五色の光球『スペースQ』が周囲の空間を焼き付くしながら猛然と『アースラ』に迫る。
『しまったっ!?』
焦るゼロだが、『スペースQ』は僅かにアースラを掠め、高次元空間の渦の中に消えた。遥か彼方で凄まじい閃光を放つ。
ゼロを掠めた事で僅かに軌道が逸れたようだ。しかし『スペースQ』の余波で、アースラの一部が火を吹き黒煙が上がった。
「被害状況は!?」
衝撃波で傾いてしまい、エマージェンシーを告げる表示で赤く染まるブリッジで、エイミィは動揺を抑え指示を出す。
「右舷航行エンジン破損! 航行不能です!」
「強力なエネルギー波の影響で、転移ポート使用不能! センサー類のほとんども使用不能です!!」
オペレーター達の悲鳴に近い報告が飛び交う。これでは身動き所か脱出もままならない。
(不味い……このままじゃ……)
エイミィは辛うじて無事だった、サブモニターに映る2体の巨人の姿を、固唾を飲んで見上げた。
《あらぁ~? 非道いわねえ~、後ろに人間が居るのに避けるなんて~!》
女ヤプールの毒の籠った言葉が放たれる。愉しくて仕方無いのだ。
『貴様……誘い込んだな!? 汚ねえ真似しやがって!!』
アースラを人質に取られた形だ。ヤプールの意図を察したゼロは拳を震わせ憤る。女ヤプールはそんなウルトラマンの少年を見上げ、馬鹿にしたように首を竦めて見せた。
《あらぁ、人聞きの悪い……勝つ為の算段ってヤツよ? お前は確かに戦闘能力は異常に高いようだけど、搦め手には弱いようね? まだまだ青いわ!》
全く悪びれず自慢気にゼロの甘さを指摘した。
ヤプールは集合意識を持っている。個の概念は無い。つまり女ヤプールの頭の中には、過去のヤプール人達の戦闘データが全て入っているのだ。策略と悪知恵に掛けては、ゼロなど足元にも及ばない。
《次に避けたら、あの船は跡形も無く消し飛ぶわよ、正義の味方さぁん!?》
女ヤプールのどす黒い悪意に満ちた言葉が、毒の矢となって突き刺さる。ゼロを倒すのに完璧を期して、アースラを人質に取ったのだ。
《止めを刺せぇいっ! ウルトラキラァァッ!!》
女ヤプールは、狂女が狂い叫ぶように絶叫し命令を下す。ウルトラキラーは心得たと右腕を水平に伸ばし、握り締めた左拳を後ろに引い た。
その機体に先程の『スペースQ』を上回る程の、膨大なエネルギーが集中して行く。ウルトラ兄弟最大の合体光線『コスモミラクル光線』の態勢だ。
ヤプールは完全にウルトラ兄弟の戦闘力を解析し、そのノウハウを全てウルトラキラーに注ぎ込んだのだ。
後ろには航行不能のアースラ、逃げる訳には行かない。ゼロは覚悟を決めて、アースラの前に浮かび盾となった。
「ゼロ……あの化け物と正面から撃ち合うつもりだ……」
ヴィータはその様子を見て息を呑む。シグナムもゼロがそうするつもりなのを悟った。今の所火力が遥かに上回る相手とだ。
(ゼロ……)
剣の騎士は胸元を、無意識に右手で押し付けていた。息苦しさで胸が潰れそうな気がする。 ザフィーラは無言でゼロを見上げた。
3人は祈るような気持ちで、ウルトラキラーと対峙するウルトラマンゼロを見詰めた。
(やるしかねえ!)
ゼロは頭部の『ゼロスラッガー』2本を引き抜き、胸部プロテクター部に放熱板のようにセットした。体内のエネルギーをスラッガーに集中させる。
ゼロとウルトラキラー、両者の身体に莫大な量のエネルギーが湧き上がった。僅かな時間で、エネルギー圧が極限まで高まり臨界点に達する。そのタイミングを見計らった女ヤプールが叫んだ。
《撃てええいっ! ウルトラキラァァッ!!》
ウルトラキラーは右腕を水平に伸ばし左腕を胸部に当てる。次の瞬間上半身から、眩いばかりの金色の光が空間を撃ち抜かんばかりの勢いで放たれた。
僅かに遅れて、ゼロの胸部に取り付けられたスラッガーが目も眩む激しいスパークを発し、凄まじい勢いで青白い光が発射された。
『ぶちかませぇぇぇぇっ!!』
ゼロ単体での最強の必殺光線『ゼロツインシュート』だ。発射の反動で後ろに持って行かれそうな身体に、重力制御で制動を掛ける。
青白い光と金色の光が真っ向から激突した。互いの光線が激しくスパークし、高次元空間を真昼のように照らし出す。
空間がねじ曲がる程のエネルギーのぶつかり合いだ。ゼロもウルトラキラーも一歩も引かない。その威力は今の所、五分と五分のようだ。光線の放射が続く。しびれを切らした女ヤプールが指令を出す。
《ウルトラキラー、もっとパワーを上げろぉっ! 最大出力だぁっ!!》
指令を受けたウルトラキラーの両眼が強く発光した。金色の光が更に勢いを増す。『コスモミラクル光線』が『ゼロツインシュート』を飲み込まんばかりに押し返す。 後僅かでゼロまで到達してしまう。これまでなのか?
《終わりだ! ウルトラマンゼロオオオォォッ!!》
勝利を確信した女ヤプールの、勝ち誇った叫びが頭に木霊する。
『クソッたれええっ! 魂の籠って無え光線に負けて堪るかあああっ!!』
皆の顔が浮かぶ。はやてと守護騎士達のお陰で、此処まで力を温存出来たのだ。でなければ既にエネルギーは尽きているだろう。
繋いでくれた皆、フェイトの願い、そして多くの命の為、此処で絶対に負ける訳にはいかない。ゼロは獅子の如く吼えた。その両眼がカッと激しく輝き、拳を力の限り握り締める。
『ウオオオオオオオオオオオォォォッ!!』
ゼロの気迫と皆の祈りに応えるように、ツインシュートの光が唸りを上げ勢いを増す。それは奔流を超え氾濫する激流と化した。
溢れんばかりの青白き光が、間近まで迫っていた金色の光を一気に押し返す。
《バッ、馬鹿なあああっ!?》
女ヤプールは驚愕の声を上げた。『ゼロツインシュート』が『コスモミラクル光線』を真っ正面から撃ち破り、ウルトラキラーに炸裂する。
「ゴガアアアアアアァァァァッ!?」
断末魔のような合成音。魂の必殺光線が、ウルトラキラーの装甲を溶解粉砕し、全ての内部機関をぶち抜いた。
スクラップと化したウルトラキラーは、大爆発を起こす。最強の超人ロボットは、爆煙と破片を盛大に飛び散らして粉微塵に砕け散った。
「……ば……馬鹿な……? ウルトラキラーがやられ るなんて……」
女ヤプールは唖然と爆煙を見上げ立ち尽くす。追い討ちを掛けるように、先程まで高次元空間を揺るがせていた『次元震』が収まって行く。
(くっ……何が……?)
それに気付き、辺りを見渡す女ヤプールの念話回線に通信が入った。穏やかな中にも厳しさを感じさせる女性の声。リンディからだ。
《どうやら……アナタの切り札は敗れたようですね……?》
《管理局か……?》
女ヤプールは忌々しそうに視線を足元に向ける。 庭園内では、緑色に光る魔方陣が展開されていた。その中心でリンディは、妖精のような4枚の半透明な羽根を広げ魔法を発動し続けている。
《次元震は私が抑えています……駆動炉もこうなれば封印は簡単でしょう……終わりですねヤプール……?》
何か言おうとした女ヤプールの目前に、巨大な影が地響きを降り立った。ウルトラマンゼロだ。流石に胸の『カラータイマー』が赤く点滅している。残り時間は少ない。
『これまでだな……ヤプールッ!』
仁王立ちでゼロは女ヤプールを見下ろした。 最早女悪魔を守る者は居ない。じりじりと後退るしか無いようだ。しかし、
「うふふふふ……」
不気味な能面の奥から、低い忍び笑いが漏れた。女ヤプールは不意に顔を上げ、小山のようにそびえ立つゼロを見上げた。
「まだよ! まだ勝負は着いてないわっ!!」
尊大な態度を崩さず言い放つ。女ヤプールの声に連動するように、突如として庭園が大きく揺らいだ。
数分前。フェイト、なのは、クロノにユーノ、アルフの5人は立ち塞がる傀儡兵を撃破し、無事駆動炉に辿り着いていたが。しかし彼女達の目に映ったものは……
「何……? これは……?」
フェイトは唖然として辺りを見回した。動力室内には異様な光景が広がっていたのだ。
フェイトも以前に目にした事のある『ロストロギア』を使用した、巨大なドーム型の駆動炉が赤い光を放ち、得体の知れない蠢く物体に半ば飲み込まれている。
そしてその物体は、動力室一杯にビクビクと脈動しながら広がっている。まるで生き物のようであった。
「……フェイトちゃん……これが駆動炉なの……?」
立ち尽くすフェイトの横で、なのはは蠢く物体を指差し尋ねて来た。フェイトが解らないと首を振ろうとした時、物体が突如として激しく動き出した。
「危ない! 2人共退がるんだ!!」
クロノが叫ぶ。物体が唸りを上げて一斉に蠢き出したのだ。物体は凄まじく巨大な何からしい。庭園が大きく揺れ、天井が崩落し岩盤が落下して来る。
「くっ……!」
フェイトは飛行魔法を発動させ、降りしきる岩の中飛び出した。
「フェイトちゃん!」
「フェイトォッ!」
なのはとアルフも後を追い飛び出し、クロノとユーノも後を追った。
『なっ、何だ!?』
ゼロは激しく揺れ動く足元を見下ろした。時の庭園が揺れている。『次元震』では無い。もっと直接的な揺れだ。庭園自体が地震のように揺れているのだ。
女ヤプールの足元を中心に岩盤に亀裂が入る。何か巨大なものが姿を現そうとしているのだ。屋上の岩盤が地割れのように一気に砕ける。
庭園を突き破り耳をつんざく破壊音を上げ、巨大な黒い影が姿を現す。それを見たゼロはハッとした。
『フェイト!?』
最初に現れたのは、裸身を異形の物体に半ば埋め込まれた金髪の少女だった。フェイトに瓜二つの少女。
しかしその肌は、血の通った生きている人間のものでは無い。青ざめた死人のそれであった。そこで思い当たる。
『違う、アリシアか!?』
危険を感じ宙に飛び上がるゼロの眼下で、アリシアの下に続くものが金切り音のような咆哮を発し、庭園上部を半壊させ全容を現した。
『エースキラー』を思わせる巨大な顔。身体中を被う無数の触手に昆虫のような鋭い節のある6本脚。ウルトラマンゼロを遥かに上回る体長300メートルに及ぶ巨体。
『ウルトラキラーザウルス』だ。その腹部に赤く輝く駆動炉が埋め込まれている。
『コイツはウルトラキラーザウルスか!? しかし何でアリシアが……?』
超巨大超獣は岩を撒き散らしながら、フワリと空に浮かび上がる。その頭部のアリシアを背に、女ヤプールが立っていた。
手に持っていた『ジュエルシード』がキラーザウルスの体内に呑み込まれて行く。女ヤプールは、蛇のようにグネグネとのた打つ黒髪をなびかせて哄笑を上げた。
《あはははははっ! ヤプールを甘くみたわね!? 『プロジェクトF』で再生した、名付け て『ウルトラキラーザウルスA(アリシア)』 よ!!》
拳を握り締めるゼロの『カラータイマー』の点滅が速くなる。しかしゼロはUキラーザウルスの額のアリシアが気になった。それに気付いた女ヤプールは、さも可笑しくて堪らないと身体を揺らし、
《あの女の願いを叶えてやったのよ! Uキラーザウルス再生の核にしてあげたわ。尤も只の死体だから養分になっただけだけどねっ! プレシアの意識が消える前にUキラーザウルスに喰わせてやったら泣き叫んでいたわ! あははははっ!!》
無表情な能面を不気味に揺すり、正に悪魔の如く地獄の嗤い声を上げた。
『貴様ああああっ!!』
ヤプールがプレシアに与えた、もう1つの絶望とはこれだったのだ。異次元人の腐臭さえ放つ卑劣さに、烈火の如く激怒したゼロが怒りのままに突撃しようとすると、
《Uキラーザウルスを攻撃するのは止めておいた方がいいわよ……? とんでもない事になるから》
女ヤプールの余裕な台詞に、嫌な予感を感じたゼロは突撃を止める。訝しげなゼロを見下ろしながら、女ヤプールの身体が足からUキラーザウルスの身体に溶け込んで行く。
ヤプール怨念の化身である女ヤプールが、Uキラーザウルスと一体化しているのだ。徐々に身体を沈み込ませながら、
《確かに貴様は化け物じみた強さを持ってい る……Uキラーザウルスも倒せるかもしれない……こいつにウルトラキラー程の力は無いからね……でも今までの戦いでエネルギーは殆ど残ってはいないでしょう……? それに良く見なさい!》
女ヤプールの言葉にゼロは、UキラーザウルスAの異常なまでのエネルギーの流れに気付いた。
『これは……!?』
UキラーザウルスAの体内に、爆発寸前まで飽和状態に達した魔力エネルギーが満ちている。吸収した『ジュエルシード』と暴走させた駆動炉の莫大な魔力だ。
ゼロは動く事が出来ない。これでは動く巨大爆弾だ。頭までUキラーザウルスに融合しながら女ヤプールは嗤う。
《そうよ……今のUキラーザウルスは爆弾と同 じ……下手に攻撃をすれば、他の次元世界を巻き込んで大爆発を起こし『次元断層』を起こせるわ! どちらに転んでも私の目的は達せられる!!》
放って置いても攻撃しても『次元断層』が起こってしまうのだ。皮肉たっぷりに言い放つと、女ヤプールは能面を被った頭まで完全にUキラーの中に消えた。
UキラーザウルスAの両眼が鋭く光る。暗鬱な空を震わせ、金属を擦り合わせるような不快な声で吠えた。
《くたばれぇっ! ウルトラマンゼロオ オォォッ!!》
Uキラーザウルスの身体中の突起、ミサイル発射機関から一斉にミサイルの嵐がゼロ目掛けて飛ぶ。更に両眼からの破壊光線が発射された。
『ちくしょう!』
ゼロは飛来するミサイルの雨と光線の集中攻撃の中、逃げ回る事しか出来ない。高次元空間の空が爆発の閃光で埋め尽くされた。
「不味いぞ……このままでは何れ『次元断層』 が起きてしまう……ゼロの活動時間も後僅かしか無い……」
シグナムは閃光に包まれる空を見上げ、レ ヴァンティンを握り締めた。ヴィータは悔しそうに歯噛みし、
「クソッ! ゼロに魔法の封印は出来ねえ、アタシらにもう少し魔力が残っていればどっちか封印出来んのに!」
ザフィーラも悔しげに牙を噛み締める。限界まで魔力を使った守護騎士達は、まだ封印出来る程の魔力が回復していないのだ。
その時ふと空を見上げたザフィーラの目に、あるものが映った。
「シグナム、ヴィータ、あれを見ろ……!」
ザフィーラの声に2人は視線をそちらに向けた。
『カラータイマー』の点滅はどんどん速くなる。エネルギーは残り少ない。後1分程しか保たないだろう。
『しまった!?』
タイマーに気を取られた一瞬の隙に、UキラーザウルスAの広域砲撃に被弾してしまった。墜ちて行くゼロに無数の触手が絡み付く。
がんじ搦めに絡め取られてしまった。脱出しようとすると、更に別の触手が襲い身動き取れなくされてしまう。
(クソッ、このままじゃ……!)
手も足も出せないゼロを、Uキラーザウルスと一体化した女ヤプールがゲタゲタと嘲笑う。
《ふははははっ! このまま『アルハザード』 に行き『ヤプールの遺産』を手に入れた暁(あかつき)には、ウルトラ族に復讐し、全次元を我らヤプールのものとしてくれるわあっ!!》
『クソオオオッ!!』
その時だった。怒るゼロの頭に少年達の声が響いた。思念通話だ。
《ウルトラマンゼロ、もう少し頑張ってくれ!》
《こっちで駆動炉を封印してみます!》
《ゼロッ、アタシらに任せな!》
《その声はクロノ、ユーノにアルフか!?》
思わぬ人物達からの呼び掛けだった。見るとクロノとユーノ、アルフがUキラーザウルスに攻撃を仕掛けていた。
(アイツら無茶しやがって……)
呆れるゼロを他所に、クロノとアルフが果敢に砲撃を加え、ユーノがバインドを繰り出す。しかし超巨大サイズの怪物は蚊に刺された程も感じない。
《五月蝿い虫けら共があっ!》
気付いたUキラーザウルスがミサイルを発射した。それでも3人は懸命にミサイルの雨をかい潜り攻撃を仕掛ける。
だがあまりの火力に近付く事さえ出来ない。 何れ力尽きてしまうだろう。あの化け物に正面から、自殺行為にしか見えない。
ゼロが逃げろと言い掛けた時だ。Uキラーザウルスの下方から、猛スピードで突撃して行くものがある。
(フェイト、なのは!?)
それは並走して飛ぶ2人の魔法少女達だった。デバイスを構え一直線に腹部の駆動炉目掛けて突っ込んで行く。
(そうか、クロノ達がまともにぶつかったのは、囮だったのか!)
しかし後少しという所でUキラーザウルスに捕捉されてしまった。フェイトとなのはにも、ミサイルと破壊光線の雨が降り注ぐ。
だが2人は避けない。避けていては折角のチャンスが失われてしまう。これでもまだ手薄になったのだ。フェイトとなのはは各自のデバイスを構え、弾丸のように飛ぶ。
「ディバインバスタァァッ!」
「サンダースマッシャアアッ!」
2人の砲撃が前面のミサイルを撃ち落とす。だが更に無数の触手が迫る。それでも魔法少女達は突っ込んだ。
ミサイルの爆発がバリアジャケットを撃ち抜き、触手が肉を打つ。だがフェイトもなのはも怯まない。今世界の命運は彼女達に懸っているのだ。
「うわああああっ!」
「えええいっ!」
同時に放たれる金色と桜色の光。合体砲撃が触手の陣に僅かに穴を開けた。その隙間から見える赤く光る駆動炉。2人は細い突破口から強引に駆動炉に突撃する。
「なのはっ!」
「フェイトちゃん!」
フェイトとなのははデバイスを前に構え駆動炉に飛び込んだ。触手が追って来る。余裕は無い。フェイトは横目でなのはに合図し、バルディッシュを振り上げる。頷いたなのはもレイジングハートを構えた。
「封……!」
「印!!」
金色と桜色の魔法光が駆動炉に突き刺さるように撃ち込まれた。見る見る内に輝きを失い、駆動炉は沈黙する。そしてUキラーザウルスの体内に満ちていた魔力が、急激に減少して行く。
(母さん……ヤプールに一矢報いたよ……)
フェイトは心の中で亡き母に向け報告した。駆動炉の停止に伴い『ジュエルシード』の魔力も鎮静化する。最早それだけでは『次元断層』 を起こせるだけの力は無い。
「虫けら共があっ! 何て事を!!」
融合していた女ヤプールは取り乱し、発狂したように怒り狂った。後少しという所で。許せなかった。虫けらの分際でと。
フェイトとなのはは急いでUキラーザウルスから離脱するが、ヤプールは魔導師達全員を地獄に送ってやると全砲門を開く。
これではとても逃げ切れない。Uキラーザウルスの射程は数キロにも及ぶ。だがその時、雷鳴のような声が響いた。
『貴様の相手はこの俺だ!!』
Uキラーザウルスが巨大な顔を上げる。捕らえていた筈のゼロが触手を引き千切り、上空高く飛び上がっていた。カラータイマーの点滅が更に速くなる。
(時間が無え! 一撃で決める!!)
ゼロは左腕の『ウルティメイトブレスレット』を天高く掲げた。
『オオオオオオッ!!』
ゼロの雄叫びと共に、ウルティメイトブレスレットが眩い光を放った。光は分裂しゼロの身体にプロテクターのように装着される。
光は白銀の輝く鎧となり、限界寸前のゼロに力を与えた。イージスのエネルギーが周囲の放電とスパークし、青白い閃光を放つ。
『最期だ……ヤプールッ!!』
高次元空間に白銀の鎧を纏い浮かぶゼロが、UキラーザウルスAに向かって雄々しく叫ぶ。
『ウルトラマンノア』より授けられし神秘の力『ウルティメイトイージス』を纏ったゼロ最強の姿『ウルティメイトゼロ』降臨であった。
つづく
ヤプールとの最後の決戦。そして暗躍する黒い魔神の目的が明らかに。次回無印編最終回『心からの言葉や』