風呂に感動し、地獄の苦しみを味わう事に?
次回『八神家の午後(後編)』

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